FC2ブログ

Answer (1/11)

2020.09.06.Sun.
<「ピーキー」→「毒入り林檎」→「未成年のネクタイ」→「言えない言葉」→「Question」>

※木村が浮気、ややエロ

  短い春休みも終わり、俺たちは三年生になったわけだが、あいかわらず俺と一ノ瀬はキス止まりだった。

 キスできるだけでも嬉しいんだけど、そろそろ先へ進みたい。俺だって若いオスだ。ずいぶん長く我慢している。

 一ノ瀬と知り合ったのは去年の4月。初めてキスしたのは確か6月頃。10ヵ月も一ノ瀬一筋にキスだけで耐えてきた。俺は自分を褒めてやりたい。

 がしかし、そろそろ我慢も限界。一ノ瀬の身も心も俺のものにしたい。それが普通の感情のはずだ。

 生徒会の仕事をやっつけ、他の委員を先に帰し、放課後の生徒会室に一ノ瀬を引きとめキスした。

 一ノ瀬は学校でいちゃつくのを嫌がる。でもキスには弱い。慣れてないんだな、きっと。すぐに息があがったようになって、俺にしがみついてくる。それが嬉しくてわざと長く深いやつをする。

 今も俺の腕を掴んで頼りない抵抗をしている。

 キスしながら服の中に手を差し入れた。手を滑らせ、脇腹、背中を触る。一ノ瀬の体がピクと反応した。

「調子に乗るな」

 一ノ瀬に押し返された。反応したことが恥ずかしいのか赤い顔で俺を睨んでいる。その強がった目を見ていると、初めて一ノ瀬とキスした時のことを思い出した。

 手を握るようなもの、体が触るだけの行為。そう言って一ノ瀬とキスした。その直後、一ノ瀬は動揺と恥ずかしさを隠すために必要以上に険しい表情を作った。その時俺は一ノ瀬を可愛いと思ってしまった。およそこの男を形容するにふさわしくない言葉だ。いま思えばあの時俺は完全に一ノ瀬にはまってしまったのだろう。

「まだキスしかさせてくんないの」

 部屋に二人きり。俺の欲求不満もそろそろピーク。

「充分だろ」

 服装を整えながら一ノ瀬が言う。充分なもんか、俺はぜんぜん物足りない。

「俺が浮気してもいいのか?」
「好きにしろ」

 なんてつれない返事で少しむかついた。

「ほんとのほんとに、俺、浮気しちゃうよ」
「くどい、好きにしろって言ってるだろ」

 涼しい顔で言う。俺は歯軋りした。この憎たらしい顔を泣き喚かせて喘がせてやりたい。俺の頭の中で一ノ瀬は、それはもうえげつない方法で何度も俺に犯されている。それを見せてやりたいものだ。

 俺の不満と苛立ちは限界にまで膨れ上がっていた。 ほんの小さな刺激でもそれが爆発してしまいそうで、破裂したら最後、俺は一ノ瀬をめちゃくちゃにしてしまうのではないかと自分で自分が怖いほどだ。

「じゃあ俺、ほんとに浮気するからね」

 一ノ瀬の胸に人差し指を突き立て宣言する。 冗談半分、本気半分。

「浮気しまくってやる。あいつともこいつとも、誰彼構わずやりまくってやる」

 帰ろうと歩き出した俺の腕を一ノ瀬が掴んだ。振りかえると、怒ったような、困ったような顔をした一ノ瀬が俺を見上げていた。

「なんだよ」
「あの人は駄目だ」

 言いにくそうに言う。

「あの人?」
「瀬川さんだけとだけは、するな」
「鉄雄さんと? どうして?」

 他の奴なら浮気してもいいと言うのか。

「あの人は他と違う。 お前にとって特別な人なんだろう」

 みるみる一ノ瀬の顔が赤くなっていく。妬いてる。あの一ノ瀬が嫉妬してる。さっきまでの腹立たしさが消え、俺はついにやついた顔になった。

 去年の冬休みに一ノ瀬が俺の家に泊まりに来た時、偶然鉄雄さんに再会して店に寄った。あの時も一ノ瀬は鉄雄さんに嫉妬して、飲めない酒を飲み俺に絡んできた。

 一ノ瀬の言う通り、鉄雄さんは俺にとって特別思い入れのある人だ。初めて好きになった人。初めて好きになった男。初めて体に触れた人。初めて俺の体に傷をつけた人。

 鉄雄さんは他の誰とも違うと、一ノ瀬も見抜いていたのか。俺にまったく興味がない素振りをするくせに、ちゃんと見てくれてるんだ。そう思うと嬉しくなった。

「俺がサンジャイに嫉妬してた気持ち、 少しはわかった?」

 一ノ瀬の肩を持って赤い顔をのぞきこむ。言いづらそうに口をモゴモゴと動かし、たっぷり間を取ってから一ノ瀬は見逃してしまうほど小さく頷いた。かわいい。思わず抱きしめた。

「鉄雄さんとはこの先何も起こらないよ、あの人まったくのノンケだからな」

 頭を持ってキスした。舌を差し入れると一ノ瀬もぎこちなく応えてくる。一年近く経ってもまだこの程度。まったく手がやける。

 一ノ瀬はノンケだし、根っからの真面目だし、男から性の対象として見られるだけでも本当なら怒り狂うような性格だ。キスさせてもらえるだけでも俺はラッキーなほう。焦らずじっくり、と思いつつ、服の中に手を入れた。

 最近少しずつ体に触っても怒らなくなってきた。そこで気付いた一ノ瀬の弱いところを指と手のひらで撫でる。

 一ノ瀬の呼吸が乱れた。耳の付け根のあたりを舐めてやる。一ノ瀬が身を捩る。ここも弱い。一ノ瀬の初心な反応は俺をとても興奮させる。

 ネクタイを緩め、ボタンを外そうとする手を掴まれた。

「やめろ、木村」

 上気した顔、潤んだ目。どう見てもそれは誘ってるでしょ。それでやめろ、なんて言われてもやめられないよ。

 はだけた胸元へ口を落とす俺の耳に、

「殴られたいか」

 一ノ瀬の低く押し殺した声が聞こえた咄嗟に身を引いた。以前一ノ瀬に手加減なしで腹を殴られた記憶が甦る。あれは本当にえぐかった。

「調子に乗るなと言っただろ」

 一ノ瀬は赤い顔でネクタイをしめなおした。せっかくほどいたネクタイ。

 今日もやっぱり進展のないまま一日が終わった。



関連記事
スポンサーサイト
[PR]

コメント

管理者にだけ表示を許可する