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コンビ愛(1/1)

2017.07.28.Fri.
※エロ無し。以前出した短編集の一つの続編というかおまけ。
(簡単な前編あらすじ、というか設定。養成所時代からコンビを組むミヤ(受)と夜明(攻)。コントの打ち合わせをしていたら流れでセックスしてしまうがまだ付き合ってない感じ)


 家で飯食いながら仲のいい先輩芸人、森村さんの番組を見る。今回のトークテーマは「コンビ愛強すぎる芸人」で、続々仲が良いコンビが登場してくる。

 最後に俺の相方の夜明が出て来たので食べていたカップラーメンを吹きだしそうになった。

 俺はこの収録に呼ばれてないぞ?!

 司会の二人もまずそこを訝しみ、夜明に話しかけた。

「解散した?」
「してないです」

 夜明の否定に内心ホッとする。知らない間に見限られたんじゃないかとちょっと心配したじゃないか。

「僕もなんで今日呼ばれたのかわかんないんですよね。うち、そんなに仲良いほうじゃないんで」

 と夜明が発言すると、他の芸人から「楽屋にいる時いつも二人だけの世界作ってんだろ!」「お前ら二人距離近すぎなんだよ!」などと突っ込まれていて恥ずかしくなる。

 夜明は普段の会話は音量を抑えて喋るので、聞きとろうと思うと自然と距離が近くなり、顔を付き合わせる形になるのだ。傍目には仲良く見えるだろう。いや実際仲は悪くはない。この前なんか、コントの打ち合わせしてたら勢いでセックスしちゃったしな。

 あれはコントの内容が悪かった。ホモの整体師と客という設定。ローションプレイに俺の体が感じて勃起してしまい、その始末をつけると夜明に抜かれ、そのまま流れでセックスしていたのだ。

 ローションまみれだから変な気分になるし、すんなり挿入できちゃうし、意外に気持ちいいし、気持ちが高まって意味なくキスまでしたし。

 他のどのコンビ愛が強い芸人も、流石にこんなことまでしてないだろう。

 その俺が呼ばれず、なぜ夜明だけが番組に呼ばれたのか。

「実はですね、今回どうしても夜明くんと一緒にこれに出してくれという芸人がいましてね」

 と司会の舞原さんが振り返る。袖から後輩芸人の市原が現れた。

「みなさんポカンとしてますが、彼はシャンゴリラというコンビの市原くんと言って、夜明のことが好きすぎて好きすぎてどうしようもないというんですね」
「はい! 夜明さんがコンビ組んでくれるならいつでもシャンゴリラ解散します!」

 市原が大きな声で断言する。こいつのことは俺も知ってる。夜明の会話に何度となく出て来るし、仕事終わりを待ち伏せして夜明と飯を食いに行ったりしているからだ。

「そんなに夜明が好きなの?」
「はい! 知ってますか、芸人男前ランキングで一位なんですよ。見てください、このカッコいい顔。24時間365日見てても飽きないですしこれで飯5杯はいけますよね!」
「いやいや、そんな力説されても。せいぜい1杯やわ」
「食えるんかい」

 笑いが起こるなら、市原だけは真剣な顔だ。夜明のほうはヤレヤレって感じで笑っている。

「そこでですね、市原くんがどれだけ夜明のことが好きすぎるのか、ちょっと検証というかね、ドッキリを仕掛けてみましたんで、どうぞ」

 森村さんの振りで画面が切り替わった。都内某所の居酒屋の個室。そこに夜明と市原がやってきた。世間話をしながら食事をしている。その間、市原はあれやこれやと夜明のために甲斐がいしく動いていた。全身全霊で夜明のことを敬愛していますといった感じだ。こんなに後輩に慕われたら夜明も可愛がらずにおられないだろう。

