アイヲシル(14/14)
2020.10.22.Thu.
<1→2→3→4→5→6→7→8→9→10→11→12→13>
今までで一番感じた夜かもしれない。木村に触れられる場所全て、敏感に反応してしまった。
「今日の有は激しいね」
木村にからかわれても何も言い返せなかった。貫かれ、体をゆさぶられていると何度か意識を失いそうになった。絶頂の幸福感、その中で弾けてしまうならそれもいいかもしれない。そんなことを思って理性を手放した時、俺ははしたなく木村を求めていた。それに応えようとする木村の顔は切なくて、幸せなのに涙が出てきそうだった。
木村に楔を打ち込まれても、何度口付けされても、どれだけ強く抱きしめられても、まだまだ全然足らなくて、気がついたら窓の外が明るくなっていた。
もつれるように抱きしめ合ったままベッドに身を沈め、薄ぼんやりと明るい室内を眺める。
俺と同様、熱い木村の体が心地よくて密着した。体が汗と体液でべたつくがまったく気にならない。いつか木村に言われた「エロい好きもん」になってしまったのかもしれない。
俺がクスリと笑うと、木村が「どうした?」と不思議そうに聞いてきた。
「今日が休みで良かったなと思って」
「腰、大丈夫? けっこうガンガンやっちゃったけど」
「少しくらいつらいほうがいい」
「おまえってマゾだったのか?」
「馬鹿。そっちのほうが、おまえを受け止めたんだって実感できるから、なんだか嬉しいんだ」
「なんだそれ」
と笑う。
「最近のおまえは聞きわけが良すぎて物足りなかったんだ。俺はもっと甘えて欲しかったのに、おまえは一人大人になって平気な顔をするから寂しくて仕方なかった」
「あははっ、俺って大人に見えた?」
と、悪戯が成功した子供のような笑顔を浮かべる。
「サンジャイに言われて大人の振りしてただけだよ。俺があんまり素直に感情ぶつけてたら一ノ瀬に迷惑がかかるって、だから大人になれって言われてさ。おまえが留学してる間に俺も色々考えたわけさ。で、おまえから頼られるような大人になろうって思ったんだけど、やっぱそれ、難しいよ、俺には」
今度は苦笑を浮かべた。
「前に映画館で会った、阿賀見って言ったっけ? 俺、あいつにめちゃくちゃ嫉妬したんだよね。あいつがやたらおまえに馴れ馴れしくて、挙句に好きだと抜かすからすげえ頭に来た。おまけにおまえはあいつを庇うし、俺に似てるだとかほざくし。なんかあるのかと疑っておまえに八つ当たりしてさ。やっぱ俺には大人の真似なんて出来ねえなぁと思ったね」
「大人になんてなるな」
木村の胸に抱きつく。
「嫉妬してるのは自分だけだと思ってた。俺はもっとおまえにこだわって欲しい。大人の振りなんてして欲しくない」
「そんなこと言っていいの? 本音解禁したら俺、ほんとに前みたいにガキになるよ?」
「構わない、それでいい」
「まぁ、海外赴任が決まったらそうするつもりだったんだけどね」
「そういえば、どうして海外赴任なんか?」
「捉え方の違いでは日本のが住みやすいって意見もあるようだけど、俺には海外のが向いてるかなって気がして。おまえってさ、人の目を気にして、外でいちゃつくの嫌がるだろ。だから日本から引っ張り出して、もっと理解のある国に行きたかった。アメリカなんかは州によっては同性婚が認められてるだろ。ゲイタウンなんかがあるくらいだし。誰彼構わず一ノ瀬有は俺の恋人だって言いふらしてまわるつもりはないけど、俺はおまえを好きだってことを隠したくないし、嘘をつくのも嫌だ。だからあっちに行けたら俺は正直に俺らしく生きたい。それが大学三年からの俺の夢ってわけ」
嬉しいやら、呆れるやら、感心するやら。そんなに前からそんなことを考えていたのか。
「ひとつ言っておきたんだけど、たとえアメリカに行ったとしても、俺は人前ではイチャついたりしないから」
「やだ、する。そりゃどこでだって全員の理解を得られるわけじゃない。アメリカはオープンで自由な国だなんておめでたいこと信じてるわけじゃない。でも日本よりゃマシだろ」
と明るい顔で言った。その顔を見て、木村は仕事が楽しくて働いていただけではなかったと気付く。俺との未来を想像して、その実現のために毎日遅くまで働いていたのだ。
