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やっぱちょろい(1/2)

2017.05.15.Mon.
<前話「ちょろい」>

 高校卒業してから個人が経営しているレンタルビデオ店で週5でバイトしている。

 頭はもともと悪くて大学進学なんて夢の話で、じゃあ手に職つけるために専門学校行くって親に言ったらお前に投資しても無駄になるからどうしても行きたいなら自分の金で行けって就職を勧められた。

 担任も親寄りの意見で、でも俺は就職なんて面倒臭いからのらりくらりしてたらニートになっていた。せめて生活費を入れろと親に雷落とされて、仕方なく始めたのがここのバイトだ。

 今時個人のレンタル店なんて流行るわけもなく、ちょうどいい塩梅に暇だから、怠け者の俺にはうってつけのバイト先だ。

 店長も親の代から引き継いだだけのやる気のない人だから必要最小限の店番さえやっていれば文句は言われない。

 勤務時間は10時から18時まで。いつの間にか朝の開店は俺の仕事になっていて、12時にやってくる店長と入れ替わりで昼休憩に入る。13時からは店長と二人体制になるが、客が極端に少ない昼過ぎは店長は近くの自宅へ戻るので、ほとんどの時間俺一人。

 時給は安いが、忙しくもなく気を遣う相手もいないので気楽なもんだ。

 気楽すぎて、昼ご飯を食べたあとは眠たくってしょうがない。いつもなら椅子に座りながら居眠りできるのだが、今日は納品があるので寝てもいられない。

 小さな段ボール箱を開けて中身を出していく。話題の新作DVDだろうが入荷数は1本。それもよほどの話題作のみ。洋画、邦画合わせて5本。残りの3本はアダルトDVDだ。

 映画は流行り廃りがはっきりしているが、アダルトDVDはそれほど顕著じゃない。いまや店の3分の1がアダルトコーナーになっている。

 旧作に落ちればバイトの特権で無料で借りられるので、俺はどんなDVDが入荷したのか1枚1枚、丁寧に見て行った。店長が好きな女教師もの。お天気お姉さんもの。そして最後の一枚を手に取って俺は失神しかけた。

『ノンケカップルをナンパ!男の娘のボクと3Pしませんか?』

 3ヶ月ほど前に俺も出演したオムニバスのアダルトDVDだ。震える手でパッケージを裏替えしたら、男のちんこを咥えてる女装した俺が写っていた。まさかこれが発注されていたなんて……!

 女ともヤッたから、ノンケ向けのアダルトDVDに分類されてしまったんだろう。店長が俺だとわかって注文したとは考えたくない。

 俺がこの道に堕ちたのは、高校の時にふざけて家出掲示板に書きこみなんかしたからだ。クラスの女子が飯食っただけで一万もらったなんて言うから、こんなちょろいバイトはないと思って軽い気持ちからだった。

 女装した俺は意外に可愛くて待ち合わせ場所に現れたスーツの男にバレることもなかった。調子に乗って男に言われるままマンションまで行って、そこで俺は男たちに犯された。

 マンションにはスーツの仲間が二人いて、保険と販売用だと言って撮影までされた。口止め料に一万もらったけど、そんなのもらわなくても誰にも言えることじゃなかった。

 しばらくしてまたスーツの男から呼び出された。俺はまた女装して犯された。死ぬほど嫌なのになぜか勃起して射精した。認めたくないが、気持ちよかったのだ。

 出演料として3万を受け取った。俺の動画は人気だったらしい。また次も頼むぞと言われた。脅されなくても断る気はなかった。きついし痛いし大変だけど、女装して別人になって犯されるのは、正直興奮した。

 3本目の動画を撮影し終えたらスーツからの連絡はぴたりと止まった。俺の人気が落ちたのかと思ったが、高校卒業して半年後、スーツからまた出演依頼がきた。

 今度はちゃんとしたビルの一室に呼ばれ、撮影スタジオが用意され、スタッフの数も増えていた。スーツたちの荒稼ぎが、本業の怖い人たちに見つかって、ずいぶん怒られたのだそうだ。

