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お金じゃない(1/2)

2019.05.17.Fri.
<前作「おいくら?」>

 最近俺、変なんだよ。

 今日も仕事が終わって飯食って、まっすぐアパートに帰ってきてしまった。誘惑のネオンは途中たくさんあったのに、それ全部無視して。

 最近、パチンコをやっても楽しくなくなってきた。競馬や競輪競艇も試してみたが同じ。どうやらそろそろギャンブルの熱が冷めてきたらしい。

 いつもそうだ。

 小さいはカードゲームにはまった。お小遣いはもちろん、もらったばかりのお年玉も全額つぎ込んだ。ゲーム自体、楽しかったけど、どっちかというと集めることに熱心だった気がする。

 カードゲームに飽きたら今度はギターにはまった。近所の男子高校生がギター背負ってる姿がかっこよかったから。チューニングもなんとかやったし、Fコードもおさえられるようになって、簡単な曲も弾けるようになった。これからって時に別クラスの奴から「バンド組もうぜ!」と誘われた途端、飽きた。

 次は服とか小物にはまった。バイトで稼いだ金のほとんどはこれに消えた。新作を誰より早く手にいれて、それを着て街を歩くのが好きだった。といっても、毎日バイト三昧だったけど。

 それからも俺は夢中になるものをころころ変えた。実家の親から部屋のガラクタをどうにかしろと、帰省のたびに怒られる。あんなにはまったのに、いま見ると俺がみてもガラクタだなと思う。なんの愛着もない。売ればいくらかになりそうな物もあるが、リサイクルショップに持っていくことがすでに面倒臭い。

 こんな性格のせいで金なんか一円もたまらなかった。それどころか一時は借金すらあった。ツレの宮野には総額いくら借りたっけ。あいつには頭があがらない。

 宮野は高校の時からのツレだ。飽きっぽくて、言動が薄っぺらくて、万年金欠で、バイトばっかしてた俺を見捨てなかった唯一のダチだ。

 おとなしめで、堅実で、ギャンブルはもちろん信号無視だってしないような男。俺とは正反対。どうして仲良くなったのか不思議なくらい。

 きっかけは確かあいつが俺のことを褒めてくれたからだ。「かっこいいね」って。お洒落に命をかけてた頃だったから、その褒め言葉が一番嬉しかった。もう誰も、俺の話を聞いてくれなくなった時期でもあったから、雑誌や行きつけの店の店員から見聞きした知識を、一方的に宮野にまくしたてた。

 今思うと相当迷惑だったと思うのに、宮野は最後まで付き合ってくれた。俺は密かに「親友」だと思うくらい感謝してた。あいつに、彼女が出来るまでは。

 冷蔵庫をあけて缶チューハイを一本出した。酒は嗜む程度。いまのとこ、これにはまる気配はない。煙草も吸うけど、止めようと思えばやめられる気がする。

 ぼーっとテレビを見てたら携帯が鳴った。最近、ギャンブルに金を使わないから、毎月携帯料金も公共料金もきちんと払えている。前はよく宮野に「連絡がつくように携帯料金だけはちゃんと払え」と怒られたもんだ。

 電話の相手はその宮野からだった。

「どったの?」
『いま電話大丈夫か?』
「大丈夫、もう家で飲んでるし」
『GWは実家に戻るから。一応、知らせておく。お前はいつも急に来るから』

 世間で話題の大型連休。俺にはなんの予定もない。宮野んちでダラダラしようと思っていたのに当てが外れた。

「そっか。オッケーオッケー。わざわざあんがと」
『無駄遣いするなよ』
「しないって。俺最近、真面目だし」
『この前、金貸してって来たこと忘れたのか』

 呆れたような声。ぶっちゃけ忘れてた。だってあれ、嘘だし。

『まあいい。お前がだらしないのは今に始まったことじゃないしな。GWだからって浮かれるなよ。じゃあな』

 声が聞こえなくなった携帯をいつまでも耳に当てている。実家に帰るからって、わざわざ知らせてくれるなんて、宮野は優しい。っていうか、お人よしだと思う。だから俺みたいなだらしない奴に付け込まれるんだ。

