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ズッ友だょ

2018.03.31.Sat.
※アンハピエン

「ああぁっ、ああぁんっ、イクゥ! イッちゃううっ!! もっと奥まできてええっ!!」

 と交尾真っ最中に「邪魔するぞ!」と合鍵使って入って来たのは井上だ。

 俺はイキ損ね、相手の男は「えっ、おわっ、ええ?!」と慌ててちんこを抜いた。

「だ、誰?! なに?! 知らない! 俺知らないから! こいつが俺誘ってきたんだし!!」

 とそいつは俺のせいにしながら服を拾いあつめ、パンツ一丁で部屋を出て行った。

「邪魔してくれたな」
「邪魔するぞと言った」
「やっぱ合鍵返してもらおっかな」
「お前が俺に押しつけてきたんだ。いつだって返すぞ」

 井上は鈴がついたキーホルダーを指で回した。三ヶ月ほど前、付き合ってた彼氏に振られておかしくなっていた時、俺が井上に渡した。

 彼氏だった男は既婚者で子供が成人したら離婚して俺と一緒になると言っていたのに、子供が成人する前に「男の君じゃやっぱり将来が見えないから」とか今更な理由で俺を振った。

 自棄になって限度以上の酒を飲み、ハッテンバで男漁りをし、ハメ撮り写真を持って彼氏を待ち伏せしたり、家族や会社にバラすぞと脅してさらに嫌われたりしていた頃、俺の奇行の噂を聞いた井上が様子を見に来てくれた。

 馬鹿なことをする俺を叱り、立ち直るよう励ましてくれた。

 既婚者の戯言を見抜けなかった俺を間抜け呼ばわりする奴はいてもこんなふうに親身になってくれたのは井上だけだった。だから俺は次、鍵を渡したくなる男が現れるまで井上に合鍵を預けた。

 井上とは高校で同じクラスだった。

 高校時代に親と学校にゲイバレした。当時付き合っていた束縛の強すぎる先輩が俺のクラスメートにまで嫉妬心を燃やして教室で色々喋ってくれたせいだ。

 おかげで学校には行きづらくなるわ親は泣くわで、俺だって相当参った。息子の同性愛を受け入れられなかった俺の両親は高校を辞めて働くことを勧めてきた。さっさと自立して家を出てけということだった。

 言う通りにした。学校を辞めて家で荷造りしてた時、当時クラス委員だった井上がロッカーに置きっぱなしだった俺の私物を持って来てくれた。

 荷物を俺に渡した井上は半ば強引に部屋にあがり込んできた。

「学校を辞めるそうだな。高校くらい卒業したらどうだ。今後苦労するぞ」

 真面目そうな奴という印象しかなかった井上と面と向かい合ってしゃべったのはこの時が初めてだった。

「いやぁ、井上も俺がホモだってわかったっしょ。学校行ってもからかわれるだけだし」
「ホモがバレたくらいなんだ」
「他人事だよねー」
「俺は心配して言ってる。こうすれば他人事じゃないか」

 俺の肩を掴んでぶつかるようなキスをしてきた。あまりに突然の出来事に俺は目をぱちくりさせて絶句だ。

「ホモが二人になれば珍しくなくなる」

 なんて真顔で言うんだ。

「井上もホモなの?」
「違う」

 ってきっぱり否定するからぶん殴ってやろうかと思ったけど。

「なんで優しくしてくれんの」
「自殺するんじゃないかと心配してる」
「こんくらいでしないよ。俺、図太いから」
「本当か?」

 疑り深く俺の嘘を見抜いてやろうとまじまじ見つめて来る。自殺のじの字も頭になかったから思わず吹き出した俺を見てやっと井上は安心したようだった。

 帰り際に「一応俺の連絡先を渡しておく」と携帯電話の番号を記した紙きれをくれた。

 それ以来、定期的に連絡を取りあう仲になった。成人してから酒を飲みにいったり。俺の恋愛相談に乗ってもらったり。小説家になるのが夢の井上の原稿を読んで素人ながらアドバイスをしたり。良好な友人関係を続けていた。

「さっきのは新しい恋人か?」

 小脇に抱えた封筒をテーブルに置いて井上は床に胡坐をかいた。原稿があがったから俺に見せに来たのだろう。いい奴だがいつも連絡なしに突然来るのだけは直してほしい。

「なりそうだったけど、もう無理かな」
「俺のせいか」
「違くてさ。責任転嫁の言い訳しながら逃げてく男なんて、ろくな奴じゃないでしょ」
「なるほど確かに」
「それ、原稿?」
「読んでくれるか」
「そのために来たんでしょ。金ちゃんはもう読んだ?」
「金吾にはまだ見せてない」

