未成年のネクタイ(7/10)
2020.08.11.Tue.
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ロンが店に泊まる時は俺はベッドで、ロンは床で寝ていた。それも最初のうちだけで、ロンは体が痛いと文句を言い出し、俺の隣に来て寝るようになった。
エアコンがついているから暑くはなかったが、男二人身を寄せて狭いベッドで寝るのはかなり違和感があった。何度も下で寝ろと言ったが、「大丈夫、大丈夫」とロンはむりやり俺の横に寝転がる。仕方なくそのまま並んで寝ていたら次第に慣れてしまった。
今夜も俺はロンに背を向けて寝転がり、俺の背中に張り付くようににロンが横になった。
ロンは暑がりでエアコンの温度をさげる。俺には寒すぎて布団にくるまった。いつか風邪をひいてしまいそうだ。 ロンはそんな俺を後ろから抱きしめるように眠る。さすがにおかしいだろ、と離れるように言ったが、俺が眠るとまたくっついている。言っても無駄だと諦め、今では何も言わずにさっさと寝ることにしている。
俺はロンにはどうも甘いところがある。それを自覚しているが、憎めない奴でつい我儘を許してしまう。それがますますこいつをつけあがらせるとわかっているのに最終的に俺が折れる。こいつもそれがわかっているのかもしれない。甘え上手な奴だと思う。
「鉄雄さん、寒くない?」
真っ暗な部屋。ロンが俺の耳に囁いた。俺は無言で頷いた。今日はバスケの練習に付き合って疲れた。もう瞼が重い。ロンが後ろから抱きついてきたが、そのままにして目を閉じた。
しばらくして下半身に違和感。夢の中にあった意識が引き戻される。なんだ?
ロンが俺の股間をまさぐっている。トランクスの中に手を突っ込み、俺のものを握る。一気に目が覚めた。
「お前っ、何してるんだ」
「最近鉄雄さん、女とやってないだろ。だから俺がやってやろうと思って」
「いらねえよ、離せ馬鹿」
「遠慮しなくていいよ。いつも世話になってる礼だから」
耳たぶを甘噛みされた。ぞくっとした。眠りから無理矢理目を覚まさせられた気だるい体、それなのに俺のものは勝手に反応して大きくなる。
「鉄雄さんの、けっこう大きいね」
俺の反応を楽しんでいる口調にカッとなる。ロンが耳元で囁く声だけで背筋がぞくぞくする。止めようとロンの腕を掴むが力が入らない。ロンの指の動きは卑猥で声を漏らしてしまいそうになり口を押さえた。
「気持ちいい? いいよね、だってこんなに大きくしてんだから」
部屋が真っ暗で良かった。明かりがついていたら真っ赤になった顔をロンに見られてしまう。
ロンが俺の耳を噛む。ロンの吐息に体が震える。あ、やばいかも。
「出そう? 出していいよ」
俺は首を振った。それだけは嫌だ。
「頑張るんだね。俺も意地悪したくなっちゃうなぁ」
急にロンの手が離れて行った。 絶頂の寸前で放り出され思わずロンを睨んだ。暗闇にロンのニヤついた顔。
「てめぇ」
「ん?」
とぼけた顔をするロンが憎たらしかった。前に向きなおり、気持ちを落ち着かせようとした。俺の腰をなでるロンの手を振り払った。背後でロンの忍び笑い。
気を静めようとするのに俺のものは一向に落ち着く気配がない。ロンが言う通り、ここしばらく女を抱いていなかったせいだ。
「寝るの?」
ロンが聞いてくるのを無視した。
「眠れるの?」
「うるさい」
「続き、してあげようか?」
「いらねえよ」
「してあげるよ、鉄雄さん」
またロンの手が伸びてきて俺のものを握り締めた。それだけでビクンと反応する。死ぬほど恥ずかしい。
「男同士でこうするの、珍しくないんだって。俺のクラスでお互い触り合いしてる奴らがいるよ」
確かに俺も昔学校の奴らと見せあったりしたことはあるが、こんな状況で触られてイカされそうになったことは一度もないぞ。
「鉄雄さんは? 誰か他の男に触らせたことある?」
