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祭りの夜

2020.12.17.Thu.
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※高1、微エロ

 夏に村の祭りがある。

 お神酒の入った樽を乗せた神輿を村の男衆で山の中腹にある神社まで運び、そこでお神酒を頂く。

 昔は成人の儀式だったらしく、その年18歳になる男子は全員それに参加し、酒を飲まねばならなかったらしいが、昨今未成年の飲酒に厳しくなり、口に含んで吐き出すことになっている。が、それはあくまで建前で、ほとんどは酒を飲みこみ、吐き出す真似をするだけだった。

 その儀式が終わると、酒は村人全員に振舞われる。神輿はその場で解体され、お焚き上げの薪に使われる。一晩中、火を絶やさず燃やし続けなければならない。大人たちは酒を飲みながら火の番をする。

 この時だけは無礼講で、子供も朝帰りを許される特別な日だった。

 今年は和也の兄貴、永一が18歳になる年だった。他に2人いる。永一は新品の黒いハッピを羽織り、黒の股引、腹掛け、足袋を履いて、年上の男たちと一緒に神輿を担ぎ、村の中を練り歩いていた。

 村の連中はその神輿を撫で、不要になったお守りやらお札やらを貼り付け、両手を合わせて頭を下げる。そのお礼として食い物や飲み物の差し入れをする。

 俺は和也の家の前で、和也の家族と一緒に神輿がくるのを待っていた。遠くから神輿を担ぐ掛け声が聞こえてくる。

「来たわ、来た、来た」

 和也のオカンが家の中に駆け込み、舞子に手伝わせて、中からおぼん一杯のおはぎを持って出てきた。

「ご苦労さんです、ご苦労さんです」

 やってきた男衆におはぎを差し出す。みんなそれを手に取り、口に頬張る。照れ笑いを浮かべる永一もそれを食べた。

「おう、貴志も来とったんか」

 永一が俺を見て笑った。和也は母親似だが、永一は父親似でいかつい体をしている。

「疲れた?」

 早朝、神社を出発してから、ずっと神輿を担いで歩いているのだ。もう六時間近く経つ。が、永一は首を横に振った。

「そないに疲れんよ。あっちこっちの家で、こうやって休憩しとるからな。朝からずっとなんか食っとるから、腹のほうが苦しいわ」

 と永一は自分の腹を撫でた。少し前に迫り出している。俺たちも二年後、あんな腹になるのか。俺と和也は顔を見合わせた。

 しばらくして、永一たちはまた神輿を担ぎ、次の家へ移動して行った。そのあとを、子供たちが付いていく。差し入れのおこぼれ目当てだ。

「永一兄ちゃん、かっこよかったな。ハッピ、似合うとんやん」

 和也に言うと、

「きっと貴志も似合うで。貴志は黒い服着たら大人っぽなって、かっこよう見えるから」

 なんて嬉しいことを言ってくれた。

 日が暮れるまで和也の家で過ごし、夜、俺と和也は神社に出かけた。神社への一本道にくると、他からもたくさんの人が集まってきて、みんな同じ方向へ歩いて行く。途中の出店で、ラムネを買い、それを和也と分けて飲みながら神社についた。

 腹に響く太鼓の音。軽快な笛の音。空に向かって燃え上がるお焚き上げの炎。

 ワァッと喝采があがった。ちょうど永一が酒を飲んだところだった。吐き出す真似をしたあと、永一が舌を出す。これは暗に、酒を飲んだぞ、というアピールだ。

 そのあと、小さい紙コップに入った酒が、みんなに配られる。

「俺らも行くど」
「え? 俺ら、まだあかんやろ。きっともらわれへんて」
「永一兄ちゃんに言うたらくれるやろ。行くど、和也」

 和也の手を引っ張り、樽を取り囲む輪に、俺たちも加わった。手を差し出す俺に気付いて、永一が悪戯っぽく笑いながら、「見つからんようにせえよ」と小声で言って、コップを一つ、渡してくれた。

