FC2ブログ

君が笑った、明日は晴れ(18/89)

2020.04.20.Mon.
1話前話

 カンサイ、お前、まさか河中が好きとかじゃないよな?

 聞いてみたい気がしたが、好きだと肯定されてもどう反応していいのかわからないからやめた。

 かわいい外見に騙されて河中に声をかける奴は少なくない。俺に会いに教室へやって来た河中に「やらせろ」と露骨に言うやつもいたし、帰りが同じ方向だからと放課後の俺についてくる河中がいつか、

「先輩ってすれ違う人みんなと目を合わせるから喧嘩になっちゃうんですよ。僕ね、誰とも目を合わせないようにしてるんです。目が合うと、知らないおじさんとかおばさんに声かけられて、ひどいと車に連れこまれそうになるんですよね。だから誰とも目を合わせないし、こっちをじっと見てくる人がいたら、顔をそらして距離を取るようにしてるんです」

 と、恐ろしいことをさも当たり前のように言っていた。気苦労の絶えない人生を歩んできたのだと、その時は河中に同情したものだ。そう、俺が強/姦されるまえの話だ。

 改めてカンサイを見る。宮本よりもでかい図体。いくら河中が拒んだって、カンサイみたいな体の奴に迫られたらひとたまりもないだろうな、と思う。

 が、俺の印象だとカンサイはそんなことをする男じゃない。いかにも晩熟そうなこの男は、きっと河中が素っ裸でこいつを誘惑したとしても、顔を真っ赤にして手出しできないに違いない。

 想像したら笑ってしまった。不審がってカンサイが振りかえる。

「なんや?」
「ん、なんでもねえ」
「笑ってるやんか、何笑ってんねん」
「んー、言えねえな」

 言ったら怒られそうだ。

「気になるやんか」
「お前って童貞?」

 俺の質問にカンサイが声を詰まらせた。暗がりでもカンサイの顔が赤くなっているのがわかる。

「なんでそんなこと」
「どっちかなぁと思ってさ」

 小さくなった煙草を床に押し付け火を消した。カンサイは俯き、小さな声で、

「女とは、まだないよ」

 と言った。

「えっ」
「お、男とはあるねん。部の奴と……」

 こいつもそっちの経験者だったのか? 噂には聞いてたけど、やっぱり体育会系の奴らは盛んなんだな。

「お前って、どっち?」

 入れるほう? 入れられるほう?

「なんでそんなん言わなあかんねん。恥ずかしい」

 いや、もう充分恥ずかしい告白してるよ、お前は。このでかいなりしてんだから、やっぱり挿れるほうだよな。いや、案外挿れられるほうだったりして。同じ部の奴としたっていうんだから、相手はカンサイよりでかい3年生かもしれないし。

「どっちだよ、誰にも言ったりしねえよ」

 単純に好奇心で聞いた。起き上がり、カンサイの腕を掴んではっとなる。俺なんかよりぜんぜん太く固い腕。いまは力が入っていないから心地よい弾力を手のひらに伝えてくる。すげえ筋肉だ。

「そんなん聞いてどうすんねん」

 照れて俯くカンサイを見て、かわいい、なんて思ってしまった。

「どうもしねえけど、なんか気になるじゃん。嫌ならもう聞かねえよ」
「別に嫌ちゃうけど……」
「じゃ、どっちよ?」

 背中に腕をまわし顔を寄せた。背筋もすごいなと感心つつ、カンサイの顔を覗き込む。カンサイの伏せた目が俺を見た。

「俺は……タチ」

 タチって河中と一緒ってことだよな。そうか、やっぱり入れるほうか。こいつ、脱いだらすごそうだもんな。同じタチでも河中とはえらい違いだ。

「あ、あの、山口、背中こそばい……」

 気付いたらカンサイの背筋を指先で触っていた。

「ああ、悪ぃ。すごいな、お前の筋肉」
「部活で鍛えてるからかな」
「触ってもいい?」
「えっ、まぁ、いいけど……」

 了解をもらって遠慮なくカンサイの筋肉を触った。ここまでの筋肉をつけようと思ったらいったいどれくらい鍛えればいいのかと思う。盛り上がった胸板、丸太のような太もも、俺が触るとぐっと力を入れて瘤がもりあがった腕、肩にがっしり根をおろす太い首。同じ高校生とは思えない。

「あ、もう、もういいやろ、山口」

 上ずった声で我に返った。ずいぶん無遠慮に触っていた気がする。

「ごめん、夢中になってた」
「頼むわ、もう……。俺、勃ってしもたやんか」

 手で額を押さえ、カンサイが言う。

 え、と股間を見ると、大きく膨らんだものがズボンを押し上げていた。そっちもでかそうだ。

「ごめん、もっと早く止めてくれりゃよかったのに」
「だってお前めっちゃ楽しそうに触るし、俺もちょっと気持ち良かったし」

 二人して赤面した顔を見合わせ吹き出した。

「あっはは、お前って面白い奴だなぁ。ちょっと印象と違うよ」
「どんな印象やってん。恥ずかしいわ、もう」
「触ってやろうか?」
「え」

 どっちかっていうと、見てみたいっつうか、触ってみたいっつうか。男として自分のと比べてみたい気持ち、わかるだろ。

「や、やま、山口、お前、本気で言うてんか?」

 ずいぶんな取り乱し様に顔がにやける。河中とのことがあって俺、そういうのわりと平気になったのかもしれない。

「嫌ならいいけど?」

 ニッと笑いかけるとカンサイは俯いて、

「ほんなら、触ってもらおかな」

 と小さな声で言った。



関連記事
スポンサーサイト
[PR]

コメント

管理者にだけ表示を許可する