大事だったのに(1/3)
2019.08.23.Fri.
※イチャラブはない
俺が好きなのはお前だよ、と言ったときの宝生の顔ったら。
しつこく訊いたことを後悔しただろう。俺は何度も嫌だと言ったし、これ以上しつこくしたら友達やめるとまで言った。それでも宝生は止めなかった。
「おまえみたいなイケメンってどんな女好きになるんだよ。すげえ理想高そうだもんな。誰だよ、教えろよ」
後悔したってしらないぞ。
もうすべての関係を終わらせる気で告白した。宝生への恋心も、友情も、関係も、全部ここで終わりだと自棄になって。
宝生は冗談だと思ったのか、笑いかけた。いや冗談にしたかったのかもしれない。自分で聞いておいて、逃げようとしやがった。
でも俺の真剣な顔を見て笑みをひっこめた。葛藤したのか、良心かは知らないけど、それは友情が終わる瞬間、最良の選択だった。
「そういうことだから」
宝生を屋上に残して教室に戻った。チャイムが鳴って宝生も戻ってきた。俺のほうをチラチラ見てくる。知らん顔した。
あいつがどう出てくるか、いくつか候補はあるけど、どれも最悪なものだった。気持ち悪がられて避けられるのは間違いない。誰かに言いふらされたら、もう学校も辞めるつもりだった。
放課後になって宝生は「高山、帰ろうぜ」と何食わぬ顔で話しかけてきた。
「友達やめるって言っただろ」
「冗談だろ」
「冗談じゃない」
何か言いかける宝生を無視して先に帰った。
翌日もいつも通りの学校生活だった。誰も俺をホモだとからかってこない。そのことすら知らない風に声をかけてくる。
宝生は誰にも言わなかったようだ。自分までホモだと言われるのを恐れただけかもしれない。
「昨日、置いて帰るとかひどいじゃん。俺、おまえと友達やめる気ないし」
休み時間になると性懲りもなく宝生が話しかけてくる。無神経さに苛々した。いや俺が小心なだけだ。生殺しの状況が耐えられない。嫌われるなら徹底的に嫌われたい。辱められて、1ミリの可能性もないくらい宝生を諦めたいのだ。
「俺の言ったこと理解できてる?」
「……できてる。ちょっと信じらんねえけど」
「じゃあ、もう構うなよ。どういうつもりかしらんけど。同情? 良心の呵責? 興味本位? どれも迷惑。もう放っとけ」
「やだよ。なんで俺の返事聞かねえの?」
「聞く必要がない」
「ちゃんと聞けよ。俺、おまえと付き合ってみたい」
「は?」
「は?とか言うな。俺が好きなんじゃねえのかよ。俺と付き合いたくねえのかよ」
「意味わかって言ってるのか」
「わかってるよ、ばかにすんな」
宝生の顔が赤い。俄かには信じられない。素早くあたりを見渡した。俺たちをニヤニヤ笑って見ている奴らはいない。誰も俺たちを見ていない。いつもの、ダレた、休み時間だ。
「本気かよ」
宝生は「うん」と頷いた。どうせ好奇心と罪悪感だろう。そっちがその気なら、利用させてもらう。絶対逃がしてやるもんか。
放課後、ぐずぐずして最後まで教室に残った。誰もいなくなってから宝生を掴まえキスした。ガチガチに固まった体を抱きしめて、舌を入れた。ぎこちなく応えてくる。
「こういう意味だってわかってるんだよな?」
「まじだったんだな」
宝生はむりやり笑った。引いた? 俺を怖がっているような作り笑い。いまさら後悔したって遅いって言っただろ。おまえはいつも踏みこみ過ぎてから過ちに気付くんだ。
「週末、俺んち泊まりに来いよ」
「えっ、いいけど」
まだ覚悟も固まらないうちに、実感がわかないうちに、いただけるものは頂いておこう。
週末になると宝生はほんとうに泊まりにきた。部屋にこもり、何度も宝生にキスした。体を触った。性的な意味合いに気付かないはずがない。なにをするつもりなのか、宝生もわかっているはずだ。具体的にイメージできているかは別として。
用意しておいたゴムとローションを、わざと見せつけるようにベッドに放り投げた。宝生は顔色を変えた。
