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Answer (5/11)

2020.09.10.Thu.


  苦々しい後味の悪さしか残らないとわかっているのにその後俺は休みの度に北野の店に通った。今回で三度目。

 一ノ瀬に出来ないことを北野相手にした。何度もキスした。 裸にした体に舌を這わせ、お互いのものを口に含んだ。唾液と精液とでベタベタになった体をシャワーで洗い流しながら、そこでもまた興奮して手で扱きあった。

 後ろは絶対させてくれない。根っからのタチという言葉は嘘じゃないようで、北野も俺の後ろを狙っている。狙われる者同士というわけだ。

 日曜の今日も北野の店に出向き、昼間からセックスまがいの行為にふけった。疲れて裸のままもつれるように、二人でソファに寝転がる。

「俺とこんなことして好きな相手に悪いと思わないの?」

 そんな良心を持たない北野が俺をからかうように言う。いま一ノ瀬の話をするな。腹が立ってその口を自分の口で塞いだ。

「君のキスはどうしてそう噛みつくようなキスなんだ?」
「うるせえよ、あんただってただやりたいだけなんだろ、優しくして欲しいのか? 気色の悪いことぬかすな」
「随分だな。俺はお前を結構気に入ってるんだよ。どうしてそんなに腹が立つか教えてあげようか?」

 青い目が俺の目を覗きこむ。腹の立つ理由なんてわかってる。一ノ瀬に何も出来ないからだ。一ノ瀬に黙ってこんなことしてるからだ。罪悪感といっしょに、北野との関係にスリルを感じているからだ。

 目を伏せた俺の顎を持って北野が上を向かせた。青い目が笑っている。

「俺とお前は似てるんだ、同属嫌悪というやつさ。俺はお前の想像通り誰とでも出来るし、好みの奴がいたらすぐに手を出せる。お前だって本当はそうなんだろう? そんな自分自身を目の前に突きつけられて、大事にしてる男を犯せと言われたらそりゃ腹も立つだろうさ。本当はそうしたいのに出来ない自分に腹が立ってる、それを指摘する俺が鬱陶しくて仕方がない、そうだろう?」

 俺が北野に似ている? そんな自覚はない。だが、最初にこいつと会った時から感じていた苛立ちと反発は、今の言葉で納得できるような気がした。こいつは俺の本能そのものなんだ。

「カウンセリングは結構だ。いつ職業をかえたんだよ」

 体を起こしてソファからおりた。キッチンに行き、冷蔵庫からビールを取り出しそれを飲む。冷たい液体が胃の中に流れ込んだ。

「相手はどんな男なんだ?」

 ソファに座り、首だけをこちらに向けた北野が言った。

「真面目な奴だよ、いまだにキスしかさせてくれない」
「キスはしたのか」
「キスだけね」

 ビールのビンを北野に渡した。北野はそれを受け取り咽喉をならして飲む。白い咽喉元がさらけ出された。上に覆いかぶさってそこにキスした。平らな胸に吸い付いて、手は股間のものを握った。反応して大きくなっていく。

「そんなに大事にした結果が、これか」

 意地の悪い笑みを浮かべて、北野の手が俺のものを握った。

「黙ってろよ」
「なんて名前?」
「あ?」
「その相手の男」
「なんで」
「何某くんのままだと話を続けづらいだろ」
「一ノ瀬だよ」
「一ノ瀬、か。ロンがそこまで大切にする男なら俺も一度会ってみたいな。興味がある」

 瞬間的に頭に血がのぼった。北野の胸から顔をあげる。

「あいつに構うな」
「どうして?」
「会ってどうする気だ」
「どうもしないよ、ただの好奇心」

 北野はソファの上で体を反転させ、今度は俺が下になった。細いが筋肉のついた体。起きあがろうとしたがびくともしない。

「そろそろネコになってみたくなった?」

 ほざけ、俺がそんなことお前相手に思うか。

「そういうあんたはどうなんだ。俺を気に入ってるんだろ。本当はして欲しいんじゃないのか」
「自信過剰で鼻持ちならない君が好きだよ。犯したくなってくる」

 顔を見合わせニヤリと笑った。確かに俺たちは似たもの同士なのかもしれない。



ギリギリアウト!




読点でいいところまで句点にしてしまう癖があります。
なので句点を消したり読点に書き替えたりするという作業を毎回しています。
この前「大菩薩峠」って本を読んだら私なんか足元にも及ばないくらい句点の多い作者さんでめっちゃ親近感でした。
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