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堕在(1/2)

2020.07.03.Fri.
※微ス/カトロ、ぜんぜん甘くない、過去と現在いったりきたり

 俺はベッドに縛り付けられていた。その周りを竹田が落ち着きなくウロウロ歩き回っている。

 体中が強張っていた。俺の目は、竹田が持っている包丁に釘付けだった。

「トイレ、行かせてもらえないかな」

 恐る恐る声をかけた。

「ああ?」

 血走った目が俺を睨み付ける。余計なことを言うんじゃなかった。

「漏らせよ。そこでやれ」

 と手のかわりに包丁で指さす。

「見ててやる。ほら、出せよ」

 しゃがんで俺の股間を凝視する。もともと大きな目が興奮でさらに大きくなっている。瞬きしないで俺の股間を見つめてる。イっちゃった奴の目だ。

 ~ ~ ~

「久しぶり。結婚するって聞いた。俺に連絡なしとか薄情じゃねえの?」

 三年ぶりに俺の前に姿を現した竹田はにこやかな顔つきで「おめでとう」という言葉とともに、後ろに隠していた包丁を俺に向かって突き出した。絶句する俺を包丁で脅して玄関に入り、鍵をかけ、靴を脱いで部屋にあがりこんだ。

「騒ぐなよ。騒いだら殺すから」

 持ってきたトートバックから竹田はロープを取り出した。それを俺の足もとへ放ってよこすと、

「足、縛れ」

 包丁の先を俺に固定したまま言った。俺はその言葉に従った。指先が震えてうまく結べない。竹田が確認したあとさらにきつく結ばれた。

 殺される。

 竹田に恨まれる心当たりは、無いととぼけるほうが難しいほどにあった。

 ※ ※ ※

 竹田は俺の勤める会社に出入りしていたSE。色白で細くて内向的な性格で、高圧的な態度をとる俺の上司にただ「すみません」と頭を下げることしかできない気弱なもやし男。竹田になら誰もが嫌みを言ってもいいような空気ができていた。

 そんな中で仕事をしていた竹田に少し優しい言葉をかけると泣きそうな顔で静かに感動していた。二言、三言会話するうちに、俺には世間話をするようになり、小さい笑顔も見せるようになった。

 どこへ行っても罵倒され、優しくされたことなんかないとこぼしていた。自分が愚図なせいだと落ち込んでいた。生まれつき人の加虐心をあおるタイプのようだった。

 酒に誘うと嬉しそうについてきた。酔わせて部屋に連れこんで犯した。

 竹田はパニくり、俺を非難してよいかもわからないようだった。怒りもせず、ただ「どうして?」と問い、俺が「好きだから」と適当に言った言葉を信じた。

「おまえは俺のこと好きじゃないの?」

 竹田は爪を噛みながら「好きです」と頷いた。その日から俺の性処理奴隷だった。

 ※ ※ ※

「なんで出さねえんだよ」

 眉間に皺を寄せた竹田に睨まれた。俺が突然別れ話を切り出したときも、竹田はこんな顔をしなかったし、こんな乱暴な言葉使いも初めて聞くもので、この変わりように驚かされると同時に、竹田の恨みの深さを知って戦慄した。