「今日、そこまですんの?」
「付き合ってるなら当然だろ」
「は、早くね?」
「なに。テーマパークで手繋いでデートしてからじゃないと駄目?」
「そういう意味じゃなくて、なんかおまえ、急いでない?」
「好きな奴と一緒にいるのに、したくならない奴なんているのか?」
「そうだけど」
口ごもる宝生をベッドに押し倒し裸にひん剥いた。恥ずかしいだとかおまえも脱げだとか言われたけど、聞こえないふりして手順通りに進めた。
足を押しひろげ、尻穴を触ったとき、宝生は少し抵抗した。顔は真っ赤だった。
指にゴムをはめローションで濡らしてから宝生のなかに入れた。宝生は苦痛に顔を顰めて痛いと言った。
俺だって初めてだ。知識は全部ネットから。なかに前立腺があるはずで、それを探してやみくもに指を動かす。
「痛い、いやだ、やめてくれよ」
宝生の涙声にも気づかないほど、余裕がなかった。
それらしい盛り上がりをみつけてそこを執拗に触った。宝生の口からエロい声は出てこない。ただ「痛い」「嫌だ」と呻くだけ。
「嫌っていうなよ! 俺だって必死にやってんのに! おまえ俺とヤリたくねえの? なんで俺と付き合ってんだよ!」
思う通りにいかなくて宝生に八つ当たりした。宝生は何も言わなくなった。我慢する息遣いだけが聞こえる。宝生のペニスはピクリとも反応しない。焦りだけが募る。ローションを注ぎ足すことにすら、気が回らなかった。
「も……う、いいんじゃね? 入れろよ」
ぜんぜん気持ち良くなっていないことはわかっていたが、これ以上どうしていいかわからず、言われた通り入れることにした。
突っ込んでピストンしていれば状況が変わるかもしれないと期待した。
ゴムをはめ、ローションで慣らし、まったく解れていない宝生の尻に押しつけた。痛いくらいの締め付けだった。腰を動かしたら気持ちよくて止まらなくなった。
がむしゃらに腰を振った。射精はすぐだった。ゴムを替え、また挿入した。
二度目になってやっと宝生の様子を見る余裕が出た。宝生の眉間にはずっとしわが寄っていた。唇を噛みしめ、苦痛に耐えるため固く目を瞑り、目尻から涙を流していた。ペニスは力なく腹に横たわったままだ。
焦りと、怒りがこみあげて、また乱暴に腰を揺さぶった。宝生は喘ぐこともなければ、苦痛の声もあげない。ひたすら黙って苦行に耐えていた。
二度目を出し終わってから、宝生のペニスを愛撫した。手で扱いて大きくさせ、舐めてみた。固くはなるが、射精はしない。躍起になって触っていたら「もういいよ」と止められて、敗北感に打ちのめされた。
家族が寝静まった夜、また宝生に挿入した。俺は二回イッたが、宝生はイカなかった。尻だけだと勃つこともなく、手と口でやっと勃起する。だが射精はない。
「俺、感度悪いのかも」
と宝生は言い訳したが、俺への慰めに聞こえた。
それから隙を見ては宝生にキスして、体に触って、できる時間や場所があれば宝生の尻にペニスを突っ込んだ。
動画通りにピストンしているのに宝生は喘がない。勃起もしない。目を閉じ、眉間にしわをつくって、ただ終わるのを待っている。
それが二ヶ月も続くと、俺も宝生を勃たせようとか、喘がせようとか、思わなくなってきた。それが当たり前になってしまっていた。何も言ってくれないから、何が良いことなのかもわからない。
いつからかセックスがただの作業になっていた。ゴムをつけ、ローションで慣らし、ピストンして、射精して終わり。
好きな男の、生きたダッチワイフ。
セックスのとき以外、宝生はいつも通りだった。冗談を言って、俺をからかい、よく笑い、よく喋る。二人きりの、そういう雰囲気になったときだけ、無口になる。
照れているのだと、思いこもうとしていた。無口になるわけを聞いたら、宝生が離れてしまうような気がしたから、怖くて聞けなかった。