 金ちゃんは井上と同じサークルの奴だ。井上と仲が良く、俺もたまに一緒に飯を食ったりする。俺がホモと知っても態度をかえなかった気のいい奴だ。

「待って、コーヒー淹れる」

 俺がコーヒーをいれている間に井上はベッドへ移動して仰向けに寝転がった。さっきまで俺が男とイチャついていた現場だ。目撃もしたのにそこへ寝転がれる無頓着さはある意味井上らしい。

 コーヒーカップをテーブルに置いて原稿を手に取った。いつもお堅い文章で内容は未知との遭遇みたいなヘンテコなものが多い。今回もその路線では行きつつも、内容は恋愛ものだった。意外だ。

 主人公は男。男は花屋の女に一目惚れをする。仲良くなるために毎日花屋に通い、花を買って帰る。常連になった男と女との会話は増える。

 男の望み通り親しくなったある日、店が終わる頃迎えに来てほしいと女に頼まれる。男は言われた通り迎えに行った。家まで送ってほしいと言われて送った。

 アパートの前で女からキスをされた。唇は不思議な感触だった。掴んだ腰は実感がないほど細かった。間近で見た目は真っ黒だった。

 男は得体の知れない感覚に襲われてぞっとしたが、女に誘われるまま部屋に入った。明かりのない暗闇のなか、手探りで女を抱いた。女の顔は目の前にあるのに、体のあちこちで女の息遣いを感じた。

 果てても女はまた求めてくる。何人もの相手をしているような感じがしたという。疲れ果て男は眠ってしまう。

 目が覚めた時、女はいなくなっていた。そのかわり、蜂の死骸が部屋中に落ちていた。おしまい。

「なんだこれ」

 思わず言ってしまった。いつも意味がわからないまま終わることが多いが今回はさらに意味不明だ。

「結局なに。女って蜂だったの?」

 ベッドを見ると井上は目を瞑っていた。寝ている井上の肩を軽くゆさぶると目が開いた。

「なんだ」

 起こされて不機嫌そうに言う。

「読んだ。意味わかんない」
「もう読んだのか。女の正体は蜂だ。といっても地球外生命体で一匹の女王蜂とその他大勢の働き蜂で人間に擬態している。女王蜂から出されるフェロモンによって擬態がバレない。人間と性行為をするのは子孫を残すため。自分たちより体が大きく力が強い人間の精子を欲しがって地球にやってきたんだ」

 解説されても俺には理解できなかった。

「テーマがよくわかんないな」
「男と女は互いに理解しえない存在なのになぜ惹かれ合うのか、だ」
「恋愛ものなんて珍しいね」
「たまにはな。それで藍田に質問に来たんだ」
「俺に質問って?」
「俺は女と付き合ったことがない。つまり、女としたことがない。セックスってどんな感じなんだ? 想像だけじゃ補えない」
「俺に訊くの?! 俺だって女としたことはないよ?!」
「でもセックスはしてるだろ。さっきだって。女の立場からでもいい、何でもいいから教えてくれ」
「そりゃ俺はウケだけど、女の立場ってわけでもないよ?」
「やっぱり気持ちいいのか?」
「気持ちいいからしてんだけど……下手な奴もいるけどさ」

