その後(3/3)
2015.05.11.Mon.
<前話はこちら>
仕事が終わったあと、自分の家に帰ってシャワーを浴びた。軽く寝るだけのつもりが熟睡してしまい、起きたらもう出勤時間ギリギリだった。
急いで支度して仕事に出かけ、配達の終わった夕方、スーパーに寄ってから斉藤のアパートに向かった。
合鍵を使い、部屋に入る。
斉藤はまだベッドの上だった。薄目に俺を見ると再び目を閉じて寝息を立て始める。
邪魔しないよう静かに部屋を片付けたあと、台所に立って夕飯作りにとりかかった。今日は焼き鳥丼だネットでレシピを確認しながら味噌汁と焼き鳥を作っていたら廊下からヒールの足音が聞こえて来た。
それは部屋の前で止まり、インターフォンを鳴らすと扉をノックした。
「斉藤さん、いないの?」
外から女の声が呼びかける。俺は台所から顔を覗かせて斉藤を見た。ベッドの斉藤はピクリとも動く気配がない。
こんな大きな音や声を聞き逃すほど斉藤は熟睡なんてしない。相手が誰かわかった上で、対応するより寝るほうを選んだとしか思えない。
女がもう一度呼びかける。斉藤はやはり動かなかった。
外からガサガサと物音がしたあと、ヒールの音が遠ざかって行った。
「出なくて良かったのか?」
気配が完全に消えてから斉藤に声をかけてみた。返事はなく、静かな寝息が聞こえて来るだけだった。
俺も台所に戻って料理の続きをした。
タレを絡めた肉を、ご飯を盛った丼に乗せて刻みのりとネギを散らす。
味噌汁を温めなおす間に、外に出て音の正体を確かめてみた。ドアノブにビニール袋が引っかけてあった。
中には饅頭と、手帳から千切ったようなメモが入っていた。
『やっぱり田舎に帰ることにしました。会って直接お別れを言いたかったのに残念です。実はこの前ここにかくまってもらったとき、このまま一緒に住んじゃおうかなって思ってたの。だけど私がいる間、あなたは一度も帰って来なかったわね。操を立てるいい人が出来たってこと? 斉藤さんのこと好きになりかけてたから、ちょっと残念。
今まで色々ありがとう。さようなら』
なんだか見てはいけないものを見た気がして、急いでメモを袋に戻した。
ヒールの女はやはり斉藤が用心棒をしていた水商売の女だった。女を匿ってる間、斉藤は部屋に帰らなかった。セックスもしなかったことになる。
メモにある通り、誰かに操を立てて? まさか俺に? いや、ありえない。斉藤に限ってそんなこと。たまたま宿直と事件が重なっただけだろう。
期待を封じ込めて部屋に戻った。味噌汁をに椀に注ぎ、丼と一緒に部屋のテーブルへ運ぶ。
待ち構えていたように斉藤がベッドから体を起こした。
「どんどんレパートリーが増えていくな」
テーブルの料理を見て斉藤が感心したように言う。
「これ、外にかかってた」
饅頭の入った袋を渡した。斉藤は中を確かめ、メモに気付くと取り出して目を通した。読み終わると無表情に袋に戻す。
「いいのかよ」
「何がだ」
「あんたのこと好きだなんて言ってくれる奇特な女、このまま帰していいのかよ」
「勝手に読んだのか」
「悪戯かもしれないと思って。あんた、いろんな奴から恨みかってそうだし」
確かに、と斉藤は声を立てて笑った。
「前にも言っただろ。あいつとはただの利害関係だ。何度か寝て情がわいたのを勘違いしてやがるのさ」
決めつけるように言うと斉藤は箸を取り、味噌汁に口をつけた。
斉藤の言う通りなら、俺のなかにある感情も勘違いということになる。本当にそうならどれほどいいか。
「あんた、あの女とやってなかったんだ? いい人って誰だよ?」
からかうように顔を覗きこむと、斉藤は上目使いに俺を見ながら口角を持ち上げた。
「お前だ、って言って欲しいのか?」
「なっ……ばっかじゃねえの!」
暗に期待していたことを指摘されてかぁっと顔が熱くなる。
「言っとくけどな、俺は意外とモテるんだぞ」
「妄想だろ」
「お前だって俺に夢中だろうが」
「だ、誰がっ!!」
心臓をぎゅっと鷲掴まれたように鼓動が苦しくなった。自分でも顔が赤らんでいるのがわかる。脇にじとっと汗が滲み出る気配。
「体に聞けばわかる。ヤッてる時のほうがお前は正直だからな」
箸を置いて斉藤が腰をあげた。俺を押し倒しキスしてくる。すでに手は服の中だ。
「……っ、飯、だろ……っ」
「あとでな」
ジーンズの上から股間を押されて喘ぎ声のような息が漏れる。そこはすでに痛いほど勃起していた。
「俺の言った通りだろ」
「うるせえな……!」
したり顔の斉藤にしがみつき、その肩に噛みついてやった。
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仕事が終わったあと、自分の家に帰ってシャワーを浴びた。軽く寝るだけのつもりが熟睡してしまい、起きたらもう出勤時間ギリギリだった。
急いで支度して仕事に出かけ、配達の終わった夕方、スーパーに寄ってから斉藤のアパートに向かった。
合鍵を使い、部屋に入る。
斉藤はまだベッドの上だった。薄目に俺を見ると再び目を閉じて寝息を立て始める。
