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Tedious story(1/15)

2018.11.12.Mon.
<前話「新雪の君」の続き>

※反社会的、反倫理的、暴力描写等あり。長くて退屈。オチなし。
 年下攻め前提のリバ。閲覧は自己責任でお願いします。


「ちょっといいかな」

 改札に向かっていた足が止まり、高校生は振り返った。

 間近で見たらあまりにきれいで面食らった。ホクロもなければニキビ痕もない新雪のような白い肌。はっきりとした目鼻立ち。触ってみたくなるサワサラの黒い髪。色気を感じる首筋。抱きしめたくなる細い腰。須賀と比べて男っぽさのない、中性的な姿だった。

 高校生はいきなり声をかけてきた見知らぬ俺に警戒したような顔つき。俺は微笑んで言った。

「近くに喫茶店あるかな。急に気分が悪くなって、休める場所を探してるんだ」

 もちろん、こいつの顔を見るための口実だ。 

「大丈夫ですか?」

 そして、聞き取りやすい清涼な声。須賀の声もそうだった。俺が高校の頃に犯したクラスメート。今頃どこでなにをしているだろう。

「ああ、大丈夫。少し座って休めればどこでもいいんだ。この駅を利用しないから何も知らなくて」
「だったらあまり人がいない方がいいですよね。駅を出て右に少し行った先に流行ってない喫茶店がありますよ」
「ありがとう、そこに行ってみるよ」
「味の保証はしませんけど」
「あははっ、休めれば味なんて。呼び止めてごめんね」

 高校生の肩を軽く叩いた。自然を装いながらもどうしても不自然になる。だが、どうだっていい。どうせもう関わることはない。俺のことなんてすぐ忘れるだろう。

 顔はじっくり拝めた。生地越しに生身の肉体も感じれた。俺が学生時代、須賀に抱いていた劣情を思い出せてくれた。今日はこれをネタにオナッて寝るつもりだ。

 高校生に訊いた手前、仕方なく改札を抜けた。初めて降りた駅。電車の窓からしか知らなかった景色が目の前に広がる。そんなつもりはなかったのに、高校生に教えてもらった喫茶店へ足が向いた。

 線路下にはたくさんの店が並んでいた。若者向けの服や小物を売ってる店がほとんど。合間に酒が飲める店がいくつか。

「待って!」

 次の飲み屋に入ろうかと思っていた矢先、呼び止める声がして振り返った。さっきの高校生が走ってくる。黒い髪をサラサラと揺らしながら。

「もう店、閉まってる」

 と自分の腕時計を指で叩く。

「わざわざ教えに来てくれたの? 悪いね」

 律儀なところまで須賀に似ている。

「間違った情報教えたのこっちだし」
「そのへんの店で一杯飲んで帰るよ。楽しそうな店がたくさんあるんだね、ここ」
「ここでおりたのは初めてですか?」
「うん、いつも通りすぎてた」
「俺で良かったら案内しますよ」
「えっ」

 思いがけない提案。驚いて高校生の顔をまじまじと見つめる。高校生は俺の視線を逸らさず見つめ返してくる。自信にあふれた眼差し。どこか傲慢で挑発的。須賀はそんな目はしなかった。

「いや、いいよ。もう遅いし」
「まだ21時半だよ」

 高校生が俺の手を取った。須賀に似た高校生の皮膚の感触。体温。生身の体。頭がくらりとする。

「名前、なんていうんですか?」
「今井」

 訊かれるままに答えていた。

「今井さん、どうせ暇でしょ。ちょっと遊んでいこうよ」
「待ってくれ、俺にも名前を教えてくれ」
「純だよ、純情の純」

 じゅん、と口の中で呟く。

 純は俺の手を引っ張って、駅に近いビルに入った。



 純は俺をビルのなかにあるゲームセンターに連れて行った。21時半なのにまだたくさん人がいる。色んな音楽と人の話し声が混ざってかなり騒がしい。

「今井さん、これ、かわいくない?」

 純が指さしたのは二等身の大きな猫のぬいぐるみ。

「猫が好きなのか?」
「犬のほうが好きだよ」

 なんだよそれ。

 純は鞄から財布を出した。100円玉を出して投入口へ入れる。まずは右へアームを動かす。

「奥行き見ててよ、今井さん」

 言われた通り、台の横へまわって奥行きを見る。純がアームを動かす。

「ストップ!」
「ほんとにここでいい? 奥すぎない?」
「たぶん、大丈夫」

 アームが降下する。大きな猫の頭部をがっしり掴み、持ち上げる。いけるんじゃないかと思ったが、途中でどすんと落ちた。重すぎる。そしてアームの力が弱すぎる。

「惜しいなぁ」
「そんなにこれが欲しいのか?」
「欲しい」

 子供みたいな顔で純が言う。いや実際まだ子供なのだが。財布から100円硬貨を全部出して純に渡した。純がアームを操作する。俺は横からアームの位置を見て指示を出す。猫の頭部が持ちあがっては落ちる。

