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結成秘話(4/4)

2020.12.03.Thu.


 今日は東西対抗戦。前半戦の場所は大阪。

 選抜された数組が貸し切りバスで大阪へ出発する。席は自由だが直前でネタをいじった場所があるので三宅を呼んで隣に座った。出発してすぐ、仕切り屋の瀬戸がマイクを握って「大喜利大会するぞ!」と勝手に始めたが、こっちはそれどころじゃないので当然無視。

 外野がうるさいので自然と顔を寄せ合ってネタ合わせ。三宅は警戒心なく体を擦り寄せてくる。すぐに抱きしめて、キスもできる距離だ。匂いも体温も届く。もっと近くに来ればいいのに。

 大喜利やゲームに参加しないでいると「イチャイチャしてないでお前らもやれ」と絡まれたり「仲良すぎて気持ち悪い」と言われたりしたが、勝つネタを作るために聞き流した。

 修正したところがあれば持ち時間をオーバーしないように時間を測りながら微調整をかけた。俺がネタを書き直しているのを待つ間、三宅は律儀にゲームに参加したり、面白いボケには笑っていた。そういうところがみんなから好かれるんだろう。

 休憩を挟んでやっと会場に到着。養成所の大阪メンバーはすでに会場入りしていた。簡単に挨拶したあと各々ネタ合わせ。そしてすぐ本番。

 俺たちの出番は後半。それまで壁に向かってひたすらネタ合わせ。出番を終えた同期たちの結果を聞いてどんどんプレッシャーがのしかかってくる。

 最後にトイレに行って戻ってくると、舞台袖で三宅がぼんやり立っていた。

「どうした?」
「武井と組んだままだったら俺、ここに来てなかったなーって思って」

 と俺の顔を見る。

「俺も豊田と組んでたらここにいない」
「これからもよろしく、夜明」

 三宅が手を差し出す。その手を握り返した。相方は三宅以外考えられない。この先何があっても、ずっとコンビを続けるだろう。

 俺たちの番がきた。2人で舞台に出た。

 w w w

 打ち上げのあと、ホテルに向かうバスの車中、みんな行きのテンションを忘れたみたいにおとなしかった。東西戦の結果は大阪の勝ち。結果に不満を漏らす奴もいたが、俺からしたら妥当な結果に思えた。

 俺と三宅は、3対0でコンビとしては大阪組に勝てたのでまだ気分は楽だ。

「ホテル泊まるの久しぶり。楽しみ」

 と三宅は遠足気分。

 ホテルの部屋も組み合わせ自由だったが、何も言わなくても三宅は俺についてきて同じ部屋に荷物をおろした。大浴場に誘われ一瞬腰を浮かしかけたが、三宅の裸を想像したらやばかったので断った。今夜は同じ部屋で寝るのだ。迂闊な行動は避けるべきだ。

 部屋の風呂に入り、念のため一発抜いておいた。しばらくして三宅が戻ってきた。浴衣姿の三宅に理性がぐらつく。一回抜いたくらいでは駄目かもしれない。

「ここってデリヘル呼んでいいのかな」
「大阪まで来て何言ってんだよ」

 ベッドに腰かけた三宅の浴衣がはだけて生足が晒される。そんなはしたない格好をするんじゃない。

「瀬戸の部屋で飲み会するって言ってたけど、夜明はどうする?」
「疲れたから寝る」
「わかった。俺はちょっと顔出してくる」

 立ちあがった三宅の腕を咄嗟に掴んだ。無意識の行動だ。

「どした? やっぱ行く?」

 行くな。言いかけた言葉を飲みこむ。そんな無防備な格好で他の男の部屋に行くな。酒を飲んだらみんなの気が緩む。狼の群れに羊が迷いこむようなものだ。酒の勢い、一夜の過ちがないとは限らないんだぞ。

「──飲み過ぎんなよ、お前弱いんだから」
「わかってるって。ちょっと顔出したらすぐ戻ってくる。俺も今日は疲れたし。夜明は先寝てていいよ」

 俺の心配なんか知らずに三宅は部屋を出て行った。あんなかわいい奴が浴衣姿で酒に酔ったらぜったい間違い起きるだろ。

 先に寝てろと言われたが心配で眠るどころじゃない。スマホをいじりながらベッドに寝転がって帰りを待つ。案外早く20分ほどで帰ってきた。

 歯磨きをしてトイレに行くと、三宅は横のベッドに飛び乗った。

「明日帰るの昼だったよな。それまでどうする? 大阪観光する?」

 うつ伏せで俺のほうへ目線を寄越す。誘ってるのか。

「どこか行きたいところがあるのか?」
「本場のお好み焼き食べたい。あと劇場見に行ってみたい。水族館も行きたいな。ジンベエザメ見たい。串カツも食べたいし、USJも行きたい」