『まず、市原がどれほど夜明のことを好きすぎるのかを確かめることにした』

 というナレーションが入った。これからドッキリ開始のようだ。

「お前さ、常々俺とコンビ組みたかったって言ってるけど、あれ、本気で言ってるのか?」
「もちろん本気っす!」

 市原の即答に夜明は下を向いて小さく笑った。

「ミヤのこと、どう思ってる?」
「はっきり言って邪魔っすね!」
「おい!」

 テレビの中の市原に向かって声を荒げてしまう。邪魔はないだろう。俺も先輩だぞ。

「夜明さんの笑いのテンポについてこれてないですよ。ツッコミの語彙が少なくて平凡だし、生ぬるい時が多いし」

 言い過ぎだろよ、おい……。でも的を射てて辛い。ドッキリだからこそ知れる本音だ。スタジオでは笑いが起きているが、俺はかなりダメージを受けている。

「よく見てるな。でも、あれはあれでいいとこあるんだよ」
「世間で言われてる癒し系でしょ? 芸人なのに意味わかんなくないっすか? 笑い取るのが仕事なのに癒し系とか」
「俺もそれに乗っかってるとこあるから耳が痛いな」
「夜明さんはそれを仕事に繋げてるじゃないですか! あの人はネタも考えないし、癒し系って属性すら活かせてないじゃないですか。俺だったら夜明さんのお荷物にはならないです!」
「市原、言い過ぎ」

 顔は笑っているが、夜明の声のトーンはマジだった。それが市原にも伝わったようで間髪入れず「すみません」と謝った。引き際心得てるところも腹立つ、こいつ。

『夜明への愛と三宅への敵対心がわかったところで、もっと踏み込んでみることにした』

 再びナレーションが入った。

「そんなに俺が好きなの?」

 夜明の直球な質問が市原にぶつけられる。さっさと済ませようと投げやりな感じ。相方の俺にはわかる。夜明の奴、ドッキリに飽きてきたな。

「好きっす。もう、マジで。引かれるくらい、本気のやつです」

 市原はさっきと変わらない熱量で質問に答える。

「本気のやつって?」
「夜明さんになら抱かれたいっす」

 なな、なんだって?! スタジオの方から悲鳴とどよめきの声。

「怖えよ」

 夜明は仰け反るように市原から顔を逸らした。

「俺が抱いてもいいっす」
「嫌だよ」
「やっぱりミヤさんみたいなかわいい系が好きなんですか」
「あれかわいい系か? っていうか、ちょっと待て。お前って男が好きなのか?」
「男は夜明さんだけっす。初めて夜明さん見た時、こんな格好いい人いるんだって雷に打たれたんですよ」
「恥ずかしいからそのへんで止めとこうか」
「俺、本気っす」
「わかったから」
「俺とコンビ組んでください」
「だから俺にはミヤがいるから」

 珍しく夜明が慌てている。俺も正直、どんな感情になればいいのかわからないでいる。

 市原が夜明のことが好きすぎることはよくわかった。それが性的な意味も含んでいることも。

 相方の俺としてはどういう反応が正解なんだ? いますっごいムカついてるのは正しいのか? 嫉妬は間違いじゃないか? セックスなんかしたことないコンビは、こんな奴が現れた時どう思うんだ?

 ラーメンを食べることも忘れて俺は画面を凝視し続けた。はっきり断らないで苦笑を続ける夜明にも苛々する。ちょっと受け入れてる感じが見てて嫌だ。

 いてもたってもいられなくなって夜明に電話をかけた。数コールで繋がった。

『はい』

 聞き慣れない声が聞こえて来た。

『ミヤさん? おはようございます! シャンゴリラの市原です!』
「なんでお前が夜明の携帯に出るんだよ!」

 さっきまでの苛立ちが声に出た。ほとんど怒鳴るように言っていた。

『夜明さん、いまトイレに行ってます。伝言あったら伝えておきますよ?』

 取りついでもらえないことに無性に腹が立った。どうしてこいつがそんなことを決めるんだ。どうしてこいつが邪魔をするんだ?!

「おい、市原。ハレトーク見たぞ」
『あっ、もしかして俺が夜明さんと出たの、見てくれたんですか?』
「ああ、見たよ。お前、そんなに夜明が好きか?」
『好きっす!』

 迷いのない即答にカッと頭に血が上った。

「言っとくけどあいつは俺のだから。変なちょっかいだすなよ。最初にあいつに目つけたのは俺だし、実際コンビ組んでるのも俺だから。お前があいつとコンビ組む日なんか未来永劫にこないから諦めろ。お前が俺たちの間に入り込む隙なんかねえんだよ」
「それ、ミヤさんが一方的にそう思ってるだけですよね? 夜明さんの本心はわかりませんよね」

 痛いところをつかれて言葉に詰まった。確かに言う通りだ。夜明の本心なんて知らない。いつもネタを考えてくれるのは夜明だ。ライブや番組の打ち合わせも夜明に任せてしまっている。

