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カインとアベル(1/3)

2018.12.05.Wed.
<「長男としての責務」→「久しく為さば須らく」>

「あら、珍しい」

 久しぶりに実家に顔を出したら母さんが驚いた顔をした。

「ほい、土産」

 来る途中で買った饅頭を渡してリビングへ。親父がゴルフを見ているが守の姿はない。日曜の昼間だってのに、あいつはどこにいったんだ。

「守ならいないわよ」

 母さんの一言にぎょっと焦った。俺と守がしてるあれやこれやを見透かされたんじゃないかと思って。でも母さんは俺なんか見てなかった。饅頭の包みを開けながら、

「守ね、彼女できたみたい。ユキさんって名前の。最近ずっとメールとか電話でやり取りしててねー。嬉しそうな顔してんの。これもみんなお兄ちゃんのおかげだわ」

 と嬉しそうに言う。

 半年ほど前まで守は引きこもりだった。

 結婚を意識した彼女が俺の親に会いたいと言いだして、俺は長年見てみぬふりをしてきた引きこもりの弟をどうにかしなきゃと守の部屋を訪ねた。

 そこで初めて守がショタコン変態野郎だと知った。守は半裸の少年のポスターやフィギュアに囲まれた部屋で自分の変態世界に浸り切っていた。

 こうなるまで放置した責任は長男である俺にもあると思って、文字通り一肌脱いで守を社会へ引きずりだすことに成功した。

 あいつのために。あいつの言いなりになって。

 着たくもない小さな服を着せられて。なりたくもないショタコンアニメの主人公になりきって。したくもない守とのセックスに耐えてきたというのに。

「あいつに、彼女……?」

 腹の底にゾワゾワと黒いものが蠢いた。

 自分の存在を盾にして俺に変態趣味を強要していたくせに、自分はなにちゃっかり彼女とか作ってんだよ?!

 お前は小さな男の子にしか興奮しないショタホモだろうが! お前の歪んだ欲望に付き合ってやれるのは俺だけだろうが! 女とか! お前がさんざん汚らしいと罵倒してきた相手と今頃!!

 社会に出てみて、やっと生身の女の良さに気付けたって?!

 ざっけんな! 引退して髪の毛伸ばし始めた高校球児みたいな俺の股間はどうなるんだよ! お前が剃らせてくれって拝み倒してきたんだろうが!

 どうりで! 最近顔見せないと思ったら、彼女とやりまくってたからかよ!

 そういや、あいつのショタホモ趣味も本物か怪しいもんだ。いくら俺とセックスする条件があったからって、それまで後生大事にしてきたフィシュアやポスターをあっさり捨てられるなんて、所詮その程度の性癖だったってわけだ。

 ファッションショタホモかよ。矯正可能の性癖なんて偽物じゃねえか。本物のショタホモ野郎共に謝りやがれってんだ!!

「晩ご飯、食べてくでしょ? 今日はお鍋にしようかしらね~」

 親父と饅頭を頬張る母さんは嬉しそうだ。一時はどうなるかと将来が不安だった守が、自分の部屋を出て、鬱陶しかった髪の毛を切り、就職先を見つけてきたと思ったら今度は彼女だ。そりゃ嬉しいに決まっている。

 俺の預かり知らぬところでそういう展開だったなら、俺も素直に喜べただろう。だがしかし、俺はがっつり預かり知っている。なんなら巻きこまれている。挙句、使い終わったテイッシュみたいな扱いを受けている。

 処分されたフィシュアやポスターのように。守は俺を処分するだろう。俺が最初、守の存在を恥ずかしいと思ったように。守は彼女に、俺の存在を隠そうとするだろう。なかったことにするだろう。

 俺をさんざん犯しておきながら。ただの思いつきで人の股間パイパンにしておきながら。

「許すまじ」

 怒り心頭。体が震えた。



 夜の十時過ぎになって守が帰ってきた。玄関の靴で俺がいることには気づいているだろうにリビング素通り!

