君が笑った、明日は晴れ(15/89)
2020.04.17.Fri.
<1話、前話>
ノズルをひねってシャワーを出した。 その音にまぎれこませて大きく息を吐き出した。
「まじかよ、俺」
河中の目が届かない場所にきてようやく取り繕うことをやめ、口を押さえて胸の動悸を耳元に聞いた。
さっきまで河中が入っていた場所が鈍く痛む。そこだけじゃない、下腹部にも鈍痛。3発なんて出しすぎだ。最後は河中にケツを掘られながら自分で扱いていっちまった。恥ずかしい。死にたい。俺って変態だったんか? なに気持ち良くよがってんだ。最終的に自分でも腰振ってなかったか? 死にたい。消えたい。
風呂場の壁に手をついて、長く大きな溜息をついた。顔が熱い。
これで河中に犯されたって被害者面出来るんだろうか。束縛するロープから解放されたあと、さっさと入れろと誘うようなことを言ってしまったし、これじゃ「合意の上のセックス」って言えるんじゃないのか?
「俺って最低、俺のバカ!」
満足げに下半身にぶらさがる不肖息子を叱責したが、それはそっくりそのまま自分にかえってきた。また重い溜息をつき、シャワーを浴びた。
~ ~ ~
部屋に戻るとベッドにこじんまりと座る河中が顔をこちらに向けてきた。俺を見て表情を強張らせる。
それを無視して服を着た。 ポケットから煙草を取り出し、口にくわえる。
「河中」
「はい」
河中の声が裏返っていた。 こいつ、 だいぶビビってるな。
「とりあえず、殴らせろ。話はそのあとだ」
「ハイッ」
すくっと立ち上がり、目をぎゅっと瞑る。俺は河中の前に立ち、青白くなった河中の顔を見下ろした。怯えている女の子に見えて殴る気持ちが萎えていく。いや、でもこいつのしたことは許せない。手を振り上げた。
グーは……、やめておくか。この華奢な体でグーパンチはちょっときつそうだ。広げた手を振りおろした。
部屋に平手の音。河中が床に倒れこんだ。そんなに強く叩いてないんだけど。
河中は頬を押さえ、びっくりした顔で俺を見上げる。いや、だからそんなに強く叩いてないって。蚊を叩きつぶす程度なんだけど。
「お前、弱すぎ」
「すみません……」
と俯く。か弱い男の子を苛めてるみたいで、俺の方が悪者みたいな構図じゃね? こんなんでよく、俺を手篭めにしようと考えたもんだ。
「ほら、立て。まだ終わってねえぞ」
「はい」
素直に立ち上がり、また俺の前に立つ。白い頬が真っ赤になっていた。……そんなに強く叩いてないはずなんだけどなぁ。
二発目に怯えて河中は固く目を瞑っている。俺はポケットからライターを取り出し、煙草に火をつけた。河中の顔に煙を吹きつけると、眉間にしわが寄った。
こんな弱っちい奴を殴るのもバカらしいな。
シャワーを浴びている間に気持ちも落ち着き、今はことのあとのダルさと眠気しか感じない。河中の背後のベッドが俺を呼んでいる。
「口開けろ」
え、と河中が目をあけた。
「口、開けろ」
おずおずと開いた口へ吸いかけの煙草を咥えさえ、俺はベッドに横になった。
「少し眠る。30分経ったら起こせ」
自分でもいい根性していると思うが、俺はこういう性格なんだ。起きてしまったことはどうしようもない、。過ぎたことは取り返しがつかない。だったら今の自分に正直に、気の赴くまま、本能に従えばいい。それが俺のモットーでもある。
ベッドに寝転がると、疲れが一気に押し寄せてきた。重い目蓋を持ち上げるのも億劫で、そのまま眠ってしまった。
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ノズルをひねってシャワーを出した。 その音にまぎれこませて大きく息を吐き出した。
「まじかよ、俺」
河中の目が届かない場所にきてようやく取り繕うことをやめ、口を押さえて胸の動悸を耳元に聞いた。
さっきまで河中が入っていた場所が鈍く痛む。そこだけじゃない、下腹部にも鈍痛。3発なんて出しすぎだ。最後は河中にケツを掘られながら自分で扱いていっちまった。恥ずかしい。死にたい。俺って変態だったんか? なに気持ち良くよがってんだ。最終的に自分でも腰振ってなかったか? 死にたい。消えたい。
風呂場の壁に手をついて、長く大きな溜息をついた。顔が熱い。
これで河中に犯されたって被害者面出来るんだろうか。束縛するロープから解放されたあと、さっさと入れろと誘うようなことを言ってしまったし、これじゃ「合意の上のセックス」って言えるんじゃないのか?
「俺って最低、俺のバカ!」
満足げに下半身にぶらさがる不肖息子を叱責したが、それはそっくりそのまま自分にかえってきた。また重い溜息をつき、シャワーを浴びた。
~ ~ ~
部屋に戻るとベッドにこじんまりと座る河中が顔をこちらに向けてきた。俺を見て表情を強張らせる。
それを無視して服を着た。 ポケットから煙草を取り出し、口にくわえる。
「河中」
「はい」
河中の声が裏返っていた。 こいつ、 だいぶビビってるな。
「とりあえず、殴らせろ。話はそのあとだ」
「ハイッ」
すくっと立ち上がり、目をぎゅっと瞑る。俺は河中の前に立ち、青白くなった河中の顔を見下ろした。怯えている女の子に見えて殴る気持ちが萎えていく。いや、でもこいつのしたことは許せない。手を振り上げた。
グーは……、やめておくか。この華奢な体でグーパンチはちょっときつそうだ。広げた手を振りおろした。
部屋に平手の音。河中が床に倒れこんだ。そんなに強く叩いてないんだけど。
河中は頬を押さえ、びっくりした顔で俺を見上げる。いや、だからそんなに強く叩いてないって。蚊を叩きつぶす程度なんだけど。
「お前、弱すぎ」
「すみません……」
と俯く。か弱い男の子を苛めてるみたいで、俺の方が悪者みたいな構図じゃね? こんなんでよく、俺を手篭めにしようと考えたもんだ。
「ほら、立て。まだ終わってねえぞ」
「はい」
素直に立ち上がり、また俺の前に立つ。白い頬が真っ赤になっていた。……そんなに強く叩いてないはずなんだけどなぁ。
二発目に怯えて河中は固く目を瞑っている。俺はポケットからライターを取り出し、煙草に火をつけた。河中の顔に煙を吹きつけると、眉間にしわが寄った。
こんな弱っちい奴を殴るのもバカらしいな。
シャワーを浴びている間に気持ちも落ち着き、今はことのあとのダルさと眠気しか感じない。河中の背後のベッドが俺を呼んでいる。
「口開けろ」
え、と河中が目をあけた。
「口、開けろ」
おずおずと開いた口へ吸いかけの煙草を咥えさえ、俺はベッドに横になった。
「少し眠る。30分経ったら起こせ」
自分でもいい根性していると思うが、俺はこういう性格なんだ。起きてしまったことはどうしようもない、。過ぎたことは取り返しがつかない。だったら今の自分に正直に、気の赴くまま、本能に従えばいい。それが俺のモットーでもある。
ベッドに寝転がると、疲れが一気に押し寄せてきた。重い目蓋を持ち上げるのも億劫で、そのまま眠ってしまった。
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