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君が笑った、明日は晴れ(58/89)

2020.05.30.Sat.
1話前話

「誰か来たらどうすんだ、丸見えじゃねえか」
「大丈夫、ここは角だから人も来ませんよ」
「店員が来る」
「その前に済ませちゃいましょう」

 くそボケっ。

 河中に膝枕なんてさせるんじゃなかった。2人とも火がついちまった。ソファに座る俺の前に河中が跪いて、股間に顔を埋め、口を動かしている。

「ん……っ」

 森下さんとのセックスで俺、どこがどう感じるのか自分ですっかり把握してしまって、河中が舌しか使わないことを不満に思っている。もっと強い刺激を欲している。

 俺のを咥えながら河中が上目遣いに見てきた。ぞくっとするほど色っぽい表情。俺の反応を見ながら目を細めて笑った。

「もう口はなせ、出る、から」

 飲む、という意思表示のつもりか、河中が強く吸い上げてきた。やめろって、あんなクソまずいもん飲むなよ。

 実は俺、一度だけ森下さんのを飲んだことがある。独特のにおいと味。そのあと口直しに酒を飲んだり煙草を吸ったりしたが、不快感はしばらくずっと残ったままだった。

 森下さんは、飲み方にコツがある、あとは慣れだと言っていたが、俺は一生慣れそうにない。律子にもぜったい飲ませるつもりはない。

「いいんですよ。出しても」

 俺が躊躇っていると河中が声をかけてきた。こいつも人のを飲むことに慣れているんだろうか。それとも本当は無理しているんだろうか。

 もういっか、そんなこと……。

 どうでもよくなってきた俺は、低く呻いて河中の口に射精した。

※ ※ ※

 河中はウーロン茶を何口か飲んだ。それだけであの味が消えるとは思えないが。

「お前、平気なのか」
「何がです?」
「飲むこと」
「先輩のだから平気です」

 俺のじゃなかったら無理ってことか? ってことはやっぱり無理してるってことか。

「べつに出していいんだからな」
「僕に気を使ってくれてるんですか」
「そういうんじゃねえけど、わざわざ飲むもんでもねえだろ」
「そうかもしれない。でも興奮してたら飲みたくなってくるんです」
「お前は、平気か」
「はい、だから先輩のだったら……」
「じゃなくて、お前は出さなくて平気かって聞いてんの」

 え、と河中は口をポカンと開いた間抜け面で俺を見た。俺がお前のことを気にかけるのがそんなに意外か? 戸田といい、こいつといい、俺が少し優しいところを見せるとすごく珍しそうな顔をするから感じが悪い。

「どっちかと言うと平気じゃないですけど……」

 戸惑いを隠せず、河中は微妙な笑みを浮かべて頭をかいた。

「こっち来て座れよ」
「はぁ……」

 間が抜けた返事をして河中は隣に腰をおろした。扉に背を向けて座り、河中の背後から前に手をまわして熱いその場所を触った。

「先輩?!」
「黙ってろ」

 河中の耳元に囁く。いつも俺を追い詰めて楽しんでいやがるくせに、いざ立場が逆転すると簡単にうろたえる。やっぱりこいつ、まだまだガキだ。

「せん、ぱい」

 擦れた声で呼ばれた。河中の四肢が突っ張って背中が反り返る。えらい感じてやがんな。チロチロ溢れてくる先走りを絡めとり、手の平全体を使って優しく擦った。

「はっ、あ、ど、して」
「何が」
「こんなの、今までないっ」
「たまにはしてやろうと思って」
「うそ、嘘だっ」

  河中が俺の頭を抱え込み、首をひねって顔を寄せてきた。感じ入った表情で切なげに俺の口元を見つめている。こいつ、こんな顔してたら学校中の奴に犯されるんじゃないかというくらい、不覚にも股間直撃の悩ましげな表情だ。

 手を動かしながらキスした。深く密着することができなくて、河中の口の端から唾液が零れる。

「ふっ、あっ、あ」

 河中の細い指が俺の腕に食い込む。呼吸が早くなった。

「もう出そう?」

 聞くと何度も頷いた。最後の絶頂にまで追い上げるために手を動かす。甘い匂いのする首筋にキスし、軽く歯を立てた時、河中の熱いものが俺の手に吐き出された。

「たまってた?」

 白い液体まみれの手を顔の前にかざしてやると、河中は言葉を詰まらせて俯いた。いつもの仕返しだ。

「扉開けろ、手洗ってくる」

 身繕いしながら河中は扉をあけた。廊下を出て視線を走らせるが誰もいない。少し離れたトイレに入って手を洗った。河中も入ってきて俺の隣で手を洗う。頬がまだ赤い。

「先輩、僕ね、いますごく幸せなんです。だからこんなこと言いたくないんですけど」

 手を洗い終わった河中が顔をあげ、まっすぐ俺を見た。目が据わっている。怖いくらいに無表情。それが今、幸せだって言った奴の表情か? 妙に気圧されて固唾を飲み込んだ。

「なんだよ」
「先輩、夏休みの間、誰かと寝ました?」

 静かに河中が言った。

 内心ギクリ。森下さんとのこと、なんでバレたんだ?

「俺に彼女いるの知ってんだろ」
「彼女のことを言ってるんじゃないんです。キスの仕方が今までと違いました。今まで僕にしなかったことまでして、おかしいです。慣れてるみたいでした」

 抑揚のない声でいいながら、河中がじりじりと俺に詰め寄って来る。どうしたんだ、こいつ。いつもならもっとキャンキャン騒ぐくせに、いやに冷静に……。いや、違う、こいつ、キレたんだ、本気で。

「お前の勘違いだろ」
「勘違いかどうか、確かめさせてくれませんか」
「なに、どうやって」
「身体検査です」

 河中とは思えない強い力で腕を引っ張られ、トイレの個室に連れ込まれた。勢い良く扉がしめられ、鍵が下ろされた。




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