あるか、そんなもん。首を横に振って否定した。
「俺が初めて? なんだか嬉しいな」
ロンがふっと笑った。その息が首筋にかかり首をすくめた。
「もう、出そう?」
素直に頷いた。もう我慢の限界だった。
「じゃ、出して」
言い終わらないうちにロンの手に吐き出していた。ロンの手で受け止めきれないものが俺のトランクスを汚す。
俺は大きく深呼吸し、だるい虚脱感を味わっていた。出してしまえば男だろうが女だろうが関係ない。ただ、濡れたパンツが気持ち悪い。
「ああ、くそっ」
起き上がってベッドをおり、下着を脱いだ。ティッシュで拭いて新しい下着を身につける。ロンもティッシュで手を拭いていた。
「手、洗って来いよ」
「そうだね」
ロンは手を洗いに下におりた。今更になって事の重大さに気付く。こんなことして良かったんだろうか。ロンの手でイカされた。これも俺があいつを甘やかしていたせいなのか? 前にあいつは俺相手にセックス出来ると言った。あいつはホモなのか? 俺が好きであんなことをしてきたのか? でも前に女を相手にしていたし……
考えれば考えるほど混乱する。上に戻ってきたロンの顔を直視できなかった。
「二度とあんなことすんなよ」
ロンの足元を見ながら言った。
「どうして?」
「どうしても、だ。またやったら追い出す。二度とここには入れねえ、いいな」
「鉄雄さんが言うならしない」
我儘ですぐ図に乗るくせに引く時はすっと引く。本当に甘え上手でズルイ奴だ。
「何で俺にあんなことした」
ベッドに腰をおろすと、ロンも隣に座った。
「しちゃいけないの?」
「普通しねえだろ、男相手に」
「そうなんだ。俺ってちょっと常識欠けてるとこあるからなぁ。鉄雄さんだったらいつでもしてあげるのに」
となんでもないふうに言う。真田が以前言っていた言葉を思い出した。勉強のしすぎでおかしくなった、と。しゃべれなくなるほどにこいつは一度追い詰められたことがある。
「お前、頭良かったんだって?」
ロンは首を傾げた。
「どうだろ? でも勉強はずっとしてたよ。家でも学校でも塾でもずっとね」
「今は?」
「もうしない。きりがないんだもん。一つ問題を解いたらまた次が出てくる。また解いてまた出てきて、その繰り返し。飽きちゃうよね。それなのに親も先生もどんどん問題を出して来る。最初は付き合ってやったけど、そういうの鬱陶しくなってきて、頭に虫がわいてきちゃったよ」
ロンは声をあげて笑ったが俺は笑えなかった。虫がわいたってどういう意味だ?
「だから勉強やめたんだ。そしたら何もすることがなくなって困ったなぁ。急にまわりの大人が慌て出して、今の担任が俺をバスケ部に入れたんだけど……。こんな話つまらないよね」
と俺の顔を覗きこむ。俺は首を振った。
「いや、もっと聞かせてくれよ」
「話すようなことはもうないよ」
「バスケは好きか」
「別に」
「じゃ、どうして毎日練習してるんだ」
「今までずっと頭ばっか使ってたから、今は体を動かすのが気持ちいいんだ。 バスケは練習しなきゃ上達しないだろ。数学みたいに公式に当てはめて解いて終わりってもんじゃないから、まだ飽きがこない」
そんな理由でバスケを熱心に練習しているのか。こいつは何か一つに夢中になるととことん付き詰めるタイプなんだろう。才能はあるが、不器用な奴だ。
「お前って今まで何かを楽しいと思ったことあるか」
俺の問いかけに、ロンは目を瞬かせ少し考えた。咄嗟には何も思い付かないのだろうか。
「そうだなぁ……鉄雄さんと一緒にいると楽しいかな」
ロンが笑う。俺も笑い返したがうまく笑うことができなかった。なんだか俺のほうが寂しい気持ちになった。
「お前が心から楽しんで夢中になれるものが見つかるといいな」
本気でそう思う。でないとこいつの人生はあまりに可哀相だ。大人びた目のわけが少しわかった気がした。