「海外駐在員の人事を握ってる人がいてね、それがこのまえ一緒にソープに行った人なんだけど、この人直々に今回のアメリカ出張の命令もらったから、たぶん、いけるとは思うんだけどね。決まったら絶対おまえと一緒に行く。嫌がっても連れて行く。そのために、おまえの兄貴に挨拶しに行ったんだから」
あれも海外移住の布石だったと言うのか。用意周到というか、根回しがいいというか。やはり俺より一枚も二枚も上手だ。
ベッドの上で肘をついて体を起こす。成長した木村のなかに、高校生の頃とかわらない表情を見つけて嬉しくなってキスした。俺の体に木村の腕が絡まり組み敷かれた。キスするだけでまた体が熱くなっていく。
「一生大事にするから、死ぬまで俺のそばにいてくれ」
その言葉に嘘や偽りがないと信じられる。俺も応えたくて、今の気持ちを素直に伝えた。
「論、君を愛してる」
今までで一番感じた夜かもしれない。木村に触れられる場所全て、敏感に反応してしまった。
「今日の有は激しいね」
木村にからかわれても何も言い返せなかった。貫かれ、体をゆさぶられていると何度か意識を失いそうになった。絶頂の幸福感、その中で弾けてしまうならそれもいいかもしれない。そんなことを思って理性を手放した時、俺ははしたなく木村を求めていた。それに応えようとする木村の顔は切なくて、幸せなのに涙が出てきそうだった。
木村に楔を打ち込まれても、何度口付けされても、どれだけ強く抱きしめられても、まだまだ全然足らなくて、気がついたら窓の外が明るくなっていた。
もつれるように抱きしめ合ったままベッドに身を沈め、薄ぼんやりと明るい室内を眺める。
俺と同様、熱い木村の体が心地よくて密着した。体が汗と体液でべたつくがまったく気にならない。いつか木村に言われた「エロい好きもん」になってしまったのかもしれない。
俺がクスリと笑うと、木村が「どうした?」と不思議そうに聞いてきた。
「今日が休みで良かったなと思って」
「腰、大丈夫? けっこうガンガンやっちゃったけど」
「少しくらいつらいほうがいい」
「おまえってマゾだったのか?」
「馬鹿。そっちのほうが、おまえを受け止めたんだって実感できるから、なんだか嬉しいんだ」
「なんだそれ」
と笑う。
「最近のおまえは聞きわけが良すぎて物足りなかったんだ。俺はもっと甘えて欲しかったのに、おまえは一人大人になって平気な顔をするから寂しくて仕方なかった」
「あははっ、俺って大人に見えた?」
と、悪戯が成功した子供のような笑顔を浮かべる。
「サンジャイに言われて大人の振りしてただけだよ。俺があんまり素直に感情ぶつけてたら一ノ瀬に迷惑がかかるって、だから大人になれって言われてさ。おまえが留学してる間に俺も色々考えたわけさ。で、おまえから頼られるような大人になろうって思ったんだけど、やっぱそれ、難しいよ、俺には」
今度は苦笑を浮かべた。
「前に映画館で会った、阿賀見って言ったっけ? 俺、あいつにめちゃくちゃ嫉妬したんだよね。あいつがやたらおまえに馴れ馴れしくて、挙句に好きだと抜かすからすげえ頭に来た。おまけにおまえはあいつを庇うし、俺に似てるだとかほざくし。なんかあるのかと疑っておまえに八つ当たりしてさ。やっぱ俺には大人の真似なんて出来ねえなぁと思ったね」
「大人になんてなるな」
木村の胸に抱きつく。
「嫉妬してるのは自分だけだと思ってた。俺はもっとおまえにこだわって欲しい。大人の振りなんてして欲しくない」
「そんなこと言っていいの? 本音解禁したら俺、ほんとに前みたいにガキになるよ?」
「構わない、それでいい」
「まぁ、海外赴任が決まったらそうするつもりだったんだけどね」
「そういえば、どうして海外赴任なんか?」
「捉え方の違いでは日本のが住みやすいって意見もあるようだけど、俺には海外のが向いてるかなって気がして。おまえってさ、人の目を気にして、外でいちゃつくの嫌がるだろ。だから日本から引っ張り出して、もっと理解のある国に行きたかった。アメリカなんかは州によっては同性婚が認められてるだろ。ゲイタウンなんかがあるくらいだし。誰彼構わず一ノ瀬有は俺の恋人だって言いふらしてまわるつもりはないけど、俺はおまえを好きだってことを隠したくないし、嘘をつくのも嫌だ。だからあっちに行けたら俺は正直に俺らしく生きたい。それが大学三年からの俺の夢ってわけ」
