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君が笑った、明日は晴れ(66/89)

2020.06.07.Sun.
1話前話

「ま、待って、ストップ!」

 噛み付くような乱暴なキスをされ、僕は宮本さんを押し返した。その手を掴まれ、引き寄せられる。

「今更ストップかよ」
「ちが、違います。もっとゆっくり」
「いちいちうるさいなぁ」

 文句を言いながらも宮本さんは言われた通り少しおとなしくなったキスをした。

「あいつ、ここが気持ちいいみたいなんです」

 宮本さんの口の中に入れた舌で上顎をなぞった。

「くすぐってえな」
「僕の言ったこと覚えてくださいね。あいつ、キスしてる時に目を合わせるのが好きみたいです。だからたまに目を開けてやってください」
「変な趣味」

 そんなの僕が仕込んだことじゃない。最初からそうだったんだ。

「キスしながら触ってやってください」
「へぇ、何を?」

 ニヤニヤ笑う宮本さんに内心溜息をついた。

「本気でわからないなら相手を間違えたみたいですね。あいつは他の誰かにもらってもらいます」

 離れて行った僕を宮本さんは慌てて引き戻した。

「わかったわかった。アレを触ってやりゃいいんだろ。調子狂うんだよ。ああしろこうしろ言われるとさぁ」

 確かにそうかもしれない。ここは宮本さんの思う通りにさせ、そのつど訂正していくほうが手っ取り早そうだ。

「じゃあ、宮本さんの好きにして下さい」

 宮本さんの顔が真っ赤になった。なんだ、急に?

「もう一回言ってくれよ」
「? 宮本さんの好きにして下さい……?」
「やばいわ。お前のその顔でそんな台詞、もろにキタ。言葉だけでイっちまう」
「馬鹿なこと言わないで下さい」

 何かと思ったらそんなくだらないこと。

 これが宮本さんじゃなくて先輩だったらどんなに嬉しかったか……。いや、今は先輩のことを思い出すのはやめよう。

「ほんとに俺の好きにしていいんだな」
「はい。ただし相手はあの浦野だと思ってください。優しく、乱暴にしないで」
「わかってる。もともと俺はそんなに乱暴じゃねえよ」

 信頼度、ゼロなんですけどね。

 最初に僕に声をかけてきた時だってそうだ。僕が先輩を好きだと言うとそいつと話をつける、なんて言い出して屋上にいた先輩を見つけた途端殴りかかって暴力で解決しようとしたくせに。

 宮本さんの手が僕の股間に伸びてきた。布越しに触ってくる。僕のものはまったく無反応。やばいな、早く終わらせたいのに。

 宮本さんの口が僕の唇から離れ、耳、首へと移動した。他人のセックスの仕方を検証するなんて変な気分だ。

 実際のところ宮本さんはどの程度男と経験があるんだろうか。キスの仕方も触り方も不慣れじゃないから、それなりにあるようだけれど。

「立ってんのもなんだし、マットに横になろうぜ」

 宮本さんの顔から、いつものニヤついた笑みが消えていた。これが宮本さんの素の顔か。普段はポーズで笑っているだけなのかもしれない。

 右手で体重を支えながら、寝そべる僕に覆いかぶさり前髪を後ろになでつけたかと思ったら額にキスしてきた。思いがけない優しい動作に少し驚く。

「こんなに可愛い顔した男、今まで見たことねえよ。山口はお前のそばにいて一度もその気にならなかったのか? 案外あいつ、インポなんじゃないか」
「先輩の話はしないで下さい」

 口を塞ぐために宮本さんの首に腕をまわし、引き寄せてキスした。舌を絡めながらお互いの服を脱がせる。

「目、開けろよ。あいつはそれが好みなんだろ」

 そうだった、僕は浦野にならなくちゃいけないんだ。あいつ好みのセックスを覚えてもらって浦野を夢中にさせるんだ。 

「じゃあ次は手でして下さい」
「口でやんなくていいのか?」
「……できるんですか」
「あぁ、お前んなら咥えてやってもいいぜ」
「僕は浦野です」
「あぁ、お前のあとなら、浦野のだって咥えてやる」

 宮本さんの頭が僕の下半身にさがっていった。外気にさらされた股間に顔を埋め、僕の萎縮しているペニスを口の中に含んだ。拙くて下手くそ。浦野といい勝負だ。

「違う、そこ、そこが気持ちいいんです……」
「んあ? ここ、か?」

 恥ずかしいけれど、僕が宮本さんに教えなくちゃならない。僕はいちいち、そこがいい、そうじゃない、と口にしなければならなかった。意外だったのは、宮本さんが文句一つ言わずに僕の言う通りしてくれたことだ。実は勉強熱心。

「宮本さん、男と最後までしたことあるんですか?」
「何回かはな」
「じゃあ、もう入れて」
「本気かよ」

 動揺する宮本さんの声。僕としては早く終わらせたい一心で言った言葉だったが、宮本さんは僕が感極まったと勘違いしたみたいで激しくキスしてきた。

「指で、少しならしてから……」
「わかってる、お前を傷つけるつもりはうないから黙ってろ」

 あまり信用していなかったけれど、宮本さんてけっこう優しい人なのかもしれない。そう思える手つきで僕の後ろに指を入れてきた。

 そんなところを人に触られるのは久し振りで、僕は恥ずかしさからぎゅっと目を瞑った。



白椿

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