Answer (6/11)
2020.09.11.Fri.
<1→2→3→4→5>
夕方、北野の車で鉄雄さんの店まで送ってもらった。久し振りに鉄雄さんに会いたくなったという北野と一緒に店に入ったら鉄雄さんは驚いた顔をした。
「北野さん、久し振りですね」
「やぁ、鉄雄君、ジンバックをもらえるかな」
「わかりました」
していた作業を中断して、鉄雄さんはカウンターに入り、北野が注文したものを作り出した。俺は二階にあがって服を着替えた。下におりた時にはジンバックが出来ていた。
「ジンは最近来てる?」
「陣内さんですか、最近はあまり」
「俺のところにもなんだ。 どっかの組の奴に撃たれた傷がまだ治ってないはずなのに、どこかでくたばってんのかな」
言って酒に口をつける。陣内。聞いた名前だ。確か鉄雄さんと菱沼さんの高校の先輩。組の奴に撃たれた傷? 真っ当な勤め人ではなさそうだ。
「俺より菱沼のほうが知ってると思いますよ。 呼びますか?」
「いいよ。きっとまた女としけこんでるんだろう」
「今日はどうしてロンと一緒に来たんですか」
鉄雄さんの問いに、北野が俺をチラと見た。その顔に笑み。秘密を共有しあうものに向ける馴れ合いが含まれていた。
「ヒシの紹介で仲良くなってね」
鉄雄さんが複雑な表情を浮かべた。菱沼さんが知っているのだから、鉄雄さんも北野がゲイだと知っているのだろう。鉄雄さんが何を察したのかは想像がつく。恥ずかしくはないが少し居心地が悪い。
「なかなか気に入ってるんだ。まだ17だけど、これから楽しみな男だ」
「俺はもう18だ」
袖をまくりあげながら言った。6月で俺は18歳になった。
「じゃあそろそろ免許を取りにいくのか」
「うん」
鉄雄さんに頷いた。
「夏休みに合宿行って取るつもりなんだ。だからその間休みをもらってもいいかな」
「もちろん構わねえよ。そのためにうちで働いてるんだし」
「ありがとう、鉄雄さん」
俺と鉄雄さんのやり取りをわけ知り顔でニヤニヤ笑って見ている北野が目障りだった。
店の扉がゆっくり開いた。まだ準備中なのに客が間違って入ってきたのか。そう思っていたが、予想外の顔が店を覗いた。
一ノ瀬だった。
~ ~ ~
俺の仕事振りを見に来たという一ノ瀬を鉄雄さんは歓迎して中に招き入れた。
北野が立ち上がって自己紹介する。
「どうも、俺は北野。鉄雄君の知り合いなんだ。ロンとも仲良くさせてもらってる。よろしく」
と手を差し出す。気後れした顔の一ノ瀬はその手をおずおずと握り返した。俺の一ノ瀬に触るな。
「俺は一ノ瀬と言います。木村の友人です」
友人、という言葉に軽くショックを受けながら俺は一ノ瀬の肩を持って北野から引き離した。一ノ瀬が店に来てくれるのは嬉しいが今日はタイミングが悪い。よりによって一番会わせたくない北野がいる日。
一ノ瀬は俺が浮気しようが構わないと言っていたが、俺だって本気でそんなことするつもりはない。いや、なかった。あれは不可抗力の行為だった。欲求不満でたまりまくっていた俺に、誰でも相手が出来るという北野から迫られたらつい流されて抗えないじゃないか。
そんな言い訳を頭の中でしたところで、俺が北野の部屋に通っている事実はごまかせない。
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夕方、北野の車で鉄雄さんの店まで送ってもらった。久し振りに鉄雄さんに会いたくなったという北野と一緒に店に入ったら鉄雄さんは驚いた顔をした。
「北野さん、久し振りですね」
「やぁ、鉄雄君、ジンバックをもらえるかな」
「わかりました」
していた作業を中断して、鉄雄さんはカウンターに入り、北野が注文したものを作り出した。俺は二階にあがって服を着替えた。下におりた時にはジンバックが出来ていた。
「ジンは最近来てる?」
「陣内さんですか、最近はあまり」
「俺のところにもなんだ。 どっかの組の奴に撃たれた傷がまだ治ってないはずなのに、どこかでくたばってんのかな」
言って酒に口をつける。陣内。聞いた名前だ。確か鉄雄さんと菱沼さんの高校の先輩。組の奴に撃たれた傷? 真っ当な勤め人ではなさそうだ。
「俺より菱沼のほうが知ってると思いますよ。 呼びますか?」
「いいよ。きっとまた女としけこんでるんだろう」
「今日はどうしてロンと一緒に来たんですか」
鉄雄さんの問いに、北野が俺をチラと見た。その顔に笑み。秘密を共有しあうものに向ける馴れ合いが含まれていた。
「ヒシの紹介で仲良くなってね」
鉄雄さんが複雑な表情を浮かべた。菱沼さんが知っているのだから、鉄雄さんも北野がゲイだと知っているのだろう。鉄雄さんが何を察したのかは想像がつく。恥ずかしくはないが少し居心地が悪い。
「なかなか気に入ってるんだ。まだ17だけど、これから楽しみな男だ」
「俺はもう18だ」
袖をまくりあげながら言った。6月で俺は18歳になった。
「じゃあそろそろ免許を取りにいくのか」
「うん」
鉄雄さんに頷いた。
「夏休みに合宿行って取るつもりなんだ。だからその間休みをもらってもいいかな」
「もちろん構わねえよ。そのためにうちで働いてるんだし」
「ありがとう、鉄雄さん」
俺と鉄雄さんのやり取りをわけ知り顔でニヤニヤ笑って見ている北野が目障りだった。
店の扉がゆっくり開いた。まだ準備中なのに客が間違って入ってきたのか。そう思っていたが、予想外の顔が店を覗いた。
一ノ瀬だった。
~ ~ ~
俺の仕事振りを見に来たという一ノ瀬を鉄雄さんは歓迎して中に招き入れた。
北野が立ち上がって自己紹介する。
「どうも、俺は北野。鉄雄君の知り合いなんだ。ロンとも仲良くさせてもらってる。よろしく」
と手を差し出す。気後れした顔の一ノ瀬はその手をおずおずと握り返した。俺の一ノ瀬に触るな。
「俺は一ノ瀬と言います。木村の友人です」
友人、という言葉に軽くショックを受けながら俺は一ノ瀬の肩を持って北野から引き離した。一ノ瀬が店に来てくれるのは嬉しいが今日はタイミングが悪い。よりによって一番会わせたくない北野がいる日。
一ノ瀬は俺が浮気しようが構わないと言っていたが、俺だって本気でそんなことするつもりはない。いや、なかった。あれは不可抗力の行為だった。欲求不満でたまりまくっていた俺に、誰でも相手が出来るという北野から迫られたらつい流されて抗えないじゃないか。
そんな言い訳を頭の中でしたところで、俺が北野の部屋に通っている事実はごまかせない。
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