 硬貨がなくなり、札を崩した。硬貨を純に渡す。純へ指示をする。猫の頭部が持ちあがる。少し手ごたえがあった。猫の足が落下口にかかった。

 硬貨はすぐなくなった。両替をし、投入口へ。純もコツを掴んだのか猫の足が少しずつ落下口へ近づいていく。

 二千円をつぎ込んでやっと胴体が落下口にはみでるようになった。あと少しだ。

 財布を見る。万札しかない。それを崩してまた100円硬貨を純に渡した。いつの間にか俺たちの後ろにカップルらしい男女が立って見ていた。俺たちが諦めて立ち去るのを待っているのかもしれない。意地でも取ってやる。

「今井さん!」

 興奮した純の声に我に返った。猫の頭部をしっかり掴んだアームは、そのまま猫の体を持ち上げた。今までの力のなさはなんだったのかと思うくらい、難なく落下口まで運んでいった。

「やったよ、今井さん!」

 純は猫のぬいぐるみを取り出すと俺に向けて見せた。とぼけた顔をした猫だ。かわいい、のだろう。俺にはかわいいものをかわいがる習慣がない。こういった類のものをかわいいと思う感性もない。

「良かったな」
「お金いいの?」
「いいよ。ムキになったのは俺だし、そこそこ楽しめた」
「そういえば、疲れたから休みたいんだったっけ。ごめん、付き合わせて」
「いや。言ったろ、俺も楽しかった」
「どっかで休憩する?」

 純は俺の腕に腕を絡めた。悪戯っぽい上目遣い。なにを企んでいる。

「どっかって?」
「どこでもいいよ」

 ホテルでも? この細い体を軋むまで抱きしめることを想像する。純はあの時の須賀と同じように若い男の匂いがするだろう。それを肺一杯吸いこみたい。

「もう帰るよ」

 後ろ髪は引かれる。でもここで深く踏みこむほど俺は若くもないし、馬鹿でもない。純がなにを考えているのか、どんな素性の奴なのかわからない以上、罠が仕込んでいそうな場所に足は踏み入れない。

「つまんないよ、今井さん」
「つまらなくても、俺は帰る」
「カラオケで休憩すればいいじゃん」
「だったら家に帰って休むよ」
「わかった。じゃあ、家まで送ってくれない?」
「は?」

 純は俺の腕を左右に揺らした。甘えた仕草。自分の整った容姿を理解し、それを利用することに慣れた様子。

「だって外真っ暗だし、家までの道ってひとけなくて怖いんだよね。いいでしょ、今井さん」
「……わかった、金をやるからタクシーを」
「俺、閉所恐怖症だから車とか無理なんだよね」

 さあ、次は? なんでも言い負かしてみせるって挑むような目。急にやりとりが面倒臭くなった。

「仕方ない。近くまで送ってやる」
「そうこなくちゃ、今井さん」

 純とビルを出た。純が歩くほうへ俺も付いて歩く。純は饒舌だった。自分の学校生活のことや、友達の相談、親の愚痴。そのどれもがなぜか嘘臭い。他人のことを話しているような空々しさを感じる。

「ここ、近道なんだ。普段は怖いから通らないけど、今日は今井さんがいるから」

 純は公園に入った。大きな公園。遊歩道の両脇は木と草が生い茂って真っ暗。外灯の明かりもそこまでは届かず、誰かが潜んでいても気付かないだろう。

「家まであとどのくらいだ?」
「もう少しだよ。公園抜けてすぐ」

 本当か? 隣を歩く純を盗み見る。最初は須賀に似ていると思った。だがよく見ると顔も雰囲気も似ていない。須賀からは清潔な匂いがした。純からは甘いムスクの匂いがする。須賀は香水なんかつけない。嫌な予感がする。純がこの辺を案内すると言ったときから嫌な予感はしていた。下心に負けてついて行ったのは間違いだったかもしれない。

「おーまーたーせっ!」

 悪い予感が実現する声が俺たちの背後から聞こえた。一瞬で心が冷えた。

「遅いぞお前ら、引き止めんの大変だったんだから」

 純は前髪をかきあげなら俺の隣からはなれ、後ろの誰かのもとへ向かった。ゆっくり振り返り確認する。純と同じ年頃の男が4人。俺を見てニヤニヤと笑っていた。見た目は今時の高校生。ヤンキーとか不良とは違う陰険さを滲ませつつ、男たちは俺を取り囲んだ。