邪魔しないよう静かに部屋を片付けたあと、台所に立って夕飯作りにとりかかった。今日は焼き鳥丼だネットでレシピを確認しながら味噌汁と焼き鳥を作っていたら廊下からヒールの足音が聞こえて来た。
それは部屋の前で止まり、インターフォンを鳴らすと扉をノックした。
「斉藤さん、いないの?」
外から女の声が呼びかける。俺は台所から顔を覗かせて斉藤を見た。ベッドの斉藤はピクリとも動く気配がない。
こんな大きな音や声を聞き逃すほど斉藤は熟睡なんてしない。相手が誰かわかった上で、対応するより寝るほうを選んだとしか思えない。
女がもう一度呼びかける。斉藤はやはり動かなかった。
外からガサガサと物音がしたあと、ヒールの音が遠ざかって行った。
「出なくて良かったのか?」
気配が完全に消えてから斉藤に声をかけてみた。返事はなく、静かな寝息が聞こえて来るだけだった。
俺も台所に戻って料理の続きをした。
タレを絡めた肉を、ご飯を盛った丼に乗せて刻みのりとネギを散らす。
味噌汁を温めなおす間に、外に出て音の正体を確かめてみた。ドアノブにビニール袋が引っかけてあった。
中には饅頭と、手帳から千切ったようなメモが入っていた。
『やっぱり田舎に帰ることにしました。会って直接お別れを言いたかったのに残念です。実はこの前ここにかくまってもらったとき、このまま一緒に住んじゃおうかなって思ってたの。だけど私がいる間、あなたは一度も帰って来なかったわね。操を立てるいい人が出来たってこと? 斉藤さんのこと好きになりかけてたから、ちょっと残念。
今まで色々ありがとう。さようなら』
なんだか見てはいけないものを見た気がして、急いでメモを袋に戻した。
ヒールの女はやはり斉藤が用心棒をしていた水商売の女だった。女を匿ってる間、斉藤は部屋に帰らなかった。セックスもしなかったことになる。
メモにある通り、誰かに操を立てて? まさか俺に? いや、ありえない。斉藤に限ってそんなこと。たまたま宿直と事件が重なっただけだろう。
期待を封じ込めて部屋に戻った。味噌汁をに椀に注ぎ、丼と一緒に部屋のテーブルへ運ぶ。
待ち構えていたように斉藤がベッドから体を起こした。
「どんどんレパートリーが増えていくな」
テーブルの料理を見て斉藤が感心したように言う。
「これ、外にかかってた」
饅頭の入った袋を渡した。斉藤は中を確かめ、メモに気付くと取り出して目を通した。読み終わると無表情に袋に戻す。
「いいのかよ」
「何がだ」
「あんたのこと好きだなんて言ってくれる奇特な女、このまま帰していいのかよ」
「勝手に読んだのか」
「悪戯かもしれないと思って。あんた、いろんな奴から恨みかってそうだし」
確かに、と斉藤は声を立てて笑った。
「前にも言っただろ。あいつとはただの利害関係だ。何度か寝て情がわいたのを勘違いしてやがるのさ」
決めつけるように言うと斉藤は箸を取り、味噌汁に口をつけた。
斉藤の言う通りなら、俺のなかにある感情も勘違いということになる。本当にそうならどれほどいいか。
「あんた、あの女とやってなかったんだ? いい人って誰だよ?」
からかうように顔を覗きこむと、斉藤は上目使いに俺を見ながら口角を持ち上げた。
「お前だ、って言って欲しいのか?」
「なっ……ばっかじゃねえの!」
暗に期待していたことを指摘されてかぁっと顔が熱くなる。
「言っとくけどな、俺は意外とモテるんだぞ」
「妄想だろ」
「お前だって俺に夢中だろうが」
「だ、誰がっ!!」
心臓をぎゅっと鷲掴まれたように鼓動が苦しくなった。自分でも顔が赤らんでいるのがわかる。脇にじとっと汗が滲み出る気配。
「体に聞けばわかる。ヤッてる時のほうがお前は正直だからな」
箸を置いて斉藤が腰をあげた。俺を押し倒しキスしてくる。すでに手は服の中だ。
「……っ、飯、だろ……っ」
「あとでな」
ジーンズの上から股間を押されて喘ぎ声のような息が漏れる。そこはすでに痛いほど勃起していた。
「俺の言った通りだろ」
「うるせえな……!」
したり顔の斉藤にしがみつき、その肩に噛みついてやった。

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こう見えて(?)実は尽くすし一途な受け!にしようと思って書いていました。書いてて案外尽くし受けって好きかもしれない…!と気付きました。扱いの酷い攻めにせっせと尽くす受け…ヨダレが出そうですw
また続きのネタが思いついたら書きたいと思います。刑務所時代にお世話になったヤクザ屋さんとか、再登場してもらってもよさげですね。
satoさん
もしや海外に行ってらしたのでしょうか?もう調子が戻られていると良いのですが。
実はちょこっと斉藤の初期設定をいじりましたw
はじめは170前後だったんですけど、175前後にこっそり変更しています。短躯なイメージで書いていたのに、だんだん攻め補正がかかって身長が伸びてあらびっくりですよ。
大好きって言ってもらえて嬉しいです!ありがとうございます。イヤッフー!