FC2ブログ

Answer (11/11)

2020.09.16.Wed.
10

 他人に対してこんなに優しい気持ちになれたことは初めてかもしれない。一ノ瀬を傷つけたくない、これ以上ないほどに優しくしてやりたい。

  ベルトに手をかけた。ゆっくり外してチャックをおろす。喘ぐように息をする一ノ瀬は抵抗しない。

 上から一ノ瀬を見下ろした。顔も体もほんのり赤くなっている。 俺だけが知っている一ノ瀬のこの顔、この体。下着の中に手を入れ、そっと握った。

「一ノ瀬が今好きなのは誰?」

 手の中で反応する。嬉しくてたまらない。そこにもキスしたいけど、今の一ノ瀬にはまだ早すぎるだろうな。もうすこし馴らしてからにしよう。

 大きく上下する一ノ瀬の胸に吸い付いた。一ノ瀬が俺の腕を掴む。

「誰が好きなのか教えて」
「……好き、なのは……っ」

 一ノ瀬の目元が赤い。恥ずかしいのを必死に我慢している。俺のために、そう思うと愛しさがこみあげてきた。

「うん、好きなのは?」
「き、木村が、好き、だ」
「やっと言ってくれたな」

 キスしたら、イヤイヤをするように首を振って避けられた。手で口を強く押さえている。

「声、出してもいいんだよ」

 首を振る。どこまでも意地っ張りな奴だ。

「いきそう? いっていいよ」

  また首を振った。ソファの上で逃げるようにずりあがる。

 ああ、口で咥えてやってやりたい。したら怒るかな、怒るだろうな、きっと。我慢して手を動かした。

「もう、いい、手、放せ」
「最後まで責任とるよ」
「いらないっ、嫌だ、ストップ、そこまでっ」
「うーん、ごめん、却下」
「嫌だったらすぐやめるって言ったじゃないかっ」
「一ノ瀬が本気で嫌がったらやめるけど、今は本気で嫌がってないでしょ」

 追い上げるように手を動かした。小さく声をあげ、一ノ瀬が身を捩る。もう少しだ。イクときの顔が見たくて、口を塞ぐ手を剥がした。苦しそうに眉を寄せて目を瞑っている。俺はこれをオカズに三ヶ月はイケる。

 手の中で大きく脈打った。飛沫が一ノ瀬の腹を汚す。全部出し切ったのを見届け、ティッシュで腹を拭いてやった。一ノ瀬は放心状態だ。

「大丈夫?」
「嘘つき」

 赤い顔で言う。

「俺は嫌だって言った」
「うん、ごめんね」

 額にキスした。

「好きだよ、一ノ瀬、世界で一番好き」
「俺も、その、したら、いいのか?」

 体を起こした一ノ瀬が言う。するって何を……あ。

「出来るの?」
「ん……出来ると、思う」

 座りなおし、真剣な表情で俺の股間を見ている。そんなに見られたらいけるもんもいけないよ。

「やっぱ今日はいいや、今度してもらう」
「いいのか、遠慮するな」
「次はちゃんとやってもらうよ」
「わかった」

 あっさり引き下がり、一ノ瀬はTシャツを着た。服装を整えソファから立ち上がる。さっきまでの一ノ瀬はいなくなり、普段の真面目な一ノ瀬が戻ってきた。

「お前も服を着ろ」

 髪の乱れをなおしながら言う。もうちょっと余韻を楽しめないかね、この男は。

「もう19時半だ。北野さん、遅いな」
「あんな奴帰ってこなくてもいいよ」

 思い出したくな男の名前。顔を歪めて吐き捨てながらソファに寝転がった。

「俺は先に帰る」
「はぁ? 何言ってんの、せっかく仲直りできたのにもう帰るのか」
「うちは門限が20時なんだ。悪いが先に帰る。お前は北野さんが帰ってくるまでここで待て。じゃあまた」

 止める俺を無視して一ノ瀬はさっさと帰って行った。一人取り残された俺はソファの上で茫然自失。

 あいつ、俺の顔を見なかった。俺とこんなことになって気まずくて恥ずかしくてまともに顔を合わせられないに違いない。

 でもだからと言って帰るか? 普通もっといちゃいちゃするだろ。今時門限20時って見え透いた嘘までついて。中/学生でももっと遅いっつうの。

 こんなことなら一ノ瀬にやってもらえばよかった。今更後悔しても遅い。

 しかも北野の奴、いったいいつ帰ってくるかわからないんだぞ。気を利かして出て行ったんだ、今日は帰ってこないかもしれない。 俺はあいつが帰ってくるまでここで一人、ずっと北野を待っていなくちゃならないのか。