 なに真面目に答えてんだ俺。だんだん恥ずかしくなってきた。

「やってみればいいよ。井上も」
「簡単に言うな。相手がいない」
「俺は?」
「藍田?」

 びっくりした顔で井上は俺を見た。できるか、できないか、それを見定めるように俺の体の上を井上の視線が這う。

「ホモセックスもさあ、経験のうちって言うよ。いつか小説のネタにできるし。昔の文豪のなかには、そっち経験者多いとか聞くし」

 井上の腕を掴んで引きよせた。少し抵抗されたが、決心がついたのか力が抜けた。

「お前はこんなに簡単に誰とでも寝るのか?」

 驚きと少しの非難が混じった声に胸が痛む。

「男って基本、ヤリたくなったら頭のなかそればっかでしょ」
「俺は違う」
「ん、もう黙ってようね」

 井上の股間に顔を埋めた。ズボンの上からそれを食む。ゆるゆると刺激を与え続けていたらそこが盛りあがり硬くなってきた。

 チャックをさげて前を開く。パンツのゴムをひっぱったら勃起ちんこが顔を出した。咥える寸前、おでこをおさえつけられた。

「待て。やっぱりこんなのおかしい」
「ここまできてお預けとか。さっき俺の邪魔したの忘れた? 消化不良で溜まってんだから」

 井上の腕を払ってちんこを咥えた。大人になってから知り合って寝てきた男のちんことなんらかわらないのに、井上のちんこはやはり特別だ。

 夢中で舐めた。咥えてしゃぶって啜って舐った。

 思い出して井上を見上げた。難しい顔で俺を見ていた。目が合うと、井上は慌てて横を向いた。

 口を離し、ベッドの枕元に置いてあったコンドームを井上にはめた。

「男と女は体が違うけど、気持ちよさはきっと同じだと思うよ」

 井上にまたがり腰をおろした。さっき逃げていった男が充分に解してくれていたからすんなり入った。落ち着いていた体がまた興奮の火を点す。ただ入れただけなのに、もう気持ちがいい。

 井上は情けない顔をしていた。

「気持ちいい?」
「わからない」
「俺は気持ちいい」

 擦りつけるように腰を前後に揺らした。井上は食い縛った歯の隙間から吐息を漏らした。

「セックスしてるよ、俺たち」

 両手で井上の頬を挟み、正面を向かせる。戸惑う目が左右に泳ぐ。

「井上のちんこでイッちゃう」
「そんなこと言うな」
「井上の勃起ちんこが俺の奥まできてるよ。硬くて男らしくて、俺すごく気持ちいい。動いて。井上も動いてよ。俺のケツマンコ、ぐちょぐちょに掻きまわして」
「いつも、そんななのか?」

 俺の痴態に井上が引いてる。

「いつもこんなだよ。だって気持ちいいもん」

 腰を上下に振った。井上が呻く。

「はあぁっあっああぁん、イク、イクッ、もうイッちゃうっ!!」

 ビュルルッと勢いよく精液が飛び出した。井上は茫然とそれを目で追っていた。早くイッちゃいなと井上を締め付ける。顔を歪めて井上も果てた。

 荒い呼吸を二、三して、井上は俺を押しのけた。ずるりと俺のなかから井上が抜ける。コンドームの先にはちゃんと精液が溜まっていた。

 井上は急いでそれを外すとゴミ箱に叩きつけた。

「怒ってる?」
「怒っ……て、いいのか俺は」
「いいんじゃない。強/姦されたんだから」

 井上は「ごうかん」と呟いた。自分がいまされたこと、ちゃんと理解してなかったのかもしれない。

「でもま、一応はセックスだよね。どう、小説の為になった?」
「あまり参考にならない気がする」
「だろうね。もしかしてだけど、井上、好きな子できた?」

 井上の顔がみるみる赤くなっていった。珍しく恋愛小説なんて書くから怪しいと思ったんだ。

「わかってて、お前は俺にあんなことをしたのか」
「一回やっとけば、いざその子とするとき余裕持てるよ」
「大きなお世話だ。わかっててあんなことするなんて、お前は性格が悪い」
「えへへー。井上の童貞、欲しくなっちゃったんだもん」
「意味がわからない」
「俺がずっと井上のこと好きだったって言ったら理解できる?」

 井上は静かに息を飲んだ。その目が不安げに揺れたのを俺は見てしまった。

「あっははは! 嘘に決まってんじゃん」

 俺の大笑い。迫真の演技。張りつめた空気が一気に緩む。井上は安堵の表情を見せたあと、ムッと眉間にしわを寄せた。

「からかうな。一瞬でも本気にしただろ」
「ごめんごめん。最近ノンケをつまむのが好きでさ。井上も良かっただろ? また俺の穴、使っていいからね」
「そんな言い方はやめろ」

 不機嫌に言うと井上はテーブルの原稿を手に取った。パラパラと読み返す。俺はそのうなじを見つめる。

 高校の時、学校を辞めるなと俺にキスしてくれた同級生。あの日からほんとはずっと好きだ。さっきは勢いで告っちゃおうかとも思ったけど、井上の不安そうな目を見たらそんな気失せた。

 最初から無理だとわかってる。だから井上の次に好きになれそうな男を必死に探す毎日だ。

 結ばれることも諦めることも無理なら、せめて友達でいたい。失うくらいなら永遠に友達でいい。





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