ターゲット(1/2)
2016.04.27.Wed.
<前話「視線の先」はこちら>
※無理矢理
野球ばかりやってきたのに、いまさら勉強に集中しろってのが無理な話だ。しかも、高校最後の年、後輩にポジションを取られて甲子園に出られないという不完全燃焼な終わり方をしたから気持ちの切り替えが難しい。
せめて甲子園の土の上で終わりたかった。
チームメイトはみんな俺に気を遣うから引退前から受験勉強を理由に練習をさぼるようになった。誰も何も言わない。腫物扱い。まともに話しかけてくれるのは冴島だけ。
絶対的なエースとして周囲に期待され、またその期待に応えて来た男。冴島を見て初めて才能の存在を実感した。努力が才能の足元にも及ばないことを知った。しかも冴島は人一倍努力家でもあったから、凡人たちとの差は開く一方で、俺たちは足を引っ張らないように必死だった。
冴島が嫌な奴なら、俺たちも毎日汗水垂らしてきつい練習をしなかっただろう。冴島は誰よりも努力して、誰よりもチームの事を考えていて、謙虚で、素直で、いい奴だった。
心の中では面白く思っていない奴もいただろうが、大半の連中は、冴島を甲子園で活躍させてやりたいと思っていたはずだ。そう思わせる奴だったから。
気付けばまた冴島のことを考えている。野球より未練を残しているかもしれない。俺はこんなに未練たらしい男だったのか。
ただ授業についていけないだけだと思いたい。そろそろ本気を出して勉強しないとどこの大学にも行けないってのに授業内容が理解出来ない。これが集中できずに余計なことを考えてしまう原因だろう。
放課後、参考書を買いに行こうと決めた。
一日の授業が終わり、放課後になって、冴島からLINEがきていることに気付いた。部室に俺の荷物がまだ残っていたらしい。冴島を経由しないと誰も俺に話しかけることも出来ない。それほど俺は哀れに思われているのか。
使わないし処分して欲しいと返すと、ポケットに入れる前に返事がきた。
『俺が預かっておくよ。今度会う時に渡すから!』
冴島には会いたいが、会えない。優しくされるのが辛い。そばにいると胸が苦しい。冴島はドストレート。望む関係には絶対なれない。諦めるしかない。でも、諦められるほど簡単な想いでもない。
靴を履き替えて校舎を出たら、見覚えのある後ろ姿が少し前を歩いていた。速足で近づいて肩を組むと、恩田は小動物みたいに飛び上がった。
「あ、木原、くん」
俺をびくびくと見上げて来る。一年の時同じクラスだったらしいけどまるで記憶にない。それくらい影の薄い男。こいつの存在に気付いたのは、俺と同じような視線を冴島に送っていたから。
しかもこいつは盗撮までしていた。
「警察にはもう行った?」
「まだ、ですけど」
恩田を犯したのは五日前。土日を挟んだから行動する時間は充分あったはずなのに。
「なんで警察に行かねえの」
「行けるわけ、ない、でしょ」
もぞもぞと肩にまわされた俺の腕をおろそうと体を動かしている。嫌ならはっきり言えばいいのに言わない。振り払えばいいのに振り払わない。出来ない意味がわからない。
「案外良かった?」
「馬鹿じゃない」
腹が立ったなら怒ればいいのに、恩田は感情を殺して俺を睨むだけだ。
「一緒に帰ろう」
「えっ、なんで」
「仲間だろ」
「なんの」
「ホモ」
「だから、俺は違うって」
「まだ認めないの? 頑固だな」
あんなにねちっこい視線を送って冴島を見ていたくせに好きだと認めない。俺もあんな目で見ていたのかもしれないと気を付けるきっかけになるほどあけすけだったのに。
肩を組んだまま学校の敷地を出た。恩田は嫌そうだったけど、強く断れない性格らしく、腕はそのまま、結局一緒に駅に向かって電車に乗った。
「あ、そうだ。参考書買いたいから本屋ついてきて」
「一人で行けばいいだろ」
「野球ばっかやってきたから授業にぜんぜんついてけないんだよね」
「人の話を……」
