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Aからのメール(2/2)

2015.08.07.Fri.
<前話はこちら>

 昼休みになるまでほとんど上の空だった。Aが同じ職場にいるのは間違いない。もしかしたら大家かもしれないし、違う誰かかもしれない。

 それを探るために仕事をしながらずっと同僚の様子を観察していた。誰も彼もが怪しく見える。結局誰かわからないまま昼休みになり、俺は言われた通りトイレの個室で待つことにした。

 それらしい奴はなかなか来ない。みんな用を足すとさっさとトイレを出て行ってしまう。十分経って自分からAに『トイレで待っています』とメールを送ってみた。

 すぐに『そこでオナニーしろ』と返って来た。騙されているのかもしれないが、メールの内容に興奮して俺はベルトを緩めた。

 便座の蓋の上に座って昨夜のようにちんぽを握る。怯えているくせにもう先走りが出ていた。いつも以上に感度が増している気がする。ネクタイを緩め、ワイシャツのボタンを外した。中に手を入れ、乳首も弄った。

 誰かがトイレにやってきた。Aだろうか。気配に意識を集中させながら手を動かし続ける。外の人物はゆっくりした足取りで個室の前を歩いた。一番奥、俺のいる個室の前まできて立ち止まる。

「はぁっ……はぁ……はぁ……っ」

 潰れそうなほど心臓がどきどき高鳴っていた。呼吸は自然と乱れ、膝はブルブルと震えた。

 外にAがいる。いつもいやらしい命令をする俺のご主人様が。ちんぽを扱く手つきが早くなる。もう出そうだ。

 目を閉じ、歯を食いしばった。頭のなかが真っ白になっていく。達する寸前、立ち上がって蓋をあけ、便器の中へ射精した。出し切り、壁に手をついて呼吸を整えた。外の人物は物音一つ立てない。気配がない。水を流した後そっと顔を出したら誰もいなくなっていた。

 追いかければ見つけられるかもしれないと思い、手を洗うと急いでトイレを出た。すると先の角から大家が姿を現した。俺を見て軽く口の端を持ち上げる。やっぱり大家が?

「血相変えてどうしたんですか?」

 からかうように大家が言う。

「誰か、と、すれ違ったか?」

 緊張のせいか声が上擦った。

「いいえ? 誰も」

 と首を振る。誰かと対するときにいつも見せる無気力な笑みを滲ませている。見慣れた笑い方なのに、今日は意味があるように見える。

「市井さん、ネクタイ、歪んでますよ」
「えっ」

 大家が一歩踏み出し、俺のネクタイを掴んだ。キュッと首元で締め直すと手を離した。

「どうしたんですか。顔、真っ赤ですけど」
「う……」

 指摘されるとさらに顔が紅潮していくのがわかる。思わず俯いた。すると大家が「ふふっ」と笑い声をあげた。

「もしかしたらなんですけど、市井さんって俺のこと好きじゃないですか?」
「!!」

 反射的に顔をあげてしまった。否定しようとしたのに咄嗟のことで言葉が見つからない。そもそも大家の言う通りなのだ。

「やっぱそうですか」

 大家は笑みを濃くする。

 なぜバレたのだろう。自分がゲイだということはもちろん、大家に好意を持っているなんておくびにも出さずに仕事をしてきたつもりだ。確かに今日はじろじろ大家を見てしまっていたが、普通それだけで同性相手に好かれているとは思わない。バレるはずがない。大家がAでない限り。

 やはり大家がAなのだ。俺の願望なんかじゃない。それ以外考えられない。昨日送ったオフィスの様子で、大家は自分のデスクが使われていると気付き、その理由にも気付いてしまったのだ。

「誰にも言うつもりはないんで、安心していいですよ」
「お、俺は、なにをすれば……?」
「なにって……なにかしてくれるんですか?」

 俺は大家の腕を掴んでトイレへ引き返した。一番奥の個室へ連れ込み、鍵をかける。

「ちょ、市井さん、なにする気ですか?」
「大家の望むことなら、なんでも」

 跪いて大家のベルトに手をかけた。頭上から「まじかよ」という呟きが聞こえる。ズボンと下着をおろし、口を開いて大家のちんぽを迎えに行った。柔らかいそれを口のなかで愛撫する。

