君が笑った、明日は晴れ(61/89)
2020.06.02.Tue.
<1話、前話>
トイレに人が入ってきた気配に先輩は体を緊張させた。こんなとこ絶対見つかるわけにはいかないのに、僕はなぜか妙に落ち着いていた。
咄嗟に先輩の口を塞いだ手、その指を先輩の口の中に入れた。先輩が首をひねって睨み付けてくる。僕はにっこり笑ってみせた。舌で押し返してくるが、指の力には敵わない。指を奥へいれ、歯列をなぞった。
先輩に手を捕まれ、引き出された。じゃあ次は、と先輩の首に吸いついた。汗の交じった先輩の体臭が僕は好きだ。それを肺いっぱいに吸い込みながら舌を這わせると先輩は肩を持ち上げた。くすぐったいらしい。
それと同時に締め付けが強まる。ほんとはさっきからずっとイキたいのを我慢している。せっかく中に入ったのにもういってしまうのは嫌だった。もっと先輩の中にいたい。ずっと繋がったままでいたい。
気を散らせるためにさっき出したばかりの先輩のものを握った。もう無理だと先輩が首を振る。手を先輩の腰に持ちかえ、突き上げた。
「あっ」
小さな声が漏れた。
「聞こえたらどうするんですか」
ほとんど息だけで先輩の耳に囁く。チラと僕を睨んだ先輩は自分の腕に噛み付いた。
水の流れる音が聞こえてきた。僕はまた腰を動かし、先輩は自分の腕を強く噛んで声を飲み込む。
トイレにいた客が出て行った途端、先輩は声をあげた。
「はぁっ、ああっ」
すごい感度。人がいる場所で突かれて興奮しちゃったのかな?
「お前、あとで覚えとけよ」
押し殺した声で先輩が言う。僕は腰を動かした。先輩の中を擦る。先輩は体をくねらせ、その快感を僕に示した。我慢の限界。先輩の中に全部吐き出す。イッた瞬間思わず先輩の肩に噛みついてしまった。
「いっ……てえな」
先輩が肩を押さえて僕を見る。
「すみません」
素直に謝った。かみつく癖なんてなかったのにな。
ずるりと先輩の中から抜け出し、トイレットペーパーで精液まみれのものを拭いた。先輩は疲れたように便座に腰をおろし、長い溜息をつく。
「さっき言ったこと、本気ですから」
先輩が顔をあげる。
「僕を好きになるまで抱きます。好きになるまではなしません。誰にも渡さない、僕だけのものにします」
「俺は物かよ」
先輩はいつもの皮肉った笑みを浮かべた。顎を持ち、キスした。もう遠慮なんかしない。
「先輩、好きですよ」
「どの面さげて」
「したくなったら僕に言って下さい。僕も先輩を誘いますから」
「知るか。勝手にやってろ」
「中に出した精液、出すの手伝いましょうか」
肩に手をおいて囁いたら先輩は顔を赤くして僕を突き飛ばした。
「とっとと出てけ」
「先に戻ってますね」
トイレの戸を閉めた。
※ ※ ※
部屋に戻ってぬるくなったウーロン茶を飲んだ。息を吐き出し、天井を仰ぎ見る。
「すごいことしちゃった……」
自分のしたことを思い出すと笑いが込み上げてきた。よくあんな場所であんなことができたものだ。先輩が僕の知らないところで知らない奴と慣れるまでセックスしていたからと言って、嫉妬に狂ってあんなことするなんて、自分でも驚きだ。
おまけにすごいこと宣言しちゃった。
『僕を好きになるまで何度でも抱きます。好きになるまではなしません。他のだれにもやらない、先輩は僕のものです』
本音とエゴ丸出しだ。思い出すと赤面してしまう。でもなんだか気が楽になった。先輩に迷惑がられても、もう遠慮しない、そう決めた。その覚悟ができた。
「先輩、怒ってるかな」
さっきトイレで結構ムチャなことしちゃったし、あとで覚えとけなんて言われたし、肩に噛みついて中出ししちゃったし。ちょっと心配になってきた。
正気と冷静を取り戻した僕は冷や汗をかきながら先輩を待った。しばらくして戻ってきた先輩は僕を一瞥して無言でソファに座りこんだ。やっぱり怒ってるよね。
「先輩、あの」
「謝るなら最初からするな」
ですよね。なんか前にもあったな、こんなやりとり。
壁の電話がなった。受付からの電話。僕より先に先輩が立ち上がり「出ます」と伝え受話器を戻した。
「帰るぞ」
鞄を持って先輩が先に部屋から出た。
先輩がずっと黙っているので僕も話しかけづらく、ホームで電車を待つ間、電車に乗っている間、二人共無言で過ごした。
「じゃあ、先輩、また明日」
「ん」
僕の顔を見ずに、先輩はさっさと帰っていった。