「降りるぞ」
恩田の腕をつかんで電車を出た。なにかごちゃごちゃ言いながらも、恩田は俺のあとをついて改札を抜け、「本屋どっちだっけ?」と質問すれば「こっち」と教えてくれた。
参考書を選んでいる間も所在無さげではあるがそばに立って待っていた。
「種類多すぎてわかんねえな。どれがいいと思う?」
「苦手な教科は?」
「全部」
「……とりあえず総復習のやつ買えばいいんじゃないかな。これで本当に苦手なところがわかると思うけど……」
「なるほどな。じゃあ、これにしよ」
高校三年間の総復習が出来ると書かれたやつを買うことにした。レジに並んでいる間に中身を見たが解ける自信はまったくなかった。
「そうだ。お前、頭いいの?」
「よくない。普通くらい」
「勉強教えてくれよ」
「いやいや、人に教えるとか、無理」
「大丈夫大丈夫」
不満げな恩田と駅に戻った。
「勉強はどこでする? 俺んち? お前んち今日大丈夫?」
「今日?!」
「今日」
「えぇ……じゃあ、木原くんの家、で」
恩田をつれて家に帰った。
自分の部屋に入れてから、リビングにしとけばよかったと後悔した。起きたままのぐしゃぐしゃの布団とか、ゴミや服が散らかった部屋がみっともないのもあるが、野球部で使っていた鞄や道具を他人に見られるのが一番嫌だった。
「適当に座れ」
と脱ぎ散らかした服を上に被せて隠そうとしたけど、恩田はしっかりそれを見たあと、同情的な目を俺に向けた。俺が甲子園に出られなかったことを知っているんだろう。
「一時間、だけなら」
恩田は床に正座した。本当はいますぐ帰りたいくらい嫌だけど、俺が可哀そうだから言う通りにしてくれたのかもしれない。
俺は恩田を押し倒した。
「木原くん!」
「ついてきたってことは、なにされてもいいってことだろ」
「違うよ!」
恩田が叫ぶ。俺だって最初からこんなつもりじゃなかった。本当に勉強しようと思ってたんだ。
服をたくしあげ、直に触った。相手が恩田でも体温を感じれば興奮して一瞬でその気になる。ベルトに手をかけた。
「木原くんが好きなのは、冴島くんだろ!」
恩田の言葉に手が止まった。
「いま、なんて」
「俺を冴島くんの代わりにしてなんになるって言うんだよ!」
恩田にバレていた。冴島への気持ちを見抜かれていた。俺と同じ理由で気付いただけかもしれないが、そうなると冴島にもバレている可能性が出て来た。気を付けていたつもりでも、俺も恩田のようにあからさまな視線を送っていたのかもしれない。
「お前が冴島の代わりになるわけないだろ」
俺の言葉に恩田は目を逸らして「わかってるよ」といじけたように呟いた。
「どうして冴島のことが好きだってわかった?」
「だって木原くんもずっと冴島くんのこと見てたじゃないか。普通じゃない目で。俺に酷いことしながら、ずっと冴島くんのロッカー見てた」
酷いこと。強/姦のこと。恩田を犯しながら、確かに俺は頭のなかに冴島を思い描いていた。最初はその才能に嫉妬して、敵わないと認めたら純粋に尊敬し憧れて、気付いたら好きになっていた。
親友面して邪な目と手で冴島に触れて。その記憶と感触で何度も冴島を汚してきた。妄想のなかで冴島を貫きながら、恩田を犯していた。
「冴島くんが好きなら、俺は、関係、なくない?! 身代わりにもならないなら、尚更」
俺の下で身をよじって恩田が逃げようとする。それをまた押さえこんだ。
「あいつは優しいからさ、俺が好きだって告ったとしても、嫌な態度は取らないと思うんだよ。でも受け入れてくれることは絶対ないんだ。あいつ、完全に女しか無理なタイプだから。俺もあいつのこと困らせたくないから、絶対言うつもりはねえけど」
「そういう気持ちは理解できるけど、だからって俺に八つ当たりは」
「お前も吹っ切りたいだろ」
恩田のズボンをパンツごとずりおろした。恩田が手で股間を隠す。
「ほんとに嫌なら俺のこと殴ればいいし、警察行けば俺の人生潰せるぞ」