 ずいぶん欲張りな要求に苦笑する。

「一度に全部は無理だろ。今度連れてってやる」

 うっかり口をすべらせてしまったが、三宅は「約束だぞ」とゆっくり瞬きした。瞼が重たそうだ。

「布団入ってもう寝ろ」
「うん」
「こら、そのまま寝るな。布団に入れって」

 寝てしまいそうな三宅の体を転がして掛布団を引き抜き、上からかけてやった。もう開けてるのも辛そうな目で「ありがと」と言うと落ちるように眠りについた。

 衝動的に三宅にキスしていた。我に返ってすぐ飛びのいた。心臓が壊れそうなほどバクバク高鳴っている。三宅は無邪気な寝顔を晒して眠っている。頼む、どうか俺がキスしたことは気付かないでいてくれ。

 これは単なる性欲なのか? 三宅をかわいいと思ったり、触りたくなったり、言動に一喜一憂して心配したり喜んだり、あれを食べたいあそこに行きたいと言えば全部叶えてやりたくなったり、寝顔にキスしたくなったり。

 どうして俺の指先は震えているんだ? どうしてこんなに胸が高鳴って顔が熱くなるんだ?

 ここにきてやっと俺は1つの可能性に気が付いた。

 目から鱗が落ちたような心境。今までの自分のおかしな行動も納得の理由。

 もしかして俺は、三宅のことが好きなのか?

 ただ俺の性の対象に三宅が入りこんだわけじゃなく、好きになったからその対象になったのではないか。

「まじかよ」

 口を押さえて呟く。同じ性別の野郎を好きになったことなんか今まで一度もない。かわいい奴だなとちらっと思うことはあっても、性欲はわかないし恋愛対象にもならない。女の子とは比べようもなかった。これは本当に恋愛感情なのか?

 頭のなかで俺を誘惑するムチムチボディのエロいお姉ちゃんを三宅の横に並べてみる。性欲を突き動かされるが、触りたいと思うのは馬鹿面晒して寝ている三宅のほうだ。これもう重症だろ。

 体から力が抜けていく。自分のベッドにどさっと腰を落とし、最大の溜息をついた。

 三宅は完全に女の子が好きだ。俺みたいに興味や機会があればアブノーマルプレイも積極的に試そうとしたり、相手が男だったとしてもヤリたいと思ったら本能に従うままだという冒険心はない。少女漫画のような恋愛を夢見てる三宅が、男から好意を寄せられて受け入れる確率は限りなくゼロだ。最悪、見た目が中性的な美少年だったなら可能性はわずかにあったかもしれないが、ゴリゴリ男の見た目をしてる俺では無理だ。

 俺が三宅を好きになっても、同じ気持ちが返ってくることはない。好きだと知られたら、三宅のことだから罪悪感とか未知への恐怖で絶対態度がぎこちなくなる。コンビ解消だってあるかもしれない。

 それは困る。嫌だ。

 別に好きになってもらえなくてもいい。コンビでそばにいてくれるだけでいい。俺だって三宅に会うまでは男なんか恋愛対象外だったんだ、諦めることくらい簡単だ。エロいお姉ちゃんと付き合ってこんな感情とっとと忘れてしまえばいい。

 それがいつになるかわからないが、それまで絶対、バレないようにしないといけない。

 実ることのない片思いがこんなに切ないとは。

 ため息をつきながら三宅の寝顔を眺める。やっぱりかわいいし、ちんこがムズムズしてくる。やばいな。

 もう一度抜くか?と考えていたら誰かが部屋をノックした。三宅に起きる気配はない。そっと移動し扉を開けたら瀬戸が立っていた。酒臭い。

「夜明も飲みに来いよ」

 浴衣がはだけで乳首まで見えているがぜんぜんムラムラしない。

「俺はもう寝る。三宅も寝ちゃったしな」
「お前らほんと仲良いよな。うち喧嘩ばっかだから羨ましいわ。さっきも対抗戦の話になったんだけど、三宅はずっと、勝てたのは夜明のネタのおかげだってお前のこと褒めてたもん」

 俺のいないところでもそんなことを言ってくれているのか。いますぐキスしてやりたい。

「ま、気が向いたら来いや」

 おお、と返事をし、扉を閉めた。部屋へ引き返し、寝ている三宅を見下ろす。暑いのか額に汗が滲んでいる。前髪をかきあげ、首までかぶった布団を少しずらしてやった。隙だらけの首筋にしばし目を奪われる。むりやり目線を引きはがし、自分のベッドに寝転がった。

 好きだと自覚した途端、三宅をかわいいと思う度さらに好きになってる気がする。

 三宅を諦められる日なんて、本当にくるんだろうか?



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