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トイレに人が入ってきた気配に先輩は体を緊張させた。こんなとこ絶対見つかるわけにはいかないのに、僕はなぜか妙に落ち着いていた。
咄嗟に先輩の口を塞いだ手、その指を先輩の口の中に入れた。先輩が首をひねって睨み付けてくる。僕はにっこり笑ってみせた。舌で押し返してくるが、指の力には敵わない。指を奥へいれ、歯列をなぞった。
先輩に手を捕まれ、引き出された。じゃあ次は、と先輩の首に吸いついた。汗の交じった先輩の体臭が僕は好きだ。それを肺いっぱいに吸い込みながら舌を這わせると先輩は肩を持ち上げた。くすぐったいらしい。
それと同時に締め付けが強まる。ほんとはさっきからずっとイキたいのを我慢している。せっかく中に入ったのにもういってしまうのは嫌だった。もっと先輩の中にいたい。ずっと繋がったままでいたい。
気を散らせるためにさっき出したばかりの先輩のものを握った。もう無理だと先輩が首を振る。手を先輩の腰に持ちかえ、突き上げた。
「あっ」
小さな声が漏れた。
「聞こえたらどうするんですか」
ほとんど息だけで先輩の耳に囁く。チラと僕を睨んだ先輩は自分の腕に噛み付いた。
水の流れる音が聞こえてきた。僕はまた腰を動かし、先輩は自分の腕を強く噛んで声を飲み込む。
トイレにいた客が出て行った途端、先輩は声をあげた。
「はぁっ、ああっ」
すごい感度。人がいる場所で突かれて興奮しちゃったのかな?
「お前、あとで覚えとけよ」
押し殺した声で先輩が言う。僕は腰を動かした。先輩の中を擦る。先輩は体をくねらせ、その快感を僕に示した。我慢の限界。先輩の中に全部吐き出す。イッた瞬間思わず先輩の肩に噛みついてしまった。
「いっ……てえな」
先輩が肩を押さえて僕を見る。
「すみません」
素直に謝った。かみつく癖なんてなかったのにな。
ずるりと先輩の中から抜け出し、トイレットペーパーで精液まみれのものを拭いた。先輩は疲れたように便座に腰をおろし、長い溜息をつく。
「さっき言ったこと、本気ですから」
先輩が顔をあげる。
「僕を好きになるまで抱きます。好きになるまではなしません。誰にも渡さない、僕だけのものにします」
「俺は物かよ」
先輩はいつもの皮肉った笑みを浮かべた。顎を持ち、キスした。もう遠慮なんかしない。
「先輩、好きですよ」
「どの面さげて」
「したくなったら僕に言って下さい。僕も先輩を誘いますから」
「知るか。勝手にやってろ」
「中に出した精液、出すの手伝いましょうか」
肩に手をおいて囁いたら先輩は顔を赤くして僕を突き飛ばした。
「とっとと出てけ」
「先に戻ってますね」
トイレの戸を閉めた。
※ ※ ※
部屋に戻ってぬるくなったウーロン茶を飲んだ。息を吐き出し、天井を仰ぎ見る。
「すごいことしちゃった……」
自分のしたことを思い出すと笑いが込み上げてきた。よくあんな場所であんなことができたものだ。先輩が僕の知らないところで知らない奴と慣れるまでセックスしていたからと言って、嫉妬に狂ってあんなことするなんて、自分でも驚きだ。
おまけにすごいこと宣言しちゃった。
『僕を好きになるまで何度でも抱きます。好きになるまではなしません。他のだれにもやらない、先輩は僕のものです』
本音とエゴ丸出しだ。思い出すと赤面してしまう。でもなんだか気が楽になった。先輩に迷惑がられても、もう遠慮しない、そう決めた。その覚悟ができた。
「先輩、怒ってるかな」
さっきトイレで結構ムチャなことしちゃったし、あとで覚えとけなんて言われたし、肩に噛みついて中出ししちゃったし。ちょっと心配になってきた。
正気と冷静を取り戻した僕は冷や汗をかきながら先輩を待った。しばらくして戻ってきた先輩は僕を一瞥して無言でソファに座りこんだ。やっぱり怒ってるよね。
「先輩、あの」
「謝るなら最初からするな」
ですよね。なんか前にもあったな、こんなやりとり。
壁の電話がなった。受付からの電話。僕より先に先輩が立ち上がり「出ます」と伝え受話器を戻した。
「帰るぞ」
鞄を持って先輩が先に部屋から出た。
先輩がずっと黙っているので僕も話しかけづらく、ホームで電車を待つ間、電車に乗っている間、二人共無言で過ごした。
「じゃあ、先輩、また明日」
「ん」
僕の顔を見ずに、先輩はさっさと帰っていった。
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