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楽しい放課後!(1/2)

2015.04.15.Wed.
楽しい合宿!楽しいお泊り!楽しい勉強会!楽しい初カノ!楽しいOB会!楽しいロッカールム!楽しい遊園地!楽しい入院生活!楽しい旧校舎!楽しいお見舞い!楽しい合コン!

※健全

 ランニングのあと体操をして、次はキャッチボールだったのだが、いつも組んでた西山がいないので、俺は相手を探してあたりを見渡した。

「中根さん、ちょっといいですか」

 一年の園が話しかけて来た。
 園孝雄。期待の大型新人だ。身長は181センチ、76キロで西山に次ぐガタイの良さだ。西山が部に来なくなった今、実質的に園が一番と言える。

 西山と違い、小中ピッチャーで活躍し、エース候補として今から期待されている。

「今日も恵護先輩は休みなんですか?」

 ぶすっとした表情を隠しもしないできいてくる。

 園と西山は小中一緒だったらしい。最初の新入生の挨拶で、園は「尊敬する先輩は西山恵護さんです! 恵護さんとまた一緒に野球がやりたくてここに来ました!」とグラウンドに響き渡る声で叫んでいた。そこで園が西山の後輩だと知ったのだが、園の西山への慕いっぷりは少し度を超えていた。

 そもそも、小中いっしょだったなら西山に野球の才能がないのは知っているだろうに、高校で一緒に野球がやりたいというのは一歩間違えれば嫌味、侮辱にとられかねない。でも園は本気だったし、補欠で球拾いの西山を心底崇拝していた。

 監督に西山とバッテリーを組みたいと頼んでいたし、スパイクの紐がほどけていたらh跪いて結んでやるし、柔軟体操は西山とペアを組みたがるし、言われる前にパシリのお伺いを立て自ら買い出しに出かけて行くし、練習後には進んでマッサージもする。

 尊敬というには行き過ぎたものを感じる献身ぶりだった。

 だから園は西山がいなくて不満なのだ。そしてその不満を俺にぶつけてくる。

 園が西山に忠誠を見せるように、西山は俺に対して献身的だった。入学前の春休みから部活に参加して尊敬する先輩のそんな姿を見て来た園は、そんなことをさせる俺をよく思っていないようだった。俺がやらせてたわけじゃなく、西山が勝手にやってただけなのに。

 今だって背が高いのをいいことに威圧的に俺を見下ろして来る。他の部員にはにこにこしているくせに、俺が話しかけても嘲笑に近い薄笑いしか見せない。本当に腹の立つ一年なのだ。

「恵護さんが急に来なくなった理由、なにか知ってるんじゃないんですか」

 西山は合コンのあの日以降、部活に出てこなくなった。体も大きくて存在感があったため、いなくなると違和感があるほどだった。

 応援練習も、公式試合は常にベンチ外だった西山は今は教える立場なのでほとんど顔も出していないらしい。

 俺が来るなと言ったから。

 まさか本当に言う通りにするとは思わなかった。俺のせいだと思うとみぞおちのあたりがずしりと重くなる。

 だけど、部活で顔を合わせるのも気まずい。西山のことだから諦めずにまだ俺を口説いてきそうだし。お前の父親にやめろと言われたんだと言えば、そんなの関係ないと親を巻き込んで駄々をこねそうだから言えないし。

「あいつは受験生なんだって何回も言ってんだろ」

 園を睨み返す。

「恵護さん、落ち込んで元気がないです。中根さんと喧嘩したんじゃないんですか?」

 園は怯むどころか顎を出して胸を突き出してきた。

 確かに最近の西山は以前の元気はなさそうだった。たまに見かけるその姿は、練習試合に負けたときみたいに背中を丸めているし、いつも複数の友達とつるんでいたのに一人でいることが多くなった。そんなときはいつも物憂げな表情だ。

「中根さんが来るなとか言ったんじゃないんですか?」

 でかい図体のわりに観察眼もあるし鋭い奴だ。
 俺が黙って感心してたら「やっぱり!」と園は目を吊り上げた。

「俺は恵護さんと野球するためにここ来たんですよ。半年しかないのに、どうしてくれるんすか!」
「あいつの行く大学まで追いかけて行けよ」
「最初からそのつもりです!」

 本気で追いかけていく気か。

「お前、あいつのこと好きなの?」
「好きっす」

 食い気味で肯定された。

「それって」
「恵護さんになら抱かれてもいいっす」

 一片の躊躇も恥じらいも見せずにきっぱり言い切る。男前だな。言ってることはともかく。

「恵護さんは中根さんのことが好きみたいです。中根さんはどうなんですか」

 相手が誰だろうが、なんであろうが尻込みしない根性は認めるけど、その猪突猛進でデリカシーのないところは直せないもんかね。

「お前がどうだろうと知ったこっちゃねえけど、普通は男同士でありえねえって覚えとけよ」
「そんなの些細な問題です」

 グローブに拳を叩きこんで園が答える。
 些細だと思わない人もたくさんいるんだよ。

「西山は女いるぞ」

 知らなかったようで園は表情を変えた。

「聞いてません」
「元カノとより戻したんだ」
「梨香さんと? 嘘だ」
「ほんとだよ。俺の言うこと信じられないなら西山に聞け」
「あの人は恵護さんに貢がせるばっかりで俺は好きじゃありません」
「そんなの知るか。おら、練習の邪魔なんだよ」

