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セフレ(1/1)

2014.04.27.Sun.
 深夜。着信で起こされる。
 発信者は見るまでもない。

「なに?寝てたんだぞ」
「もうすぐ家つくから、鍵開けて」
「は?」

 直後、チャイムが鳴った。コンコンとノックの音とともに、「開けろ」と博成の声が耳に吹き込まれる。
 本当に来やがった。何時だと思ってる。見ると深夜の三時過ぎ。常識外れな行動も、毎度だと怒りしかわいてこない。

「何時だと思ってるんだ」
「金ないから歩いてきてもうクタクタなのよ。文句は明日聞くからもう寝かせて」

 俺を押しのけてズカズカ中に入ってくる。
 寝室へ直行する後ろ姿に昔を思い出した。
 俺は博成と付き合っていた。わがままに付き合いきれなくて半年ももたなかった。別れて二年が経つ。俺が博成と別れた直接の原因は博成の浮気だった。浮気相手は俺と博成共通のゲイ友で、そいつとハッテンしている現場を目撃してしまったのだ。ショックなんてもんじゃなかった。だから俺から別れを切り出した。
 その後二年の間も博成は何人もの男と付き合い、問題を起こし、捨てたり捨てられたりして、あいかわらず落ち着きがない。きっと二年前のときも博成から誘ったに違いない。

「また男に捨てられたな」
「ちげーわ。俺が捨ててやったんだわ」

 それだけ言うと、博成は俺のベッドに横になる。仕方なく隣に入ると博成からキスされた。

「やだよ。明日も仕事だ」
「いいじゃん。途中で追い出されたから消化不良なのよ」
「やっぱお前が捨てられてんじゃねえか」

 ぐっと股間をわし掴まれる。クニクニ揉まれているうちに勃起した。
 博成はふとんの中に潜り込んで、俺のちんぽを舐め始めた。博成と別れてから誰とも付き合っていない。この二年、たまにやってくる博成以外、誰ともセックスしていない。こいつにとって俺は都合のいいセフレなんだろう。

 ふとんを剥いで起き上がった。博成を四つん這いにさせ、後ろから挿入してやる。体の相性だけは抜群に良かった。

「あぁん、んっ、あっ、あぁっ…いいっ…気持ちいいよ…もっと、突いて!」

 博成がよがる場所を攻める。俺はそれがどこかを熟知している。

「はっ!あっ!あぁっ!…そこっ、好きっ…いいっ…もっと、して…!あっ、あんっ!もっと…きて…!あぁ、んん!」

 髪を振り乱しながら、博成が射精する。俺も間もなく、中へ射精した。



 まだ寝ている博成を残して仕事へ向かった。テーブルにスペアの鍵と、鍵を閉めたら新聞受けから鍵を入れといてくれというメモを残しておいた。それでもなんとなく二人分の弁当を買って帰宅した。戸を開けた瞬間、博成がいなくなっているとわかった。真っ暗な室内に、人のいた気配も温もりも残っていない。ずいぶん早くにここを出たようだ。
 なにか踏んづけたと足をあげると、スペアの鍵だった。持って帰るかな、と思っていただけに、暗い家のなかで見つけると俺自身を置いて行かれたような寂しさが際立った。
 やっぱり俺はあいつにとって、ただの都合のいいセフレ、いざというときの緊急避難場所、その程度なんだろう。



 馴染みの店で飲んでいると博成の噂話を聞いた。いまはなかなかのイケメンとラブラブらしい。妬ける?と聞かれて俺の知ったこっちゃないと素直に返すと、素直じゃないねと言われて面白くない。仏頂面で飲んでいたら、いつの間にか知らない男が隣に座って俺の太ももに手を乗せていた。

「いくつ?」
「25」

 まだ二十歳を超えたばかりに見える青年と店を出て、博成と何度か入ったことのあるラブホに入った。あいつだってとっかえひっかえ誰彼かまわずヤッてるんだから、俺だって楽しまなくちゃ損だ。あいつ有責で別れたのに、あいつのほうが人生謳歌しちゃってるのが現状。捨てた俺が恋人も作らず一人で2年も過ごしてたなんて惨めじゃないか。しかも博成の都合のいいように扱われて。

 二人でシャワーを浴びている途中から、俺は彼に欲情して突っ込んだ。浴室に彼の声が響き渡る。貪るようにキスをし、AVさながらの体位で彼を貫き、責め抜き、果てさせたあと、最後は彼の顔にぶっかけた。シャワーで洗い流しながら詫びると、妬いてるの?と問われて意味がわからなかったが、浴室を出た後、さっきの店の会話のことを言っているのだと気付いた。彼は話を聞いていたらしい。違うと訂正するには遅すぎて黙って彼をベッドに押し倒し、前から貫いた。
 博成ほどでないにしろ、相性は悪くなかった。だから連絡先を交換して別れた。



