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毒入り林檎(1/8)

2020.07.27.Mon.
<前作「ピーキー」>

※健全、BL風味


  サンジャイ・勇樹・カプール。父がインド人、母は日本人のハーフ。住永大学付属高校の三年生。

 俺はその人を全国大会の準決勝の試合で初めて見た。試合には負けてしまったが、その人のプレーに俺は目を奪われた。俺と同じポジションのセンター。彼の動きはこの大会でもずば抜けているものがあった。

 当時中学三年生だった俺は、候補のひとつだった住大付属の試合を見に来ただけだったのだが、サンジャイさんを見て絶対ここに入学してやろうと、その日から猛勉強を始めた。

 サンジャイさんは高校三年、入学できたとしてもバスケ部で一緒にプレイ出来ないことはわかっていたが、あの人と同じ高校が良かった。OBとして遊びに来てくれるかもしれない。

 あの人に認められたい、ただその一心で俺はなんとか試験に合格し、住大付属のバスケ部に入部した。

 それなのに、どうして急遽助っ人要員として入ってきた奴と一緒に五日後の関東大会に出なければいけないんだ。

 発端は一週間前、試合で中島先輩が足をくじいてしまった。中島さんのポジションはポイント・ガード。その代役についたのは二年の辻さん。正直、うちの戦力はがた落ちした。そこで主将の島田さんと監督が話し合い、島田さんが連れてきたのが、三年生で生徒会長の木村論。茶髪にピアス、いつも眠そうな目をしたニヤケ顔。俺は第一印象でこいつが嫌いになった。

 背は俺より少し下だから185、6といったところだろう。この人にはいろんな噂が付きまとう。本気を出せば実は頭がいいらしいとか、男も女もいけるくちでとっかえひっかえ相手をかえているだとか、今の相手は同じ三年で生徒会副会長の一ノ瀬という男だとか。どこまでが本当でどこまでたでたらめなのかわからない。

 俺のクラスにも木村論信者のような女子がいるが、俺は今目の前にいるこいつを見ても、ただ軽薄な印象しか受けず、いったいどこがいいのかと思う。確かに顔だけはいい。

「まぁ、そういうわけで中島が関東大会厳しそうなんで、うちの助っ人として木村に来てもらった。今日から一緒に練習する。みんな、よろしくな」

 島田さんの紹介に、木村論はわざとらしい作り笑いを浮かべた。人を馬鹿にした態度が気に入らない。

「先輩、部員じゃない人と一緒に試合なんて大丈夫なんすか」

 俺は思わず手をあげて発言していた。

「まぁ、体力的な心配はあるけど、こいつはピンチヒッターだから、フル出場はさせないよ」
「いえ、そういうんじゃなくて、こう言っちゃなんですけど、助っ人としてどうなのかと思って」

 足手まといにならないか、という俺の言いたいことに気付き、島田さんは苦笑いを浮かべた。

「こいつは中学でバスケやってたから、そのへんは大丈夫だよ」

 島田さんの言葉に納得できなかったが、それ以上は何も言わなかった。かわりに島田さんの横に立つ木村を睨んだ。俺の視線に気付いて、木村が俺と目を合わせる。

「よろしくなぁ、一年」

 俺に向かって手を振る。

「俺は岡崎啓吾です、一年なんて名前じゃありません」

 俺の言葉に他の部員が息を飲んだ。俺は昔からこういう性格なんだ。言いたいことは言わないと気がすまない。なおそうとおもってもなおらない。

 木村は口の端を吊り上げてニッと笑った。

「そいつは悪かったな、岡崎、センターか?」
「そうす」
「サンジャイと同じくらいあるんじゃねえの?」

 と、島田さんに言う。こいつもサンジャイさんを知っているのか。

「そうだな、190ある。そうだ、サンジャイ先輩が試合を見に来るって言ってたぞ」

 島田さんの言葉に俺の心臓が跳ねた。俺の憧れのセンター、サンジャイさんが来る。

「何しに来るんだ、あの野郎」

 木村はなぜか顔を歪める。

「はは、お前の話をしたら見に行くって言ってきたから、お前に会いたいんじゃないか」
「ちっ、気色の悪ぃやつ」

 この話しぶりだと、サンジャイさんとこいつは面識があって、それどころか少しは親しい間柄だったようだ。意外だ。こんなちゃらついた奴がサンジャイさんの知り合いだったなんて。

「おしゃべりは終わりだ、練習するぞ」

 監督の号令で練習が始まった。



非BL
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