 宮野と俺の関係は、俺のこのだらしなさのせいで、特殊なものになってしまった。

 そんなに金がないならウリでもやったらどうだって宮野に言われて、それを本気にしたら馬鹿かって怒られた。それなら僕が最初の客になってやる、と宮野は俺を抱いた。

 それ以来、金に困ったら、俺は宮野に買われに行った。一回五千円。フェラも下手糞なテク無しのド素人に五千円は高いって宮野は言う。俺もそう思う。だって俺のほうが気持ちよくなってる気がするから。

 だから最近は金に困ってなくても、宮野に抱かれたくなってしまう。この前なんか、また携帯止められそうだって嘘をついて宮野とセックスした。回を重ねるごとに気持ちよさが増してる。宮野も俺の体を熟知して、どこをどうすればいいのかわかってる。

 この前は、立て続けに2回、イカされた。頭馬鹿になりそうだった。

 思い出したらムラムラしてきた。GWに遊ぶ金貸してって、宮野んちに行ってやろうかな。でも今月は同期の奴が結婚するから金欠だって言ってたし。金のやりとりなしで宮野とセックスするのは、さすがにおかしいよなあ。

 チューハイの缶を置いてちんこを握った。宮野とのエッチを思い出しながら必死に擦る。イケそうだけど、なんか物足りない。ケツの穴に刺激がほしい。

 1人でする時は弄ったことがない。宮野んちに行く前にエチケットとして綺麗にするだけ。宮野にそうしとけと言われたから。

 ちんこ扱きながらケツの穴に指を突っ込んでみた。宮野のちんこを思いながら指を動かしてみる。興奮はするけど気持ち良くはない。

 そんなに経験あるほうじゃないけど、やっぱりエッチなことをするときは相手が欲しい。自分以外の肌の感触と温もりが欲しい。声が聞きたい。触られたい。見つめ合って、キスしたい。

「ふ、あ、あ、宮野…っ」

 射精の瞬間、ここ最近のモヤモヤが晴れた気がした。

 俺が次にはまったもの。

 それは、セックスだ。

 ~~~

 宮野に会えないGW初日、ソープに行った。女の子とセックスするのは何年ぶりだったか。ベッドに女の子が寝転がった姿を見たとき、自分が突っ込むほうだったと思い出したくらいだ。

 結果としては良かった。かわいかったし、会話も楽しかったし、サービスも良かった。少し緩い気がしたけど、女の子が一生懸命尽くしてくれたから気持ち良く射精できた。

 満足感は翌日まで続いた。今度は別の店を利用してみようかなとか、同じ子を指名して仲良くなろうかなとか、ソープ攻略の手順を色々考えていたんだけれど、三日目の朝にはもういいやって飽きてしまった。

 セックスにはまってるのは間違いないのに。

 今度はゲイ向けのデリヘルを頼んでみた。ホテルに現れたのは俺より若い今風の男の子。レイくん。緊張する俺を見て「初めてですか?」って親しげに話しかけて来るのはソープ嬢と同じ。

 世間話しながら一緒にシャワー浴びて、ベッドに移るとレイくんは俺にフェラしようとした。

「ちょちょ、ちょっと待って」
「はい? あ、なにか希望のプレイあります?」
「いや、じゃなくて。なんか、笑っちゃうっていうか」

 俺なにしてんの?って。頭のどっかがすごく冷静だった。見ず知らずの男が、俺のちんこ吸おうとしてんだよ? 股間に顔、近づけてくんだよ?

「えー、どういう意味ですか?」
「恥ずかしいって言う意味で! も、いいんで、あの、挿れてもらえる、かな?」
「了解」

 すけべな解釈をしたのか、レイくんはにやっと笑ってローションボトルを手にとった。コンドームを指にかぶせて、優しく丁寧に、一本二本と指を増やしながら、安全にセックスできるようになるまでそこを解してくれた。

 オナッててもいまいち物足りなかったところへ、あっついぶっといちんこがいよいよ挿入されるって期待に胸が張り裂けそう…になるかと思ってたんだ。でも実際は違った。肛門解されてる間、レイくんの肌の感触も温もりも、声すら気持ち悪く感じてしまった。

 レイくん個人への嫌悪というより、宮野以外の男とする行為そのものへの嫌悪だ。

「たんま! やっぱやめ!! 今日はむり!!」

 レイくんをおしのけ、ベッドの端へ逃げだす。レイくんは驚いた顔だ。

「俺、ほんと経験ないの。なんか怖くなっちゃった。ごめんね」
「あ、いや僕はいいですけど。お金は返せませんけど…」
「いい、いい! 俺が悪いから。今日はほんとごめんね、ありがと」

 とレイくんには帰ってもらった。シャワー浴びて、俺もホテルを出た。

 ソープ嬢とはできた。それは女の子とのセックスが経験済みだから。俺のなかの常識から外れることのない行為だから。

 レイくんとはできなかった。男としたのは宮野だけ。宮野は友達だ。見ず知らずの男じゃない。常識から外れる行為でも、金のためだからできた。

 金の絡まない状況で、俺は宮野とセックスできるだろうか。やりたいと思っていてもレイくんとしたときみたいに土壇場で怖気づいてしまうんだろうか。

 確かめたい。

 俺が本当はなににはまっているのか。