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俺が好きなのはお前だよ、と言ったときの宝生の顔ったら。
しつこく訊いたことを後悔しただろう。俺は何度も嫌だと言ったし、これ以上しつこくしたら友達やめるとまで言った。それでも宝生は止めなかった。
「おまえみたいなイケメンってどんな女好きになるんだよ。すげえ理想高そうだもんな。誰だよ、教えろよ」
後悔したってしらないぞ。
もうすべての関係を終わらせる気で告白した。宝生への恋心も、友情も、関係も、全部ここで終わりだと自棄になって。
宝生は冗談だと思ったのか、笑いかけた。いや冗談にしたかったのかもしれない。自分で聞いておいて、逃げようとしやがった。
でも俺の真剣な顔を見て笑みをひっこめた。葛藤したのか、良心かは知らないけど、それは友情が終わる瞬間、最良の選択だった。
「そういうことだから」
宝生を屋上に残して教室に戻った。チャイムが鳴って宝生も戻ってきた。俺のほうをチラチラ見てくる。知らん顔した。
あいつがどう出てくるか、いくつか候補はあるけど、どれも最悪なものだった。気持ち悪がられて避けられるのは間違いない。誰かに言いふらされたら、もう学校も辞めるつもりだった。
放課後になって宝生は「高山、帰ろうぜ」と何食わぬ顔で話しかけてきた。
「友達やめるって言っただろ」
「冗談だろ」
「冗談じゃない」
何か言いかける宝生を無視して先に帰った。
翌日もいつも通りの学校生活だった。誰も俺をホモだとからかってこない。そのことすら知らない風に声をかけてくる。
宝生は誰にも言わなかったようだ。自分までホモだと言われるのを恐れただけかもしれない。
「昨日、置いて帰るとかひどいじゃん。俺、おまえと友達やめる気ないし」
休み時間になると性懲りもなく宝生が話しかけてくる。無神経さに苛々した。いや俺が小心なだけだ。生殺しの状況が耐えられない。嫌われるなら徹底的に嫌われたい。辱められて、1ミリの可能性もないくらい宝生を諦めたいのだ。
「俺の言ったこと理解できてる?」
「……できてる。ちょっと信じらんねえけど」
「じゃあ、もう構うなよ。どういうつもりかしらんけど。同情? 良心の呵責? 興味本位? どれも迷惑。もう放っとけ」
「やだよ。なんで俺の返事聞かねえの?」
「聞く必要がない」
「ちゃんと聞けよ。俺、おまえと付き合ってみたい」
「は?」
「は?とか言うな。俺が好きなんじゃねえのかよ。俺と付き合いたくねえのかよ」
「意味わかって言ってるのか」
「わかってるよ、ばかにすんな」
宝生の顔が赤い。俄かには信じられない。素早くあたりを見渡した。俺たちをニヤニヤ笑って見ている奴らはいない。誰も俺たちを見ていない。いつもの、ダレた、休み時間だ。
「本気かよ」
宝生は「うん」と頷いた。どうせ好奇心と罪悪感だろう。そっちがその気なら、利用させてもらう。絶対逃がしてやるもんか。
放課後、ぐずぐずして最後まで教室に残った。誰もいなくなってから宝生を掴まえキスした。ガチガチに固まった体を抱きしめて、舌を入れた。ぎこちなく応えてくる。
「こういう意味だってわかってるんだよな?」
「まじだったんだな」
宝生はむりやり笑った。引いた? 俺を怖がっているような作り笑い。いまさら後悔したって遅いって言っただろ。おまえはいつも踏みこみ過ぎてから過ちに気付くんだ。
「週末、俺んち泊まりに来いよ」
「えっ、いいけど」
まだ覚悟も固まらないうちに、実感がわかないうちに、いただけるものは頂いておこう。
週末になると宝生はほんとうに泊まりにきた。部屋にこもり、何度も宝生にキスした。体を触った。性的な意味合いに気付かないはずがない。なにをするつもりなのか、宝生もわかっているはずだ。具体的にイメージできているかは別として。
用意しておいたゴムとローションを、わざと見せつけるようにベッドに放り投げた。宝生は顔色を変えた。
「今日、そこまですんの?」
