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ノビ (1-2)

2014.02.17.Mon.
 金がなくて始めた空き巣家業。三年もやっていると、その部屋の主がどんな人間なのか、だいたいわかるようになってくる。

 今日忍びこんだアパートの住人は、性別男、年齢は三十代後半。身長は175センチ前後。体重は70kgほどか。

 彼女はいない。もしかしたら、今までに一度も誰とも付き合ったことがないかもしれない。散らかった部屋。出しっぱなしのエロDVD。遊びに来る友達もいない。地味な色合いの、似たり寄ったりな服ばかり。

 部屋に鏡はない。洗面所の鏡も汚れたまま放置されている。自分の容姿に自信がない、モテない三十男。無趣味で、ここにはただ寝るためだけに帰って来ている、そんな印象の部屋。

 タンスや棚の引き出しをあけ、金目の物を探した。ベッドの下を覗きこむ。鉄パイプが転がっていた。いざという時の備えだろうか。

 突然玄関から物音。俺は手を止めそっちに神経を集中させた。ギィと扉が開き、外の明るい光が部屋に差し込む。俺は鉄パイプを握りしめ、物影に身を潜めた。

 ゆっくりと足音が近づいてくる。ガサガサとビニール袋が擦れる音がする。男が部屋に足を踏み入れた瞬間、鉄パイプで殴りかかった。

 男は横目に俺を見た。とった。そう思ったが、鉄パイプは固いものに弾き返された。男は右手に金属バットを持っていた。もう一度鉄パイプを振り上げた。腹に衝撃。男のバットが俺の腹にめり込んでいた。胃の中身を吐き出しながら、体を折って膝をつく。男が冷静な目で俺を見おろしていた。少しも動揺していない。なぜだ。何者だ。男の手刀が振りおろされた。暗転。

 ※ ※ ※

 目が覚めた。薄汚れた天井。ぼんやり染みを見つめ、ハッと我に返った。起き上がろうとしたが、両手両足がベッドに縛りつけられていた。わずかなたるみを残してはいるが、関節を曲げることは出来ない。そして俺は全裸だった。

「なっ、なんだよ、これは!」

 顔を動かし、部屋を見渡す。咥え煙草の男が台所から顔を出した。

「起きたか、盗人。おまえ、まだ二十代だろうが。どうして空き巣なんかやってる」

 台所から出てきた男はどんぶり鉢を持っていた。

「金のために決まってるだろ。とっとと警察に突き出せよ、なんの真似だよこりゃあ」
「俺の部屋に空き巣に入るとはいい根性してやがる。ちょっと躾けてやらないとな」

 男はどんぶりに手を突っ込むと、薄茶色のドロリとしたものをすくいあげ、それを俺のちんぽになすりつけた。ネバネバとして生ぬるい。

「お、お、おい! いったいこりゃなんだよ! 妙なことすんなよ!」
「お手製の姫泣き油だ。これがどういうものかは、そのうち身をもって知る」

 男の言った通りだった。しばらくすると、塗りたくられたちんぽが痒くてたまらなくなってきたのだ。

「あっ、あっ、アァ……、痒い、痒い……!」

 俺は自由にならない体をよじって悶えた。男は煙草をふかしたまま、そんな俺をおかしそうに見下ろす。

「なかなかの効き目だろ? あまってるからこっちにも塗ってやるか」

 男はどんぶりをひっくりかえし、俺のちんぽから肛門へかけて、姫泣き油をぬりたくった。俺は前後不覚になるほどの痒みに正気を失いそうだった。

 男はビニールの袋から弁当を取り出し、それを食べ始めた。テレビを見ながら、時折、俺の方へ視線を飛ばす。

「痒い……、ううっ、痒い、たまらないっ、どうにかしてくれ! 頼む! 痒くておかしくなりそうだ! この縄を解いてくれ!」
「はは、そうはいくか。自分が今までに犯してきた罪をたっぷりその体で思い知れ」
「おまえいったい、何者なんだよ!」
「俺はケーサツだ。それも三課のな。最近このあたりに頻発してる空き巣は全部てめえの仕業か?」

 俺は一瞬痒みも忘れて男の顔を見た。窃盗犯担当・三課のおまわり。よりによってそんな男の部屋に盗みに入るなんて。

「自分の間抜けさにようやく気付いたか。メシのあとで、ゆっくり話を聞かせてもらおう」

 ニヤリと笑うと男は前に向きなおり、テレビを見ながらまた弁当を食べた。





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