「自棄になるの、よくないと思うけど」
今の気分を言い当てられて少し驚く。成就しない恋愛。報われない努力。先の見えない未来。自分一人だけ取り残されているのがわかっているのに、何から手をつければいいのかわからなかった。だから自棄になっていた。どうなったっていいと思っていた。
「自棄になんなきゃ、こんなこと出来ないからな」
俺は恩田に口づけた。驚いた恩田が口を閉じる。その隙間から舌を割り込ませ歯の表面を舐めたら堪えきれないように口が開いた。さらに奥へと舌を潜り込ませて中で動かす。噛まれるかもと思ったが、ぎゅっと目を瞑った恩田は石像のように固まってなすがままだ。
俺と恩田の唾液が混ざりあう。コクン、と恩田の咽喉が鳴った。
キスしながら恩田の胸に手を這わせた。見つけた小さな乳首を弄ると恩田の吐息が乱れた。
「はっ、あ、んむ」
貧乳の女とセックスしたことがあるけど手触りがまるで違う。膨らみ以前に、柔らかさがない。匂いも違う。汗と体臭。髪もいい匂いがしない。俺も男は恩田しか知らない。たぶん、恩田も。
「お前、処女で童貞だよな?」
「はっ?!」
久しぶりに開いた恩田の目は少し赤くなっていた。
「木原くんに関係ないと思うけど!」
「ファーストキスも、全部、俺が初めての相手だよな?」
「言い方! やめろ! これはノーカン! だって強/姦!」
「ラップかよ」
恩田は必死なのかもしれないが思わず笑ってしまった。馬鹿にされたと思ったのか、恩田は不機嫌顔だ。自分の意見を言うことは苦手でも、よく見れば表情はとても雄弁だ。
相手が俺じゃなく冴島だったらこいつも喜んだだろう。俺だって、出来ることなら冴島を抱きたい。相手に不満があるのはお互い様だ。だからって強/姦の免罪符にはもちろんならないけど。
※無理矢理
野球ばかりやってきたのに、いまさら勉強に集中しろってのが無理な話だ。しかも、高校最後の年、後輩にポジションを取られて甲子園に出られないという不完全燃焼な終わり方をしたから気持ちの切り替えが難しい。
せめて甲子園の土の上で終わりたかった。
チームメイトはみんな俺に気を遣うから引退前から受験勉強を理由に練習をさぼるようになった。誰も何も言わない。腫物扱い。まともに話しかけてくれるのは冴島だけ。
絶対的なエースとして周囲に期待され、またその期待に応えて来た男。冴島を見て初めて才能の存在を実感した。努力が才能の足元にも及ばないことを知った。しかも冴島は人一倍努力家でもあったから、凡人たちとの差は開く一方で、俺たちは足を引っ張らないように必死だった。
冴島が嫌な奴なら、俺たちも毎日汗水垂らしてきつい練習をしなかっただろう。冴島は誰よりも努力して、誰よりもチームの事を考えていて、謙虚で、素直で、いい奴だった。
心の中では面白く思っていない奴もいただろうが、大半の連中は、冴島を甲子園で活躍させてやりたいと思っていたはずだ。そう思わせる奴だったから。
気付けばまた冴島のことを考えている。野球より未練を残しているかもしれない。俺はこんなに未練たらしい男だったのか。
ただ授業についていけないだけだと思いたい。そろそろ本気を出して勉強しないとどこの大学にも行けないってのに授業内容が理解出来ない。これが集中できずに余計なことを考えてしまう原因だろう。
放課後、参考書を買いに行こうと決めた。
一日の授業が終わり、放課後になって、冴島からLINEがきていることに気付いた。部室に俺の荷物がまだ残っていたらしい。冴島を経由しないと誰も俺に話しかけることも出来ない。それほど俺は哀れに思われているのか。
使わないし処分して欲しいと返すと、ポケットに入れる前に返事がきた。
『俺が預かっておくよ。今度会う時に渡すから!』
冴島には会いたいが、会えない。優しくされるのが辛い。そばにいると胸が苦しい。冴島はドストレート。望む関係には絶対なれない。諦めるしかない。でも、諦められるほど簡単な想いでもない。