「付き合ってるなら当然だろ」
「は、早くね?」
「なに。テーマパークで手繋いでデートしてからじゃないと駄目?」
「そういう意味じゃなくて、なんかおまえ、急いでない?」
「好きな奴と一緒にいるのに、したくならない奴なんているのか?」
「そうだけど」
口ごもる宝生をベッドに押し倒し裸にひん剥いた。恥ずかしいだとかおまえも脱げだとか言われたけど、聞こえないふりして手順通りに進めた。
足を押しひろげ、尻穴を触ったとき、宝生は少し抵抗した。顔は真っ赤だった。
指にゴムをはめローションで濡らしてから宝生のなかに入れた。宝生は苦痛に顔を顰めて痛いと言った。
俺だって初めてだ。知識は全部ネットから。なかに前立腺があるはずで、それを探してやみくもに指を動かす。
「痛い、いやだ、やめてくれよ」
宝生の涙声にも気づかないほど、余裕がなかった。
それらしい盛り上がりをみつけてそこを執拗に触った。宝生の口からエロい声は出てこない。ただ「痛い」「嫌だ」と呻くだけ。
「嫌っていうなよ! 俺だって必死にやってんのに! おまえ俺とヤリたくねえの? なんで俺と付き合ってんだよ!」
思う通りにいかなくて宝生に八つ当たりした。宝生は何も言わなくなった。我慢する息遣いだけが聞こえる。宝生のペニスはピクリとも反応しない。焦りだけが募る。ローションを注ぎ足すことにすら、気が回らなかった。
「も……う、いいんじゃね? 入れろよ」
ぜんぜん気持ち良くなっていないことはわかっていたが、これ以上どうしていいかわからず、言われた通り入れることにした。
突っ込んでピストンしていれば状況が変わるかもしれないと期待した。
ゴムをはめ、ローションで慣らし、まったく解れていない宝生の尻に押しつけた。痛いくらいの締め付けだった。腰を動かしたら気持ちよくて止まらなくなった。
がむしゃらに腰を振った。射精はすぐだった。ゴムを替え、また挿入した。
二度目になってやっと宝生の様子を見る余裕が出た。宝生の眉間にはずっとしわが寄っていた。唇を噛みしめ、苦痛に耐えるため固く目を瞑り、目尻から涙を流していた。ペニスは力なく腹に横たわったままだ。
焦りと、怒りがこみあげて、また乱暴に腰を揺さぶった。宝生は喘ぐこともなければ、苦痛の声もあげない。ひたすら黙って苦行に耐えていた。
二度目を出し終わってから、宝生のペニスを愛撫した。手で扱いて大きくさせ、舐めてみた。固くはなるが、射精はしない。躍起になって触っていたら「もういいよ」と止められて、敗北感に打ちのめされた。
家族が寝静まった夜、また宝生に挿入した。俺は二回イッたが、宝生はイカなかった。尻だけだと勃つこともなく、手と口でやっと勃起する。だが射精はない。
「俺、感度悪いのかも」
と宝生は言い訳したが、俺への慰めに聞こえた。
それから隙を見ては宝生にキスして、体に触って、できる時間や場所があれば宝生の尻にペニスを突っ込んだ。
動画通りにピストンしているのに宝生は喘がない。勃起もしない。目を閉じ、眉間にしわをつくって、ただ終わるのを待っている。
それが二ヶ月も続くと、俺も宝生を勃たせようとか、喘がせようとか、思わなくなってきた。それが当たり前になってしまっていた。何も言ってくれないから、何が良いことなのかもわからない。
いつからかセックスがただの作業になっていた。ゴムをつけ、ローションで慣らし、ピストンして、射精して終わり。
好きな男の、生きたダッチワイフ。
セックスのとき以外、宝生はいつも通りだった。冗談を言って、俺をからかい、よく笑い、よく喋る。二人きりの、そういう雰囲気になったときだけ、無口になる。
照れているのだと、思いこもうとしていた。無口になるわけを聞いたら、宝生が離れてしまうような気がしたから、怖くて聞けなかった。
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