FC2ブログ

尾行(2/2)

2016.01.20.Wed.
<前話はこちら>

 教室を出ると美春ちゃんが廊下で待っていた。

「帰ろ」

 という彼女と並んで廊下を歩く。少し前に白河の頭が見えた。あいつの隣には比良がいるんだろうか。

 下駄箱で靴を履き替えて校舎を出る。駅に向かう道に白河はいなくて、反対方向の道を比良と二人で歩いていた。まさか本当に一緒に帰るとは。しかも今からどこへ行くつもりだ。

「ちょっと、寄り道してもいいかな?」

 美春ちゃんが「いいよ」と笑顔で頷いてくれたので、俺は白河のあとをつけた。だって心配だ。あいつは本当に比良に見せるつもりなんだろうか。そんなことしたら、白河の巨根がみんなにバレて、明日から学校中でからかわれることになる。同じ部位の悩みを持つもの同士として、そんなの見てられない。

 白河は比良の指示する方向へ素直に歩を進める。そこがひと気のない公園でも迷うことなしだ。

「あれって、岡本くんと同じクラスの子じゃない?」

 俺たちも続いて公園に足を踏み入れたら美春ちゃんが前の二人を指さした。

「同じ場所に行くのはちょっと恥ずかしくない?」
「恥ずかしくないよ! 大丈夫! 行こう!!」

 二人がベンチに座ったので、俺たちも離れたベンチに腰を下ろした。比良がしきりに白河に話しかけている。白河もそれに応えて一応会話は続いている。

「ねえ、どうして私と付き合うこと、OKしてくれたの?」

 と、美春ちゃんが俺の肘をつつく。

「えっ? なに? あ、ちょっと待って」

 比良が距離を詰めて白河にくっついた。腕に腕をまきつけて白河にもたれかかっている。白河はちょっと身をのけぞらせたけど、それ以上の抵抗はなし。もっと強めに拒否しないと、その女は調子に乗るだけだぞ!

「で、えーっと、なんだっけ?」

 美春ちゃんに向き直った。

「もうっ! どうして私と付き合ってくれたのって聞いたの!」
「どうしてって……告白されたから?」
「それだけ?!」
「だって、断る理由ないし」

 気に入らない答えだったようで、美春ちゃんは頬を膨らませてそっぽを向いてしまった。怒らせてしまったか。しかしいまはそれどころじゃない。

 比良がさらに距離をつめて白河に顔を近づけているところだった。あの女、まさかこんな場所でキスでもするつもりか?! 咄嗟に止めに行きかけたが、白河が横を向いて拒んだので浮きかけた腰をおろした。

「そういう態度って失礼だと思う」
「え?」

 地の底を這うような声に振り返ると、美春ちゃんが怖い顔で俺を見ていた。

「私といるのにあの二人のあとつけて、私じゃなくずっと二人のこと見て……もしかして、あの子のこと、好きなの?」
「なっ、そんな、まさか!」

 慌てて否定した。

「じゃあどうしてずっと後つけて見張ってるの?」
「それはあいつが襲われんじゃないかって心配だからだよ」
「岡本くんとどういう関係なの?」
「どっ、どうって……」

 正直に話したらドン引きどころの騒ぎじゃねえ。明日からホモ祭りが始まる。俺の学校での立場が、いや、今後の人生が危うい。

「ただの、友達だよ」
「ほんとにただの友達? 心配してずっと見てたのに?」
「たっ、確かに、友達以上のところはあるかもだけど、友情を越えた絆っていうか……二人だけの繋がりがあるっていうか……」
「それって結局好きってことなんでしょ」

 美春ちゃんは目を据わらせて断言した。好きなのか? 俺もあいつのこと、好きなのか?!

「まさか自分で気付いてなかったの? あの子が男といるから気になってあとつけてるんでしょ? だから私といるのにずっと見張ってるんでしょ? 普通、なんとも思ってなかったら気にならないよね! 現に岡本くん、さっきから私に興味なしだったよね! 全く気にかけてくれなかったよね!」
「う、ごめんっ」

 気迫に負けて思わず謝ってしまいながら、美春ちゃんの言葉に引っかかるものがあって頭のなかでリピートしてみた。『あの子が男といるから気になってあとつけてるんでしょ?』男と……? 美春ちゃんには比良が男に見えているのか……?

 そこで俺はやっと気付いた。美春ちゃんは白河のことじゃなく、比良のことを話してたんだと。そりゃそうか、普通そうだ。俺が勘違いして、動揺しただけだわ。

「あ、いや、まじであいつとはなんでもない」

 嘘偽りなく、心の底から否定したけど、さっきのあたふたした俺の態度で確信した美春ちゃんは信じてくれなかった。

「好きな子いるのに他の子の告白OKするとか最低だと思う。そういう人だと思わなかった。さよなら」

 ベンチから立ち上がると美春ちゃんは公園を出て行ってしまった。

 さよならってバイバイまた明日って意味じゃなく、お付き合いをやめましょうって意味のさよならだよな。たった一日で振られてしまった。ただ一緒に帰っただけで終わってしまった。付き合うってなんて難しいんだ。

 まぁ、一緒にいるのに他の女の心配してると思われたら怒るのが普通だろうけど。

 反省はあとでするとして、いまは白河だ。

 二人のほうへ顔を戻したら、ベンチには誰もいなくなっていた。慌てて探すと公園から出て行く白河たちの姿を見つけた。当然追いかけた。



 二人はしばらく歩いた先のマンションへと入って行った。比良の自宅だろう。いきなり自宅に男を連れこむ白河もクソビッチだが、それにのこのこ付いて行く白河も大馬鹿野郎だ。なんだかんだ言いながら、あいつもあわよくばなんて考えてるんじゃないだろうか。

