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ほんとにあったら怖い話(1/2)

2017.09.01.Fri.
※義理父子。嫌な予感がしたらそっ閉じ推奨。幽霊は出ない。


「おはよう」

 キッチンにいる父さんへ声をかける。家に父さんの姿しか見当たらないことにも段々慣れて来た。

「早く歯磨きしておいで。すぐ朝ご飯の支度するから」

 父さんのエプロン姿も見慣れて来た。それを言ったら「恥ずかしいな」って父さんは照れて笑った。



 父さんは信じられないくらいいい人だ。

 高校生の息子がいるアラフィフの母さんと結婚してくれたのがまず信じられない。父さんはまだ三十代後半。もっと若い人と結婚して、自分の子を産んでもらうことも出来たはずなのに、母さんを選んでくれた。

 初めて顔を合わせた時から俺にも優しかった。食事の店を探す時も俺や母さんの意見を尊重してくれたし、ゲーム機をプレゼントしてくれた時は「一緒にやろう」とこちらが負い目を感じないやり方で場をなごませてくれたりした。

 酒乱で酒を飲むと暴力を振るっていた実父との落差に、同じ大人の男でもこんなに違うのかと驚いたほどだ。

 しばらくして「男同士で話がしたい」と二人きりで会った時には「絶対にお母さんを幸せにするから僕たちの結婚を許してくれないだろうか」と、高校生の俺なんかに頭をさげてくれた。

 俺が反対する理由なんかなくて、「よろしくお願いします」と同じように頭を下げたら、父さんは目を真っ赤にして「ありがとう」と俺の手を握って来た。

 結婚後は父さんの実家へと移り住んだ。父さんの両親はすでに他界していて、新しい親子三人、幸せに暮らせていたと思う。

 なのに、何が不満だったのか、結婚して一年も経たないうちに母さんは突然家出した。

『ごめんなさい。他に好きな人が出来ました。探さないでください』

 こんな短い書き置きを一枚残して行くなんてふざけてる。それを見つけた朝は頭が真っ白になった。父さんは手紙を持ったまま立ち尽くしていた。青白い顔で。

 父さんに申し訳なくて何度も謝った。

「明宏が謝ることじゃないよ。これは僕たち夫婦の問題だからね」
「警察に届けようよ! 捜索願とか、そういうの出せるんだろ?!」
「どうかな。単なる家出だと警察はちゃんと探してくれないかもしれない。それに見つかったとしても、母さんは僕たちのところへ戻ってきてくれるかな」

 自信なさげに呟く父さんを見て、俺は猛烈に腹が立った。もちろん母さんに、だ。好きな男が出来たからと旦那と息子を捨てていくなんてあの女どうかしてる。

 この時俺は自分が実の母親に捨てられたショックより、父さんへの申し訳なさと母さんへの憤怒のほうが強かった。五十手前の女が色恋に目を眩ませて家庭を壊すなんて、と軽く女性不信にもなった。

 怒りが収まったあと、すぐ我に返って不安になった。

 母さんがいなくなった今、父さんが俺を育てる義理はない。

 切りだされる前に自分から言おうと思って、数日後の夜、「部屋を借りられるだけのお金が貯まったら俺も出て行くから」と夕飯の支度をする父さんの背中に言った。

 父さんはびっくりした顔で振り返った。それはもう、怒っていると言ってもいいような表情だった。

「何を馬鹿なことを言っているんだ! 僕たちは親子なんだよ! 母さんがいなくたって、明宏が僕の息子であることにかわりはないんだ! 出て行く必要なんてない!」

 あまりの剣幕だったから俺はびびっちゃって、でもそれがすごく嬉しくて、泣きながらごめんって謝った。僕も大声出してごめんって父さんも目を潤ませながら謝ってくれた。この一件でより一層父さんとの絆が深まった気がする。

 だから母さんが家出した事実もわりと冷静に受け止められた。

 家事の役割分担を決めて俺も掃除や洗濯、たまに料理も手伝った。一人暮らし歴が長かった父さんの家事の腕前は母さんに負けないくらいで、正直、母さんがいなくなって不便を感じることも少なかった。

 不思議と寂しさも悲しみもなく、女の性を見せつけて跡を濁すような家出の仕方をした母さんが不潔で嫌らしいとさえ思っていた。
 


 父さんに言われた通り歯磨きをしてリビングに戻った。テーブルにはすでに朝食の皿が並んでいる。

「いただきます。明日は休みだし、俺が作るよ」
「それは助かるけど、たまには二人とも家事しないってのはどうかな?」
「どういうこと?」
「息抜きに温泉に行かない?」
「温泉!? 行きたい!!」
「じゃあ決まりだ。明日は一日、何もしないぞ」

