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片思い(1/1)

2014.03.14.Fri.
 誠司が遊びに来ていると知ると、妹の弥生が会いたいと言い出した。お茶の入ったコップで両手が塞がっているので、「お前うぜえんだよ! 絶対入ってくんなよ!」と、妹を足蹴にして牽制しながら部屋に入った。中学生の弥生は誠司のことをいたく気に入っている。背も高くて顔も良くて性格も優しい誠司に、かすかながら恋心を抱いているのだ。それを敏感に察知するのは、自分も誠司に恋心を抱いているからだろうか、と友晴は考える。友晴の想いは妹以上に深く、深刻だった。なにより同性というハンデがある。誠司はノンケで、男を恋愛対象に考えてみたこともないだろう。決して成就することのない恋。それなのに、一番近い距離にい続けるのはなかなか辛いものがある。それでもそばにいるのをやめられないのは、諦めが悪いということだろうか。
 部屋に入ると、誠司が漫画から顔をあげ、笑っていた。

「弥生ちゃん? お前ら仲いいのか悪いのか、どっちだよ」
「悪いに決まってんだろ、あいつマジうぜえもん。でしゃばってくんなっつうの」

 コップを渡すときに誠司の手が触れた。それだけで友晴の心臓は早くなり、顔は赤くなる。誤魔化すようにぶすっとした顔つきになってしまう。

「勉強しよーぜ。来週試験なんだから」

 不機嫌に言い放ち、教科書とノートを広げた。しばらく無言で勉強をした。友晴は何度も目の前に座る誠司を盗み見していた。高校二年で同じクラスになり、友達と呼べる関係になってからずっと好きだった。自分が男しか好きになれないことはとっくに承知していた。自分の気持ちをセーブしてきたつもりだったが、誠司相手にはブレーキがきかなかった。好きだという気持ちが、理性を振り切って誠司に向かって走って行った。誠司の声も、仕草も、指の先に至るまで、全てが好きだった。誠司の存在を感じただけで、心臓が甘く締め付けられた。

「疲れたなぁ」

 一時間ほどして誠司が伸びをしながら言った。集中力がそろそろ切れる頃だった。

「トモ、肩揉んで」

 誠司がオイデオイデと手招きする。

「面倒臭えなぁ」

 渋々という態度を装いながら立ち上がり、誠司の背後にまわりこむ。自分より一回り大きい誠司の背中。ここに抱きついたらどうなるだろう。そんなことを考えながら、誠司の肩に手をおいた。制服の布越しに伝わってくる誠司の体温。温かい。

「あー、気持ちいい。お前、マッサージうまいよな」

 誉められて嬉しくなる。こんなに一生懸命になるのは、相手が誠司だからだ。しばらくして腕がだるくなっても続けるのは誠司に喜んで欲しいからだ。

「ありがと。次はお前もやってやろうか?」

 誠司が振り返って友晴を見た。無邪気に笑う顔に一瞬見とれる。

「い、いいよ、俺は。あんま、肩凝んないほうだし」
「やってやるって、ほら」

 膝で立った誠司が、友晴の肩を持って座らせた。強い力に圧倒的な差を思い知る。そこで男としてのプライドが少し傷つくと同時に、男らしい誠司に惚れ惚れする。肩を揉まれ「痛い痛いっ、ゆっくりしてっ」と文句を言いながら、その力強い腕で自分を抱きしめ、押し倒し、犯してくれないだろうか、と妄想してみる。
 頭の中で誠司を汚すとき、友晴はいつもウケだった。誠司にキスされ、裸に剥かれ、最後には誠司のものを受け入れた。オナニーする時、アナルをいじるようになってから、自分は女なんだと実感した。

「もういいよ、ありがとう」

 肩の手をポンと叩いた。誠司が後ろから抱きついてきた。

「うわっ、なに」

 広い胸が背中に密着し、大きな両手に体を包まれ、友晴は動転した。一瞬で顔が真っ赤になる。

「お前ってほんとに小さいよなぁ、同じ高二に見えないんだけど」
「ほ、ほっとけよ! うちは家族みんな小さいんだよ、悪かったな!」
「悪いなんて言ってないよ、なんか…小型犬みたいで可愛いなぁって」
「どういう意味だよ? 小さいくせに無駄吠えが多いってことか?」

 思わずムッとして振り返ると、すぐそばに誠司の顔があった。かすかに頬が触れ合い、めまいに似た感覚に襲われる。ぎゅっと目を閉じた時、自分の股間が熱を持ち始めたことに気付いた。慌てて誠司の腕を振り払おうとしたが、ビクともしない。誠司はニヤニヤ笑っている。

