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Tedious story(6/15)

2018.11.17.Sat.


 部屋は純が選んだ。黒を基調にしたシックな部屋。一見普通のシティホテルのような内装だが、壁に大きなXの磔台、ベッドの四方から拘束具があった。純はベッドに腰をおろした。

「今井さんてこういうの好きそうだよね。使ったことある?」

 屈託なく笑いながら純が手錠を手に取る。

「ない」
「バイブとか、クスリも?」

 ない、と首を振りかけて思い出した。須賀を犯した時に当時流行っていたセックスドラッグのラッシュを使った。

「昔、一度だけ使ったことがある」
「どうだった?」
「ただの興奮剤だ」
「やっぱ気持ちいいの? セックスに使ったことないんだよね、まだ」
「他では使ったことがあるのか?」
「好奇心で一回、テスト前に。頭痛が酷くて逆に点数悪くなっちゃった。俺には合わなかったみたい」
「進学校って言ってたな。どうしてわざと危ないことをするんだ」
「逆に訊きたいんだど、今井さんは毎日楽しい? 朝起きて電車乗って仕事して、また電車乗って家に帰って寝るだけ。そんな毎日、楽しい? 同じこと繰り返して、そんな人生楽しい? 生きてる意味ある?」
「意味なんか考えたこともない」
「うちの親父さ、そこそこ会社で重要な役職らしいんだけど、朝家を出て夜帰ってくるじゃない? 家では居場所ないんだよね。リビングのソファが定位置。休みの日なんかテレビの前から動かないもん。見てて哀れになるよ。会社では偉そうにしてるんだろうけど、家じゃ掃除の邪魔だって怒られて。俺の顔を見たら的外れな説教始めたりさ。ああいう大人を見てると、何が楽しくて生きてるんだろうって不思議でたまんない。死ぬのを待ってるだけじゃん」
「俺から言わせれば、そうやって大人批判してる間はまだまだ子供、幼稚な証拠だよ」
「大人はすぐそれ言うよね。そうやって上から目線でいれば安心なんでしょ?」
「俺はお前と討論するために呼ばれたのか? 置いて帰るぞ」
「帰っちゃうの? 泊まっていかないの?」
「明日仕事だ。お前も学校だろ」
「俺、シャワー浴びてこよっと」

 ベッドから立ちあがり純はバスルームへ向かった。ガラス張りで中の様子がよくわかる。素っ裸になった純がシャワーを浴びている。ガラスはすぐ曇った。それでもシルエットは見える。勝手に股間に血液が集まりだした。

 バスルームの戸を開けた。純が振り返る。均整の取れた肉体だった。細いと思っていてもつくべきところに筋肉はついている。

「どうしたの、今井さん」
「今日も助けてやっただろ。そのご褒美をくれよ」
「またフェラすればいいの?」

 何も抵抗を感じていないような口調で言う。男同士は気持ち悪いと言っていたくせに。

「そんなもんじゃ足りないだろ」
「セックスさせろってこと?」
「そうだ」
「いいよ」

 断られると思っていた。その時は力づくで犯してやろうと思って身構えていたから拍子抜けした。

「いいのか?」
「いいよ、でも待って、男とヤッたことないから調べてからね」

 びしょ濡れのままバスルームを出ると純はスマホを操作し始めた。濡れた体。滴り落ちる水滴。その立ち姿があまりにきれいで勃起した。

「時間、かかるか?」
「うーん、ちょっと」

 上の空の返事。スマホで男同士のセックスのやり方を調べているのだろう。まさかそんなに乗り気になられるとは思わなかった。それに、ただのセックスに手順が必要なことも知らなかった。

「今井さん、先にシャワー浴びておいでよ。その間に調べとくから」
「逃げたら家まで追いかけるぞ」
「あいつらが外うろついてるのに一人で帰んないよ。それに俺も興味あるし」
「男同士は気持ち悪いんじゃなかったのか」

 純はスマホから目をあげた。形の良い目が俺をじっと見る。

「今井さんなら、別に嫌じゃないよ」

 口八丁手八丁。これがこいつの手口。人の懐に入り込むのがうまい。懐いたように見せかけ、気持ちのいい言葉で気を許させる。そして自分の思い通りに相手を動かす。

 全部わかっていても、純の言葉はくすぐったい。視線に胸が騒ぐ。

「早くしろよ」

 先に目を逸らした。服を脱いでシャワーを浴びた。純を見るとまだスマホとにらめっこしている。

 俺と入れ違いで純がバスルームに戻ってきた。濡れていた体もあらかた乾いている。

「ねえ、今井さんは俺に入れたいの? 入れられたい?」
「入れるほうに決まってるだろ」
「一応確認しただけ」

 腰にタオルを巻いてベッドに寝転がった。テレビをつけて時間を潰す。純が出てきたと思ったらトイレへ直行した。それを二度繰り返した。

「何してるんだ。腹が痛いのか?」
「今井さんのためにしてるんだよ」

 ベッドから身を起こし、バスルームに戻った純を眺める。純はシャワーを尻に当てた。それを離すと壁に手をついてうなだれるように頭をさげた。心配になってバスルームを覗く。

「大丈夫か」
「うん、もう終わった」

 少し疲れた表情で純が言う。

「何してたんだ」
「腸内洗浄? お尻の穴をきれいにしてたんだよ」
「そんなことする必要があるのか?」
「ほんとに何も知らないんだね」

 バスタオルで体を拭きながら純が呆れたように言う。

「そういえばさ、俺よりきれいだって言ってた今井さんの昔の知り合い、その人とはヤッてないの?」
「ヤッたよ」
「それなのに何も知らないの?」
「むりやりだった。あいつにラッシュを嗅がせて、むりやり犯した」
「好きだった相手によくやるね」
「あの時は気付いてなかった」

 純は声をあげて笑った。

「気付いてないのに犯したの? ほんと、今井さんて面白い人だよね」

 俺の手を取りベッドに導く。純はベッドに乗ると腰からタオルを取った。しなやかできれいな体だ。見惚れていたら、備品のローションが飛んできてキャッチした。

「これで俺の後ろ、ほぐすんだって」
「ほぐす?」
「男はさ、女と違って濡れないでしょ。だからこういうので濡らして慣らさないとだめなんだって」
「俺が?」
「自分の後ろの穴は見えないもん」

 純はベッドの上で四つん這いになり、腰をあげた。「ほら」と俺に尻を向ける。

「俺とヤリたいんでしょ?」
「面倒臭えな」

 蓋をあけ、ローションを手に出す。笑ってしまいそうになるほどきれいな純の穴にローションを塗りたくって指を入れた。指一本でも強い締め付けがある。

 須賀を犯したとき、須賀はとても痛がっていた。苦痛の表情で涙を流して俺にやめてくれと頼んでいた。欲望と苛立ちとラッシュの興奮のせいで聞く耳をもたなかった。気持ち良くなるために、須賀を汚すために腰を振った。

 もしあの時須賀が純と同じような反応を見せていたら興奮は萎え、ヤル気も失っていただろう。

 だがいまの俺は萎えるどころか、早く純に入れたくてウズウズしている。須賀のように純潔でもない、性悪で汚れきった純相手に、いまにもイキそうなくらい興奮している。






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