FC2ブログ

俺とお前(1/14)

2020.12.22.Tue.
※閲覧注意。受攻両方クズ、いじめ、性的シゴキ、SM、微スカ、初出2008年

 俺が入学した時、上級生は優秀な奴らが多かったらしく、おとなしめで、中学から悪いほうだった俺は割と好きかってやってきた。

 2年に進級して半年が経った秋、目に付いた3年生をからかってやったことがある。そいつは高橋というひょろっと青白い奴で、山の向こう、岸ヶ丘村というイナカから通っていたので、そのことも併せてからかいのネタにした。

 翌日の昼休み、高橋が俺のクラスにやってきた。正確には、連れて来られた、という方がぴったり当てはまるだろう。

 高橋は青い顔をさらに青くして、隣に立つ男に、「あいつ」と俺を指差してきた。そいつは、短いシルバーアッシュの髪を逆立て、耳にいくつもピアスをはめ、制服を着崩した1年生だった。3年の高橋が1年を助っ人に連れてきたのか。俺は嘲りの笑みを浮かべながら、席を立ち、そいつらのもとまで歩み寄った。その男からはかすかに香水のような匂いがした。特別見た目に気を使う奴らしかった。

「あんたが土井か?」

 一年が言う。好戦的な目つきで、生意気に俺を睨んでくる。

「そうや。お前は?」
「俺は石川や、石川祐介言うのや。昨日、何もしとらんのに、こいつをどついてくれたらしいやん」

 石川と名乗った1年生は高橋の肩に腕をまわし、引き寄せた。高橋は青い顔で俯いている。

「それで、1年連れてきたんか? お前、年下に頼って情けない思わへんのか」

 俺は高橋に言ってやった。高橋はチラッと俺を上目遣いに見て、口を歪めて笑った。

「何笑ってんねん」
「別に」

 と高橋が言う。俺はその態度にイラついた。

「まぁ、聞きや。昨日、帰りのバスん中でこいつに会うてな、顔に痣作っとるから理由聞いたら、おまえにやられたいうしな。こいつとは同じ村でな、ガキの頃からよう知っとんのよ。せやから、俺もこんなんやられて、黙っとれんのよ」

 石川は妙に人懐っこい笑みを浮かべて言った。

「ほんならどうすんねん。お前がこいつの仇取るんか?」
「まぁ、そうなるなぁ。ちょっと来てくれるか、先輩?」

 俺は石川たちと校舎を出た。数年前まで一年生が使っていた旧校舎に入る。ここは今は、文科系の部室があるばかりで、この時間、誰もいない。その中で、空きのまま放置されている教室に入った。入った瞬間、「ハメられた!」と思った。そこには、石川の連れらしい1年が3人、待ち構えていた。

 一人は大柄な坊主頭、一人は女のような顔をした長髪、もう一人は目の細い茶髪。入ってきた俺を見てニタニタ笑う。

「紹介するわ、この人が、土井睦雄。昨日公平を殴った奴や」

 高橋の下の名前は公平というらしい。そんなことは今、どうでもいい。この人数、さすがの俺だって勝てるわけがない。これからリンチが始まる。俺は唾を飲み込んだ。

 高橋は問題じゃない。こいつら4人のうち、一人くらいは道連れにしてやる。この中でリーダー格はおそらく……石川だろう。残りの3人は石川の発言を待っているし、石川ほどの迫力も感じない。だったらこいつを道連れだ。俺はやられる前に石川に殴りかかった。

 不意打ちをくらって石川の表情がかわった。さっきまで浮かんでいた笑みが消え、眼光が鋭くなる。

「なにしとんのじゃ、ボケが!」

 坊主頭が叫び、飛びかかってきた。

 俺の2発目は石川に届かなかった。届く前に坊主頭に羽交い絞めにされ、石川から引き離された。石川は殴られた頬を指で撫でながら、また笑った。今度は残忍な笑みだった。

「俺の顔に傷つけたん、死ぬほど後悔さしたるで」

 石川はそう言うと、置きっぱなしになっている机に腰をおろし、ポケットから出した煙草を口に咥え、火をつけた。それが合図であったように、細目の奴が俺に殴りかかってきた。坊主頭に押さえつけられたまま、俺は細目に何度も何度も殴られた。坊主頭に突き飛ばされ、床に倒れこむと、その上から、二人がかりで殴られ、蹴られ続けた。体のどこにも、無事な場所はない、そこまでぼこぼこにされ、俺は意識を失った。

 頬をぶたれ、目を覚ます。俺の真上に石川の顔。石川は、俺の胴をまたいで椅子の上に座っていた。そのせいで俺は立ち上がることができない。両腕は坊主頭と細目がしっかり床に押さえつけている。

 椅子に座る石川は煙草の煙を吐き出し、俺の顔の上で灰を落とした。熱くはないはずだが、俺は咄嗟に顔を振って灰を避けようとした。

「なぁ、先輩、公平に謝ったってくれるか。昨日は俺が悪かったですて、詫びいれてくれるか」

 頬杖をついて石川が言う。その頬が少しはれているのは、さっき俺が殴ったからだ。

「なんで俺が謝らなあかんねん、寝言は寝てから言えや!」

 精一杯の虚勢ではあったが、俺にもプライドはある。

「眠いこと言うとんのはお前やろうが。こんなとこで時間食うとる暇、ないのやで」

 と煙草を俺の顔に近づけてくる。ジリジリと燃えるオレンジの炎が、俺の目の前にくる。

「なぁ、先輩、片目潰されんのと、公平に謝るの、どっちが賢い選択か、わかるやろ?」

 煙草が少し上に移動して、チリッと俺の眉毛を焼いた。

「あっ! つうっ!」

 痛みのような熱さを感じ、顔を振る。石川は笑いながら煙草を口元へ持っていき、深く吸い込んで煙をはいた。

「な? 熱いやろ? 眉毛全部、煙草で焼いたろか?」

 こいつなら本当にやりかねない気がして、俺は「わかった!」と叫んでいた。

「謝ればいいんやろ! 高橋、昨日は俺が悪かった! これでいいんやな!」

 横に立つ高橋が「うん」と頷いたのに、

「あかんあかん、先輩、そないな謝り方、誠意がない。ほんまに悪い思うとるんか? 悪い思うとるなら、土下座せなあかんやないか」
「なっ、なんで土下座なんか!」
「せんのか?」

