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君が笑った、明日は晴れ(3/89)

2020.04.05.Sun.
1話前話

 中学に入って僕はバスケ部に入った。緊張でガチガチになる僕たち一年生に、二年の山口先輩が冗談を言ったりして笑わせてくれた。

 笑顔がとても素敵で、男らしい人だな、と思った。

 僕にドリブルの仕方を教えてくれた時も、どうしてもうまく続けられない僕に、

「はじめから完璧にこなそうと思うな。長いスパンで最終的にうまくなっていればいいんだ。人よりうまくなりたかったら人よりたくさん、毎日練習を欠かさずにやれよ」

 と励ましてくれた。

「見てろ」

 そう言ってドリブルしたあと3ポイントシュートを決めた先輩に、僕は恋をした。

 先輩が3年生と喧嘩をして部をやめてもずっと好きだった。僕はずっと先輩を遠くから見ていただけ。何も話すことが出来ないまま、先輩は中学を卒業してしまった。

 先輩と会えなくなってから僕は後悔した。だから先輩を追いかけて、先輩と同じ高校を受験した。

 入学してから何度か先輩を見かけた。少し背が伸びて大人びて見えたけど、あまりかわっていなくて嬉しかった。

 宮本という三年生の人に声をかけられ、僕は咄嗟に先輩の名前を口走っていた。 宮本さんと一緒に屋上へ行った時、高校に入って初めて間近に先輩を見た僕は、先輩があまりに格好よくて感動した。

 昔から喧嘩っぱやい先輩らしく宮本さんをあっという間にやっつけたあと、追い縋る僕を置いて屋上から逃げるように去って行った。久し振りに先輩に会えて浮かれすぎたことを反省した。

 だから今日は落ち着いて話をするぞ。

 前日用意した映画のチケット。先輩を映画に誘うつもりだ。

 朝、教室で寝ていた先輩を廊下に呼び出してチケットを差し出した。

「これ、次の日曜までなんです。良かったら……」
「お、くれるのか。悪いな。サンキュ」

 僕の手からチケット二枚を取り上げ、先輩は教室に戻った。

「え、ちが、先輩、違うんです、先輩っ」
「早く教室戻らねえと、もうすぐチャイム鳴るぞ」

 先輩が言い終わる前にチャイムが鳴った。

 そんな……。僕は先輩にチケットをあげに来たんじゃなくて、映画を一緒に見ようと誘いに来たのに。

 先輩はさっさと自分の席について、前の座席の人と話をしている。いいなぁ、僕も先輩と同じ年に生まれて同じクラスになりたかった。

 かなり後ろ髪引かれながら自分の教室に向かって歩き出した。

 先輩ひどいよ。僕のことなんてまったく眼中にないんだから。屋上で再会した時も僕のこと覚えていなかったものな。なんか急に落ち込んでしまった。




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