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メリクリあけおめ(1/2)

2017.02.10.Fri.
利害の一致>→<凹の懊悩

 もうすぐクリスマスだっていうのに、いっしょに過ごす相手がまだ見つからない。後輩に頼んだ合コンで、すでに何人かの女の子の連絡先は手に入れているが、どれもこれもピンとこない。

 後輩には「高望みしすぎっすよ」と呆れ顔で言われた。

「高望みなんかなー。お前が用意する子って、みんな良くも悪くも『女』って感じのばっかじゃん。もっとさー、雰囲気違う子いない? 面白い子」
「お笑い担当みたいな子っすか?」
「それは違う。それは面白いの意味が違う。人として面白いっていうか、今までとタイプの違う子がいいんだよなー」
「具体的には?」
「具体的には……」

 考えこむと、別の後輩のスカした顔が浮かんでくる。あれの女版が合コンに来たらきっとつまんなそうな顔してるんだろうな。場の空気悪くなっても気にしないで、自分の好きな物注文して、飲み食い終わったら「お先に」って帰りそうだ。

 そいつの名前を出すわけにはいかないので、「わがままじゃないけど、空気読まない感じの」って言ったらしかめっ面をされた。

「俺じゃ手に負えないんで、自力で探してくださいよ」

 しまいには見放されてしまった。

 後輩がいなくなった喫煙ルームで一人、煙草を咥える。結局はただのないものねだりだということは自分が一番よくわかっている。

 井口の女版なんて、そうそういるはずがない。いたとしても、魅力を感じるかどうかわからない。俺がいま気になっているのは、男の井口なんだから。

 後輩で、同じ男である井口とセックスした。しかも2回。1回目は井口から誘われた。2回目は俺から誘った。しかも強引に。

 井口とのセックスは案外良かった。小憎たらしいの後輩の意外な一面が可愛かった。またセックスしたいと思ったし、実は井口も同じ気持ちなんじゃないかと期待させる態度だった。

 なのに、まさか。あいつに彼女がいたとは。

 ちょっとでも気があるから俺を誘ったのかと思いきや、井口が言った通り俺は風俗以下の、ただのバイブのような存在だったわけだ。じゃあもう、ただの突っ込む棒として井口を誘うしかなかった。

 悔しいことに二度目のセックスも気持ちよかった。フワフワした感じで終始した一回目とは違って、ほとんど素面で、手順を踏んだ、ちゃんとしたセックスだ。どさくさに紛れて、一度目の時には断られたキスもしてやった。

 キスなんかでドキドキ胸が躍ったのは久しぶりだ。

 よくわかんないまま体から始まった関係だが、お互いその気があるなら、セックスしながら今後の二人の形が見えて来ると考えていたのに。

 彼女がいるなら、形になるような未来なんかない。

 井口とのセックスは、食べてみたら意外に美味しかった珍味みたいなもんだ。食べ慣れたものを食べていたほうが、体は壊さないはずだ。

 好都合なことに、井口は先日のあれ以来、俺に腹を立てている。

 なにを拗ねているのか。心当たりはある。ゴムをつけるからと誘ったのに、生でヤッてしまったからだ。終わったあと処理しながら腹が立ってきたのだろう。井口って潔癖なところがあるから些細な裏切りも許せないタイプっぽいし。

 だから昼休憩で食事に誘おうと井口を見ても目が合うことは絶対ないし、視界にすら入れないように体ごと顔を背けられたりしている。

 仕事で話しかけても淡々と短く応答するだけで、意味のない世間話なんてひとつもしない。冗談も通じなかった入社したばかりの頃の井口に戻ってしまっている。

 このまま必要最小限の会話をする仕事だけの間柄に戻ったほうがいいんだろう。そのほうがお互いのためだ。

 と、自分を納得させた時、禁煙ルームに和気さんが入って来た。

「木下さん、ここにいたんですか」

 と、俺の隣へやってくる。

「なに。俺のこと探してたの?」
「聞いてくださいよ。さっきお昼食べながら話してたんですけど、クリスマスに予定がないのって、私だけだったんですよ。これってかなり可哀そうですよね、私」
「彼氏いないの?」
「そうですよ。前に話したじゃないですか」
「そうだっけ。ごめんごめん。俺と一緒だね。俺も彼女いないから、クリスマスの予定は仕事だけ」
「同じですね」
「ねー」

 煙草を咥えて火をつけた。和気さんは、そんな俺の動作を上目遣いにじっと見つめている。フワッとした雰囲気の、可愛い子だ。俺が食べ慣れて来た味の女の子だ。

 もったいつけたつもりじゃなかったが、結果的にそうなってしまった。煙を吐きだしてから、

「一人もの同士、いっしょにご飯行く?」

 誘ってみると、和気さんは「えー、ご飯ですかぁ?!」と大きな目を更に大きくした。

「考えといてよ。直前でキャンセルしてもいいから」
「はーい、わかりました」

 和気さんがにこりと笑う。以前ならこんなに簡単に食事に付き合ってくれる女の子が見つかったら何も考えずにラッキーだと思っていただろう。でも今は複雑だ。癖のように自分から誘っておきながら、面倒臭いと思っている。