嬉しいやら、呆れるやら、感心するやら。そんなに前からそんなことを考えていたのか。
「ひとつ言っておきたんだけど、たとえアメリカに行ったとしても、俺は人前ではイチャついたりしないから」
「やだ、する。そりゃどこでだって全員の理解を得られるわけじゃない。アメリカはオープンで自由な国だなんておめでたいこと信じてるわけじゃない。でも日本よりゃマシだろ」
と明るい顔で言った。その顔を見て、木村は仕事が楽しくて働いていただけではなかったと気付く。俺との未来を想像して、その実現のために毎日遅くまで働いていたのだ。
「海外駐在員の人事を握ってる人がいてね、それがこのまえ一緒にソープに行った人なんだけど、この人直々に今回のアメリカ出張の命令もらったから、たぶん、いけるとは思うんだけどね。決まったら絶対おまえと一緒に行く。嫌がっても連れて行く。そのために、おまえの兄貴に挨拶しに行ったんだから」
あれも海外移住の布石だったと言うのか。用意周到というか、根回しがいいというか。やはり俺より一枚も二枚も上手だ。
ベッドの上で肘をついて体を起こす。成長した木村のなかに、高校生の頃とかわらない表情を見つけて嬉しくなってキスした。俺の体に木村の腕が絡まり組み敷かれた。キスするだけでまた体が熱くなっていく。
「一生大事にするから、死ぬまで俺のそばにいてくれ」
その言葉に嘘や偽りがないと信じられる。俺も応えたくて、今の気持ちを素直に伝えた。
「論、君を愛してる」
(初出2008年)
これにて本編は完結になります!
3カ月以上お付き合いくださった皆さん、本当にありがとうございます!
明日から番外編の短編の更新になります。内容としたら本編で端折った部分の補完的なものとか第三者視点のものになります!
良かったら最後までお付き合いくださると嬉しいです!^^
スポンサーサイト
3カ月以上お付き合いくださった皆さん、本当にありがとうございます!
明日から番外編の短編の更新になります。内容としたら本編で端折った部分の補完的なものとか第三者視点のものになります!
良かったら最後までお付き合いくださると嬉しいです!^^
- 関連記事
-
- アイヲシル(14/14)
- アイヲシル(13/14)
- アイヲシル(12/14)
- アイヲシル(11/14)
- アイヲシル(10/14)

[PR]

こちらこそいつもありがとうございます!
毎日更新するのが日課になって7月からやってたんだ!とちょっと驚いたくらいです。続けて来れたのはもちろん見てくださる方がいたからこそ!です!本当にありがとうございます^^
今日更新する短編はサンジャイ先輩視点になります。総メンバーに近い登場人物でごちゃごちゃしてますが第三者目線の二人のイチャコラを楽しんでもらえたらいいなと思います!
ピダム様
長らくお付き合いくださりありがとうございました!読み返してみてこれちゃんとしたBLだったな、と思いました。短編でエロばっかり書いていたのですぐ肉体関係いかないのが逆に新鮮だったというか。この2人はとくに焦らせてしまった笑
けっこう昔に書いたもので二人の行動とか喋り方とか再現できるか不安ですが、またちょっと書いてみたいな、と思いました。ネタがぱっと思いつけば早いんですが、いまはまだ何も浮かんでこないのでお待たせするかもしれませんが、気長にお待ちいただけたら幸いです。
今日更新の番外編は一ノ瀬が留学から帰ってきた直後の話になります!ぜひこちらも読んでやってください!^^
はるりん様
こんばんは!まだ番外が残っていますが最後までお付き合いくださりありがとうございました!
一ノ瀬は真面目で融通きかないところがありますが、木村が柔軟に対処して受け入れていくんだろうと思うと、思ってたより器大きいな、と再発見です。
木村はチャラくて感情表現ストレートでチート設定というくらいしかあまり私も掴めてないキャラなんですが、今回更新作業しながら読み返してみて案外いい男だなとか思っていました笑
十年後には夫婦みたいになっていそうな2人です。
今日更新の番外編もぜひお読みいただけたら嬉しいです!^^