 というわけで急遽温泉に行くことになった。



 翌日、父さんの運転で有名な温泉街へやってきた。硫黄の匂いがすることに俺がはしゃいでいると父さんは優しく目を細める。

 実父が家族サービスなんてしてくれたことはなかった。離婚してからはそんな金も時間の余裕もなくて来られなかった。

 ちらりと母さんを思い出した。今どこでなにをしているんだろう。新しい男と温泉旅行にも行ったのだろうか。会社も無断欠勤が続いてとっくの昔に退職扱いになっているらしい。収入もないのにどうしてるんだろう。

 またムカムカ腹が立ってきたが、仲居さんに案内された部屋を見て母さんのことは頭から吹き飛んだ。よくテレビで見るようなテーブルと座椅子があるだけの和室で、奥の窓から外の景色が見えた。隣にももう一つ部屋があり布団が二組敷かれている。その部屋の奥には小さい露天風呂があった。

 料金が高いんじゃないかと父さんを窺い見ると、俺の思考を読み取ったらしい父さんが「たまには贅沢しないとね」と微笑んだ。

 外を散歩するかと誘われたが断ってさっそく風呂に入った。下は川が流れ、川の向こうは竹林になっている。外気に触れながら入る風呂は解放感があって気持ちがいい。暗くなりかけの空もまたいい。

「僕もお邪魔するよ」

 だらしなく湯船につかっていたら父さんもやってきた。男同士だし全然平気だが、父さんの裸を見るのは初めてだと気付いたら妙にドキッとして焦った。

 ジロジロ見ちゃいけないと思うと余計目が釘付けになった。父さんは意外といい体をしていた。適度に筋肉がついていて、余分な脂肪もついていない。反射的にチェックしてしまった股間のものも、さすが大人だなと思えるものだった。

 自分のものを見下ろして少し恥ずかしくなるほど。

「気持ちがいいなぁ。来て正解だったね」

 体を洗いながら父さんがしみじみ言った。

「俺、旅館に来たの初めてなんだ」
「そうなの? また連れて来てあげるよ。何度でも」
「今度は俺が父さんを招待したい」
「嬉しいな。僕たちの恒例行事にしようよ」
「いいね。毎年一回は、どっか旅行しよう」

 母さんと結婚してくれた父さん。なのに母さんに逃げられた父さん。残ったのは血の繋がらい連れ子だけ。だけど追い出さずに親子を続けてくれた。父さんには感謝しかない。なにか親孝行したかった。それが旅行でもプレゼントでも、父さんのためなら、なんだってしてあげたい。

 胸の底から湧きあがる温かいような熱い感情。これはきっと愛というやつだ。俺は父さんと本物の親子に近づいてるんだ。

 感動したのも束の間、自分の体の一部が変化していくことに俺は慌てた。足を組んで股間のものを挟んだ。まさかこのタイミングで勃起するなんて。

 父さんは頭を洗っている。腕の動きに合わせて隆起する筋肉とか。脇の下の繁みとか。俺と同じ平らな胸とか。股の間にぶら下がるものとか。父さんが目を瞑っているのをいいことに、気付くと舐め回すようにそれらを見ていた。

 鼓動が早くなった。すでにのぼせたように顔が熱くなった。思わず舌なめずりした。俺ははっきり自分の欲求を自覚した。

 泡を流した父さんが俺の隣へやってきた。静かな俺に首をかしげる。

「どうした? のぼせた?」
「そうかも」
「外に出て風に当たるといいよ」

 父さんの提案に頷くことができない。いま出たら勃起した俺の一物を見られてしまう。なぜ立たせてるんだと怪しまれてしまう。

「明宏? 大丈夫?」
「大丈夫……」
「顔が真っ赤だ」

 父さんは俺の両頬を手で挟むと自分の方へ向かせた。至近距離から目を覗きこまれて眩暈がした。

「ほんと、平気」

 喘ぐように言って父さんの腕を振り払おうとした。そうしたら逆に腕を掴まれ、引きよせられた。湯の中だから簡単にバランスを崩して父さんの胸へと倒れ込んだ。

「僕は明宏の父親だよ。嘘はわかる。無理しないで一旦出よう」

 俺の脇の下へ手を入れた父さんが立ちあがる。俺を浴槽の縁へ座らせると、父さんはおやっという表情をして俺の股間を見た。

 顔から火が出るほど恥ずかしい瞬間だ。両手で必死に股間を隠してたら湯船から出られない理由なんてバレバレだ。こんな状況でも手の平の下で俺のちんこはドクンドクンと脈打つ。

