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君が笑った、明日は晴れ(1/89)

2020.04.03.Fri.
なんでも許せる人向け。視点コロコロ、各話長さまちまち、脇役とエロ行為あり、リバあり、女性との絡みあり、皆わりとクズい


 えらく可愛い一年が入学してきた、と戸田がウキウキで話す。男子校の不毛な会話。昼食のあとにわざわざ聞くものじゃない。俺は煙草を指で弾いて捨てた。

 この高校に入るまで、男子校ではホモ行為が横行しているなんて信じていなかったが、実際入ってみると女っけなしで、ちょっと顔の可愛い男は、若い性を持て余した男共からその対象として狙われていた。

 まわりがそんなだからか、あまりそういう行為に対して抵抗が少なく、その中で本物の同性愛者もいれば、ただの性処理としてその行為にはまるものもいて、わりとおおっぴらに、そういう会話もなされてきた。

「なんて名前だったかなぁ、えーっと」

 腕を組んで戸田が考え込む。

「あ、そうだ、河中だ。さっそく三年の宮本さんに呼ばれたらしいよ。あの人、可愛い子好きだからなぁ。あいつ絶対社会に出たら犯罪者になると思うね」
「あー、わかるわ、ソレ。普通に未成年略取とかしそうだもんな、あの人」

 宮本。三年生。ガタイがいい。そしてちょっと頭がおかしい。上級生がいた頃は、宮本に狙われても部活や知り合いの先輩に頼んで助けてもらえたが、宮本が三年生になった今、救ってもらえるアテがなくなり、見目がいいと自覚している男は毎日尻の心配をしなくてはならなくなった。

 可愛いという新入生の河中も色キチの宮本も、俺にはまったく関係ない奴らだ。

「重夫、おまえさっきから携帯いじって何やってんのよ」

 背の低い戸田が俺の手許を覗きこむ。

「律子にメール」

 律子は合コンで知り合った彼女だ。俺よりひとつ上の高校三年生。

「重夫はいいよなぁ、女がいて。俺って童貞のまま高校生活終わるのかなぁ。絶対今年中に童貞を捨ててやる!」

 童貞馬鹿の戸田を無視して律子にメールを送信した。携帯をポケットに仕舞い、立ち上がる。

「戸田、煙草一本ちょうだい」
「ダメ、お前は童貞じゃないから、ダメ!」

 目を吊り上げて腕でバッテンをする。 こいつ、ほんとにバカだわ。

 呆れていると屋上の扉が勢い良く開いた。デカイ図体の男が一人、やってきた。

「山口重夫ってのはどいつだ」
「げっ、宮本じゃん」

 戸田が小さく呟く。

「俺が山口だけど」

 宮本は俺の目の前に立ち、見下ろしてくる。俺の身長が177だから、こいつ、180以上はあるな。

「何か用?」
「河中、こっちに来い」

 宮本が振りかえる。屋上の出入り口からおずおずと一人の生徒が姿をあらわした。

「うそぉ、俺初めて見た、まじ可愛いじゃん」

 戸田が感心したように言う。これがさっき戸田が話していたえらく可愛い一年生、河中か。

 栗色でさらさらした髪の毛、色の白い顔、大きな目、長い睫毛に小さくて赤い唇。確かに、男には見えない。

 河中は怯えた目で俺と宮本を交互に見る。

「河中がお前の事が好きなんだとよ。お前はどうなんだよ」
「はぁ?」

 宮本の言葉に驚いた。

「俺とそいつ、面識ないんだけど」
「こいつはこう言ってるぜ。河中、どういうことだよ」
「あ、あの、僕のこと覚えてませんか? 同じ中学のバスケ部だったんですけど」

 確かに俺は中学の時バスケ部だった。二年にあがったとき先輩と喧嘩してやめた。こんな奴いたっけ?

「僕がバスケ部に入った途端、先輩は喧嘩して部をやめちゃったけど、僕、先輩にドリブルの仕方教わったこと、今でも忘れてませんっ」

 赤い顔で河中が言う。ぜんぜん思い出せない。

「ごめん、覚えてねえわ」

 頭をかいて作り笑いを浮かべた俺を見て、河中は両手で顔を覆った。

「僕、先輩に会いたくてこの高校来たのに」

 あれ、泣いちゃった? 俺が泣かしたの? 自分の顔を指差し、戸田を見た。戸田は無言で頷く。俺が泣かしたのか?

