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Love Scars (2/3)

2016.07.17.Sun.
<前話はこちら>

 数日して、またトオルを呼び出そうと向居が言い出した。こいつも近田とは違う心配がある。物理的にトオルをぶっ壊してしまいそうだ。

 学校終わりに向居の家に集まることになったが、近田が「急用が出来たから僕はパス」と言い出して、俺と向居二人になった。向居はビデオを気にしなくて済むから気が楽だと喜んだ。俺は途端にやる気がなくなった。

「近田が来ないなら、俺もやめとこうかな」
「困るよ! 俺一人だと、あいつに反撃されるかもしれないだろ」

 必死の形相の向居に言われ、仕方なく二人でトオルが来るのを待った。少しして、制服姿のトオルがやってきた。部屋を見渡して「近田、くんは?」と不安げに目を揺らした。

 今日はいないと言うと、目に見えて動揺して逃げようとさえした。それを向居が取り押さえ、ワイシャツを左右に引きちぎった。やりすぎだ。

「おい、向居」
「いいじゃん、こいつ、肉便器なんだから」

 向居は暴れるトオルの頬を打った。ヤンキーらしくトオルが睨み返す。それにびびった向居が、俺に救いを求める目を向けて来る。仕方なく羽交い絞めにしてやった。その間に向居はトオルを裸にした。

「お前、また公園に放置してホモに犯させるぞ」

 抵抗を見せるトオルに向居が言う。トオルは唇を噛んでおとなしくなった。あの体験だけは二度としたくないらしい。

「四つん這いになれ」

 向居の命令にトオルが渋々従う。その尻へ、向居はペニスを突っ込んだ。痛みにトオルの顔が歪む。近田だと恍惚とした顔を見せるくせに。

 歯を食いしばる口元へ俺もペニスを押し付けた。

「チカのちんこだと思ってしゃぶれよ」

 顔を近づけて囁くと、トオルは目を剥いた。羞恥と怒りの入り混じった目。動揺してすぐ逸らされたのは、思い当たるところがあった証拠だ。無意識なんかじゃない。トオルも自覚があるのだ。近田だけは別だという、自覚が。

 急に怒りがこみあげて来た。

「おら、しゃぶれ!」

 髪の毛を掴んで頭を持ち上げた。屈辱に濡れた目が俺を睨めあげる。

 素直に媚びることのできるトオルの目が妬ましい。近田のペニスを頬張る口。近田のキスを味わう舌。近田を受け入れる尻。すべてに嫉妬せずにいられない。鶏ガラのように痩せて、見た目も口も頭も悪いこんな男に俺は負けているのだ。

 いま近田の関心事はどうやってトオルを自分のもとへ堕とすかということだけだ。それほど近田の気を引くことは俺にはできない。

 怒りの衝動に任せてトオルの口を犯した。激しく突いた。トオルが嘔吐く。目尻から汚い涙を流す。こんな男のどこが!

 トオルの咽喉が鳴った。我に返って引き抜いたのと同時に、トオルは床にゲロをぶちまけた。

「おい! きったねえな! なにやってんだよ!」

 尻を犯していた向居がキレて俺に怒鳴ってくる。さっき俺に残ってくれと懇願してきたくせに。こいつもぶちのめしてやろうか。

 剣呑な思いが表情に出ていたようで、俺に睨まれると向居はすぐ勢いをなくし、「ぞうきん取ってくる」と部屋を出て行った。

 トオルは壁際で膝を抱えていた。口元はゲロで汚れ、涙と鼻水を垂れ流した汚い顔で。

「お前、死んでくれない?」

 声をかけるとトオルは肩を震わせた。

「お前まじでうざい。すっげえ目障り。邪魔。死んでくれよ」
「なっ……なんで……お前らが、俺のこと、か、構うくせに……っ」
「じゃあなんで呼び出されたらノコノコ来るわけ?」
「こ、来ないと、また……酷いこと、するんだろ!」
「今以上の酷いことってなに? なにを期待して来てんの? 下心、見え見えなんだけど」
「なに……下心って……、言ってる意味、わかんねえし……」
「黙れよホモ野郎が。突っ込んで欲しけりゃ棒でもなんでも自分で突っ込んでろよ。優しくされたからって勘違いしてんじゃねえよ。きめえんだよ。お前なんか誰もまともに相手にするわけねえだろうが。鏡見ろよ。お前は便所みてえな女と付き合ってりゃいいんだよ、便所虫が」

 俺の吐き捨てる言葉を、トオルは血の毛が引いて土色になった顔で聞いていた。酷い暴言だ。逆恨みだとわかっていても、口が止まらなかった。

 思い通りにいかないもどかしさ。トオルのような男に近田を取られる腹立たしさ。それでも指を咥えて見ていることしか出来ない自分への苛立ち。溜まりに溜まったものが爆発した結果だった。

 トオルは茫然とした表情のまま、瞬き一つしないで固まっている。ショックすぎて何も反応できない様子がまた最高にむかつく。こいつ本当に消えてくれないだろうか。

 コンコン、とノックの音がした。向居が戻って来たのかと思ったが、顔を出したのは「今日はパス」と言っていた近田だった。

 部屋の惨状を見て目を見張る。

「今日来れないんじゃなかったのか?」
「急用が早く片付いたから寄ってみたんだ」
「向居は?」
「下でジュース飲んでた」

 俺は怒ってるし、ゲロの後始末もしたくないから戻って来たくないのだろう。

「どうしたの、これ。トオルが吐いたの?」
「うん……、ちょっと、俺がやりすぎた」

 正直に白状する。部屋に入って来た近田は、縋るような目を向けるトオルの前に屈みこむと、ポケットから出したハンカチでトオルの汚れを拭ってやった。清潔な水色のハンカチが、トオルのせいで汚れていく。

「お茶飲む?」

 鞄からペットボトルのお茶を出してトオルに勧めている。トオルは頷いてそれを受け取った。キャップを開けて、口をつける。近田も口をつけただろう、場所に。

「今日はもうお開きのほうがよさそうだね」

 と俺を振り返る。その体の置き方は、俺からトオルを隠すような位置だった。ただの偶然かもしれない。そう言い聞かせないと、また取り乱してしまいそうだ。

 服を着て、下におりた。帰る様子の俺たちを見ると向居はホッとした様子で玄関まで見送りにきた。欲求不満そうな目でトオルを見ていたのには呆れてしまう。

 いつもの三叉路で、近田が立ち止まって俺を見た。

「先に帰ってて。トオルの元気がないから、僕はちょっと一緒にいるよ」

 嫉妬で腸が煮えくり返る。――という状態を悟られないよう、短く答えて二人に背を向けた。一つ目の角を曲がって立ち止まり、少し待ってから顔だけ出した。離れていく二人の後ろ姿があった。俺はそっとあとをつけた。




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