「そういえば! 井口さんって彼女いたの知ってました? 勝手に井口さんって彼女いなさそうだと思ってたんですけど、クリスマスは彼女とナイトクルージングとかしちゃうタイプなんですよ。びっくりじゃないですか?」
「井口が?」

 なぜかワイングラスを揺らすタキシード姿の井口を想像してしまい、吹きだしそうになった。ぜんぜんキャラじゃない。

「ああ、きっとあれだ。夜の工場を見に行くつもりなんじゃないかな」
「工場?」

 怪訝そうに眉を寄せる和気さんに、井口の工場見学趣味を話してやった。

 クリスマスは彼女と工場夜景か。綺麗だねって夜景の感想を言うふりをしながら彼女を褒めつつ、その夜はお盛んにイチャつくわけだ。あいつは実家暮らしだからどっかのホテルか、彼女の部屋か。

 ケツであんなに感じるあいつが、普通のセックスで満足できるのか甚だ疑問だ。彼女とするときもあんな風に声をあげることはあるんだろうか。どんな顔してやっているんだろうか。

 しなくていい想像をしたらだんだん腹が立ってきた。俺をこんな複雑な気持ちにさせておきながら、自分は彼女と良好な関係を続けているなんて許せない話だ。



 席を立った井口のあとを追いかけた。喫煙室の向こうのトイレへと歩いて行く。角を曲がったところで腕を掴んだ。驚いた顔で井口が振り返る。

「……な、なんですか」

 弱い力で腕を振りほどこうとする。さらに強く握ったら井口は唇を真一文字にして俺を睨んだ。中出ししたことをまだ怒っている様子だ。

 井口を壁に押さえつけてキスした。予想通り反発された。腕を突っ張って俺を押し返そうとする。噛まれたら嫌なので舌は入れずに表面だけを存分に擦り合わせてから離れた。

 顔を赤くした井口がゴシゴシと袖で唇を拭う。ガキかよ。

「なにするんですかっ」
「クリスマス、空いてるか」
「空いてないですよ」

 和気さんから聞いていても自分で確認せずにはいられなかった。自分だけ彼女とよろしくやってんじゃねえぞ。

「じゃあ年末は」

 スケジュールを思い出すように井口の目が横へ揺れる。

「あ、空いてな──」
「空けとけよ。泊まりに来い。初詣に行くぞ」

 井口が断る前に強引に話を進める。年末の予定を即答できないのは、何も約束が入っていないからだ。

 井口は口を噤み上目遣いに俺を睨んだ。子供みたいに少し唇を尖らせながら、何か言いたげな不満そうな表情をする。二十代半ばの男のこんな表情に興奮を掻き立てられるなんて、俺は相当おかしくなってる。

 さっき井口とは適切な距離を保とうと決めたばかりなのに、もうさっそく自分から近づいて行っている。支離滅裂だ。

 井口の唇が細かく震えた。きっと断りの言葉を発するつもりだ。

「先輩命令な」

 先に釘を刺し、何か言われる前にその場を立ち去った。

 廊下を一人歩きながら緊張していた自分に気付いた。握りしめていた拳を緩めた。彼女がいる男を追いかけ回してどうするつもりだ、俺は。



 休みに入った29日に一度実家へ戻り、正月は帰らないことを伝えた。30日に自宅へ戻って大掃除らしいことをしたあと、井口へ「明日何時に来る?」とメールを送ってみた。

 なかなか返事が来なくて諦めかけた夜、「昼過ぎに伺います」とメールがきた。

 そっけない文面を何度も読み返した。




野良猫に首輪を

ご無沙汰しておりました。
広告も出てしまって申し訳ないです。

やっと更新できました。
続きもので、また続きそうな終わり方になっていますが楽しんで頂けましたら最高だな、と。嬉しいなと思います。
タイトル見ただけで察知された方もおられるかもしれませんが、これは年末ごろに考えていた話です。やっと完成しました。もう世間はバレンタインなのにクリスマスって!!!

雪が降っています!
まだまだ寒い日があるようなので、皆さま体調にはお気を付けくださいませ。

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コメント
久しぶりの更新。
しかもこのシリーズの続きでうれしいです。
どうぞゆっくりで構いませんから
これからも楽しみにしています。
お返事
16:22の方へ

ありがとうございます!本当にお待たせしてしまってすみません。
このシリーズで嬉しいと言っていただけると私も嬉しいです。
決着つかずの終わり方になっているので、また今後も書くと思います。
楽しんで頂けるように頑張ります!
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
お返事
Mさん
コメントありがとうございます!お返事遅くなって申し訳ありません。

長めの話は大変ですが、短編で連作だといろいろやりやすくてあと何回くらい続けようかなぁと思っています。
この二人は遠回りすればいいと思いながら書いているのでやることやっているのに焦れ焦れさせていますw
長すぎるとただ鬱陶しいだけになりそうなので、きりのいいあたりでくっつけたいと思います。
それまでお付き合いいただけたら嬉しいです!!

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