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君が笑った、明日は晴れ(89/89)

2020.06.30.Tue.
1話前話

 ふ、とまどろみの中から目が覚めた。すぐそばに先輩の寝顔。僕がずっと片思いをしてきた人。手を伸ばして髪に触れる。以前より短くなったけど、今の髪型もとても似合ってて格好いい。だから少し心配になってしまう。こうして躊躇わずに触れていいのは僕だけでいてほしい。

 まだ寝ている額にキスする。これって夢じゃないよね? 幸せすぎて怖いって言葉があるけど、まさに今そんな感じ。

 今日は高校の卒業式だった。中には泣いてる奴もいたけど、僕はやっとこの日を向かることができて嬉しくて仕方なかった。

 このあとみんなでカラオケに行こうと誘われたのを断り、待ち合わせのファーストフード店に急いだ。

 先輩はまだ来ていない。とりあえずドリンクを注文してそれを飲みながら先輩を待つ。しばらくしてバイクのエンジン音。見覚えのあるバイクが店の前で止まり、ヘルメットを外した先輩が中に入ってきた。

 そうやってかっこよさを振りまいて来ないで欲しい。今だって窓際に座る女の子二人が顔を見合わせ何か囁き合っている。

「待ったか?」

 店の中を一直線に僕のところへやって来て先輩が言う。眉間には皺。最近、先輩はずっと不機嫌だ。

「今来たところです」
「そ」
「僕、今日卒業しました」
「ん」

 と目を逸らす。

「僕の気持ちはかわりません。約束です、僕と付き合ってください」

 ジロ、と先輩が僕を睨む。しばらくして、

「行くぞ」

 店を出て行く。僕もそのあとを追いかけた。外に来てヘルメットを渡される。

「掴まってろ」

 バイクに跨り、先輩の背中にしがみつく。やっとこの日がやってきた、と僕は喜びを噛み締めた。

 健兄ちゃんの電話のあと、僕は先輩をつかまえ、なだめすかして、なんとかようやく「好きかもしれない」という言葉を先輩の口から聞き出すことが出来た。その時の先輩ったら顔を真っ赤にさせてすごく可愛くて……。

 当然の流れで僕は「付き合いましょう!」と言ったのだけど、先輩は健兄ちゃんが言っていた通り「いつか終わるならこのままの方がよくねえか?」なんて言い出した。

 必死に説得して脅すようなことも言って、最後は泣き落としでやっと「じゃ、おまえが高校卒業するまで気持ちがかわらなかったら付き合う」となった。

 また3年も片思い……。絶望的な気分になったけれど、その間、僕たちは何度もセックスした。それでも先輩は付き合ってるつもりはないみたいで、先輩の「付き合う」って定義が僕にはよくわからない。あまり突っ込んで聞くとそれもお預けになるから黙っておいたけれど。

 そして向かえた卒業式。僕の顔はにやけっぱなし。前半3年間は完璧な片思い、後半は両思いなのにお預けの3年間。合計6年間。僕の気持ちがかわることはなかった。先輩はどうなんだろう、とそっちのほうが心配だったけど、今日迎えに来てくれたってことは、先輩も同じ気持ちなんだと信じていいはず。

 僕を乗せたバイクはホテルに直行した。いきなりヤルんですか。まぁ、僕はいいけど。

 先輩と一緒にシャワーを浴びて、そこで一回。ベッドに連れて行ってそこでも一回。先輩は相変わらず抜群の感度と締まり具合で僕を喜ばせてくれる。

「先輩、約束、守ってくれますよね」

 終わったあと、隣で寝そべる先輩に聞いた。先輩はまた眉間に皺を作って横を向いた。

「知らねえぞ」

 とぼそっと言う。

「おまえに飽きたり、他に好きな奴が出来たらすぐに捨てるからな」
「はい、構いません」
「でも、おまえは誰も好きになるなよ。俺だけのものでいろよ。それでもいいんだな」
「はい、構いません」
「じゃあ、付き合ってやる」

 横柄に言い放ち、僕の上に覆いかぶさってきた。またやるの?