 彼の名前は慶太という。年下というのもあると思うが、彼は素直でほどよく甘えん坊で可愛い恋人だった。実の年齢が22歳だと白状したあと、慶太は「ごめんなさい」と申し訳なさそうに謝って来た。嘘をついた理由も、あまり若すぎると相手にしてもらえないかもしれないと思ったからで、かわいらしくてすぐ許した。
 博成ならこうはならない。
 何歳かと聞けば何歳がいい?と返されるし、自分に都合のいい嘘はよくつくが馬鹿だからすぐバレる。バレても悪びれず笑い飛ばし、こちらが怒るとへそを曲げ、最終的にこっちが折れて機嫌を窺うはめになる。あっけらかんとした性格だが、ころころ気分がかわるので振り回されるほうはたまったもんじゃない。
 慶太にはそんなところがない。俺に気を遣ってくれるし、簡単にヘソを曲げたりしないし、ちょっとしたことでもすぐ「ごめん」と言ってくれる。だから俺たちが衝突することなんかない。一ヶ月経っても、喧嘩はまだ一度もない。
 お互い気を遣いあって、居心地のいい空間を一緒に作り上げる。恋人ってそういうもんなんだとしみじみ実感していたある日の夜、日付がかわりそうな時刻に博成から電話があった。

「悪いんだけど、迎えに来てくれない」

 酔ってるとわかる口調で場所を指定する。当然断った。イケメン彼氏に迎えに来てもらえばいい。

「金ないの。タクシー乗れないの。だから迎えに来てよ」
「なんで俺が行かなきゃなんないんだよ。新しい彼氏に来てもらえよ」
「あんなチンコも器も小さい男、振ってやったわ」

 また捨てられたのか。

「とにかく俺には関係ねえから。それにいま俺、付き合ってる奴がいるから、勘違いさせることしたくないし」
「誰と付き合ってんのよ?俺よりいい男?」
「若くて素直で可愛くて、誰かさんとは大違い」

 通話が切られた。
 あいつが怒っているのを想像すると、今までの溜飲が少し下がる思いだ。
 また電話をかけてくるかと思ってたが、予想に反して一度も鳴らない。拍子抜けしていたら、誰かがチャイムを連打する。開ける前から、それが誰だか想像できた。金ないのにどうやってきたんだか。

「うっせー」

 鍵を開ける音で連打が止み、扉を開けると博成が抱き付いてきた。というかそのまま押し倒されてしまった。廊下に尻もちをつく俺の上に跨って、乱暴にキスをしてくる。

「おいこら、土足!」

 押し返してなんとか引きはがす。博成はフーフーと毛を逆立てる猫のように怒っていた。

「俺のほうが好きだろ!」
「はっ?なに言ってんだよ」
「新しい男より、俺の方が好きだろ!俺に振られて寂しいから、俺のかわりに付き合ってるだけだろ!」

 慶太のことを言ってるらしいが、言ってることがもう滅茶苦茶だ。

「お前のかわりなわけねえだろ。なに自惚れてんだ」
「絶対嘘だ!お前はまだ俺に惚れてる!なに勝手に新しい男作ってんだよ!」
「なんでお前の許可が必要なんだよ!お前は何人と付き合った?!俺に一度だって許可を求めたことあったか?!」
「俺は誰とも付き合ってねえわ!」
「は?!お前のほうこそ嘘つくなよ!散々俺に男の話聞かせてきてたじゃねえかよ!」
「誰とも本気じゃねえわ!」
「…っ…は、…はぁっ?!」

 博成の言ってることが理解できない。今まで付き合ってきた男全部、本気じゃなかったっていうのか?なぜそんなことを言うんだ?なぜこんなに怒ってるんだ?なぜこんなに俺に固執するんだ?