「出ないよ」

 俺の声は震えていた。

「なん……あぁ、悪い。ズボンはいたままだったな」

 包丁は握ったまま、竹田は俺のズボンを下着ごとずりおろした。晒された外気のなか、縮こまっている俺のものを見ると「ふん」と鼻で笑う。

「こいつ。懐かしいや」

 包丁の先でピタピタと性器を叩く。

「やめ、やめてくれ」
「切り落としてやろうか?」
「頼むから……」
「記念にもらっていこうかな」

 指で挟んで持ち上げると、その根元へ包丁をあてがった。俺は言葉にならない悲鳴をあげた。

「冗談に決まってんだろ。こんなもん、今更欲しくもねえよ」

 クスクス笑いながら、性器から手と包丁をはなした。ガチガチと歯を鳴らす俺の横へ腰をおろして、顔をのぞき込んでくる。

「俺が怖い?」

 怒らすまい。俺は曖昧に首を振った。竹田の唇が左右に吊り上がった。

「嘘つき。あんたいつだって嘘ついてばっかじゃねえか。俺のこと、好きでもなんでもなかったんだろ?」

 ぎくりとしつつ、さっきよりはっきり首を左右に振った。竹田の顔が俺を憐れむような苦笑にかわった。

「必死だよな。そりゃそうか。結婚決まったばっかだもんな。もうガキもいるんだって?」

 予想外の妊娠だった。女に嵌められたような気分だった。

 俺が望んだ結婚じゃない。それを目で訴えながら首を振ると、竹田は声をたてて笑った。腹をかかえ、身をよじり、ひとしきり笑ったあと、

「あんたって本当に最低だよ。人として終わってる。かわってなくて安心した」

 目じりの涙を拭いながら竹田は言った。

「そんなあんただから俺のことも相手にしてくれたんだろうけどな。俺を弄ぶのは楽しかったか? 少しは反抗したほうがよかったか? 言いなりで面白くないから捨てたのか?」

 息がかかるほど顔を近づけてきた。俺が答えられないでいると、ベロリと唇を舐められた。

「体臭、かわったな。それともこれは、恐怖の匂いってやつか?」

 口づけされた。強い力で頬を掴まれ、むりやり口を開かされた。竹田の熱い舌が入ってくる。竹田が夢中で俺の舌を吸う。

 ※ ※ ※

 最近仕事が立て込み寝不足だという言葉に嘘はないようで、竹田の顔色は悪く、目は落ち窪んで頬もやつれていた。

「遅いんだよ。いつまで俺を待たせるんだ」

 嫌みを言って竹田を困らせた。

 仕事のミス。人間関係の些細なトラブル。帰りに寄った食堂の店員の酷い態度。繋がらない電話。誘ってもまだ仕事だと断られ、それでもいいから来いと待たされる時間。

 俺のイライラは最高潮。

 世間話みたいに「寝てない。疲れてるんだ」と断りの理由を仄めかすが、俺はそれを無視して竹田にしゃぶらせ、尻を出させた。

 一方的に犯して出すとようやく気持ちが落ち着いた。

 竹田はスーツを着たまま。下もズボンと下着をずらしただけ。そんな恰好で犯されたのに、竹田は勃起させていた。

「自分で処理しろよ。見ててやるから」

 部屋に来る前に買って来いと頼んでおいた缶ビールを飲みながら、俺は顎をしゃくった。

 白い顔を赤くしながら竹田は戸惑っていた。その手を掴んで自らの股間へ導いてやった。

「酒のつまみ買ってくんの忘れただろ」
「それは、言われてなかったから」
「言われなきゃわかんないのかよ。気、きかせろよ。だからこれは罰ゲームな。おまえがオナッてる姿で我慢してやる」

 ほら、と促した。

 股間の前で指を弄びながら、竹田はチラチラと俺を窺い見た。俺はビールを飲みながら冷たくその目を見返した。気をかえるつもりがないと諦めた竹田は、おずおずと自分の勃起を握って扱き始めた。

 長い指が自分自身を慰める様を、俺はただ無言で眺めていた。

 目を閉じながら、竹田は時々俺の名前を口にした。触ってほしいのだろうか。足をのばしてつま先でつついた。竹田の吐息が乱れる。亀頭の先を足の裏で捏ねた。土踏まずが先走りで濡れた。

「変態」

 あざ笑うと竹田は目を開き、恨めしそうに俺を見た。

「おまえって絶対マゾだろ。本当は罵られたくてわざとトロイ仕事してるんだろう」
「違うよ」
「足コキで涎垂らしてるくせに」
「違うってば」
「マゾでホモの変態か。救えないな」

 竹田の口元に足をもっていった。

「舐めろ。舐めて綺麗にしろ、変態野郎」

 乱れた吐息が俺の足の指にかかる。竹田は舌を出し、汚れた俺の足を舐めた。

「筋金入りの変態だな」
「違う……君が好きだから。君は?」

 足の指に舌を絡ませながら、竹田は怯えた目を向けてきた。

「決まってるだろ。だからこんな変態行為に付き合ってやってるんじゃないか」
「好きってこと?」
「ほかになにがある」

 缶ビールをテーブルに置いて俺は立ち上がった。竹田の頭を鷲掴み、再び勃起したものを口の中に突っ込んだ。いきなり奥まで差し込まれ、竹田の咽喉は痙攣した。頭を押さえつけ腰を振った。