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ロンが店に泊まる時は俺はベッドで、ロンは床で寝ていた。それも最初のうちだけで、ロンは体が痛いと文句を言い出し、俺の隣に来て寝るようになった。
エアコンがついているから暑くはなかったが、男二人身を寄せて狭いベッドで寝るのはかなり違和感があった。何度も下で寝ろと言ったが、「大丈夫、大丈夫」とロンはむりやり俺の横に寝転がる。仕方なくそのまま並んで寝ていたら次第に慣れてしまった。
今夜も俺はロンに背を向けて寝転がり、俺の背中に張り付くようににロンが横になった。
ロンは暑がりでエアコンの温度をさげる。俺には寒すぎて布団にくるまった。いつか風邪をひいてしまいそうだ。 ロンはそんな俺を後ろから抱きしめるように眠る。さすがにおかしいだろ、と離れるように言ったが、俺が眠るとまたくっついている。言っても無駄だと諦め、今では何も言わずにさっさと寝ることにしている。
俺はロンにはどうも甘いところがある。それを自覚しているが、憎めない奴でつい我儘を許してしまう。それがますますこいつをつけあがらせるとわかっているのに最終的に俺が折れる。こいつもそれがわかっているのかもしれない。甘え上手な奴だと思う。
「鉄雄さん、寒くない?」
真っ暗な部屋。ロンが俺の耳に囁いた。俺は無言で頷いた。今日はバスケの練習に付き合って疲れた。もう瞼が重い。ロンが後ろから抱きついてきたが、そのままにして目を閉じた。
しばらくして下半身に違和感。夢の中にあった意識が引き戻される。なんだ?
ロンが俺の股間をまさぐっている。トランクスの中に手を突っ込み、俺のものを握る。一気に目が覚めた。
「お前っ、何してるんだ」
「最近鉄雄さん、女とやってないだろ。だから俺がやってやろうと思って」
「いらねえよ、離せ馬鹿」
「遠慮しなくていいよ。いつも世話になってる礼だから」
耳たぶを甘噛みされた。ぞくっとした。眠りから無理矢理目を覚まさせられた気だるい体、それなのに俺のものは勝手に反応して大きくなる。
「鉄雄さんの、けっこう大きいね」
俺の反応を楽しんでいる口調にカッとなる。ロンが耳元で囁く声だけで背筋がぞくぞくする。止めようとロンの腕を掴むが力が入らない。ロンの指の動きは卑猥で声を漏らしてしまいそうになり口を押さえた。
「気持ちいい? いいよね、だってこんなに大きくしてんだから」
部屋が真っ暗で良かった。明かりがついていたら真っ赤になった顔をロンに見られてしまう。
ロンが俺の耳を噛む。ロンの吐息に体が震える。あ、やばいかも。
「出そう? 出していいよ」
俺は首を振った。それだけは嫌だ。
「頑張るんだね。俺も意地悪したくなっちゃうなぁ」
急にロンの手が離れて行った。 絶頂の寸前で放り出され思わずロンを睨んだ。暗闇にロンのニヤついた顔。
「てめぇ」
「ん?」
とぼけた顔をするロンが憎たらしかった。前に向きなおり、気持ちを落ち着かせようとした。俺の腰をなでるロンの手を振り払った。背後でロンの忍び笑い。
気を静めようとするのに俺のものは一向に落ち着く気配がない。ロンが言う通り、ここしばらく女を抱いていなかったせいだ。
「寝るの?」
ロンが聞いてくるのを無視した。
「眠れるの?」
「うるさい」
「続き、してあげようか?」
「いらねえよ」
「してあげるよ、鉄雄さん」
またロンの手が伸びてきて俺のものを握り締めた。それだけでビクンと反応する。死ぬほど恥ずかしい。
「男同士でこうするの、珍しくないんだって。俺のクラスでお互い触り合いしてる奴らがいるよ」
確かに俺も昔学校の奴らと見せあったりしたことはあるが、こんな状況で触られてイカされそうになったことは一度もないぞ。
「鉄雄さんは? 誰か他の男に触らせたことある?」
あるか、そんなもん。首を横に振って否定した。
「俺が初めて? なんだか嬉しいな」
