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Answer (10/11)

2020.09.15.Tue.


 20分後、北野のマンションについた。エレベーターに乗り込み11階へ。扉が開くのも待ちきれず隙間をすりぬけエレベーターからおりた。走って一番端、北野の部屋のインターフォンを押しながらドアノブをまわした。予想に反して手ごたえなくドアが開いた。

「一ノ瀬!」

 怒鳴って中に入る。カット台に座る一ノ瀬が俺を見て目を見開いた。

「木村、どうしてここに」
「な……、何してんだ、お前」
「見ての通り、散髪さ」

 一ノ瀬の後ろに立つ北野がハサミを手にニヤニヤ笑う。

「はあ?」
「今終わったところだよ。ちょうどいいタイミングだったね。どうだい、さっぱりしただろ」

 一ノ瀬の肩に手を置いて顔をのぞきこむ。一ノ瀬ははにかんで頷いた。

「ええ、ありがとうございました」
「どういうことか説明しろ」

 北野の手をねじりあげた。簡単にねじり返された。

「シャワーは嘘。本当はただトイレに行っていただけ。その間に電話がなったから俺がかわりに出た。どうして彼がここにいるかは、本人に聞くといい」

 道具を片付け北野は部屋から出て行った。扉が閉まる瞬間、

「買い物に行ってくる。留守番頼んだよ」

 という北野の声が聞こえた。

 なんだよ、いったいどういうことだよ。

「一ノ瀬、なんで北野の部屋にいんの」

 わけがわからず一ノ瀬に聞いた。髪が短くさっぱりしている。なにこんな時にこんなところで散髪なんかしてるんだ。俺がどれだけ心配したと思ってるんだ。心臓止まるかと思ったんだぞ。しかもなんだよそれ、ちょっと切りすぎじゃないか。額が出て幼く見えるぞ。

 短くなった前髪を触りながら一ノ瀬が俯く。自分でも短いと思ってるんだな。

「あれから色々考えたんだ、。お前があんなに怒るんだから、本当のことを言っているんじゃないかと思って」
「あ、頭、大丈夫だった?」

 咄嗟に手を伸ばして頭に触れた。俺が怒り狂ってトイレの扉に打ちつけた。一ノ瀬はこくりと頷く。

「あれで正気に戻れたよ。俺は瀬川さんにずっと嫉妬してた。お前があの店で働き出してからずっと気になっていた。見たくなんかないのに店に見に行ったりして、そんな日に北野さんからあんなことを言われて冷静でいられなくなった。お前を信じられなくて悪かった」
「いや、全面的に俺が悪いよ。色々ごめん。ほんとにごめん」

 やっとつかまえた。抱きしめてカットしたばかりの頭にキスした。

「どっちの言うことが正しいのか確かめるために、もらった名刺を見てここに来た。あの人は全部見抜いていたよ。俺とお前のこと。俺が瀬川さんに嫉妬していることも、それを木村が知っていることも、全部。だからあんなことを言って俺に揺さぶりをかけたんだって教えてくれた」

 北野の野郎、余計な真似すんなっていうんだ。おかげでどれだけ俺たちが傷ついて苦しんだか。もう俺たちは駄目なのかと思った。もう二度と一ノ瀬にこうやって触れることが出来ないかもしれないと覚悟しかけた。

 あ、やばい。まじで、泣けてきそう。

「北野さんの言ったことを鵜呑みにしてお前を信じられなくてごめん、今までお前を避けてごめん」
「もう謝んないで。 俺が悪いから。だから謝んないでくれ」

 そんなふうにしおらしくされると俺ほんとに泣いちゃいそうだよ。

 一ノ瀬を強く抱きしめた。一ノ瀬の手が俺の背中にまわる。胸に顔を埋めて、ふっと笑った。

「走って来たのか? 心臓がすごく早い」
「当たり前だろ、心配だったんだ。お前の携帯に電話したら北野が出て、お前はシャワー浴びてるなんて言うから、あいつに犯されるんじゃないかと思って俺どれだけ焦ったか」
「なんでもすぐそっちに結びつけるのをやめろ。北野さんはいい人だ。そんなことするわけないだろ」

 一ノ瀬、それ本気で言ってるのか。俺は思わず一ノ瀬の顔をまじまじ見た。一ノ瀬はいたって真剣な表情。 あいつ、うまく一ノ瀬を騙したな。俺にとってもそっちのほうが色々助かるからまぁいいか。

「その髪型、似合ってる」

 ちょっと子供っぽくなった一ノ瀬にキスした。

「北野さんが、これぐらいがいいって」
「俺、今日免許取ったよ」
「おめでとう」
「車買ったら、ドライブ行こうな」
「楽しみにしてる」
「うん、俺も楽しみだ」

 またキスした。自信を持って言える、今世界で一番幸せだ。

 幸せを噛み締めつつ、一ノ瀬のTシャツの中に手を入れた。一ノ瀬がはっと息を飲む。

「ちょ、木村、北野さんが帰ってくる」
「ばぁか、気をきかせて出てってくれたんだよ、しばらく帰ってこない」
「そんなことわからないだろ」
「帰ってきたっていい。見せつけてやる」

 一ノ瀬の手を引いてソファに座らせた。その向かい、床の上に膝で立って一ノ瀬と向きあった。一ノ瀬の手のひらにキスする。

「こないだ乱暴してごめん。ちゃんと謝りたかった」
「木村の話を聞いていればあんなことにならなかった。気にするな」
「俺ね、初恋は鉄雄さん。男は一ノ瀬入れて3人、付き合った女は……ごめん、忘れた。両親と中3の妹が一人いる。いま俺が好きなのは一ノ瀬、一人だけ、この先もずっと」

 また手のひらにキスした。俺のことを知らないならこれからゆっくり教えてやる。

 一ノ瀬が赤い顔で俺の頭をなでた。一ノ瀬が俺にこんなことをするなんて初めてで嬉しくなる。

 ソファに手をつき、今度は口にキスした。一ノ瀬も拙くそれに応えてくれる。ゆっくり押し倒した。服の中に手を入れた途端体に力が入ったが抵抗はなし。

「一ノ瀬のこと教えてよ」

 両手で脇腹を触りながら、平らな胸に余すところなくキスした。一ノ瀬の体がびくっと震える。

「お、俺は、兄が二人いる……、二人共成人して今は働いてる。両親は俺が小さい時に事故で死んだ。祖父にひき取られて…っ、今もそこで暮らして……るっ」

 時々一ノ瀬の声が裏返った。だんだん一ノ瀬の体が熱くなってくる。じっとり汗がにじむ体に俺は飽きることなく何度もキスして吸い付いた。 赤い印がそこかしこに出来る。

「暑いでしょ、脱いだら」
「でも」
「ほら、手あげて」

 Tシャツをひっぱりあげて脱がした。恥ずかしそうに一ノ瀬が俯く。俺も上を脱いだ。冷房が効いてるのに、体が熱い。

 俺を見上げる一ノ瀬の顔に不安の色。

「大丈夫、もう絶対ひどいことしないよ。一ノ瀬が嫌がることはしない。嫌になったら言って、そこですぐやめるから」

 上に覆いかぶさり、唇にキスした。



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