「おい、ふざけんな! 放せよ! 男同士でひっついてキモイだろ!」

 どんどん股間が膨らんで行くことに焦りながら、誠司の腕の中で無駄な足掻きを繰り返す。誠司はそれを余裕で抱きとめ、友晴がジタバタする様を楽しそうに見ていた。

「馬鹿誠司! はなせってば!」

体がずり落ち、背中が床についた。首にはまだ誠司の腕が絡まっている。上から顔を覗きこまれた。至近距離で目が合い、急いで逸らした。苦しくなるほど、心臓の鼓動が早い。みっともないほど、顔が赤い。

「マジで怒んぞ! 放せよ!」
「弱いなぁ、トモは」

 笑った吐息が友晴の顔にかかった。股間は完全に立ち上がっていた。情けなさと恥ずかしさで涙が零れた。

「え、なに? 泣いてんの、お前」

 さすがに慌てた誠司が腕を放した。解放された友晴は、床に寝転がったまま手で顔を覆い隠し、嗚咽を漏らした。

「ごめんごめん、そんなに嫌がってたなんて気付かなかった」

 誠司が隣に寝転がり、友晴の頭を撫でた。誠司はよく友晴の頭を撫でる。本当に自分のことを犬だと思っているのではないかと疑ってしまう。もちろん、友晴にとってそれは不快ではなかった。大きい手を感じるたび、うっとりとした気持ちになったし、その手が離れて行く時は寂しさを感じていた。今も、慰める誠司の手が心地よくて、甘えたい衝動がわき上がってくる。

「ごめんな、ほんとごめん。許して、トモ、泣きやんでよ」

 弱った声が友晴を慰める。指の隙間から見ると、眉をさげて困った顔の誠司が見えた。

「許さない」

 もっと誠司を困らせたくなって、そんなことを言ってみた。涙は止まっていたが、手で顔を隠したままにした。

「許して、トモ、ほんとに俺が悪かったって」

 大きな手の平が頭を撫でる。髪の毛を指ですいて、撫でつける。その手がピタと止まった。

「…トモ、勃ってる…?」

 誠司の視線が友晴の股間に注がれていた。気付かれたことにいたたまれない気持ちを味わいながら、どうにでもなれ、と開き直った。

「そーだよ! だから放せって言ったのに! 馬鹿誠司! お前なんか大ッ嫌いだ!!」
「うわー…ごめん、マッサージで気持ちよくなっちゃった?」

 本当は誠司の体を感じて勃起したのだが、そこは黙って頷いておいた。

「ごめんごめん。気にすんなよ、男同士なんだしさ。溜まってたの?」

 言いながら誠司の手が友晴の股間を触ってきた。ビクッと反応し、咄嗟に顔を隠していた手で誠司の腕を掴んだ。

「なっ、なにして…!」
「なぁ、トモ、いつもどうやってやってんの?」

 上ずった誠司の声だった。見ると、いつもとは違う、余裕のない顔をした誠司がこちらを見ていた。そんな表情は初めて見る。友晴の股間がまた膨らんだ。

「ふふ…大きくさせてんじゃねーよ」
「せ、誠司が触るから…!」
「お前も触って」

 低い声で囁かれた。ゾクリと総毛だった。震える手を誠司の股間へ伸ばした。半立ちのペニスに触れた時、視界がぐにゃりと歪んで見えた。

「ハハッ…、お前も、勃たせてんじゃねーかよ」

 なんでもない風を装い、思い切って誠司のペニスを握った。

「ンッ」

 ピクッと体が震え、誠司が吐息のような声を出した。もっと聞き出そうと手を動かした。

「ん…トモ、なに急に、積極的…」
「いつもどうやってオナニーしてんのかって聞いただろ、だから教えてやってんの」

 ズボンの上から手で擦るだけの行為がもどかしい。直に触って扱きたい。そこにむしゃぶりついて、舐めまわしたい。かろうじて働く理性が友晴を押し止めていた。

「ハァ…ハァ…あ…ん…」
「感じてんの? やらしー声」

 からかうと、目元を赤くした誠司に睨まれた。その顔を見ているとキスしたくなってくる。舌を入れて、めちゃくちゃ深いディープキスをしたら、誠司はどんな反応をするだろう。今の勢いでやっちゃおうか。そんなことを考えながら、生唾を飲み込んだ。

「なんか、屈辱。お前にリードされてるみたい」

 険しい顔つきで誠司が起き上がり、友晴の上に跨ってきた。カチャカチャとベルトを外し、下着の中からペニスを引っ張り出した。勢いよく外へ飛び出した友晴のペニスを見下ろしながら誠司がニヤッと笑う。

