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宇宙人の恋(4/4)

2020.11.04.Wed.


 さっきまで俺が入ったいたところが眼前でヒクついている。男のそんなものを見てやる気を出す日が来るとは思わなかった。そこへペニスを押しつけた。ぬめりのおかげですんなり入る。古巣へ帰ってきたような安堵感。不思議な感覚。

「好きに動いていいから」

 寝そべる藍田の後頭部を見ながら腰を動かした。満足げな吐息を藍田が漏らす。少しずつ速度をあげていった。タンタンとリズムよく突き上げる。さっきはあまり自由に動けなかったが、これなら好きに動ける。俺の一突きで藍田のなかが締まる。少し角度を変えると体が跳ねる。体の触れ合ったところから藍田の反応が伝わってくる。もっと感じたくて背中にのしかかった。体全部で藍田を感じる。

 首をひねり、藍田が俺を見上げていた。切なげな顔で唇を舐める。キスしたいのだろうか。藍田の首に腕をまわし、顎に手を添えてキスした。上体を逸らして藍田が必死に俺を求めてくる。そんな姿は健気で可愛いいと思う。藍田の隠された一面だ。

「井上はまだ……イカねえの……?」

 俺の腕にしがみついて藍田が言った。

「もうすぐ」
「長いよ……俺のほうがもたないじゃん」

 藍田のなかは温かくて気持ちよくてつい長引かせるように腰の動きをゆっくりにしていた。受け入れる藍田にしたらツライことなのかもしれない。

「悪い、もう終わらせる」
「違くて……俺ばっか恥ずかしいだろって言ってんの」

 藍田はシーツに顔を埋めた。耳まで赤くなっている。恥ずかしくなんかない。俺だって本当はすぐイキそうなくらい気持ちいい。あっけなく終わらせるのがもったいなくてわざと自分を焦らしていただけだ。

「この前まで童貞だったくせに」
「お前の手解きが上手だったんだ」

 素直に言うのが恥ずかしくてつい誤魔化してしまった。

 藍田に抱きつく格好のまま突き上げる。

「ひ、ううっ、んっ、奥まで……きてる! あっああっ、すご……っ、気持ち、いいっ」

 藍田は痛くないだろうかと心配だったが平気そうだ。

「俺も気持ちいい」

 今度は終わらせるために腰を動かした。摩擦でどんどん中が熱くなる。締め付けが一段ときつくなる。俺を気持ち良くさせようとしているのが伝わってくる。獣じみた息遣い。バックでしていると藍田を征服したような錯覚を抱く。これは俺のものだ、と間違った独占欲が湧きあがり、藍田の過去の男に嫉妬した。射精の瞬間、思わず藍田の肩に噛みついた。

「アッ……井上……!! く……あっあ、ああっ……っ!!」

 腕の中で藍田の体が硬直する。確かめなくても藍田も出したのだとわかった。

 ※ ※ ※

 シャワーを浴びて戻ると、ベッドに座って藍田は俺の原稿を読んでいた。

「勝手に読んでるよ」
「少し手直ししたんだ。どうだ」
「うーん、いいんじゃない? 男はモアイ像より身近な女を選んだってことでしょ」
「男が好きなのはモアイ像だ。女を好きになることは絶対にない」
「は? 簡単に寝ておいてそれはないんじゃね?」
「女とは寝たが、男が好きなのはモアイ像のままだ」
「ひどっ、最低の宇宙人じゃん。子供ができても知らん顔して星に帰りそう。究極のヤリ逃げ男じゃん」
「宇宙船がないから男は星には帰れない」
「まあ俺の分析を聞いてよ。井上の好きな子をモアイ像だと仮定した場合、ヤリ捨てられる女って、俺のことじゃん」

 飛躍した話に一瞬頭がついていかなかった。

「高松さんはモアイ像じゃないし、女は藍田じゃない」
「高松さんて言うんだ、ふーん」
「いま高松さんは関係ない。それはただの創作だ」
「高松さんに恋しちゃったから恋愛ものばっか書いてるくせに何言ってんのさ。高松さんへの一途さだけは伝わるけど、これは酷い、前より酷いよ」

 と言って原稿を床に投げ捨てた。クリップが外れて原稿がバラバラに散らばる。さっきはいいと言ったのに、その直後に酷いと言う。藍田がなぜこんなに不快感を表すのかわからない。その戸惑いのほうが大きくて、藍田への怒りが削がれる。

「確かに俺は高松さんに好意を抱いている。でもそれは恋じゃないと思う」

 床に散らばった原稿を拾い集めながら言った。高松さんに好意を抱いたから恋愛に興味を持てたことは認める。だが原稿を書きながら俺がよく思い出していたのは自由奔放な恋愛を楽しむ藍田のことで高松さんじゃなかった。誰かを好きになったら四六時中その人のことを考えるのが恋愛なのだと、色事に疎い俺でも知っている。だから高松さんのことはそういう意味で好きなんじゃない。

「まだそんなこと言ってんの。男らしく認めなよ。本当は手を出したいけど怖いからマス掻くことしかできないって。俺としたようなこと高松さんとしたいんだろ。願望ダダ漏れ」
「お前はどうしてそんなに怒ってるんだ」

 藍田は目を伏せた。

「人間は欲張りなんだよ」

 口を尖らせて言う。

「一個何かを手にいれたら次が欲しくなるんだよ。友達でいいって思ってたのに、友達のままじゃ物足りなくなるんだよ。井上のせいだ。井上が悪い。俺に優しくするから可能性あるかもって期待しちゃうんだよ。全部失くすくらいなら何もいらなかったのに、ずっと我慢してきたのに、井上が俺を欲張りにしたんだ」

 伏せられた目に涙が溜まっているのが見えた。

「藍田、もしかして」
「井上が好きなんだよ、ずっと前から」

 ぽたりと涙が落ちたのを見て体が勝手に動いた。藍田を抱きしめながら、俺もひとつわかったことがあった。モアイ像は藍田だ。俺にとって藍田は近いようで遠い存在だった。ゲイだからという理由以外にも、あっさり高校を辞める潔さ、親を恨まない前向きさ、次々相手を見つけて深い仲になる度胸、後先顧みず復讐に走る大胆さ、何ひとつ俺は持ち合わせていない。

 俺がなにを考えてるのかわからないと藍田は言うが、藍田のほうこそなにを考えているのかわからない。一度や二度寝たくらいでは何ひとつ理解できない。好きな男ができたらのめり込むくせに関係が終わったらもう忘れたような顔で次の男の話をする。本当は何にも執着しない性格なんじゃないかと思う。俺のことも、連絡を取りあわなくなったらきっと忘れてしまう。

 今でもそう思っているが、俺の胸に顔を埋めて体を震わせる藍田を見ていたら別の一面もあるのかもと思えてきた。

「ずっとって、いつからだ?」
「高校の時、俺にキスしてくれた時から」

 俺のなかでモアイ像がパカッと開いた。

「藍田、モアイ像はただの石像じゃなかった」
「なに言ってんの」
「あれは宇宙人の冬眠装置だったんだ」
「意味わかんない、この宇宙人め、俺の告白なんだと思ってんだよ」

 モアイ像から出てきたのは男と同じ星の仲間。なぜか藍田の姿をしていると言ったら、この分析好きな藍田にも俺の気持ちが伝わるだろうか。それともちゃんと、好きだと言ってやるべきだろうか。





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