 北野に電話して呼び戻すか。携帯を取り出そうとして、さっきここに来る時タクシーの中で壊したことを思い出した。使えねえ。

 溜息が出た。諦めて冷蔵庫から酒を出した。こうなりゃ自棄酒だ。そう腹を決めたが、ビール一本あける前に北野は帰ってきた。思っていたより早い。

「あれ、一ノ瀬はもう帰ったのか?」

 部屋に俺一人しかいないのを見て拍子抜けしたように言う。わざと早く帰ってきたな。実は気をきかしてなんかいなくて、最初から邪魔するつもりだったんだ。

「なんだ、結局何もしてないのか。どこまで奥手なんだお前らは」

 呆れた顔で買い物袋をテーブルに置く。

「俺はてめえを許しちゃいねえからな」
「許すって何か悪いことしたかな」

 すっとぼけやがって。

「まず、なんで一ノ瀬を勘違いさせるようなくだらない嘘をついた」
「いつまでもお子様ぶってるおまえら二人に苛々したんだよ。別れちまえって思ってた」

 ソファに座った北野は買い物袋から雑誌とアイスを取り出した。

「おかげで別れる寸前までいったよ」
「惜しかったな」

 包み紙をはがし、アイスを口にいれて北野が笑う。ふざけやがって。本当に別れてたらどうしてくれるんだ。

「でも仲直りは出来たんだろ?」

 アイスを俺の口元へもってくる。北野を睨みながらそれを舐めた。ミルクが濃厚なバニラ味。

「どうして俺とあんたのことあいつに話さなかった」
「……最初あの子を見た時、お前にはつり合わないと思ったよ。あの子のどこがいいのか理解できなかった。でも、この前の話はどういうことなのか教えて欲しいと、俺の所に一人でやって来たあの子を見て印象がかわった。何かを決意した顔で俺を睨んでくるんだ。ネタばらししたらほっとして体から力が抜けて、その時に見せたあの子の表情、たまらないね。あの子は不思議な子だ、苛めて泣かせてやりたいって欲求と、何からも守ってやりたいという欲求、両方を抱かせる。君が苛々しながらあの子に手を出せなかったわけがわかったよ」

 こいつも一ノ瀬のあの顔にやられたのか。やっぱり俺とこいつは似てるのかもしれない。

「あれは俺のだ、手を出すなよ」
「はは、それはご心配なく、俺が気に入ってるのはお前だから。だから俺とお前のことをあの子に話さなかった。俺の大事な切り札だ。そう簡単に使わないよ」

 舌を出し、アイスを下から上へ舐めあげる。卑猥な誘い方。前の俺ならホイホイ乗っていただろう。

「悪いけど俺はもうあんたの遊びには付き合わない。ここにも来ない」
「そんなこと言うなら、今までのことあの子にバラそうかな」
「バラしたきゃバラせばいいよ。土下座でも何でもして許してもらうから」
「つまんない男」
「つまんない男に用はないだろ、じゃあな」

 ソファから腰をあげ出口へ向かう。

「お前がその程度で満足できるのかな」

 扉が閉まる間際、背後から笑いを含んだ北野の声が聞こえた。

 勝手に言ってろ。一ノ瀬と仲直りをして、あのときの顔を見れたいま、俺は最高に幸せなんだ。こんな幸福な気持ちにさせてくれる一ノ瀬をもう二度と裏切ったりしない。神様にだって誓う。


(初出2008年)

同じシリーズばっかり続いて飽きてないですか?!大丈夫ですか?
私は若干飽き気味ですよ!!!
なので明日はまったく関係無い短編を更新しようかな!と思ってます!
さらーっと読めて、あまり記憶にも残らないような話となっております!

関連記事
スポンサーサイト
[PR]

コメント
まっっったく飽きてません。(キッパリ)

木村の浮気にイライラっとしてましたが、二人が仲直りできて良かったです!

まっっったく飽きてませんが、
「まったく関係ない短編」にも反応してしまいました。

更新楽しみにしています(*´▽`*)♪
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
お返事
そめおさん

ほんとに飽きてないですか?!だとしたら一安心です!私はせっかちな性格もあって同じことを続けていると飽きるという性分で…。
明日はまた元に戻って更新していきますので、楽しんでもらえると嬉しいです!!
ここだけの話ですが…大人になった木村はまたちょっと浮気(?)します。すいません汗


aki-musaさん

こちらこそいつもありがとうございますですよー!
「飽きてませんか?!」が私の偽りない今の心境だったんですが、構ってちゃんみたいになっちゃってたなーと反省です。来てくれる方をおもてなししたいという気持ちからだったんです…!
今日の短編挟んで明日からまた元に戻りますので、読んでもらえると嬉しいです!^^


管理者にだけ表示を許可する