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インモラル 1

2019.07.27.Sat.
わけあって。

※殺し屋と被害者遺児。やおい。エロなし


 わけあって、赤の他人のこどもと一緒に暮らしている。まだ中/学生だ。

 本名は樋口哲郎。これもわけあって菊池哲郎と名前をかえた。

「お兄ちゃん、新しいゲームソフトが発売されるから欲しいんだけど」

 テレビを見ていた哲郎が急に振り返った。目鼻立ちのはっきりした整った顔立ち。頭もよくて成績優秀。俺が仕事で何日か家を空けるときも、ひとりで留守番できるしっかり者。

 とは言えまだ中/学生。ゲームなんかが楽しいらしい。

「ゲーム? この前買ってやっただろ」
「もう5回クリアした」
「6回目をやりなさいよ」
「買ってくれないの?」
「金がないもん」

 哲郎はため息をついた。

「僕の親の遺産があれば買えたのにね」

 さらっと言われて危うく聞き逃すところだった。

「親の遺産って?」
「そこそこ持ってたっぽいよね。生命保険ももらえてないし。まあ、事情が事情だから仕方ないけどね」
「事情って」
「僕の親を殺したのってお兄ちゃんでしょ」

 大きな目が俺をまっすぐ見つめる。怒りも悲しみも、なにも読み取れない無垢な瞳。

「知ってたのか?」
「知ってたっていうか、覚えてるよ。親の記憶も、僕の苗字が本当は樋口だってことも、お兄ちゃんが僕の家に来て、僕を連れて行った夜のことも」

 哲郎の両親は詐欺師だった。それで一財を築き、住む場所を点々と変えながらも裕福な生活を送っていた。

 欲は無限に尽きることがなく、行く先々で金持ち相手に詐欺を続けた。そのなかに俺の雇い主の身内がいた。詐欺師には金を持った愚かな主婦に見えたようだ。やくざの嫁と知らず億の金を引きだして逃走。

 俺が金の回収と始末を命じられた。強盗に見せかけて詐欺師夫婦を自宅で殺害。

 あのとき哲郎はまだ7歳だった。哲郎の親を殺したあとさっさと立ち去るはずが、トイレに起きてきた哲郎に見つかってしまった。天使のようにかわいい笑顔で、なにも知らない哲郎は「サンタさん?」と俺に抱きついてきた。殺す選択もあったが哲郎を連れて帰ってしまった。親の罪の道連れになるには、哲郎は幼すぎた。

 あれから7年。裏稼業仲間に頼んで適当な戸籍を手に入れ、俺と哲郎は兄弟として暮らしている。

 もちろん哲郎に両親殺害のことは伝えていない。ただ連れ帰り、「今日から俺と暮らすんだ」としか説明しなかった。哲郎もただニコニコして「うん」と頷いただけだった。

「小学校の名前を覚えてたから、そこから住んでた場所を特定して、僕の苗字で検索すれば事件の記事も出てきたしね」
「いつ知った?」
「中学に入る前」
「どうして今まで黙ってた?」
「お兄ちゃんが何も言わないし、ギクシャクするのも嫌だったし」
「警察に行こうと思わなかったのか?」
「そんなことしたらお兄ちゃん捕まっちゃうじゃん。僕も施設に行くのは嫌だし」
「それでいいのか? 親の仇を討とうと思わなかったのか? いつでもその機会はあっただろ」
「お兄ちゃんが嫌な奴だったらそうしてたかもしれないけど、僕、お兄ちゃんのこと好きだもん」

 本当にわかっているのかいないのか、哲郎は無邪気に笑った。あの時と同じ天使のような笑顔。誰を殺しても罪悪感なんか抱かない俺が、哲郎を歪めてしまったのは俺かもしれないと、少し後悔している。

「お兄ちゃんって殺し屋なの?」
「まあそうなるな」
「かっこいい。漫画みたい」
「いやいや、かっこよくないよ。すごく地味だから」
「かっこいいよ。僕もなりたい」
「ろくな死にかたしないから哲郎はやめなさい」
「やだ。ゲーム買ってくれなきゃ僕も殺し屋になる」
「そういう脅し方はやめなさいよ」
「どうする? ゲーム買ってくれる? 僕に人の殺し方教えてくれる?」
「ゲーム買ってあげるから、殺し屋になりたいなんて言うんじゃありません」
「やったー、お兄ちゃん大好き」

 と俺に抱きついてきた。親を殺されたとも知らずに、真夏のサンタを信じて抱きついてきた、あの夜みたいに。

 そして俺も、あの夜みたいに、哲郎を抱き返した。






中/学生はショタですか?!
こんな感じの完全投げっぱなしな、山なし落ちなし意味なしの小話をいくつか更新したい。
細かいツッコミどころは満載ですが、そこはスルーです!

この前久しぶりにレオンを見たんですよ。二人の、ちょっと社会常識なさそうな幼い感じがいいなって。
加えていま、SEKIROっていうゲームをやってて、御子様を守る忍びって萌えるなって。そういうのが創作動機ですw

暇つぶしに読んでもらえたら嬉しいです!

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