「手、止まってるぞ」

 竹田は素直に性器を扱いた。

 イク瞬間、口から引き抜いて竹田の顔にぶっかけてやった。

 ※ ※ ※

 口の端から唾液が垂れ落ちた。ようやく離れた竹田の唇は、噛みつくようなキスをしたせいで赤くなっていた。

「最初はあんたのサディスティックな趣味に付き合わされてるんだと我慢してたけど、あんたに何度も言われ続けたせいで、俺のほうこそマゾの変態なんじゃないかって錯覚しそうになったよ。俺の変態趣味にあんたを付き合わせてるんじゃないかと。なすがままの俺にあんたはどんどん調子づいて好き勝手やってくれたよな? 今から同じことしてやろうか?」

 そんなに嫌がってなかったじゃないか。のど元まで出かかったが、もちろん飲み込んだ。だが竹田は俺の目や表情から読み取ったようだった。

「満更でもなかったって? 本気で思ってんのかよ。ケツに酒瓶突っ込まれんのが? 自分の精液飲まされんのが? 女とあんたがヤッてるとこ見せつけられんのが? そのあと女に笑われながら俺一人でやらされんのが? あんたの俺の扱いは最低だった。まさか本気で自覚なしかよ?」

 包丁が俺の頬にピタリと当てられた。冷たい切っ先が目のすぐ横にある。

「悪かった」

 俺の声は女の泣き声みたいだった。

「今頃謝られてもね」
「じゃあ、どうすれば許してくれる?」

 竹田は一瞬考え込むように黙った。

「許すとか、そういうんじゃないんだ。あんたに好きだって言われて、少しの間恋人の真似事してたら、俺も普通の人間なんだって思えて嬉しかったよ。あんた以外、誰とも付き合ったことがないって前にはなしただろ? 人付き合いが苦手で友達も一人もいないって。ずっと一人で惨めな思いをしてきたって。いつでもどこでも馬鹿にされる人生ってあんたに想像できるか? 人目につかないようにずっと俯いてたらそれが癖になって、人とはなすとき目を合わせられなくなるんだ。目を見てはなすと呼吸が苦しくなって、体が震え始める。頭は真っ白になるし、言葉を噛むし、相手は俺をおかしな奴だって目で見てくる。余計にしゃべれなくなって空回りする。その日の夜は最悪の気分で眠れなくなる。あんたにはわかんないだろうな」

 竹田の不器用な性格については、不器用な切り出し方で聞いてはいた。自覚があったんだと思うだけで、右から左へ聞き流していた。だから俺は慰めもアドバイスもしなかった。

「いきなり別れるって言われたときは目の前が真っ暗になった。俺のせいなんだって。やっぱり俺はまともに人と付き合えないんだって死にたくなった。死にきれないでグズグズしてたらいつの間にか立ち直ってたよ」

 泣きそうな顔で竹田は笑った。いつの間にか包丁が俺の顔から離れていた。

「別にあんたを恨んじゃいない。あんたは俺を好きじゃなかった。だから酷いことを平気でできた。飽きて利用価値がなくなったら簡単に捨てた。よくわかってる。わかってるのに、この3年、あんたのことが忘れられなかった。噂であんたが結婚するって聞いたら、たまらない気持ちになった。あんたを殺して俺も死のうって」

 すうっと竹田の顔から笑みが消えた。

 俺は失禁した。



ただいまコロナ収束祈願第二弾を準備中です!
その間に、長々やってきた「君が笑った、明日は晴れ」の気分を変えてもらうためにぜんぜん雰囲気違うやつを更新しておきます。
なぜなら第二弾のシリーズものが、「君が笑った~」とちょっと似てるところがあるからですw ブレない私の嗜好!
今回の話も私の性癖丸出しだなって思います。注意書きにある通り、ス/カトロありなので、お気を付けください。



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コメント
やられた!
甘々に浸ってたところに往復ビンタ、キターー!!

目が覚めます!!

これから、ノビシリーズ読みに行ってきまーす(*´▽`*)♪
お返事
そめおさん

目が覚めましたか?良かったです!(?)
甘いやつの間にしょっぱいの挟んだほうが、ね、いいですから!
更新予定の第二弾は甘々です(当社比)ので、いまのうちにしょっぱめの話で箸休めがおすすめです!
内容も拙さも今以上で予防線がいまからすごいですが、もう少しで準備整いそうなので、第二弾も読んでやってもらえると嬉しいです!^^


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