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Answer (2/11)

2020.09.07.Mon.
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  六月。バスケ部の島田に、欠員が出たから次の試合に出て欲しいと頼まれた。俺は断った。今度は一ノ瀬を連れてやってきた。一ノ瀬に頼まれると俺は弱い。島田め、狡猾な奴だ。

 仕方なく試合までの二週間、俺は臨時でバスケ部に入部した。おかげでバイトの時間が少し削られてしまった。

 しかしいい事もあった。体を動かすと多少欲求不満が解消された。健康的に汗を流すのも気持ちのいいことだ。忘れていた感覚が少しずつ甦る。

 試合当日。応援席に一ノ瀬。しばらくあとでサンジャイが隣に並んだ。俺の神経を逆撫でする奴。存在そのものが許せない。

 決勝戦では懐かしい相手と対戦した。同じ中学だった真田新二。こいつの動きの癖は昔とかわらない。ワンマンで突っ走ろうとする。あまりパスを出さないから1on1を止められれば勝てる相手。

 一ノ瀬が見ている。この試合に勝って俺に惚れなおさせてやる。その執念だけでなんとか土壇場で逆転勝利をおさめた。

 試合が終わり、俺は一ノ瀬からのご褒美を待った。一ノ瀬が行けと言ったから俺は試合に出たんだ。ただ働きはご免だ。俺は二人きりになれる機会を待った。

 試合から一週間が経った放課後、一ノ瀬が生徒会に寄ると言い出した。ついにチャンス到来だ。

 一ノ瀬は棚からファイルを探り、そのいくつかを持って職員室へ行った。俺は生徒会室で待つことにした。欠伸が出て、机に突っ伏す。

 今日は何をしてもらおうか。 キスだけなんてそんなオチ、もういらない。もう満足できない。一ノ瀬がなんて言おうがどう抵抗しようが、今日は絶対先へ進む。

 カタンと物音がした。一ノ瀬が帰ってきたのかと顔をあげたが、バスケ部の一年、岡崎が立っていた。なんだ、てめえかよ。

「一ヶ月に一時間でもいいんで、俺にバスケ教えてくれませんか」

 なんて面倒な事を言う。俺はそれを断り、こいつを追い出しにかかった。今日はせっかく一ノ瀬と二人きりになれるチャンスなんだ、誰にも邪魔をされたくない。

「ゆっくりして構わないぞ」

 いつの間にか、両手に資料を抱えた一ノ瀬が戸口に立っていた。

「木村、先生が職員室に来て欲しいそうだ」

 書類を机に置いて一ノ瀬が言う。舌打ちした。どいつもこいつも俺の邪魔ばかりしやがる。岡崎に早く帰るよう釘を刺し、職員室へ急いだ。

 用件は次の生徒総会の打ち合わせ。のらりくらり話すのをせかして早々に切り上げ、職員室をあとにした。

 俺、何をこんなに必死になっているんだ? 今までこんなふうにがっついたことがあったか? 一ノ瀬が待っているからと足早に歩いたりなんかして、俺は中/学生か。

 生徒会室が見えてきた。開いた扉から話声が聞こえる。岡崎の奴、まだいやがるのか。

「わかってます。だから木村さんを振って下さい。もう何の関わりも持たないで下さい」

 聞こえてきた岡崎の声に青筋が立った。あいつ、一ノ瀬に何を言ってるんだ。俺を振れだと? 振るだの振られるだの、俺たちはまだそんなはっきりした関係でもないというのに、どうして他人のお前にそんな口出しをされなきゃならないんだ。

