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Tedious story(4/15)

2018.11.15.Thu.


 しばらくして彩加が帰ってきた。

 彩加は純の傷の手当てをすると、純にせがまれるまま食事を作った。おそらく純に食べさせるために食材を用意していたのだろう。だが純は食欲がないと言って、結局俺だけが食べた。

 彩加は複雑な表情だった。いくら純を助けた恩人だからといっていつまでも居座っている俺への不満が言動の端々に表れていた。しかも純は俺にばかり話しかけて来て彩加の相手をまともにしなかった。

 焦れた彩加が話しかけてもそっけなくあしらわれる。おかげで何度も彩加に睨まれた。

「俺たちはそろそろ帰るよ。今日は驚かせてごめんね。傷が治ったらこの埋め合わせは必ずするからさ。それまでいい子で待っててよ。次はちゃんと彩加の手料理食べるから」

 純がソファから腰をあげると彩加は泣きそうな顔になった。

「もう帰るの? 今日は泊まっていけないの?」
「むりだよ、明日学校あるし、彩加も仕事だろう? それに俺のこの体じゃ、彩加のこと悦ばせてあげらんないよ」
「やだ、純くん、そんなこと」

 顔を赤くして俺を窺い見る。俺は聞いていないふりで先に玄関に向かった。

「また連絡するから、それまで待ってられる?」
「うん、わかった、待ってる。今日の夜電話してもいい?」
「今日は疲れたからまた今度。俺から電話するよ」

 何か言いかける彩加の声が途切れた。肩越しに後ろを見ると純が彩加にキスをしていた。傍から見ても舌を絡め合った濃厚なやつだとすぐわかる。彩加は純の体に腕をまわして必死に体をくっつけていた。純はそれを押し返すと「またね」と軽い口調で彩加に手を振った。

 彩加の恨めしい目に見送られながら二人で部屋を出た。マンションを出て駅への道を歩く。

「このあとまだ予定があるのか?」
「今日はもうないよ、帰るだけ。送ってくれるよね?」
「なんで俺が」
「どうせ尾行するんでしょ? だったら一緒に行こうよ」
「今日は俺も疲れたからタクシーに乗るぞ」
「ほんと? ラッキー」
「お前、閉所恐怖症なんじゃ」
「嘘に決まってるじゃん」

 なんでもない顔で言う。そうだ、こいつは平然と人を騙す奴だった。

 駅前でタクシーに乗った。純が言う住所へタクシーが向かう。しばらくして純が俺にもたれかかってきた。

「寝るなよ」
「ついたら起こして」

 と言って瞼をおろす。純の考えていることがわからない。行動が読めない。

 下心を持って声をかけた俺を仲間を使ってボコボコにしたくせに、俺の尾行に気付いていながら放置して、挙句一緒にタクシーに乗って俺に身を預けてくる。

 男同士なんて気持ち悪いと言いながら若松の頬にキスしたり、俺にフェラしたりする。友達という女とキスすればセックスもするというし、自分の顔が嫌いだと言って、襲ってきた男たちにいいように殴られていたり。

 今時の高校生はこんなにも得体が知れないものなのか? それとも純だけが特別なのか? 俺が最初から妙な目で見ていたから、余計わかりにくくなっているだけか?

 寝息を立てる顔を覗きこむ。ガーゼが貼られて痣だらけの顔。とても見られたもんじゃないのに目が離せない。飽きることもない。

 改めて、須賀とはどこも似ていないと思う。須賀は綺麗だった。品行方正で何もかもが清潔で凛としていて美しかった。だから誰かに汚される前に俺が犯した。犯されたあとの須賀も綺麗だった。しかし以前と比べてどこかほの暗い陰りが見えた。俺しか気付かない変化。俺がそう見ていただけかもしれない。須賀を汚してやったのだと、下衆の喜びを感じたいがために。

 純も最初は須賀と同じようにきれいな人間だと思った。姿勢の良さや佇まいに育ちの良さが見えた。だが実際はホモの同級生からプレゼントをもらうためにキスしたり、地味な女をひっかけて性処理としてキープしていたり、男がいる女をひっかけて殴られたりと、とても品行方正とは言いがたい。

 なのに純はきれいだった。侵しがたいオーラがある。誰かとセックスしていようと、俺にフェラさせられようと、この魅力が損なわれることはない。

 ひたすらに善良だった須賀とは正反対の、邪悪で純粋な美しさだ。

 タクシーが目的地に着くまでの時間は、あまりに短かった。純を揺さぶって起こす。寝惚け眼で純は運転手に細かく指示を出して一軒家の前でタクシーを止めた。

「ここが俺んち。親と弟一人の四人暮らし。いつでも仕返しに来ていいよ」
「お前、なんなんだ。どうして俺にそんなことを教えるんだ」
「退屈なんだよ。毎日同じことの繰り返しでさ。今井さんはちょっと面白そうだから」
「退屈しのぎに遊んでみようって?」
「俺を楽しませてくれたら、またご褒美あげるよ」

 純はタクシーをおりると俺に手を振って家の中に入った。目を凝らして表札を確かめる。高野。若松が呼んでいた名前と同じ。本当にここが純の自宅。

 純、という名前も本名に違いない。最初からあいつは何も隠す気がなかったらしい。退屈が過ぎるとあんなにもわけのわからないガキになるのか。

 深く関わってはいけないタイプの人間だ。深みにはまると抜け出せない。身の破滅すら招きそうな奴だ。

 頭でわかっていても、さっきから俺の股間は次のご褒美を期待して痛いくらい勃起していた。




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