 あいつが俺とコンビを組むメリットってなんだろう? 何も思いつかなくて愕然となった。足元がガラガラと崩れていくような感じだ。

『それに俺、コンビ組めなくても恋人でもいいっす!』

「ばっ、ばかやろう。あいつはエロい姉ちゃんしか興味ねえんだよ。お前みたいなムキムキマッチョ、夜明が抱きたいと思うわけねえだろ!」

 なんとか言い返したものの、俺の思考はさっきの市原の発言に支配されていた。夜明が俺とコンビを組む理由。何も思いつかないじゃないか……。

『おい、勝手に人の性癖バラすなよ』

 聞き慣れた声に我に返った。夜明の声だ。

「なんで市原と一緒にいんだよ!!」
『なんでって、飯行きましょうって誘われたんだよ』
「ホイホイついて行くなよ! 人には危機感ないとか言っておいて!!」
『ちょっと落ち着けよ。どうして俺が市原とメシくっちゃいけないんだよ』
「ハレトーク見たんだよ!!」
『あー、あれ。見ちゃった?』
「俺絶対解散しないからな! 一生お前とコンビ組むから! お前は俺のもんだから!!」

 夜だっていうことも忘れて絶叫に近い音量で叫んでいた。その次の瞬間、いきなり玄関の戸が開いて、カメラと照明を持った大人たちがドカドカ部屋に入って来た。

「なっ、えっ?! え!?」

 照明が眩しくて目を細める俺の耳に夜明の笑い声が聞こえて来た。爆笑だ。

「ちょ……え、なにこれ?!」
『ドッキリだよ、バーカ』
「ドッキリ?! なんの?!」

 混乱する俺に夜明が説明してくれた。俺がさっきまで見ていたハレトークはスタッフがいつの間にか仕込んだ映像で、実際にいま放送されているものではないこと。市原も仕掛け人の一人で、本当のターゲットは俺だということ。

 今まさにハレトークの収録真っ最中で、俺の部屋には複数の隠しカメラが仕込まれていること、それを皆で見ていたことなどを教えてもらい、俺はますます混乱に陥った。

『舞原です。三宅くん、ごめんね』

 スタッフから渡されたイヤホンから司会の舞原さんの声が聞こえた。

『いま、コンビ愛強すぎる芸人の収録を行ってまして、しっかりミヤのコンビ愛も見せてもらいましたから!』
「えっ、ちょっと待って下さい! 意味がまだわかんないんですけど!」

 心臓ドキドキして汗が噴き出してきた。隠し撮りだって? 帰宅してからなにかおかしなことをしでかしてないか不安でたまらない。

『ミヤ、森村です。お前は俺のもんだからって言われた時、夜明くん真っ赤になってましたよ。夜明は否定してたけど、お前ら断トツでコンビ愛強すぎ芸人です』
「ちょっと森村さん、ちょっと待って下さい! いち、市原が! あいつが挑発してきたんですよ?!」
『そういう時に出るのが本音でしょ。待って、お前の相方に替わる』

 ミヤ、と俺を呼ぶ夜明の声が聞こえた。

『詳しいことは今度会った時に話すとして。まぁ、なんだ、ありがとう。嬉しかった。すげえ恥ずいけど。これからも末永くよろしく』
「えっ、ああ、うん。こ、こちらこそ」
『お前を相方に選んで良かった』

 耳が痛くなるほどの拍手と歓声が湧きあがった。

 汗が止まらないし、動機も収まらない。公共の電波でとんでもないことを口走ってしまった。そうだこれはコンビ愛だ。市原に嫉妬したのも、コンビ愛が故だ。相方への独占欲なんて、多かれ少なかれみんな持っているもののはずだ。

 きっと、そうだ。

 でも次、どんな顔して夜明に会えばいいんだろう。そしてこの放送をどんな顔してみればいいんだ。とりあえず今はテレビ用のコメントをしないといけない。

「俺たち、死ぬまで一緒だからな」





急に思いついて書きたくなってしまったんです。短編集読んでない方にもわかるように簡単なあらすじは書いておきました。三行におさまる内容のなさに笑ってしまいましたw次はちゃんとしたものを更新します!
忍び/の国見てきました!
傲慢で我が儘な殿様を叱りつける家臣って垂涎(^p^)

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コメント
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お返事
ゆいさん

自分で自分の書くものの拙さがわかっているから「ぜひぜひ!」とお勧めできないのが非常に悲しいですw
気が向いたら、お買い求めください。満足してもらえるものを書けるように、日々精進致します!!


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