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その後(2/3)

2015.05.10.Sun.
<前話はこちら>

 結局、俺がいる間に斉藤が帰って来ることはなかった。なにか事件が起こったのだろう。どこの誰か知らないが、土日はおとなしくしとけ。盗みでパクられた俺が言えたことじゃないけど。

 配達が終わった夕方、戻っているかもしれないと斉藤の部屋を訪れてみた。

 テーブルには、俺が作っておいた焼きそばが寂しく佇んでいる。
 部屋の様子が俺が出る前とまったく同じだったので帰っていないとわかった。

 朝に干しておいた洗濯物を取り込んでからベッドに寝転がって目を閉じる。斉藤が使っている整髪料の匂いがする。

 ウトウトし始めた頃、外の通路に鳴り響くヒールの音で目が覚めた。音で踵の高い女物だとわかる。それが斉藤の部屋の前で止まった。

 インターフォンが鳴った。同時にノックもされる。外の人物は、土曜の夕方なら斉藤が家にいるとわかっているように思えた。斉藤の知り合いかもしれない。

 もう一度チャイムを鳴らしても誰も出てこないから、外の女は諦めたのかまたヒールをカツカツ鳴らしながら来た道を戻って行った。

 斉藤の女の知り合い。頭に浮かんだのは斉藤が用心棒をしている水商売の女。

 何をしに来たのだろう。飯を作りに来てやったのか、デートにでも誘いに来たのか。また昔の男に見つかった相談か。

「自分で解決しろよ」

 吐き捨てるように呟いて布団を被る。

 とりあえず斉藤はいまヒールの女とは会っていない。さっきの女が水商売の女と決まったわけじゃないけど、少しだけ俺の焦りを和らげた。

 また少し眠って、携帯電話のアラームで目を覚ました。夜の十時。部屋は暗い。斉藤の姿もない。テーブルの焼きそばもそのまま。落胆のため息が知らず零れる。

 そろそろ出勤の準備をしないといけない。

 風呂に入ってシャワーを浴びた。俺用の歯ブラシで歯を磨き、斉藤の髭剃りで髭を剃る。
 着替えは持ちこんでいないので服はそのまま、下着は斉藤のものを借りた。

 腹ごしらえのために焼きそばをレンジに放り込む。テレビを見ながら一人で食べていたら、玄関で鍵の開く音が聞こえた。

 帰宅した斉藤が中に入ってくる。

「遅かったじゃん」

 あえてテレビに顔を向けたまま言う。

「ああ。仕事だ」

 声が疲れていた。

「俺の焼きそばはねえのか」
「いつ帰って来るかわかんねえ奴の分なんかあるわけないだろ」
「遅くなったから怒ってんのか?」
「はあ? 頭沸いてんじゃねえの」
「機嫌直せよ。お嬢ちゃんのために買って来てやったんだぜ」

 斉藤はガサガサとビニール袋からシュークリームを取り出した。俺が買って来いと言ったシュークリームだ。

「誰がお嬢ちゃんだよ」

 ふくれっ面でシュークリームを奪い取った。

 どかっと床に腰を下ろした斉藤が焼きそばを手繰り寄せて食べ始める。もともと斉藤のために作ったものだ。食べてもらえるのが嬉しい。豪快な食べっぷりなので尚更だ。

 俺もシュークリームの袋を開けた。

 あっという間に食べ終わった斉藤が台所でお茶をいれて戻って来た。一口飲んで息を吐き出す。

 シュークリームをテーブルに置いた。床に手をつき、斉藤ににじり寄る。

 横目に俺を見て斉藤が笑う。

「時間は大丈夫なのか」
「だから早くしろよ」
「こっちは仕事で疲れてるんだぜ」

 そう言いながら俺を押し倒して口付けてくる。

「…っ……ん……早く……っ……早く……!」
「わかってる」

 斉藤の手が服のボタンを外していく。ズボンと下着は自分から脱いだ。

「早くっ……あんたの、くれよ……!」
「慣らさなくていいのか」
「どれだけ俺を待たせる気だよ……っ!!」
「仕様がねえガキだ」

 斉藤は苦笑を漏らしながらベルトを外して前をくつろげた。俺は体を起こしてそこへ顔を埋めた。

 疲れているせいか反応は鈍かった。時間はかかったが、しっかり立ち上がったところで口を離した。寝転がり、自ら足を広げる。

 斉藤が覆いかぶさってくる。中心部へ熱い怒張を宛がい、抉じ開けてくる。

「くぅ、う、あ、あぁぁっ……!」

 前準備が必要ないほどの興奮で、引き攣るような痛みも快感だった。逆に斉藤のほうが辛いんじゃないかと窺い見る。顔つきがいつもと違った。本当に疲れているようだ。浅ましくサカッた自分が恥ずかしくなる。