 そしてその怖い人たちの会社の下請けとして今は真面目に働いているというわけだ。売上金という高い上納金を納めるのはかなり大変だと俺にも愚痴ってきた。

 強/姦して金儲けしてたんだから一生怖い人たちの奴隷となって働けと言ったら苦虫かみつぶした顔をされた。

 そんなわけで、俺もそこの専属モデルとしてちょこちょこ仕事をしていた。レンタル店でのバイトが本業なら、アダルトビデオ出演はほんの副業感覚で。

 女装のおかげか今までバレたことはない。でもまさか自分がバイトする店で取り扱う日がくるなんて思ってもいなかった。これを店長に見られたらさすがにバレるかもしれない。店長が男の娘なんて特殊なものに興味を持たないことを祈るばかりだ。

 貸し出しのための作業を終え、新作コーナーの棚に並べた。表に俺の画像が使われてないことだけが救いだ。

 入荷当日、ドキドキしていたが借りて行く客がいなくてほっとするようながっかりするような、複雑な気分だった。

 女装して男にハメられ、女にハメる俺を、どんな奴が借りて行くのか、かなり興味がある。

 俺を見て可愛いと思ってくれるだろうか。俺にフェラされたいとか、ケツマンにぶちこみたいとか、そんなこと思いながらオナッてくれるだろうか。レジで受け付けた男が出演してると知ったらどんな反応をするだろう……。

 なんて妄想で二日目も終わりかけたが、急用ができた店長から閉店まで店番して欲しいと頼まれ延長が決まった。

 どうせやることもたいしてない店だ。さすがに昼より客数は多いが一人でこなせない量でもない。長い長い時間が過ぎてやっと21時。あと一時間だと時計の針を見ていたら、いかにも仕事終わりって感じのスーツ姿の男が入って来た。

 髪をきちっとまとめたお堅い感じ。二度見したあと、俺の視線はその男を追い続けた。

 女が好きだし、見るAVも当然女が出てるやつを見る俺だが、ある特定の男にはピクリと反応してしまう。

 最初に俺をブチ犯しやがった最低クソ野郎。待ち合わせ場所に現れた時の優しげな雰囲気から一変して、俺を犯すときのガラの悪さと、人を人とも思わない残忍さ、計算高さ。

 図々しくも二度も三度も俺を呼び出して輪姦し、挙句やくざに目を付けられたことを俺に愚痴ってくる無神経クズ野郎。五木。あいつの最初の印象が強烈に焼きついていて、お堅めなスーツ男を見ると俺のなかに眠っていた嗜虐性がそそられるというやっかいな性癖になってしまったのだ。

 あの見た目でヤルとき豹変してくれたら、俺はアヘ顔さらしながら嬉ションするかもしれない。幸か不幸かそんな出会いはまだない。

 男は邦画コーナーの前で立ち止まった。いくつか手に取っては戻す。次は洋画コーナー。あれこれ見たあと、アダルトコーナーへ足を踏み入れた。

 どんなAVを見るんだろう? あの男はどんな嗜好性の持ち主なんだろう? 俺が出てるDVDを持って来たら……想像するだけで鼻血が出そうになる。

 数分して、男が受付にやってきた。カウンターに置かれた一枚を見て咽喉の奥から変な声が出そうになった。

『ノンケカップルをナンパ!男の娘のボクと3Pしませんか?』

 思わず男の顔を見上げてしまった。アダルトを借りて行く時、開き直っているふりをするか、気まずそうにしているかどちらかなのだが男は後者だった。

「会員カードはお持ちですか?」
「ああ、はい」

 男が出したカードを読みこみ名前のチェック。本田というのか。

「新作なので新作料金になります」
「はい」

 男は千円札をトレイに置いた。会計が済んだら男は帰ってしまう。

「この男の娘ってやつ、男なんですけど大丈夫ですか?」

 突っ込んだ質問をしたら男の顔が少し赤らんだ。

「えっ、ああ、大丈夫です」
「男の娘好きなんですか? 最近流行りですもんね」
「ああ、そう、ですね……」

 さすがに鬱陶しく感じ始めたのか、本田さんは眉間を寄せた。よく見ると整った綺麗な顔をしている。俺をさげすんで罵って欲しいもんだ。

「俺も結構持ってるんですよ。良かったら貸しましょうか?」
「えっ? いや、結構です。急いでいるので……」

 これ以上はさすがに怒られそうなので、貸出処理をしてDVDの入ったバッグを男に渡した。今夜これを見るのだろう。パッケージで煽情的な格好をしていた女が男だとわかった上で。あれを目当てに借りたのだから、きっと俺でも興奮してくれるはず。