「先輩、僕もう無理かも」
「今度は俺がやる」

 と僕にキスしてきた。

 先輩は律子って彼女と別れている。セックスの最中ちょっと乱暴にしてしまい、彼女が気絶したのが原因らしい。

「あの時のことよく覚えてねえんだよ。もう一回、気絶させてみたい」

 って理由で僕を抱くんだけど、今のとこまだ気絶にまでは至っていない。僕の弱点が背中だってこと、先輩は知らない。エッチの時くらい僕が主導権を握りたいから、それはまだ当分の間秘密にしておくつもりだ。

 でもそんな弱点教えなくても、僕は先輩が相手だと理性を失うほど感じてしまう。先輩の手が触れた場所が僕の性感帯になってしまうし、先輩の肌が触れた場所からどんどん熱を持っていく。先輩の感じ入った顔や吐息だけで気持ちが昂っていく。僕たち、体の相性抜群ですよ。

 先輩の頭が下にさがって僕のをパクッと咥えた。もう無理だろうと思っていたのにだんだん大きくなっていく。

「あっ、あ、先輩……」

 手を伸ばしたら握り返してくれた。指の間に指を入れる恋人つなぎ。

「はなして、先輩、出ちゃいます」
「出していいよ」

 先輩に飲まれたことは今まで一度もない。飲むつもりなのかな。それって僕を恋人として扱ってくれる証拠なのかな。

「先輩、だめ、ほんとに出ちゃう」

 先輩の唇が先を揉みしだいて吸い上げる。ビリビリッと全身に電気が走ったような衝撃。

「あっ! イクっ……!!」

 先輩はすべて口で受け止め、のどを鳴らしてそれを飲みこんだ。舌を出して唇をなめる。濡れた口元が卑猥だ。

「無理しなくていいのに」
「おまえだっていつも俺の飲むじゃん」

 いいながらコンドームを掴んだ。

「あっ、嫌だ!」

 それを取り上げる。

「返せよ」
「今日は無しがいいです」

 やっと先輩の恋人になれた日だ。よけいな物をつけずに、直接先輩を感じたかった。

 しょうがない奴、と言いながら先輩が苦笑する。

「だったら下から俺の、飲ませてやる」

 ニヤッと笑って言う。その顔に僕はときめく。何年経っても先輩より僕の方が好きなんだろうな。

 ぐっと先輩のが入ってきて体を揺さぶられる。断続的に口から飛び出る僕の嬌声。先輩は腰をグラインドさせて僕の反応を楽しんでる。

 先輩はウケ体質なんだと思ってたけど、タチの素質も充分で、存分に僕の中を蹂躙したあとでも平気な顔をするタフさを見せる。

 角度をかえて僕をギリギリまで追い詰めたくせに、もう少しってところですっと身を引く。早く、とねだってもなかなか叶えてくれない。

 もともとSっ気のある先輩は言葉責めなんて朝飯前で、僕から赤面ものの台詞を言わせて楽しんでいる。

 僕は完全に先輩の手のひらの上。

 先輩が終わるまで散々焦らされ嬲られて、僕はもう全身汗だく。先輩がタチのセックスをする時は僕は体力のほとんどを失ってしまう。

 ようやく終わってぐったりする僕の横に先輩が寝転がった。息も絶え絶えの僕を見て先輩が微笑む。見とれるくらい男の色気が漂う笑み。

「大丈夫か?」
「なんとか……」

 先輩は優しく僕にキスしてくれた。その幸福感の中、抱き合って眠ったのだった。

 いま、僕の目の前には先輩の寝顔。やっとここまできたんだと思うと自然と顔が綻ぶ。先輩の目が開いた。僕と目が合うと、少し恥ずかしそうに笑った。初めて見る可愛い顔。僕の知らない先輩がまだいるんだ。