 ~~~

 GWもあと二日。そろそろ宮野も帰ってくる頃だなと思いながら家でテレビを見ていたら玄関のチャイムが鳴った。

 もしかしたらって予感がした。案の定、立っていたのは宮野。うちに来るなんて珍しい。

「おかえり」
「無駄遣いしてないか?」
「してないしてない。GW中ほとんど外に出なかった」
「ほんとか? とりあえずほら、みやげ」

 袋を手渡された。中には酒とつまみと、弁当がふたつ。あ、ここで食ってく気なんだって思ったら嬉しくなった。

「電話くれたら迎えに行ったのに」
「電話して繋がらなかったら嫌だろ」
「もう料金滞納しないって」

 財布から一万出して宮野に渡した。

「この前借りた一万」
「あれは…お前を買った金だろ」
「じゃあ、俺が払うから、エッチしない?」

 宮野の目が大きく見開かれる。

「なんで」
「俺、最近ギャンブルに飽きたっぽいんだよね。宮野は知ってると思うんだけど、俺が飽きる時って別の物にはまる時じゃん。俺、宮野とするエッチにはまってるっぽい」
「ばかな、ことを」

 俺の言葉を笑い飛ばそうとした。だんだん表情が真剣になって「本気か」と俺に訊いてくる。

「うん。ためしにホモのデリヘル頼んでみたんだけど」

 宮野はぎょっと目を吊り上げた。

「駄目だった。入れられるのも、触られんのも、宮野じゃないってだけで、ぜんぜんだめだった」
「僕とは平気なのか。ぜんぜん、嫌な気持ちにはならないのか?」
「ならない。逆にすげー気持ちいいからはまってんだし」
「……意外だな。気持ちいいなら、誰とでもできそうなお前が」
「俺もそう思ったんだけど、宮野じゃないとだめみたい」

 しばらく俺をじっと見つめたあと、宮野は横を向いてため息をついた。

「金はいらない。僕にもメリットはあるし」
「じゃあセックスしてくれる?」
「ああ。先にシャワー浴びてこい」

 宮野の気が変わらないうちに、と風呂場へ走った。





お久しぶりです。このままだとまた更新できないまま一ヶ月が経ってしまう、と急遽一本仕上げました。やれば出来るじゃないか私。
前回の更新が一月だったみたいでびっくりしました。めちゃ放置してましたね。すみません。

せっせと書いてた話はこれじゃないんですが、そっちが完全に滞っていて完成のめどがたっていません。もうやる気というかアイディアが浮かぶまでこりゃ駄目だわと一旦置いておいて、いまは違う話を書いています。完全新作!
今度はお待たせせずに更新できると思います!明るい話にしようと志していたんですが、変態といじめっこの暗い話になりそうです。

最近暑くなってきましたね!そろそろ熱中症とか気を付けないといけません。日焼け気にしない派なので、ガンガン焼いていこうと思います!ではまた明日の更新で^^




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コメント
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お返事
インディゴ様

お待たせしました!本当に長らく。
楽しみに待ってくださる人が一人でもいるというのは励みにもなるし、やる気にもつながります!いつもありがとうございます!!
ただ趣味と萌えを吐きだすだけの場所ですが、これからもよろしくお願い致します^^
インディゴ様もお体お気を付けて、楽しい夏をお過ごしください!


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