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未成年のネクタイ(4/10)

2020.08.08.Sat.


 公園に戻ると大学生くらいの男が三人いた。

「あぁ、使われちまってるな」

 ロンに声をかけた。ロンはフェンス越しに男たちを睨み付けている。

「おい、俺たちは帰ろうぜ」

 肩に手を置いた。その手を振り払い、ロンが中に入っていく。

「おい、ロンっ」

 ズンズン進むロンを追いかける。男たちがロンに気付いた。そしてニヤリと笑った。どこか残忍な笑み。

「なんだ、昨日のガキじゃねえか」

 帽子をかぶった男が言った。昨日? こいつら、面識があるのか。

「昨日俺らにやられて、その仕返しか?」

 一番上背のある奴が言う。

「素直にコートを俺たちに譲ってれば痛い目みずに済んだんだ。仲間一人連れてきたって俺たちに敵うわけないだろ」

 眼鏡をした男が俺を見て言った。

 昨日、ロンがボロボロになっていたわけがわかった。昨日もこいつはここで練習していた。そこにこいつらが現れて、コートをどちらが使うかでもめて、ロンはこいつらにボコられた。中坊相手に、いい大人が寄ってたかって。

 奥歯を噛み締めた。こういう奴らが一番嫌いだ。

「俺らだって、お前みたいなガキいじめてやるほど暇じゃねんだよ?」

 帽子の男が言う。 俺はそいつに近づいて顔面を殴った。男の顔が大きく後ろへのけぞり、そのまま倒れた。他の二人が大口をあけて仲間が倒れたのを見ている。殴られた男は起き上がらない。

「オイてめぇ」

 眼鏡男が俺に向きなおる。

「あぁ? なんだよ 、中坊相手にいきがってんじゃねえよ」
「ガキがなめた真似してくれんじゃねえか」

 上背のある男が殴りかかってきた。そいつに構わず眼鏡男に突進した。こいつがリーダー格だ。こいつからぶっ倒す。俺の拳が男の頬にめり込んだ。眼鏡が吹っ飛ぶ。後ろから大男が覆いかぶさって俺を羽交い絞めにする。地面を蹴って眼鏡男を蹴り上げる。顎をかすめただけだった。

「クソガキ、いい気になってんじゃねえぞ、殺されたいのか」

 眼鏡が外れた男の細い吊り目が俺を見据える。

「そんな度胸もねえくせに」

 吊り目の男が俺の腹を殴った。 胃がせりあがる。やばい、さっき食ったものが出そうだ。横目にロンを探した。青い顔で呆然と立ちつくしている。馬鹿、早く逃げろ。

 今度は顔を殴られた。畜生、せっかくの男前をこんなクズに台無しにされてたまるか。

 俺をおさえる大男の足を思い切り踏んだ。腕の力が弱まった。男の顔に裏拳を入れ、そのまま腹に肘を見舞う。男が呻いて前に倒れる。

 こっちは中学の時から菱沼と喧嘩三昧でこういうのには慣れてるんだ。子供相手にしかいきがれない馬鹿三人くらい、俺一人で充分だ。

 眼鏡男の顔つきがかわった。怯えている。今更遅い。

 ジリ、と前に出ると男が下がった。

「俺を殺すんじゃねえのかよ」

 男は唇を噛んで俺を睨んでいる。 その目が後ろに逸れた。その時、背中に強い衝撃。前につんのめって倒れた。

「なめんな、クソガキ」

 帽子の男が鼻から血を流して立っていた。いつの間に目を覚ましたのか。こいつに後ろから蹴られた。そう理解した時、また腹を蹴られた。吊り目も一緒になって俺を蹴り上げる。鋭い痛みに顔を顰める。腕で顔をガードした。腕を蹴られる。 痺れるような痛み。攻撃はやまない。やばい、そう思った時、男の叫び声。

「何しやがるっ」

 動揺した声に目を開けた。ロンが手に棒を持って立っていた。目が吊りあがり、唇が震えている。その足元に帽子男が頭を押さえてのたうちまわっていた。棒で殴りつけたらしい。俺は膝に手をついて立ち上がった。左目に血が流れ込んできた。

「ロン、よせ」

 ロンは棒を振り上げた。俺の声はロンに聞こえていない。 眼鏡男が先に逃げ、大男もそのあとを追って逃げた。振り上げた棒でロンは地面を打った。帽子男が体を震わせ、ロンを見上げる。

「やめてくれ」

 震える声でロンに言う。

「ロン、もうやめろ」

 手から棒を取り上げ、遠くへ投げた。そのすきに帽子男が逃げる。

「馬鹿、 使い方も加減もわかんねえやつが無闇にそんなものふりまわすな」

 鋭い目つきでロンが俺を見る。 まだ興奮しているようだ。その肩に手を置いた。

「もう大丈夫だ」

 開いた口に血が流れ込む。それを手で拭った。それを見たロンが表情をかえ、心配そうに俺を見る。

「血が」
「たいしたことねえよ。それより、ありがとな、助けてくれて」

 頭を撫でた。あそこでロンの加勢がなかったらちょっとやばかった。

「戻ろうぜ、さすがにこのまま練習はできないからな」

 ロンは頷き、俺を支えるようにして歩いた。そこまで大袈裟に心配してくれなくてもいいのだが、ロンの気遣いが嬉しくてそのままにさせた。

 帰って手と顔を洗い、傷口を消毒した。たいした傷はない。額が少し切れたくらいで血はもう止まっている。ロンはずっと心配顔だ。

「これでもう大丈夫だ」

 笑ってみせたがロンの表情は暗い。俺の前に座り、顔を覗きこんでくる。俺の手を取ったと思ったら、その手に口付けなんてするから驚いた。

「何してんだ、馬鹿」
「俺のせい」

 と、また手に口を寄せる。恥ずかしくて手を払った。

「馬鹿、お前のせいじゃねえって。俺が先に手ぇ出したんだし」

 そうだ、あの三馬鹿に腹を立てて俺が先に殴った。ロンのせいじゃない。俺は昔から喧嘩っ早いんだ。

「昨日、あいつらにぼこられたんだろ」

 ロンは頷いた。

「今日、あいつらを見てお前はやり返そうとしたんだろ」

 また頷く。普通そうはならない。びびってあの場から立ち去ろうとするはずだ。

「お前は勇気があるな」

 頭に手を置き、ポンポン叩いた。ロンは照れて顔を赤くした。いつも大人びた表情をしているが、ようやく子供っぽい顔を見せた。



非BL。高橋くんカッコかわよ
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