 俺たちは素早く人混みを抜け、神社の裏手にまわり、山を少し登った。木立が途切れた休憩所のベンチに座る。

「ほら、飲んでみぃ」

 紙コップを和也に差し出す。躊躇いながら、和也はそれを受け取り、クンと匂いをかいだあと、チビリと口をつけた。

「あっつ! なんやコレ!」

 横を向いてペッと吐き出す。

「何もったいないことしとんのや。貸してみい」

 俺も一口飲んで……二口目はやめておいた。口から胃にかけて、燃えるように熱い。

「永一兄ちゃん、ようこんなん飲めたな」
「兄ちゃんは、昔からよう、父ちゃんのビールとか、こっそり飲んどったからな」

 二人して、二年後のことが心配になってしまった。吐き出してもいいのだが、男としてのプライドがそれを許さない。吐き出すふりをして飲んでこそ、一人前なのだ。

「まだ口が熱いわ」
「俺もや」

 と和也も笑った。

 俺は和也に向き直り、「キスしよっか」と誘ってみた。

「あ、アホ、今日は祭りで。どこに誰がおるか、わからんのんえ」

 と暗闇へ視線を飛ばす。

「大丈夫やて。他の奴も、自分らのことに夢中で、他人のことなんか気にせんわ」
「でも……」

 言い募る和也の口にキスする。和也は逃げない。舌を絡めて夢中になって吸い合う。

「はぁ……もう、アカン、我慢できん」

 俺は和也の股間へ手を伸ばした。

「嫌や、こないなとこで」

 抵抗する和也の手を振り払って、そこを揉む。だんだん硬くなっていく。

「貴志、あかんて……」

 弱々しく声を震わせる和也の咽喉に舌を這わせ、軽く吸い付く。和也の体臭に、股間直撃の甘い痺れが走る。

「あかん……貴志、あかんて……誰か来たらどうすんのんな」
「誰もこんわ」

 遠くで太鼓と笛の祭囃子が聞こえる。それが、俺の気持ちを高めていく。クイ、クイと指を動かし、服の上から和也のチンコを刺激する。

「あっ、あっ、貴志……あかん……」
「どや、ええか? ええなら声出せや」
「あぁ……イヤ、イヤや……あっ、あっ……貴志っ」
「エロい声だして、イヤやないやろ、ええて言えや」
「あふっ……んっ……あぁ……やっ……」

 直にチンポを握ってやろうとしたその時、甲高い女の悲鳴が聞こえ、俺も和也も飛び上がって驚いた。

「なっ、なんや、今の!」
「わからん、あっちから聞こえてきたけど」

 と、和也は左前方を指差す。俺と和也は手を握り、忍び足で静かに近づいた。次第に聞こえてくる声。

「アホか、なんちゅう声出しとんねん、誰かに聞こえたらどないすんじゃ」

 という男の声。

「だって……あんたがえげつない突き方してくるから、あたしも声が出てもうたんやんか」

 という女の声。

 そっと覗きこむと、駅弁スタイルでセックスに励む若い男女の姿があった。俺たちはまたそーっと引き返し、山をおりた。

「あのまましとったら見つかったかもせんな」

 俺の言葉に和也が苦笑して頷く。祭りの夜は、あちこちでああいう光景に出くわす。

「途中でほっぽり出してツラいやろ、家帰って、続きしよか、口でしたるわ」

 和也は照れて俯いた。あらわれた白い項を見て俺はほぞをかむ。

 外でしたかったのに、邪魔された。惜しいことをした。空に浮かぶ月を見上げて、俺はこっそり舌打ちした。



仁藤と田塚の日常


時系列では、前に更新した「夏祭り」が先なんですが、書いた順番ではこっちが先なので、夏祭りの説明が若干こっちのほうが詳しいっていう…
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