「起きてたのか」

 この声を聞いて僕はびっくりした。なんて優しい声のトーン。こんな声ははじめて聞く。

「咽喉渇いたな」
「取ってきます」
「おまえは寝てていいよ。俺が取ってくるから」

 と僕の頭をくしゃっと撫でてベッドから抜け出す。その背中を信じられない思いで見つめる。

 戸田さんや浦野、僕の母さんに向けてきたそれとはぜんぜん違う笑みと声。本当に優しく接する時、先輩の声は低くなるみたいだ。少し擦れた響く低音。ゾクゾクする。

「おまえも飲む?」

 振り返って僕にペットボトルを差し出してくる。

 その声やばい。僕が特別な存在になったんだと実感出来る。今まで付き合った彼女はみんなこの声を聞いていたのかな。過去のことでも嫉妬してしまう。

「先輩、僕、先輩が好きです」

 独占欲丸出しで愛の告白。

「知ってるよ」

 と先輩が笑う。

「先輩は?」
「好きに決まってんだろ」

 当たり前の事を聞くな、と先輩が僕にキスする。

 先輩の目に僕が映っている。僕の目には先輩が。この先も、きっとずっと。


(初出2009年)


全89話終わりましたー!長いようで早かったです!
残念ながらコロナのほうはまだ完全収束はしてないですね。世界的に見たら感染者数は増える一方。89日もあったら更新が終わるより前に、少なくとも日本では収束してるんじゃない?!と思ってたんですが、ぜんぜん甘かったです。

ありがたいことに、もっと続けてほしいと言ってくださる方がいらっしゃったので!収束祈願第2弾を!しようかなと!思っています!
また昔のやつを引っ張りだして再利用更新になりますが…。準備整いましたらまたお知らせに参りたいと思います!

いままで更新お付き合いくださった皆さま、本当にありがとうございます!
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コメント
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お返事
裕史さん

コメントありがとうございます!
少しでも楽しんでいただけましたでしょうか?だとしたらめちゃくちゃ嬉しいです!
天邪鬼なノンケが後輩に落ちるには一筋縄ではいかないはずだと、もっともらしい理由で色んな相手と経験積んでいく内容にしたら全89話。書いてた当時もこんなに長くなるとは思っていなかったような気がしますw

十年以上前(!)に書いたやつなので、恥ずかしいやら懐かしいやら、根本はなにも変わってないことにもう苦笑いです。

こんなに長い話に最後までお付き合いくださってありがとうございます!^^
河中ちゃんと重夫が幸せになって良かった~(*´▽`*)♪

このことを知った戸田くんは何て言うんでしょう。

長いことこの話の世界に触れていたので、抜け出すのが惜しいです。
エンドついてもまた読んでしまう。

寝起きにも
また読み返す
3回目

更新おつかれさまでした!

第二弾も楽しみに待っていますね~(*´▽`*)♪
お返事
そめおさん

いままでお付き合いありがとうございました~!
三カ月弱、ちゃんと休まずできるか不安でしたが、なんとかなるもんですね!もう日課になっていました。

2人のことを知ったら戸田は驚いてみせつつ、羨ましいと絡んできそうです。
いつか襲い受けに襲われるのがお似合いだなって思います。意外と振り回し系かも?

いま第二弾準備中です!
10年以上まえに書いたやつなので若い!青い!読み返してて恥ずかしい!
共感性羞恥の方は要注意です笑
そういう感じですが、また気が向いたら読んでやってください!
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お返事
2:28の方へ

長い話を最後まで読んでくださりありがとうございますー!
そうです、最終的にはリバです!おそらく73で河中のほうが攻めの多いリバなのではないかと想像。重夫の性格考えたらおとなしくウケばっかやってなさそうだなと思ってこういう結果になったのだと思います。

ねー、本当に面倒臭い人ですよね~w 久しぶりに読み返したときに私もなんて面倒な…と思いましたもん。大団円へ向けての回り道というか。浦野はほんと、かわいそうだなって。宮本先輩に大事にされることで救済措置としました。浦野はきっと宮本先輩を尻に敷ける子です!

収束祈願第二弾はシリーズものでこっちも長い更新になりますが、お時間あるときに読んでやってもらえたら嬉しいです!^^

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