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嘘 (5/7)

2016.08.02.Tue.
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 今井をベッドに寝かせ、その上に跨り、股間に顔を埋めた。金のため、快楽のため、ただの勢いだけで咥えて来たどのペニスとも違う。

 見た目も機能も、ほとんど何もかわりはしないのに、昔の知り合いの、しかも好きだった男のものだと思うと、あっという間に吐きだされた精液も不快じゃなく、むしろそのあっけなさが嬉しくなった。

「早えんだよ、早漏が」
「飲んだ……」
「で、次どーする?」
「えと……、もう一回、口で」
「好きだなぁ、伊藤ちゃん。まさかずっとしゃぶらせる気かよ? さてはお前、童貞だな?」

 21歳で童貞なんて珍しくもない。でも今井は図星を突かれたようで黙り込んだ。予想通りでまた嬉しくなる。

 高校一年の時、今井は由里原という、クラスで一番かわいい女の子のことが好きだったようだった。変質者のような目つきで由里原を見ていた。その見方も姑息で、由里原が友達と楽しそうにしている隙を狙っていた。近くにいるときは寝るふりをしてその会話を盗み聞きしていた。

 むっつり助平という言葉は今井のためにあるような言葉だった。あの頭の中で由里原はエグイ妄想の餌食になっているはずだった。女に興味はあっても話しかける度胸はない。今井はそういう男であるはずだ。

 そう妄想することが俺の楽しみの一つだった。知識と想像力だけを育て続け、30代には女叩きに躍起になって、40代になって風俗嬢で脱童貞をする、それが俺の理想の今井だった。

「君の、祐樹の、顔に出したい」

 ゲスくて変態的な要求をされ、俺の理想通りに育っていると確信した。

「高校の時は、もうホモだったの?」

 無遠慮で無神経な質問をしてくる。

「うるせえな、噛むぞ」
「好きな男、いた?」

 好きだった男からそんなことを聞かれて、言葉に詰まった。

「いたんだ?」
「いちゃ悪いか」
「誰?」
「聞いても伊藤ちゃんにはわかんねえだろ。てか、早く出せよ。腕が疲れて来た」
「名前だけ。知りたい」

 ここまで追及されるとは思わなかった。気付いてないふりをしたまま、今井の名前を挙げたらどんな反応が返ってくるだろう。同姓同名だと驚くだけだろうか。俺のことを思い出すだろうか。俺だと思い出した時、どんな顔をするだろう。

「……門田。満足か?」

 結局嘘の名前を言った。マンションの太った男の名前だが、今井は気付いた様子はない。

「かっこいい人?」
「しつけえな。まだ聞くのかよ。ぜんぜんかっこよくねえよ。俺、男の趣味悪いって言われてるから」
「口も悪いもんね」
「うるせえ」

 文句を言いながら、今井とこんなに話をしたのは初めてだったことに気付いた。

 高校の時は鬱陶しがられていて、まともに目を合わせてくれたことはなかった。それほど嫌われていたんだと再確認したら、さすがに少し悲しい気持ちになった。

 今井は言っていた通り顔射した。強烈な青臭さに頭がクラクラした。この生温かさは今井の体温だ。持ち主から放出された精液すら愛おしく思える。俺の男の趣味が悪いんじゃなく、俺の性癖のほうがおかしいのだ。

 次はどうするか今井に訊ねた。そのつもりはなかったようで狼狽えた。

「これで終わりでも、俺は別に構わねえけど」

 素っ気ないふりを装いながら、心の中ではやめないでくれと祈っていた。その祈りは通じた。受け入れる準備が終わるや否や、今井は性急に突っ込んできた。

「ちょっ、待っ……!! あ、ううっ……!!」

 さすが童貞というべきか。この余裕のなさ、相手への気遣いのなさ、これこそ今井だと喜び半分、与えられる苦痛に思わず呻いた。必須のコンドームも当然つけていない。今井が望むなら最初からそのつもりでいたが、今井は確認すらしなかった。

「痛い?」
「伊藤ちゃん程度のちんこ、痛いわけ、ねえだろ」

 今井に引け目を感じさせちゃいけない。でも、つい、癖で短小をネタにしてしまう。本当はそれほど小さくもないけど。

 経験のない今井は、とにかく前後に腰を振った。エロ動画を見て抜いてるだけの今井らしい動きだ。とにかく奥まで突けば喘ぐと思ってる。受け入れる側の負担まで気が回らない。いきなり突っ込まれて痛くないわけがないのに。ただピストンされただけで、気持ちよくなるわけがないのに。

「気持ちよくない?」

 心配そうな声が確認する。

「気持ちいいから、もっとして……!! いっぱい、突きまくって……!!」

 今井のセックスはこれが正解だ。うまくなったら今井じゃなくなってしまう。今井はセックス下手が似合う。

「あっ、ううっ……、んっ!! いいっ……! 気持ちいいっ!! 伊藤ちゃんのちんこ、気持ちいいっ!!」

 馬鹿な雌になりきって叫ぶ。萎えたペニスを自分で扱いて勃たせることで、言葉の裏付けを図る。

 でも思いこみで、奥の内臓を打たれる痛みが誤魔化せるわけはなく、演技の限界を知った俺は少しだけ今井を誘導することにした。

「はぁぁんっ、あっ、あっ……ちんぽ気持ちいい……ッ! あっ、そこ……ッ……もっと、してっ!! あ……あっ……前立せ……あたって……ぁ……ああ……っ!! も……して……っ!!」

 ここか? と探るように今井が動いた。少し挿入が浅くなって、なんとか前立腺への刺激を少し確保できた。これならイケる。俺は必死にペニスを扱いた。卑猥に喘いで今井を煽った。今井の腰の動きも早くなった。

 先に達したのは俺だった。

「イッたの?」

 喜びと不安の入り混じった今井の声。

「……それ聞いてどーすんの」
「だとしたら、良かったと思って。俺、短小で童貞だから」

 さんざんからかった俺への嫌味。簡単に身につけてしまう自信。感情を表に出さないようにしているくせに、本当はダダ漏れ。この愚かしさが本当に可愛い。

「俺も出すよ」

 先に俺をイカせたことに満足したような顔で、今井はピストンを再開した。そしてやはり、当然のように中出しした。ねだる必要もなかった。

 終わったあと二人でシャワーを浴び、ホテルを出た。未練が残って、この次が欲しくなった。サービスするからと、名刺に携帯の番号を書いて今井に渡した。広い通りでタクシーを拾い、それに乗り込んだ。

 電話をしてくる確率は五分五分だろうと思った。




おこさまスター 2

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コメント
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Jさま

ご指摘ありがとうございます!修正しておきました。
本当にありがとうございました。
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お返事
Jさま

そろそろ書いた話が100は越えたあたりかなと思うのですが、全部読んでくださったんですか!ありがとうございます!!
初期~現在、あまり進歩のみられない(たまに退化してるんじゃ…と不安にも)内容ですが、楽しんで頂けているならとてもうれしいです!
「純粋~」、どんな話だったかしら、と脳みそアリンコなのでざっくりとしたあらすじ見て思い出しましたwおバカな受けは可愛いですよね。読み返してみたら青野こんなに可愛かったっけと新発見しました。教えて頂いたおかげです。ありがとうございました!



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