「諦めついただろ、俺と付き合えよ。男子校に入ったら危ない奴に狙われるんだぜ。俺が守ってやるからよ」

 いまこの学校で一番危ない宮本が、河中の肩に腕をまわして耳に囁く。可哀相な一年生の河中君、とんでもない奴に目をつけられちゃったね。それもこれも可愛く生まれて来たせいだよ。そんな顔して男子校に進学してきたからだよ。ご愁傷様。心の中で合掌した。

「嫌ですっ、僕、先輩が好きなんです! 宮本さんとは付き合えません!」

 河中がタッと走って俺に抱きついた。ふわっといい匂い。こいつ、女の律子よりいいにおいする。

 河中が俺に抱きついたのを見て宮本が青筋を立てた。ひきつる笑みを浮かべ、指を鳴らす。

「こうなったらどっちが河中を取るか、勝負といこうや」
「え、ちょっと、俺は別にこいつを取り合ってなんかないんだけど」
「先輩、負けないで! 僕を守って!」

 なに俺の応援してんだ。宮本の顔に青筋が増えてるじゃねえか。

「河中君、危ないからこっちおいで」

 フェンス際に立つ戸田が河中を手招きする。はい、と返事をし、河中が俺から離れ、戸田の横に立った。

「かかって来いや、こらあ!」

 唾を飛ばして宮本が叫ぶ。面倒くさい。

「俺とあんたがやり合う意味、なくない? そこの河中っての、つれてってくれて構わないから」
「お前をぶっ倒してからもらって行くよ!」

 宮本が殴りかかってきた。本気だ、この人。咄嗟によけてその腹を殴った。前に傾いた顎に膝をあてる。のけぞった右頬を殴りつけた。宮本が後ろに倒れる。

「あぁ、やっちゃった。俺、先に教室戻ってるから」

 気が短くて喧嘩っ早い性格がこの時は幸いした。それなりに喧嘩慣れしているおかげで、とち狂った宮本に殴られずに済んだ。

 教室に戻ろうとする俺の背中に河中が抱きついてきた。

「先輩、僕のためにありがとうございます。やっぱり僕、先輩のことが好きです」

 振りかえって河中の真っ赤な顔を見た。本当にぱっと見は可愛い女の子に見える。宮本でなくても、こいつを気に入ってものにしたがる男はたくさんいるだろう。

「お前、気を付けろよ。男子校はお前が思う以上に危険な場所だぞ。暗い所や人気のないとこに行くなよ」

 同じ中学のバスケ部だった(らしい)よしみで忠告してやった。

「だったら先輩が僕を守ってください。僕と付き合ってください」

 胴体にしがみついたまま俺の顔を見上げてくる。潤んだ目で見られると、こいつが男だか女だかわからなくなってくる。

 おいおい、俺には律子がいるだろう。女に飢えて男を食ってる童貞と同じにはなりたくない。

 河中の肩を持って引き剥がした。細い肩だ。

「俺は彼女いるし、宮本みたいな趣味もないから。ごめんな、他の奴探してくれよ」

「嫌です、先輩じゃないと嫌です! 僕本当に先輩に会いたくてここまで追って来たんですよ。そんなこと言わないで下さい」

 そう言われましても……。俺は河中の事覚えてもいなかったんだぜ。

「戸田!」

 しゃがんで宮本の顔に落書きしていた戸田が顔をあげた。そんなことしてあとで宮本に殺されても知らんぞ。

「こいつのこと頼むわ。なんか、俺の苦手分野だから」

 何か言い募る河中を突きはなし、屋上をあとにした。

 河中の存在が今後の俺の高校生活に大きな影響を与えてくるなんて、この時は思いもしなかったわけで。



お疲れさまです!
更新いたしました!お気付きの方もいらっしゃるように今回の話は全89話となっております!w
これも前にやってたサイトの使いまわしです。いつも書き終わってから更新するんですがこれは書きながら更新してたので話にあまりまとまりがありません。いま読み返したらすごく恥ずかしい。ちなみにタイトルはGRAPE/VINEの歌詞から拝借です。

注意書きの通り、視点は各話で違うし長さもまちまち。リバはあるし女性とエロあるし、モブともヤッちゃう。なんでも許せる方だけ読み進めてください。すいません。

全89話。二ヶ月以上というか三カ月弱?急用が入って予告なく更新をお休みする場合があるかもしれませんし、もし万が一、なんの音沙汰もなく長期間更新が止まったら、あ…、と察してください(;д;)
そうならないよう手洗いうがいマスク着用不要不急の外出は控えて更新最終日まで日々過ごしたいと思います!全89話を更新し終わる頃には世界が日常を取り戻していますように!新型コロナ収束祈願です!

ではでは、これからしばらくお付き合い頂けると嬉しいです。
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