FC2ブログ

未成年のネクタイ(1/10)

2020.08.05.Wed.
<「ピーキー」→「毒入り林檎」>

※健全。木村中学一年生、モブ女と絡みあり、暴力描写あり

  午前中の大雨が嘘のように晴れあがった午後、学校をさぼって親父の店へ向かう道を俺は一人で歩いていた。親父の店といっても今は営業していないバーで、俺と友人のたまり場になっている。

 その道すがら、バスケットゴールを一対設置しただけの公園でへたりこんでいる中学/生を見つけた。学生服がひどく汚れ、顔は腫れ、血が出ているのが見えた。まずこの時間ここにいるということは、こいつも学校をさぼったということだ。そして喧嘩でもして、こんなにボロボロになっているのだろう。

  その中坊はふらつく膝に手をついてヨロヨロ立ち上がり、落ちていた鞄を拾い上げ埃を払った。離れた場所に転がるバスケットボールを拾って脇にかかえ、出口に向かって歩く。五、六段の階段を下りるのも辛そうで、足を滑らせ尻餅をついた。手から離れたボールが転がって俺の足にぶつかり、止まった。俺はそれを拾い上げ、中坊の目の前に差し出した。

「大丈夫か」

 黒く長い前髪の下から、中坊は俺を睨み上げてきた。ガキのくせにやけに大人びた目をしている。俺を睨んだままボールを受け取り、立とうとしてまた腰をついた。足にきてるらしい。

「喧嘩か」

 俺の言葉に応えず、手の力だけで必死に起きあがろうとしている。見かねて腕を掴んで引っ張り上げた。

「来い。すぐそこだから手当てしてやる」

 ガキは首を振って抵抗したが、腕の力は弱く、簡単に引きずっていくことができた。

 店のシャッターを半分あけ、中に入る。左手にカウンター、右手にテーブルが二つだけの狭い店。真ん中を突っ切って奥の狭く急な階段を上る。二階は六畳の狭い部屋。ここが俺たちのたまり場だ。物やゴミで溢れかえっている。

 窓側のベッドにガキを座らせ、棚から治療道具を取り出した。喧嘩をする俺たちの必需品。一通り揃っている。

 水で濡らしたタオルで顔を拭いた。ガキは痛そうに顔を顰めたが抵抗はしなかった。顔に何発かもらっている。目の上が少し切れてここからの出血がこいつの顔を血だらけにしたのだとわかった。

 ガーゼに消毒液をしみこませ、傷を消毒する。その時はさすがにガキも小さく呻いた。小さな傷は絆創膏を貼り、広範囲のすり傷にはガーゼをテープで止めた。左頬の腫れには湿布。元の顔がわからないような有様になった。

「終わりだ」

 頭を叩いた。ガキは小さく会釈する。頭をさげたつもりらしい。

 身長は165センチ前後。中学二年か、三年くらいだろうか。でも顔には幼さが残っている。

「お前、何年だ」

 机の上の煙草を口にくわえ、火をつけた。ガキはそんな俺をじっと見ながら人差し指を立てた。

「一年か?」

 黙って頷く。一年のわりにでかいほうだ。

「いじめられてんのか」

 今度は首を横に振った。しゃべれないのか、こいつ。

「口ん中、怪我したか?」

 また首を振る。かわった奴だ。

「名前は?」

 ガキは制服のポケットを探り、生徒手帳を取り出して俺に広げて見せた。

「木村……論?」

 こくん、と頷く。

「ロンか、なぜしゃべらないんだ」

 目を伏せ、何も反応しない。

「まぁ、いいけどな」

 床に寝転がった。ロンはベッドからおりて俺の横に座った。口元の煙草をじっと見ている。

「吸いたいか?」

 頷いた。くわえていた煙草を差し出す。たどたどしい手付きで煙草を口にくわえ、吸い込む。妙な顔つきで煙を吐き出した。

「うまくないだろ」

 頷く。煙草の先の火をじっと見つめ、少し目を細める。俺にはロンが笑ったように見えた。

「それ吸ったら帰れ。これからダチが来るからよ」

 じっと俺の顔を見てくる。今度は何だ? ロンは目を伏せた。何かを伝えたいのはわかるが、それが何なのかわからない。ロンは灰皿を見つけるとそれを手繰り寄せ、煙草の火を消した。それを大事そうに手で握る。

「なんだ? 何がしたいんだ? 煙草がもっと欲しいのか?」

 首を横に振る。 違うのか。じゃあ一体なんだと言うんだ。そこで俺は閃いた。

「帰りたくないのか?」

 ロンは頷いた。表情の変化が乏しく、こいつの感情を読み取るのは一苦労だ。

「だったらもう少しだけだぞ。夜までだからな」

 この年の頃から夜遊び、朝帰りを繰り返していた奴の台詞とは思えないことを俺はこいつに言っていた。





といわけで、番外?続編?の中学/生編です!
ご近所に住む高校生視点で、一ノ瀬は出てきません!

タイトルは石原/慎/太郎の「野蛮人/のネクタイ」から拝借。AKIRAのネタも随所に。
内容もけっこう影響受けてます!面白いので未読の方はぜひ!お勧めです!^^
関連記事
スポンサーサイト
[PR]

コメント

管理者にだけ表示を許可する