ロンがふっと笑った。その息が首筋にかかり首をすくめた。
「もう、出そう?」
素直に頷いた。もう我慢の限界だった。
「じゃ、出して」
言い終わらないうちにロンの手に吐き出していた。ロンの手で受け止めきれないものが俺のトランクスを汚す。
俺は大きく深呼吸し、だるい虚脱感を味わっていた。出してしまえば男だろうが女だろうが関係ない。ただ、濡れたパンツが気持ち悪い。
「ああ、くそっ」
起き上がってベッドをおり、下着を脱いだ。ティッシュで拭いて新しい下着を身につける。ロンもティッシュで手を拭いていた。
「手、洗って来いよ」
「そうだね」
ロンは手を洗いに下におりた。今更になって事の重大さに気付く。こんなことして良かったんだろうか。ロンの手でイカされた。これも俺があいつを甘やかしていたせいなのか? 前にあいつは俺相手にセックス出来ると言った。あいつはホモなのか? 俺が好きであんなことをしてきたのか? でも前に女を相手にしていたし……
考えれば考えるほど混乱する。上に戻ってきたロンの顔を直視できなかった。
「二度とあんなことすんなよ」
ロンの足元を見ながら言った。
「どうして?」
「どうしても、だ。またやったら追い出す。二度とここには入れねえ、いいな」
「鉄雄さんが言うならしない」
我儘ですぐ図に乗るくせに引く時はすっと引く。本当に甘え上手でズルイ奴だ。
「何で俺にあんなことした」
ベッドに腰をおろすと、ロンも隣に座った。
「しちゃいけないの?」
「普通しねえだろ、男相手に」
「そうなんだ。俺ってちょっと常識欠けてるとこあるからなぁ。鉄雄さんだったらいつでもしてあげるのに」
となんでもないふうに言う。真田が以前言っていた言葉を思い出した。勉強のしすぎでおかしくなった、と。しゃべれなくなるほどにこいつは一度追い詰められたことがある。
「お前、頭良かったんだって?」
ロンは首を傾げた。
「どうだろ? でも勉強はずっとしてたよ。家でも学校でも塾でもずっとね」
「今は?」
「もうしない。きりがないんだもん。一つ問題を解いたらまた次が出てくる。また解いてまた出てきて、その繰り返し。飽きちゃうよね。それなのに親も先生もどんどん問題を出して来る。最初は付き合ってやったけど、そういうの鬱陶しくなってきて、頭に虫がわいてきちゃったよ」
ロンは声をあげて笑ったが俺は笑えなかった。虫がわいたってどういう意味だ?
「だから勉強やめたんだ。そしたら何もすることがなくなって困ったなぁ。急にまわりの大人が慌て出して、今の担任が俺をバスケ部に入れたんだけど……。こんな話つまらないよね」
と俺の顔を覗きこむ。俺は首を振った。
「いや、もっと聞かせてくれよ」
「話すようなことはもうないよ」
「バスケは好きか」
「別に」
「じゃ、どうして毎日練習してるんだ」
「今までずっと頭ばっか使ってたから、今は体を動かすのが気持ちいいんだ。 バスケは練習しなきゃ上達しないだろ。数学みたいに公式に当てはめて解いて終わりってもんじゃないから、まだ飽きがこない」
そんな理由でバスケを熱心に練習しているのか。こいつは何か一つに夢中になるととことん付き詰めるタイプなんだろう。才能はあるが、不器用な奴だ。
「お前って今まで何かを楽しいと思ったことあるか」
俺の問いかけに、ロンは目を瞬かせ少し考えた。咄嗟には何も思い付かないのだろうか。
「そうだなぁ……鉄雄さんと一緒にいると楽しいかな」
ロンが笑う。俺も笑い返したがうまく笑うことができなかった。なんだか俺のほうが寂しい気持ちになった。
「お前が心から楽しんで夢中になれるものが見つかるといいな」
本気でそう思う。でないとこいつの人生はあまりに可哀相だ。大人びた目のわけが少しわかった気がした。
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