「こいつが純をナンパしたおじさん?」

 一人が言った。ナンパと言う言葉にカッと全身熱くなった。俺の下心は純にバレていた。ゲーセンに行ったのも、俺をカラオケに誘ったのも、仲間を呼ぶための時間稼ぎ。男子高校生をナンパするオヤジを仲間と一緒に狩るために。

「金で解決……ってのはもう無理な話だよな」
「お金なんか取らないよ。とったら強盗になるからね」

 さっきと変わらない無邪気な表情で純が言う。ごめん悪かったと言えば許してくれそうな親しみやすさも変わらない。そうだ、最初からこいつは親しみやすい顔と話し方をしていたくせにまったく隙がなかった。上っ面に騙されて気付かなかった俺が馬鹿だった。

 男たちが距離を詰めてくる。純は動かない。直接手は下さないらしい。どこまでも狡猾。憎たらしい奴。あのきれいな顔をめちゃくちゃになるまで殴ってやりたいが、そんなことをする前に俺が死ぬ。

 だから最初の一発から無抵抗で殴られた。これが初めてじゃないらしい。暴力に慣れが見られる。力むのを無理に抑え込む理性も感じられる。こいつらにとって俺のような奴はストレスの捌け口なのだろう。気兼ねなく、大義名分のもとに暴力をふるえる相手。下心があるから警察にも逃げ込めない。金を取られていないから強盗だとも言えない。

 すぐに立っていられなくなって地面に這いつくばった。顔と頭だけは守った。純の仲間もそのへんは心得ているのか首から下ばかり攻撃してきた。

 重傷にならない程度に。しかし2、3週間は確実に痛み続けるような暴力。

 血反吐を吐いた。誰かの靴を汚したらしかった。怒声と、我を忘れた蹴りが顔面に。脳を揺さぶられ天地がひっくり返る感覚。

「なにやってんだよ、おまえ」

 痛みと怒りと屈辱と羞恥でごちゃごちゃになった頭に、清涼に響く純の声。それと同時に暴力もやんだ。

「だって純、こいつ俺の靴」
「靴ぐらいなんだよ。もしお前がキレてこいつ殺しちゃったら、俺らにも迷惑かかるってわかってる?」

 親しみやすさなんか微塵も感じない冷たい声が、仲間のはずの男を責める。責められた男は叱られた子供みたいに俯いて「だって俺の靴が」と小さな声で言い訳した。

「俺いつも言ってるよな? 冷静に行動しろって。そうやってすぐ頭に血がのぼんの、お前の悪い癖だよ、直せ」
「わかったよ、ごめん」

 純は大きくため息をついた。

「さあ、後始末して帰ろう」

 緊張していた空気が緩んだ。こいつらの言う後始末は俺を裸に剥いて写真を撮ることだった。

「下の名前、孝浩っていうんだ?」

 俺を免許証を見て純が俺に笑いかける。ゲーセンで見たのと同じ笑顔だ。

「こんなことして、ただで済むと思うなよ」 

 呻き声ばかりだしていたせいか、しゃがれた声が出た。

「怒ってる? 高校生のガキにボコボコにやられて裸の写真撮られてさ、むかついてる?」
「当たり前だ」
「いつでも仕返しに来ていいよ。こっちも持ってるものフル活用して応戦するけど。とりあえず俺や仲間になんかあったら、さっき撮った裸の写真ネットで世界中にバラまくから」
「そのくらいなんだ、今すぐやってみろ」
「面白いこと言うね、今井さん。でもヤケになるのは早いんじゃない? 人生まだまだ長いよ」

 純は免許証とそれを入れていた財布を俺の顔の前に投げ捨てると、仲間を連れて立ち去った。体中が痛い。力が入らない。どこからか力が抜けていく。

 なんとか体を起こし、服を拾い集めた。夜の公園とは言え、誰も来ないとは限らない。モタモタしながら服を着て、震える膝に手をついて立ちあがった。口元がぼうっと腫れぼったい。最後に蹴られたせいで唇が切れている。幸い歯は折れていない。血の味のする唾を吐き捨てた。

 財布を鞄に戻し、ヨタヨタと公園をあとにした。





二回目の広告出現。焦りました。二ヶ月以上経ってしまいましたがやっと更新できました!
注意書きにあるように長いくせに退屈で、さらに山なし落ちなし意味なし三重苦が加わります。
この台詞を使いたい!っていう動機から書き始めたんですが迷走に迷走を重ね収拾がつかなくなって、最後むりやり台詞ぶっこんで、なんかもう全部中途半端になってしまいました。
もう他になにもすることがないくらい暇なときに読んでもらえたら…ということすらおこがましい。それくらいの出来なので、なんかほんと、久し振りの更新がこれとか、申し訳ないです○| ̄|_



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