靴を履き替えて校舎を出たら、見覚えのある後ろ姿が少し前を歩いていた。速足で近づいて肩を組むと、恩田は小動物みたいに飛び上がった。
「あ、木原、くん」
俺をびくびくと見上げて来る。一年の時同じクラスだったらしいけどまるで記憶にない。それくらい影の薄い男。こいつの存在に気付いたのは、俺と同じような視線を冴島に送っていたから。
しかもこいつは盗撮までしていた。
「警察にはもう行った?」
「まだ、ですけど」
恩田を犯したのは五日前。土日を挟んだから行動する時間は充分あったはずなのに。
「なんで警察に行かねえの」
「行けるわけ、ない、でしょ」
もぞもぞと肩にまわされた俺の腕をおろそうと体を動かしている。嫌ならはっきり言えばいいのに言わない。振り払えばいいのに振り払わない。出来ない意味がわからない。
「案外良かった?」
「馬鹿じゃない」
腹が立ったなら怒ればいいのに、恩田は感情を殺して俺を睨むだけだ。
「一緒に帰ろう」
「えっ、なんで」
「仲間だろ」
「なんの」
「ホモ」
「だから、俺は違うって」
「まだ認めないの? 頑固だな」
あんなにねちっこい視線を送って冴島を見ていたくせに好きだと認めない。俺もあんな目で見ていたのかもしれないと気を付けるきっかけになるほどあけすけだったのに。
肩を組んだまま学校の敷地を出た。恩田は嫌そうだったけど、強く断れない性格らしく、腕はそのまま、結局一緒に駅に向かって電車に乗った。
「あ、そうだ。参考書買いたいから本屋ついてきて」
「一人で行けばいいだろ」
「野球ばっかやってきたから授業にぜんぜんついてけないんだよね」
「人の話を……」
「降りるぞ」
恩田の腕をつかんで電車を出た。なにかごちゃごちゃ言いながらも、恩田は俺のあとをついて改札を抜け、「本屋どっちだっけ?」と質問すれば「こっち」と教えてくれた。
参考書を選んでいる間も所在無さげではあるがそばに立って待っていた。
「種類多すぎてわかんねえな。どれがいいと思う?」
「苦手な教科は?」
「全部」
「……とりあえず総復習のやつ買えばいいんじゃないかな。これで本当に苦手なところがわかると思うけど……」
「なるほどな。じゃあ、これにしよ」
高校三年間の総復習が出来ると書かれたやつを買うことにした。レジに並んでいる間に中身を見たが解ける自信はまったくなかった。
「そうだ。お前、頭いいの?」
「よくない。普通くらい」
「勉強教えてくれよ」
「いやいや、人に教えるとか、無理」
「大丈夫大丈夫」
不満げな恩田と駅に戻った。
「勉強はどこでする? 俺んち? お前んち今日大丈夫?」
「今日?!」
「今日」
「えぇ……じゃあ、木原くんの家、で」
恩田をつれて家に帰った。
自分の部屋に入れてから、リビングにしとけばよかったと後悔した。起きたままのぐしゃぐしゃの布団とか、ゴミや服が散らかった部屋がみっともないのもあるが、野球部で使っていた鞄や道具を他人に見られるのが一番嫌だった。
「適当に座れ」
と脱ぎ散らかした服を上に被せて隠そうとしたけど、恩田はしっかりそれを見たあと、同情的な目を俺に向けた。俺が甲子園に出られなかったことを知っているんだろう。
「一時間、だけなら」
恩田は床に正座した。本当はいますぐ帰りたいくらい嫌だけど、俺が可哀そうだから言う通りにしてくれたのかもしれない。
俺は恩田を押し倒した。
「木原くん!」
「ついてきたってことは、なにされてもいいってことだろ」
「違うよ!」
恩田が叫ぶ。俺だって最初からこんなつもりじゃなかった。本当に勉強しようと思ってたんだ。
服をたくしあげ、直に触った。相手が恩田でも体温を感じれば興奮して一瞬でその気になる。ベルトに手をかけた。
「木原くんが好きなのは、冴島くんだろ!」
恩田の言葉に手が止まった。
「いま、なんて」