 犬を追っ払うように園を追い返し、近くにいた綾瀬に声をかけてキャッチボールを始めた。

 離れたところでキャッチボールをする園が何か言いたげにチラチラ見てくるのが鬱陶しくて気が散る。

 おかげでフライ気味で飛んできたボールを取り損ねてしまった。完全に見失ってキョロキョロ探していたら、うっかりボールを踏んでしまった。バランスを崩し、地面に手をつく。痛みがやってきてうずくまった。

「大丈夫か、中根」

 綾瀬が駆け寄ってくる。

「挫いた?」
「っぽい」
「待ってろ」

 離れていった綾瀬が監督を連れて戻って来た。見せろと言われ、捻った足を監督に見せる。足首を動かされると痛くて顔を顰めた。

 保健室へ行くよう言われ、足を引きずりながらグラウンドを出た。

 保健室のおばちゃんに捻挫したことを告げると氷水の入ったビニール袋を手渡された。それを痛む場所に当てる。少し腫れてきた気がする。

 ガラリと保健室の戸が開いた。何気なく目をやり、戸口に立つ西山を見て驚いた。偶然、にしては出来過ぎたタイミングだ。

 西山は俺を見ずに、まっすぐ前を向いていた。

「どうかした?」

 おばちゃん先生が西山に声をかける。

「野球部です。中根くん、どうですか?」
「捻挫だね。今日一日、練習はやめたほうがいいと思う。君も野球部なら、監督の先生にそう言っといてくれない?」
「わかりました。僕から伝えておきます。中根くん」

 西山はここでやっと俺のほうに顔を向けた。

「鞄と制服持って来るから中根くんはここで待ってて」
「え、おい、西山――ッ」

 ペコッと頭を下げて西山は保健室の戸を閉めた。足音が遠ざかっていく。

 俺が捻挫したと知っている口振りだった。誰に聞いたんだろう。見てたのか? どこで? いつから?
 急に全身熱くなって、じっとり汗が出た。

「仲間思いね、彼」

 おばちゃんが惚れ惚れしたように呟く。

 俺は熱くなった顔を伏せ、捻挫の痛みも感じないほど動揺していた。



 十分ほど経って西山が戻って来た。言っていた通り、俺の鞄と制服を手に持っている。

「監督も帰ってゆっくりしろって」

 と制服をベッドに置いた。

「着替えるならカーテン締めなね」
「はい」

 おばちゃん先生に言われて西山はベッドを囲うようにカーテンを閉めた。布一枚で隔てただけなのに、西山と密室に閉じ込められたような息苦しさだ。

「出てけよ」
「着替えるの手伝うよ」
「一人でできる」
「俺に触られるのは嫌?」
「そういうことじゃなくて」
「友達に自転車借りたから、送っていくよ」

 俺のユニフォームを引っ張り上げて脱がせていく。

「人の話聞いてる?」
「来月は大会なんだから無理しない」

 甲子園に出れるかどうかの大事な初戦だ。一度でも負けたらチャンスを失う厳しいトーナメント戦。西山の言う通り、無理して長引かせるなんて馬鹿な真似は出来ない。

 子供みたいに西山に制服を着せてもらい、ボタンを留められる。ズボンもはき替えるとカーテンを開けた。

「湿布貼るからそこ座って」

 おばちゃん先生は足首の具合を見つつ、湿布を貼ると手早く包帯を巻いた。

「軽い捻挫だと思うけど、いま以上に腫れてきたり、歩けないほど痛かったり、自分でおかしいなって思ったら病院行くようにね」
「はい。ありがとうございました」

 一緒に頭を下げた西山は、当たり前のように俺の荷物を肩にかけている。

「乗って」

 と西山は俺に背を向けてしゃがんだ。

「おんぶ」
「い、いいよっ」
「背負ったほうが早いから。ほら」

 そうしてもらいな、っておばちゃん先生に言われて、仕方なく西山の背中におぶさった。軽々持ち上げられる。
 西山におんぶされたまま保健室を出て下駄箱へ向かう。誰にも会いませんように。

「俺が足捻ったのなんで知ってんだよ」

 大きな背中から問いかける。

「最近、教室で勉強してるんだ」

 三年の教室はグラウンドに面している。そこから見ていたのか。

「まさかずっと見てたのか?」
「たまたまだよ」

 ははって笑ってるけど、なんとなく嘘臭い。



どっちもどっち

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コメント
花粉が…花粉がぁ……ッ!!
お薬切れたから辛いっす><

なんか忙しい日が続いていて、更新遅くなりました。今回もエロなし。しばらくエロなしが続きまーす。
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お返事
satoさん

はじめまして、ありがとうございます!!
根気の有る無しの問題なのか頭の良し悪しの問題なのか、長い話が苦手なので、短編がいいとおっしゃってもらえると勇気づけられます。長い話も挑戦したいんですけどもね~。

西山父は次回の話でまた出てきます。力技のコメディ回になる予定です。これでいいんかな…と不安になりながらの更新になるかと思います。コメディ→最終回!あと2回で完結の予定です!!

「長男としての責務」がうちらしいですか。ほうほう。なにがらしさなのか自分じゃわからないので、そう言ってもらえると「そっかー」と妙に納得です。昔というか初期のほうは妙に設定にこだわってた気がしますね。いまはただネタ切れしてるだけかも。この二人の今後…どこまでエスカレートしているんでしょう笑

いつか黄金を食すスカトロ話も書きたい!でも絶対引かれる!!

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