 階段上る守に「ごはんはー?」と母さんが声をかける。

「食べてきたからいらない」

 三週間ぶりぐらいに聞いた守の声。

「彼女と食べてきたのかしらねー」

 母さんは嬉しそう。確かに、誰かと外食している姿なんて半年前の守からは想像もできない。というか、厨二病こじらせた中三くらいからあいつ友達いなかったから、人付き合い自体いったい何年ぶりだって話になる。

 兄としては、弟がまともに生活していることを喜ぶべきなんだろうが。

 私生活にまで影響受けるくらい被害を被った俺としては、一言文句言ってやらなきゃ気がすまない。

 親父と母さんはクイズ番組を見ている。お互い回答を言い合う、仲睦まじい夫婦だ。彼女と結婚したら親父たちみたいになりたいと、密かに思っていた。今は二人に申し訳ない。

 のっぴきならない状況だったとはいえ俺は血の繋がった守とセックスした。そのことを知ったら二人は卒倒するだろう。

 勘当レベルのことをしたのに、当の守は俺の罪悪感なんかお構いなしで彼女なんか作りやがって。

 俺はそっとリビングを離れた。



 守の部屋の前で立ち止まる。中から微かに話声が聞こえてくる。誰かと一緒かと思ったが、守の声しか聞こえないから電話でもしているのだろう。

 あの守が、家族以外の誰かと電話で会話している。社会人なら当たり前の行動に、俺はまだ驚いてしまう。

 もしかして電話の相手は彼女かもしれない。ドアに耳をあて、聞き耳をたてる。

「……た……さすが……ユキ……ずっと……ん、好きだ……た……会いたい……」

 あー、もうこれ確定っすわ。

 電話の相手は彼女。守に彼女!!

 俺の自尊心も! 兄としてのプライドも!! 全部踏みにじって精液まみれにしてくれやがった守に彼女!!!

 笑わせやがる。

 ドアを蹴破らんばかりに開けると、守がビクッと体を震わせた。

「兄ちゃん……」
「あー、悪い悪い。電話中だった?」
「いや、いま終わったとこ」

 スマホを机に置いて、守はコートを脱いだ。コート脱ぐ間も惜しいくらい、早く彼女と電話でお話したかったんですね、わかります!

「最近どうよ」
「ぼちぼちやってるよ。仕事はしんどくて辞めたいけど、まあ、楽しいこともあるし」

 楽しいことってもちろん彼女のことデスよねー! もしかして相手は同僚か?

「兄ちゃんこそ、どうしたの。珍しいじゃん、こっち来るなんて」
「んー、ちょっと? こっちに用あって?」
「なに、俺の顔見たくなった?」

 どの口がそんなこと言うんだよ。

「ちげーよ。そろそろさー、彼女と正式な顔合わせ? した方がいいのかなーって思って」

 出任せに嘘をついた。守の顔から笑みが消える。

「結婚するってこと?」
「そりゃあお前、そのつもりで付き合ってんだし」
「ふうん」

 俺に背を向けコートをクローゼットにかける。下の引きだしをゴソゴソやって守が振り返る。手に持っているのは翔太くんの衣装。

「結婚してもこれは続けてよ。約束なんだから」

 と俺の足元に翔太くんの衣装を投げ捨てた。

「着て。早く」

 口調も動作もなんかキレ気味。

 おかしくない? お前はキレる立場にいないだろ。彼女いるくせになんでこんなことさせるのか意味わかんねえよ。やっぱお前、俺でしか興奮できないんじゃないのか?

 腕を伸ばし、衣装を拾った。






お兄ちゃんが勝手に動いて、最初書こうとしてたのと違う感じになりました。完成できたからまあいいやw
タイトルは深く考えないでくださいね。罪深い兄弟の代名詞みたいなイメージでつけました。

なんか最近、暖かくて気持ち悪い天気ですね!片頭痛が止まらない。
皆さんも体調崩されないよう、お気を付けください!



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