「先走りでベチョベチョだよ、トモ。どっちがやらしーんだか」

 直に握って扱いてくる。

「ア・ンッ! やだっ、反則!」
「トモ、女の子みたい、可愛いよ」

 普通の男なら女の子みたいだと言われたら憤慨するところなのだろうが、自分は女だと自覚のある友晴は、その言葉が恥ずかしくもあり嬉しくもあった。

「い、やっ…、誠司…」

 あいた両手を誠司の太ももの上に置いて、股間へ向かって沿わした。

「俺も…俺も誠司のちんこ触らせて…!」

 そんなことを口走っていた。

「待って…、外に出すから…」

 誠司は自分でズボンのチャックをおろし、中からペニスを出した。顔をあげ、友晴はそれを見た。完全に大きく勃起し、天を睨むソレ。先が濡れ光っていた。舐めたい。友晴は無意識に唇を舐めていた。
 友晴の顔の横に手をついて、前かがみになった誠司がまたペニスを扱いてきた。友晴も誠司の勃起を握った。熱い。皮を利用して扱いていると、またそれは大きさを増した。
 しゃぶりたい。誠司のちんこを舌で味わいたい。精液を飲みたい。これでアナルを犯して欲しい。友晴の頭にはそれしかなかった。

「ハッ…アッ…アッ…誠司ぃ…」

 わざと甘えた声を出した。切羽詰った顔の誠司と目が合う。

「気持ちいいの?」

 素直に頷く。

「俺も」

 誠司が笑う。

「俺、キスしたくなってきた…」

 ダメ元で言ってみると、誠司が顔を近付けてきた。伏せられた目元に色気を感じて鼓動が高鳴る。二人の唇が重なった。誠司の唇は少し乾燥していた。口を開くと、それに誘われたように誠司の舌が入ってきた。友晴も積極的に舌を絡ませた。誠司の唾液が伝い落ちてくるのを嚥下しながら手を動かした。キスしながら誠司の息が乱れる。どうしようもない愛しさが込み上げてくる。

「ヤバ…、イキそう…」

 顔をはなし、目を伏せて誠司が呟いた。さすがに飲ませてくれ、とは頼めず、「イッていいよ」と手を激しく動かしてやった。

「アッ…待って…、まじ、出る…!」

 友晴の顔の横に肘をつき、そこに顔を埋め、誠司が呼吸を荒くする。それを耳元で聞きながら友晴も昇り詰めようとしていた。

「…あ…誠司…俺も……イッちゃう…」
「ティッシュ…どうしよう…」
「俺にかけていいよ……」

 それは願望だったが、仕方がないという体を装った。ゲイだと気付かれたくなかったし、変態だと思われたくなかったからだ。

「いいの?」
「うん…もう、出るし、俺…」

 目を閉じ快感を追いかける。すぐに追いつき、一緒に上昇した。誠司の手の動きに全神経を集中させる。熱い。体がたまらなく熱い。誠司に扱かれていると思うと泣きたくなってくる。メチャクチャに泣いて、誠司を困らせて、慰められて、甘やかされて、あの胸の中で誠司が好きだと泣き喚きたい。涙が枯れるまで泣いて、気を失ってしまいたい。

「誠司、誠司ぃ…もう、出ちゃうよォ…アァァ…!!」

 咽喉をさらして喘いだ。そんな友晴を見つめる誠司の呼吸も荒い。

「いいんだよ、出して…」

 優しい声を聞きながら友晴は射精した。

「アッ…アッ…アァァァンッ!!!」

 ビュッと精液が飛んだ。余韻を噛み締めながら誠司を追い立てるために手を動かした。

「アァ……も…イク…イク…トモ、トモ…」

 友晴の名前を呼びながら誠司も射精した。温かい液体を下腹部に感じながら、最後の一滴まで搾り取った。
 はぁと深い溜息をつき、誠司が隣に寝転がった。天井を見ながらぼうっとしている。友晴は身を起こし、ティッシュで汚れを拭きとった。手の平を顔に近づけ匂いを嗅ぐ。独特な匂い。誠司の匂い。舐めたくなるがそこは我慢する。

「誠司こそ、溜まってたんじゃねーのかよ」

 いつもの調子で話しかけた。誠司は「ごめんな、なんか俺から襲ったみたいになって」とすまなさそうに笑った。いつでも大歓迎とは言えず、誠司のペニスをぎゅっと握ってやった。

「いつまで出してんだよ、さっさとしまえよ、露出狂」

 出したままでいられると目のやり場に困ってしまう。誠司は服装を正し、また寝転がった。

「イクときのトモ、まじで可愛かったよ、犯したくなったもん」

 言ってニヤリと笑う。

「ばっ、ばっかじゃねーの! キショイ! 馬鹿! 死ね!」

 慌てる友晴を見て誠司は声をあげて笑った。心臓がドキドキと高鳴る。本当に犯したくなったのかと期待してしまいそうになる。冗談なのだと自分に言い聞かせるのは大変なことだった。


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コメント
数年前に某所で書いていた小説はここまでです。
明日からは未発表の完全新作になります。
結構書いてたな…

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