「俺を冴島くんの代わりにしてなんになるって言うんだよ!」
恩田にバレていた。冴島への気持ちを見抜かれていた。俺と同じ理由で気付いただけかもしれないが、そうなると冴島にもバレている可能性が出て来た。気を付けていたつもりでも、俺も恩田のようにあからさまな視線を送っていたのかもしれない。
「お前が冴島の代わりになるわけないだろ」
俺の言葉に恩田は目を逸らして「わかってるよ」といじけたように呟いた。
「どうして冴島のことが好きだってわかった?」
「だって木原くんもずっと冴島くんのこと見てたじゃないか。普通じゃない目で。俺に酷いことしながら、ずっと冴島くんのロッカー見てた」
酷いこと。強/姦のこと。恩田を犯しながら、確かに俺は頭のなかに冴島を思い描いていた。最初はその才能に嫉妬して、敵わないと認めたら純粋に尊敬し憧れて、気付いたら好きになっていた。
親友面して邪な目と手で冴島に触れて。その記憶と感触で何度も冴島を汚してきた。妄想のなかで冴島を貫きながら、恩田を犯していた。
「冴島くんが好きなら、俺は、関係、なくない?! 身代わりにもならないなら、尚更」
俺の下で身をよじって恩田が逃げようとする。それをまた押さえこんだ。
「あいつは優しいからさ、俺が好きだって告ったとしても、嫌な態度は取らないと思うんだよ。でも受け入れてくれることは絶対ないんだ。あいつ、完全に女しか無理なタイプだから。俺もあいつのこと困らせたくないから、絶対言うつもりはねえけど」
「そういう気持ちは理解できるけど、だからって俺に八つ当たりは」
「お前も吹っ切りたいだろ」
恩田のズボンをパンツごとずりおろした。恩田が手で股間を隠す。
「ほんとに嫌なら俺のこと殴ればいいし、警察行けば俺の人生潰せるぞ」
「自棄になるの、よくないと思うけど」
今の気分を言い当てられて少し驚く。成就しない恋愛。報われない努力。先の見えない未来。自分一人だけ取り残されているのがわかっているのに、何から手をつければいいのかわからなかった。だから自棄になっていた。どうなったっていいと思っていた。
「自棄になんなきゃ、こんなこと出来ないからな」
俺は恩田に口づけた。驚いた恩田が口を閉じる。その隙間から舌を割り込ませ歯の表面を舐めたら堪えきれないように口が開いた。さらに奥へと舌を潜り込ませて中で動かす。噛まれるかもと思ったが、ぎゅっと目を瞑った恩田は石像のように固まってなすがままだ。
俺と恩田の唾液が混ざりあう。コクン、と恩田の咽喉が鳴った。
キスしながら恩田の胸に手を這わせた。見つけた小さな乳首を弄ると恩田の吐息が乱れた。
「はっ、あ、んむ」
貧乳の女とセックスしたことがあるけど手触りがまるで違う。膨らみ以前に、柔らかさがない。匂いも違う。汗と体臭。髪もいい匂いがしない。俺も男は恩田しか知らない。たぶん、恩田も。
「お前、処女で童貞だよな?」
「はっ?!」
久しぶりに開いた恩田の目は少し赤くなっていた。
「木原くんに関係ないと思うけど!」
「ファーストキスも、全部、俺が初めての相手だよな?」
「言い方! やめろ! これはノーカン! だって強/姦!」
「ラップかよ」
恩田は必死なのかもしれないが思わず笑ってしまった。馬鹿にされたと思ったのか、恩田は不機嫌顔だ。自分の意見を言うことは苦手でも、よく見れば表情はとても雄弁だ。
相手が俺じゃなく冴島だったらこいつも喜んだだろう。俺だって、出来ることなら冴島を抱きたい。相手に不満があるのはお互い様だ。だからって強/姦の免罪符にはもちろんならないけど。
なんとか二ヶ月目前で更新できました。
慣れない仕事を任されるようになってちょっと精神的に余裕がなかったのと、完結されたネタが浮かばなくて、パソコンすら開かない日が続いたりしてこんなに時間がかかってしまいました。
まだ余裕がある状態ではないんですが、次はこんなに間をあけないで更新できたらいいなと思っています。