 その気になってもらいたくて、服に手を伸ばしたら「触るな!」と叩き落された。

「なん、で」

 思ってもみなかった拒絶に驚く。

「俺はいい」

 眉間を寄せた斉藤が呻くように言った。なんだか様子が変だった。
 服を脱げない理由。記憶に新しいヒールの音が甦って繋がる。

「女のとこ行ってたのかよ」
「どうしてそうなる」
「疲れてんのもあの糞売女と寝てたからだろ! 違うってんなら裸んなってみろよ!」

 嫉妬まる出しの鬱陶しい女みたいなことを怒鳴りながら斉藤のワイシャツに手をかけ、力任せに開いた。音を立ててボタンが弾け飛ぶ。

 あらわれたのは、俺が予想していたキスマークやひっかき傷なんかじゃなくて、白い包帯とコルセットだった。

「……っ……なに、これ……」
「ったく、誰がこのボタンつけるんだよ」

 溜息まじりに斉藤はシャツを脱いだ。痛んだようで顔を顰める。

「どうしたって聞いてんだよ!」

 わけがわからず、俺はヒステリックに叫んだ。

「喚くな。肋骨にヒビが入ってるだけだ」
「なんでっ」
「通報があって現場行ったら、間抜けなコソ泥がまだ部屋に隠れてやがってな。ちょっとした捕り物騒ぎになって、その時に階段から落ちてこのザマだ」

 後半部分を白状するとき、斉藤は少しバツが悪そうに目を細めた。
 帰りが遅かったのはこのためだったのだ。

「入院してなくて大丈夫なのかよ」
「ヒビくらいで入院なんかするわえねえだろうが。バストバンドで固定しときゃ治る」

 話は終わりだと言いたげに俺の足をかかえなおす。

「ちょ、待てよ、そんな体でできるわけないだろ!」
「お前が判断することじゃねえだろう」
「傷に障るだろ!」
「心配してくれんのか?」
「……っ!」

 ニヤつかれて言葉に詰まる。

「――ばか! もう知らねえ!」
「気持ちだけもらっとくぜ」

 言うなり斉藤は腰を使い出した。中で少し緩んでいたものが再び硬くなっていく。

「……っ、ん……」
「拗ねたり、嫉妬したり、心配したり、今日のお前は忙しいな」
「るせえ!」

 中を擦られてだんだん熱が戻ってくる。

 今更ながら斉藤が犯罪者を追いかける危険な仕事をしていることを思い出した。俺だって最初、この部屋で鉄パイプを握りしめて斉藤に襲い掛かったことがあるのだ。

「あんたも年なんだし、内勤にかえてもらえよ」
「まだ37だぞ。働き盛りの俺を年寄り扱いするな」

 中が潤んできたのかピストンがスムーズになってきた。斉藤の速度が増していく。

「はっ……あ、んっ……い、たく、ねえのかよ……っ」
「痛むに決まってんだろ」
「だったら……無理……すン……なよっ」
「ずっとお利口にして俺を待ってたんだろ? メシまで作って。そのご褒美をやんなきゃな」
「ばっ……か、やろう……!」

 身体を倒した斉藤が腰を突き上げて来た。ヒビの入った胸を庇うためか、いつもと違って少し動きがぎこちない。痛むらしく、時折顔を顰める。だが動くのを止めない。

「はぁ、あっ、あぁ、んんっ!」

 斉藤の腰に足を巻き付け、自分から腰を振った。卑猥な音を立てながら深く繋がる。

「ん、あぁんっ……わ、って……さわ、って……っ!」

 俺の足を抱える斉藤の腕に指を食い込ませる。

「どこを触って欲しいんだ?」
「…っ…れの、俺の、ちんぽ、触って……っ!!」

 小さな笑みを見せた斉藤が俺を握って無骨な手で擦り上げる。

「あっ、あぁっ!! きもち、いいっ……もっと……はぁん! あっ! それ……いいっ」
「この、好きもんが」

 言うと斉藤はさらに手つきを早くした。奥も擦られて眩暈がするような快感に目の焦点を失う。

「んあぁん! あっ、あぁっ……待っ……て…出る……あんたも、はやく……っ!!」
「まだ時間は平気だろ」
「ちがっ……あんたの…なか……欲し…ン…だよ……!」

 見上げながら、中の斉藤を締め付ける。

「すっかりちんぽ狂いになりやがって」
「――――ッ……い……あ、ああぁっ……!!」

 からかう斉藤の声を聞きながら俺は射精した。最後の一滴まで斉藤の手によって絞り取られる。

「お望み通り、中に出してやるぞ」

 両手で俺の足を開き、斉藤は激しく腰を打ち付けて来た。

「ひっ、いっ、んあぁ!」
「中出しして欲しいんだろ、お嬢ちゃん」
「ほし…い……なか……欲しい……!」

 出したばかりなのに収まらない興奮のなか、恥ずかしげもなく斉藤にねだる。

「女でなくて良かったな。でなきゃ今頃俺のガキを孕んでるぞ」

 孕む、と男ではありえない単語に最後の理性が焼き切れて、思考が蒸発していく感じがした。

「は……らみ、たいっ……あんたの子……俺……孕ませ、て……くれよ……!!」
「本気かよ」

 少し驚いたように呟いたあと、斉藤は激しく腰を振って俺の中で吐精した。

 斉藤の熱が体に取り込まれる満足感に、俺の顔はだらしなく緩んだ。




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