 相手が自分の下半身に興味を持ってるとくれば、そりゃやれると思うのも仕方ない。だけど、でかいのがコンプレックスなんじゃなかったのか。俺に見せるのもすごく嫌がってたくせに、比良だとちょっとせがまれたらすぐ見せるのかよ。やっぱりおっぱいついてる方がいいのかよ。

 ムカムカしながら、二人を乗せたエレベーターがどの階に止まるのかを見ていた。エレベーターは6階で止まった。外から見上げると、通路を歩く二人がいた。一つの扉の前で立ち止まり、二人は部屋の中へ消えた。

 家の中でなにをしているのか。

 俺が白河としてきたことが頭のなかでグルグルする。今頃比良とキスしているかもしれない。俺のちんこを触るかわりに、比良のおっぱい揉んでるかもしれない。俺がそうするように、比良もお返しとばかりに白河のちんこを触ってるかもしれない。その大きさに驚いて「凄い」って頬染めてんじゃねえよ!!

 ただの想像なのに爆発しそうになる。

 あいつら何やってるんだ。付き合ってもないのにいかがわしいことするなよ! 白河の尻軽! 誰でもいいのかよ! 俺のこと可愛いとか言っておきながら! 誰にでも言ってんのかよ! 見損なったぜあの野郎!

 地団駄踏まんばかりに怒りながらもそこから離れることが出来なかった。ベランダ側にまわって比良の家の窓を見たり、ピンポンダッシュして邪魔してやろうかと考えたり。とにかく二人のことが気になって仕方がなかった。

 数分、マンションの周りをウロウロしてたらエントランスから白河が出て来た。一人だ。俺に気付かず来た道を引き返していく。この短時間で白河は終わらない男だ。ということはセックスはしてない。ではちんこを見せただけ? というか、ほんとに見せたのか?!

 さっきの公園に来たところで白河の横に並んだ。

「岡本?! なんでここに?」

 驚く白河の腕を掴んで公園に連れ込んだ。

「ちょっと……岡本?」
「お前、見せたのか?」
「なにを?」
「お前のちんこだよ」
「馬鹿なこと言うな」

 と俺の腕を振り払う。

「見せてないのか?」
「見せるわけないだろ。俺は変態じゃない」
「じゃあ何しに比良んちまで行ったんだよ」
「つけてたのか?」
「比良の家でなにしてたんだよ!」
「送ってくれって頼まれたから家まで行った。一人で不安だから少し中に寄って欲しいって言われて、お茶だけ飲んできた。それだけだよ」
「送らせ狼の手口だろそれ! ほいほいついてくんじゃねえよ。危機感なさすぎだろ」
「俺を心配してくれたのか?」
「そうだよ! お前、押しに弱いとこあるし、比良に頼まれたら本当に見せてやりそうだし」
「頼まれたぐらいで簡単に人に見せないよ」
「俺には見せてくれたじゃん」
「岡本も見せてくれたから」
「じゃあ比良が見せてたらお前も見せてたのか?」
「なにこの不毛な言い合い」

 白河はため息をついて近くのベンチに腰を下ろした。確かに実際起こってなかったことをたらればで話合うのは無意味だ。

 少し冷静に戻って俺も白河の隣に座った。手許に視線を落としたら、平らな自分の胸が見えて、比良みたいにおっぱいがあったら白河は喜ぶのかな、と、また無意味な考えが頭をよぎった。

 どうかしてるな俺。あとつけるとか、気持ち悪い。美春ちゃんにも悪いことしてしまった。

 静かに反省してたら隣の白河が前を向いたまま、ぽつりと言った。

「岡本以外には見せないよ」

 え、と見上げた白河の顔はなぜか強張っていてどんどん赤くなっていく。意味もわからず見ていたら俺の顔まで熱くなってきた。

「お、おう。俺も白河以外、見せない」

 同じ言葉を返しただけなのに、なぜだかすごく恥ずかしい。なんだかこれって、お互いのために操を立てると約束しているみたいだ。付き合ってもいないのに。そもそも何のための宣誓なんだ?

「そういえば彼女は?」

 眼鏡を押し上げながら白河が言う。

「あっ、振られた。お前らのあとつけてたら怒っちゃって」
「彼女より俺の心配してくれたってこと?」
「いや、別に」
「ありがとう」
「……どういたしまして」

 白河は真っ赤な顔を前に戻した。目も合わせられないとか、付き合いたての中/学生カップルかよ! こいつ絶対俺のこと好きだわ。でなきゃこの態度、おかしいだろ。言葉少なに俯く俺も人のこと言えないけどな!

「このあとどうする? 最初の予定通り、俺んち来る?」

 下心見え見え。心臓バクバクさせながら誘うと、白河は「行く」と頷いた。

「行こう」

 白河が俺の手を握って立ち上がった。引っ張られるように立ち上がりながら、いきなり手を握ってきた白河を驚いて見上げた。眼鏡の奥で、白河の視線が少し下がったのが見えた。俺も同じ衝動を感じていたので迷いなく目を閉じた。柔らかい感触が唇に降ってくる。

 時間にして1秒程度、触れるだけのキスだった。もっと濃厚なやつを白河とは何度もしてきたが、これは今までのキスとは感じが違った。胸に甘酸っぱいものが広がって、これだけで勃起しそうな勢い。たぶんだけど、白河も同じこと感じてそうな顔だった。




関連記事
スポンサーサイト
[PR]

コメント

管理者にだけ表示を許可する