 戸口に立った俺と一ノ瀬の目が合った。

「あいつと関わりを断つのは無理だ。そんなことをしようとしたら後ろにいる男になにをされるかわかったもんじゃない」

 岡崎が体を震わせて振りかえった。俺を見つけ顔を引きつらせる。

「俺から一ノ瀬取り上げようってのか? 殺されたいのか、てめえは。あんまりふざけた真似しやがると、いくら温厚な俺だってキレるぜ」

 誰が温厚だ、一ノ瀬の声が聞こえた。

「俺、死ぬほど一ノ瀬のこと愛しちゃってんだよね、だから邪魔する奴がいたら何するかわかんないよ?」

 岡崎の胸倉を掴んで引き寄せ、間近に睨み付けた。岡崎は口をぱくぱくさせ 顔を青くした。無駄にでかい図体して、肝の小さいやつだ。

「そのへんにしてやれ。下級生をからかって趣味が悪いぞ」

 一ノ瀬に言われ手を放した。岡崎は茫然としたまま。思わず吹き出した。少しやりすぎたか。

「君がこいつに見たものは幻想だ。 君の手にあまる馬鹿だ、さっさと忘れることだ」

 ファイルを棚に仕舞い終わった一ノ瀬がこちらを向いて言う。こいつ、ドサクサにまぎれて俺のことを馬鹿と言ったな。一度はお前よりいい成績を取ったんだぞ。

 岡崎が何か言いかけるのを遮り、

「まだわからないか。こいつの相手は俺にしか出来ないと言ってるんだ」

 と一ノ瀬が言い放つ。その言葉に俺はガラにもなく照れてしまった。 それってある意味すごい殺し文句だ。

「そういう事なんだよ。こいつを怒らせるな、また殴られたくはないだろ?」

 一ノ瀬の肩に腕をまわして岡崎に笑いかける。いや勝手に顔が緩んだ。 岡崎は以前一ノ瀬に殴られたことを思い出したのか、腹を押さえ、慌てて部屋から出て行った。

 これでやっと二人きり。どれだけこの瞬間を待ち焦がれたか。隣の一ノ瀬は依然として涼しいお顔。

「いつになったら俺のものになってくれんの?」

 顔を近づけた。チラと目だけを動かして一ノ瀬が俺を見る。

「恋愛は手に入れるまでが一番楽しいらしい」

 おいおい、俺はその楽しみを充分すぎるほど味わった。これ以上まだ焦らす気か。

「いつまでも追いかけ続けてると息があがっちまう。たまには立ち止まって俺の手を取ってくれてもいいんじゃないか」
「お前を甘やかして俺になんのメリットがある」
「今以上に一ノ瀬のことを好きになる」
「……仕方ないな」

 首を傾けたと思ったら一ノ瀬にキスされた。一瞬の出来事。頭が真っ白になった。初めて一ノ瀬からキスされた。

 耳まで真っ赤になった顔で一ノ瀬は俺を睨んでいる。だからそんなムードのない顔しなさんなって。

 今度は俺から抱きしめてキスした。一ノ瀬が後ろによろけて机にぶつかる。構わず舌を絡めた。一ノ瀬に押し返された。

 息をする一ノ瀬の口から赤い舌が覗く。肩を持って机に押しつけた。

「お、おい、木村っ」

 逃げ場を失った一ノ瀬が慌てて言う。

「大丈夫、怖くない」

 また一ノ瀬にキスした。もう理性なんて保っていられない。

 キスしながら一ノ瀬のズボンのベルトを外す。チャックを下ろし、布越しにそれを手のひらに包みこむ。まったく何の反応もしていない。

「っ、木村」

 両手で押し返されたが、弱い力。本気で嫌がっていないと解釈して下着の中に手を入れた。ようやく初めて一ノ瀬のものに触れた。頭がクラクラする。

「や、やめろ、ここまでだっ」

 一ノ瀬が身を捩った。 ここまでと言われてやめられるか。一ノ瀬の赤い耳たぶを甘噛みした。首に舌を這わせ、軽く吸い付く。一ノ瀬の息が乱れる。俺も乱れそう。

「木村、頼むから、やめろ」
「嫌だね」

 キスしようと正面を向かせた。伏せられた一ノ瀬の目を見て一瞬で理性が戻ってきた。こんな時にそんな泣きそう顔を見せるなんて反則だ。俺は何も手出しできなくなる。一ノ瀬のものを触っていた手も止まった。

「こんな所でこんなことするな、馬鹿」

 と一ノ瀬は両手で顔を覆った。ほんとに泣き出したかとひやっとしたが、泣いてはいなかった。恥ずかしくて顔を見られたくないらしい。可愛い仕草、どこで覚えてきやがった。

「ああ、もうっ、わかったよ」

 やけくそで怒鳴り、一ノ瀬からはなれた。頭をかきむしってその場にしゃがみこむ。俺の息子はすっかりその気になって待っていたというのに。

 制服の乱れを正しながら一ノ瀬が小さく「すまない」と呟いた。普段高慢な一ノ瀬が肩を落としてしょげている。悪いという自覚があるだけでも大進歩か。

 溜息が出た。立ち上がり、一ノ瀬の額にキスする。

「いいよ、俺は心の広い男だからね」

 無理して笑う俺の頬がひきつった。



緊縛パッション

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