 今夜は俺のオナニーもはかどりそうな予感だ。



 次の日、バイト終わりに買い物へ行った。荷物を持って事前に調べておいた女装更衣室へ向かう。利用料にメイク代をプラスして払い、シャワーを浴びたあと買った服に着替えてメイクをしてもらった。

 ウィッグをレンタルして更衣室を出た。夜で暗いからかすぐ男に声をかけられた。パッと見で男とバレないどころか、ナンパされるレベルなのだ俺は。

 その格好でバイト先へ向かった。21時前。新作は一泊しか出来ないから、本田さんは今日返却に現れるはずだ。昨日と同じ時間を狙って来たが、もう来店した後だったら無駄足になる。

 そんな覚悟をしていたが、20分も待たずに本田さんはやってきた。店の近くでポツンと立っている俺をちらりと見たあと店に入り、十分ほどで出て来た。

 本田さんは駅と反対方向へ向かって歩き出した。俺はあとをつけた。距離を縮めながら心臓はバクバクと高鳴っていた。

 なんて声をかけよう? 昨日のDVDはどうでしたかって? 俺が店員だとバレると後々困ることになるかもしれない。でも逃したくない。

 ひと気のない住宅街へ入った。本田さんが振り返った。レンタル店からつけてくる俺に気付いた様子。少し歩調が早くなった。

 このまま家に帰られたらこれまでの苦労が水の泡だ。死ぬほど緊張しながら本田さんに声をかけた。

「あの」

 本田さんが振り返る。

「なにか?」

 ものすごく警戒した声。

「あの……、一目惚れなんですけど、良かったら付き合ってくれませんか?」
「えっ?!」

 と素っ頓狂な声をあげる。いきなり見ず知らずの怪しい女から告白されたら誰だってびびるだろう。俺だってびびる。

「え? 俺……僕?! ほんとに? ええ?!」

 戸惑いながらも本田さんの顔がにやけていく。これは良い感触。

「どうして、僕?」
「あたし、スーツフェチっていうか。本田さんみたいな人、大好きなんです」
「あれっ、え、なんで名前……」

 しまった。

「ごめんなさい。実は以前、あとをつけたことがあって」
「そういう……ええ、本当に? ちょっと怖いな……」

 怖いよね。俺だってこんなこと言われたら怖いわ引くわ。でも本田さんの目が俺の体の上を何往復もしている。見定める目。怪しいし騙されているのかもしれないけど、危険を冒すに相応しい女かどうかって目。いいね、本田さん。欲望にまみれた正直な目、ゾクゾクするよ。

「付き合うとか、急にはあれかなぁって」
「駄目ですか」

 慎重派だね、本田さん。俺のこの上目遣いを見ても断れるのかい?

 泣きそうな表情を作って本田さんを見上げる。グラグラ揺れる本田さんの心の天秤が見えるようだよ。

「名前を聞いてもいいかな?」
「ミワって言います」
「ミワちゃん。あ、よろしく」
「立ち話もなんなのでぇ、本田さんちに行ってもいいですか?」
「今から?!」
「ホテルでもいいですよ?」

 本田さんが生唾を飲みこむ音が聞こえた。

「そこだから、僕の家に来る?」
「はぁい」

 男ってやっぱちょろいわ。




曲がり角に、犬

お久しぶりです!三ヶ月ぶりの更新です!
やっと更新できたー!(泣
前回更新のタイトルが「メリクリあけおめ」だったので余計に時間がかかったような感じがしますw
これからはお待たせすることなく更新できるよう頑張ります!!


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