「ああ……そういう……ごめん」

 父さんのほうも気まずそうだ。

「こっちこそ、ごめん。なんか急に立っちゃって」
「まだ若いからね。突拍子もないタイミングで立つことはあるよ」
「父さんもあった?」
「授業中とかね。あったよ」
「ほんと?」
「ほんとさ。今だってほら。明宏に釣られて僕も立ってきた」

 見ると父さんのものがゆっくり鎌首もたげてきた。俺は茫然とそれを見ていた。上を向くにつれどんどん太く大きくなっていく。浮き出た血管の脈動が、手の下に感じるものと重なって、父さんのものを触っているような錯覚を起こして頭がクラクラした。

「母さんがいなくなって、けっこう経つからね」

 言い訳するように父さんが呟く。手が勝手に動いて父さんのちんこを握った。

「すげえ」

 驚きと感心の声が漏れた。父さんはふふっと笑った。

「使っていれば嫌でもこうなるよ」
「まじで?」
「まだ経験ない?」
「……ない」
「じゃあ、扱き合いっこする?」
「えっ」
「明宏はしなくていいよ。僕がやってあげる」
「や、やだ。俺もしたいっ」

 父さんの笑みが深まる。口から心臓が飛び出しそうで、俺は無意識に唾を飲みこんだ。

 俺と父さんは向かい合って立つとお互いのものを握りあった。大きな父さんの手が俺のちんこをシュッシュと扱く。俺は簡単に果てそうだった。

「まっ、待って……もう、出そうだからっ」
「出せばいいよ」

 耳元で囁かれて背筋がゾクゾクとした。見上げる顔が、いつもの父さんに見えなくて混乱した。父さんの胸に視線を落とした。あの胸のなかに飛び込んで頬を擦りつけたいと思った。思いきり甘えたい、と。

 俺はもう父さんを父親として見られなくなっていた。

 俺たちは無言で手を動かし続けた。俺は荒い息遣いでたまに甘ったるい女みたいな声が漏れた。この恥ずかしい口を父さんの口で塞いで欲しかった。

 優しく俺を見つめる黒い目はそれに気づいているのかいないのかわからない。でもずっと俺を見つめ続ける。俺は体の芯から焦がされた。

「はあ、はあっ、あっ……もう、出る……出ちゃうよ、父さん……っ」
「いいよ」

 父さんの勃起を握りしめたまま俺は射精をした。たっぷり出たものがべっとりと父さんへと降りかかる。父さんは微笑んだままそれを湯で流した。

「ごめん、俺……」
「なんで謝るの?」
「父さんのこと、イカせらんなかった」

 意外な答えだったみたいで軽く目を見開いたあと父さんはプッと吹きだした。

「そんなこと。年が違うもの。僕はもう若くないから時間がかかるんだよ」
「父さんはまだ若いしかっこいいよ。母さんとは離婚して新しい奥さん見つけなよ」
「そうなったら明宏はどうするの?」
「父さんが幸せになってくれるなら、俺は喜んで今の家を出て行くよ」
「新しい奥さんはいらないし、僕の家族は明宏だけだよ」

 期待した嬉しい言葉が帰ってきて心がくすぐられる。

「俺が母さんの代わりになるよ」
「どういうこと?」
「父さんが嫌じゃなかったら、こっちも、俺が……」

 いまだ天を向いたままのちんこを握る。

「自分がなにを言ってるかわかってる?」

 俺の手に手を重ねて父さんが言う。断られたら死ねる。気持ち悪いことを言うなと罵られたら裸でここから逃げよう。ぎゅっと目を瞑った。

「お母さんが家出した負い目だけで言ってるなら、それは大きな間違いだよ」
「そんなんじゃない! 俺、俺……父さんのこと好きだから……!」
「明宏、目を開けて僕を見て」

 恐る恐る目を開け父さんを見る。いつの間にか目の前にあった顔。近いと驚いた次の瞬間には、唇が合わさっていた。

「嬉しい。ほんとに嬉しいよ。僕だって明宏のことが好きだよ。これから君は僕の息子であり妻であり恋人だ。そう思っていいんだね?」

 断られなかったことに安堵して、俺は何度も何度も頷くことしか出来なかった。







お久しぶりです。
8月中に更新したかった…!
もう今日から9月ですね。今年も残すところあと4ヶ月、とか思うと1年ってあっという間な感じがします。
まだ4カ月もあるんだ!と思って残り4ヶ月、有意義なものになるよう過ごしたいです。
最近やっと涼しくなってきましたね。うっかり風邪ひいたり体調崩したりしないようお気を付けくださいませ。

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