「市井さん、まじで俺のこと好きなんですか?」
「あぁ……大好きだ……大家のこれも……」

 少し硬くなってきたものを引っ張るように吸い上げる。唾液を絡めながら頬の粘膜を使って扱くようにしゃぶる。

「うまそうにしゃぶりますね」
「らって……大家のちんぽらし……おいひぃはらっ……」
「ははっ、なに言ってんのかわかんないですよ」
「口にらして……大家のセーシ、ほひい……!」
「後輩のザーメン口に出して欲しいんですか?」

 頷いたら頭を押さえ込まれた。奥までちんぽが挿し込まれる。大家は俺の咽喉の奥でちんぽを扱くように腰を動かした。遠慮のない道具みたいな扱いに興奮する。苦しくて涎を垂れ流しているのに、俺のちんぽは勃起する。

「気持ちいいですよ、市井さんのフェラ……っ」
「はぁ……んっ、んぐぅ……う、ぇ……ッ」

 大家の腰の動きが早くなる。口の中のちんこもパンパンに膨らんで今にも爆発しそうだ。

「出しますよ? 市井さん」

 うんうんと頷きながら強く吸いあげた。ドクンという脈動とともに生温い液体が口のなかに吐きだされる。大家の精子。大家の精液で口の中が汚されている。仕事場の男子トイレで。

「……っ!!」

 自分の手のなかで俺も射精した。



 俺がうがいをしている間に大家はトイレを出ていなくなっていた。もう少し話をしたかったのに残念だ。しかし焦る必要はない。毎日会社で顔を合わせるのだ。なかなか趣味の合うパートナーには巡り合えない。職場が同じだなんて奇跡のような出逢いだ。しかも俺がいいと思っていた大家がAだったなんて。

 顔がニヤけそうになるのを抑えこんで仕事場に戻る。もう昼休みも終わる時間でほとんどが食事から戻ってきていた。今日は昼食抜きになってしまったが構わない。

 大家は例の無気力な笑顔で女子社員と話をしていた。さっきトイレであった出来事なんかもう忘れたような様子だ。さすがは俺の見込んだご主人様だ。

 昼休憩が終わって仕事を再開する。携帯にAからのメールがきた。ああ見えて大家はマメな性格のようだ。

『尻軽の淫乱め。相手は誰でもいいのか?』

 メールの意味がわからず眉をひそめた。またすぐメールがきた。本文なし、画像のみ。画像を開いて息を飲みこんだ。

 手前に大家らしき男の頭と、その下で股間に顔を埋める俺の姿が写っていた。大家の両手は俺の頭を押さえ込んでいるので撮影は出来ない。それに、アングルとドアの上部が一部写りこんでいることから、これがトイレの外、ドアの上から撮影されたのだとわかる。撮られていたなんてまったく気が付かなかった。

 送り主は間違いなくA。ということは、大家はAではないということになる。ではいったい誰が……。

 またメールがきた。

『さっきの画像をばらまかれたくなかったら、今すぐそこでオナニーをしろ』

 顔から血の気が引いた。墓穴を掘ってAにホモだとバレてしまったこと。本物のAを間違えて怒らせてしまったこと。

『許してください。本当に大家がご主人様だと思って間違えてしまったんです。他のことならなんでも言うことをきくので、それだけは勘弁してください』

 メールを送ってしばらく待つと、Aから返信がきた。

『奴隷のくせにご主人様の言うことがきけないのか? 残念だ。画像をみんなに見てもらうことにしよう』

 読み終わるのと同時にパソコンの画面にメール受信の通知がきた。俺だけじゃなく隣にも、そのまた隣のパソコンにも同じ通知がきているようだった。

 俺は震える手でマウスをクリックした。




渇かないバイパスコート

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コメント
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お返事
Nさん

一ヶ月も空振りさせてしまって申し訳ないです。次はちょっと早めに出来そうな気がしています。
寝る前に考えていたときには続きがあったんですけど、朝起きた時には忘れていていました。よくある話です。メモしとけばよかった…!
あそこで終わらせるのもおつかなと悩むところですが、続きを思い出したら貧乏性なのできっと書くと思います(笑)
楽しんで頂けたようで本当に良かったです。嬉しい!また頑張れます!!


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