「ぜってー許さねえから!」

 鼻息荒くしながら俺のベルトを外して抜き取る。その間、ロデオみたいに腰を揺すって俺の股間をグリグリ押してくる。玉と棒とがこすれてだんだんそこが立ってくる。

「俺以外の誰かと付き合うとか、ぜってー許さねえから!お前には俺だけでいいんだよ!」
「なに言ってっかぜんぜんわかんねえよ!もう俺とお前はとっくの昔に別れただろ!お前も俺以外の男と付き合ってんだろ!」
「だから!誰とも本気じゃねえって言ってんだろが!」
「じゃあ俺とはどうだったんだよ?!」
「本気に決まってんだろ!今も昔も!一番に好きなのはお前なんだよずっと!馬鹿野郎!」

 絶叫に近い博成の言葉。
 二年前、博成に別れを切り出した時のことが頭に蘇った。別れよう、もう無理だから。そう言うと、博成は顔面蒼白になって言葉をなくした。どんな喧嘩をしたって博成が黙ることなんてなかったのに。

「俺が本気で好きだったくせに、なんで浮気なんかしたんだよ」
「酔ってた。しかもラッシュ嗅がされてラリってお前と間違えた」
「だったらそう説明しろよ。言わなきゃわかんねえよ」
「でもお前以外の男とヤッたのは事実だし」

 途端にトーンダウンして下を向く。あの一件を本当に悔いて罪を感じていたのだとわかる、博成の消沈ぶり。

「そんなに反省してるわりに、そのあととっかえひっかえだったな」
「お前に嫉妬させたくて」
 
 人差し指と人差し指を突き合わせてツンツンといじける。

「ごめんなさいは?」
「え?」
「ごめんなさい、は?」
「ご…ごめんな、さい…」
「最初からそう言え」

 確かに共通のゲイ友は博成に気がある素振りだった。でもまさか友達の彼氏を寝取るなんて思ってもなかったから、一線超える真似はしないと油断してた俺にも落ち度があると言えばある。

 体を起こし、博成にキスする。珍しく博成が遠慮がち。服のなかに手を入れて乳首を摘まむ。ビクンと膝の上で体が跳ねる。ワイシャツのボタンを外し、アンダーシャツをたくしあげ、乳首に吸い付いた。

「アッ…!」

 舌で転がすように高速で動かすと博成の体がビクビク反応する。これ、博成が好きなやつ。面白いほど反応する。

「あぁっ、んっ!アッ…やっ、や…あぁっ…!」

 博成の股間が持ち上がってきたのが見えた。ズボンの上から亀頭を揉むと布が染みてきたので、押し倒して脱がしてやった。玄関すぐの廊下の上だが、今更ベッドへ移動するのも面倒で、そのまま続ける。
 博成の足を持ち上げて、肛門に舌を差し込む。括約筋に絞られながら、中と周囲をベトベトになるまで舐めて充分解した。

「やぁっ!あっ!もう、やっ…そこ…そんな、やっ…舐めちゃ…や…」

 物欲しそうにヒクヒクと蠢いているそこへ、俺はちんぽをぶっ刺した。

「あっ!あっ―――、ああぁぁっ……!!!」

 ドピュッと博成のちんぽから精子が飛び出した。触らずに、だ。トコロテンでイッた博成の顔にまで精液が飛んでいた。

「あ…あぁ…や…こんな…初めて……」
「まだ終わりじゃねえだろ」

 始めたばかりだ。
 博成の膝の裏を押さえながらパンパンと叩きつける。玉と玉がぶつかる。キュンキュンに博成が俺を締め付けてくる。

「あぁっ…やっ!だ…めっ!ゆっくり…!俺、イッたばっか…!んっ!あっ!アンッ!」

 ギュッと目を瞑って顔を歪める。そんな博成に激しく欲情する。腰使いを早くしながら、博成の前立腺を擦り上げた。先ほどの残滓を垂らしながら、博成のちんぽがまた立ち上がる。

「んっ!アンッ!あぁっ!やっ…気持ち、イイッ…気持ちいい!」

 ギイと扉が開いたことに気付いたのは俺だけだった。博成はセックスに没頭していて、開いた隙間から慶太が見下ろしているなんて知りもしないで、アンアン喘いでいる。
 俺は腰を振りながら慶太と目を合わせた。止められなかった。俺も博成と同じ最低な行為で慶太を裏切ってしまった。酔ってもおらず、ラリってもいない分、俺のほうが最低だ。軽蔑した目が俺を見下ろす。フイと隙間から消え、ガチャンと扉が閉まった。

「んっ、あ…え…なに…?…なんの、音…?」
「なんでもない。今まで通り、俺たちがセフレの関係に戻った音だよ」
「へ…?…えっ、アッ!やっ…激し…いっ…んんっ…アッ、アァン…!や、触っちゃ…や、まだ…だめっ」

 ちんぽを扱くと博成は嫌々と首を振る。扱き続けると固く勃起した。

「出すぞ」
「なかっ…中に欲しいっ…中出しして…!」

 性格はともかく体の相性だけは抜群にいい。
 だからこれからもセフレという関係で付き合っていけばいい。お互い本気のセフレなら、なんだかうまくやってけそうな気がするのだ。


幾千の夜 第一夜

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