 冷たい声で言う石川の指の間から煙草が落ちた。それはモロに俺の顔にあたった。熱さに身を捩って煙草を振り払う。

「あっ、熱いやろが!」
「土下座するか?」

 依然として冷静に石川は言う。俺は言う通りにするしかなかった。

「わかった、土下座する、すればいいんやろ」
「はじめからそうせえ、ボケが」

 隣で坊主頭が笑う。畜生、なんで俺がこんなガキに。石川が退いたので、俺は起き上がり、高橋に向き直って正座した。とりあえず今は恥をしのんで土下座するしかない。そのあと、俺のダチに招集かけて、こいつらボコり返してやる。そう考えて、俺は悔しい気持ちを我慢して、高橋に土下座した。

「昨日は俺が悪かった」
「あかん」

 俺が言い終わる前に、石川が遮る。

「昨日は殴って申し訳ありませんでした、本当にすみません、許してください、許して頂くためなら、僕はなんでも致します、こう言え」

 椅子に座って石川が言う。石川を睨んでいたら、坊主頭がまた俺の背中を蹴ってきた。キレそうになるのをこらえる。

 俺は石川の言葉を思い出しながら復唱したが、「ちゃうちゃう、抜けとる言葉があるど」とやり直しさせられ、今度は声が小さいとやり直しさせられ、次は誠意がこもってない、とやり直し、土下座するタイミングが悪いとやり直し、とにかくつけられるイチャモン全てつけられ、何度もやり直しをさせられ、1時間近く、大声で叫ぶように謝罪し、土下座した。

「ゆ、祐介、俺、もうええんで……」

 ついには高橋のほうが音ををあげた。

「何を言うとんな。公平、こんなもんで許したる気か? 優しすぎるわ。それはこいつのタメにならんのえ?」
「で、でも俺はもうええよ、それに授業も終わるみたいやし……」

 6時間目が終わろうとしていた。

「ほうけ。ほなら公平はもう帰り。あとは俺らがやっとくわ」

 石川に解放され、高橋は逃げるように教室を出て行った。

「公平はああ言うたけどな、俺らはまだ許したわけちゃうんど?」

 坊主頭が言う。細目が俺の髪の毛を引っ張り、グイグイ振り回す。長髪の女のような奴は、石川の後ろに突っ立って、興味がないふうにそっぽを向いている。

「高橋はいいて言うたんや、もうお前らには関係ないやろ」

 俺が叫んで言うと、坊主頭が腹を蹴ってきた。呻いて前にのめりこむ。いつまでこんなリンチが続くのか。

「なぁ、お前、たしか女、おったよな?」

 のんびりした口調で石川が言った。俺はギクリとなった。「なんていう名前やったかな……確か……」

「お前! 真弓になんかしたら殺すぞ!!」
「そうか、真弓言うんか」

 石川がニヤリと笑う。しまった、と俺は自分の馬鹿さ加減を呪った。こいつは真弓のことなんて本当は知らなかったんだ。俺にカマをかけ、俺がまんまとそれにひっかかっただけだ。

「真弓連れてきて、お前の前で犯したろか?」

 楽しそうに石川が笑う。怒りで目の前が霞んだ。

「石川ああぁぁっ!! 真弓になんかしてみい!! ほんまに殺したるからなあぁっ!!」
「真弓が今日、無事に家に帰れるかどうかは、おまえ次第や」

 石川が俺の目の前に立った。俺はそれを見上げる。坊主頭と細目が、両脇で俺の体を押さえているので、俺は立ち上がることもできない。ギリギリと石川を睨みつけた。

「真弓を助けたいのやろ? ほしたら、俺の言うこと、なんでも聞くか?」

 嫌だと言えば、真弓はこいつらに襲われ輪姦される。俺は真弓のために頷いた。

「なんえ? ちゃんと言葉で言うてみい」
「わかった、お前の言うことをなんでも聞く。だから真弓には手出しすんな」
「ずいぶんかっこいいこと言うやないか」

 坊主頭がからかうように言う。俺は無視して石川だけを睨み続けた。

「男と男の約束やど? これを破ったら、真弓がどうなるか、わかっとるな?」
「わかってる」
「ここにおるこいつらが証人や。お前は俺の奴隷やと、今ここでハッキリ宣言せえ」
「お、俺は、石川の奴隷や」
「ちゃうやろが、土井睦雄は石川祐介様の奴隷ですて言わんかい」

 と、細目が俺の頭を押さえつける。俺はその言葉を繰り返した。悔しくてたまらなかった。

 石川は膝を折って、俺の前にしゃがみこんだ。俺の顎を掴み、ニッと笑う。

「契約成立や、今日からお前は俺の奴隷で」

 目の前が真っ暗になった。




関連記事
スポンサーサイト
[PR]

コメント

管理者にだけ表示を許可する