FC2ブログ

君が笑った、明日は晴れ(55/89)

2020.05.27.Wed.
1話前話

 2人並んでベッドに横になり、天井を見上げてぼんやりしていた。いつの間にか窓の外が白んでいる。

「シャワー浴びる?」

 森下さんが俺に訊ねる。

「ダルい。眠い」
「俺も眠い」

 ゴロンと横向きになって俺の胸に腕を乗せた。その手が乳首を弄ぶ。

「やめろって」
「空っぽになるまで出したもんね」

 今度は下におりて俺の陰嚢を優しく揉んだ。

 結局ゆうべは何回出したんだ? 4回? 5回? 忘れてしまった。とにかく疲れた。もうクタクタだ。バイトに行くのが面倒で仕方ない。このまま寝てしまいたい。

「君の順応力の高さには感心するよ。ほんとは経験あったんだろ?」

 正直に答えてもいいか。もう嘘をつくのも面倒だし。

「まぁ、少しは」
「やっぱりね。初めてであんなに感じるなんておかしいと思ったよ」

 ……初めて河中とした時もけっこう感じた俺っておかしいのか?

「でも意外。山口君って男にまったく興味なさそうだったのに。気付いてる? 女と男とで接客時間がぜんぜん違うんだよ。特に、好みなんだろうなって女の子の時はやたら丁寧な接客をしていたし」

 まじでか。俺にはそんな自覚まったくない。好みのタイプまでバレているのかと思うと少し恥ずかしい。次から気をつけよう。

「先にシャワー浴びてくる。あとで起こしてあげるから、君は寝てていいよ」

 森下さんは立ち上がって浴室へ消えた。俺は目を閉じ、少し眠った。

※ ※ ※

 森下さんの車で一緒にバイトに行った。2人揃って姿を現した俺たちを見ても、誰も何も言わない。偶然会ったと思っているのか気に留めるほどのことでもないのか。

 仕事中、何度も欠伸が出た。森下さんと目が合うと、意味深に笑いかけてくるのが気恥ずかしかった。

 それから森下さんに何度か家に誘われ、何度か断り何度か家に行ってセックスした。

 気持ちのない体だけの関係は気楽で良い。スポーツを楽しむような感覚だった。

 戸田からメールがきた。先生に泣きついて、追追追試でようやく合格にしてもらったのだそうだ。

 今頃はじめる短期のバイトも見つからず、俺が働く海の家に来て自棄になって片っ端から女の子に声をかけ、ことごとく振られていた。憐れな奴だ。

 戸田が不憫になり、太田さんに頼んでバイト終わりに一緒に花火をしてもらった。夏の思い出がこれだけだとしたら気の毒すぎるが、何もないよりはマシだろう。

 夏休みもあと一週間という頃、女の客にナンパされた。こういう時に戸田の馬鹿はいない。俺が1人で女2人を相手にした。

「海の家ってね、女だけじゃなくて男にもモテるんだよ」

 ある日、森下さんが言った。

「あのお客さん、さっきから女の子じゃなくて男ばっかり見てるだろ、きっとゲイだよ。見ててごらん」

 と、森下さんはテーブルに座った男の接客についた。何か話をし、笑い声をたてている。

 こちらに戻ってきた時俺にウィンクして見せた。注文のビールと枝豆を男のテーブルに運んでいく。

 男が驚いた顔で何かを言った。森下さんは男の体に触れながら耳元に何か囁く。男は何度か頷いたあと携帯電話を取り出した。番号の交換でもしているのだろうか。

 森下さんが戻ってきた。すれ違いざま、

「今晩彼と会うことになった」

 と小さな声で囁いた。なんという早業。俺もこの調子でこの人に食われちゃったんだよな。苦笑するしかない。

 そんなこんなで夏休みが終わった。あっという間の短い夏休みだった。



関連記事
スポンサーサイト
[PR]

コメント

管理者にだけ表示を許可する