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楽しい旧校舎!(1/2)

2015.03.23.Mon.
楽しい合宿!楽しいお泊り!楽しい勉強会!楽しい初カノ!楽しいOB会!楽しいロッカールム!楽しい遊園地!楽しい入院生活!

※若干ホラー風味

 部活終わりに誰かが「旧校舎に幽霊が出るらしい」と言い出したのがきっかけだった。

 半分はそんなのはただの勘違いだと取り合わなかったが、残りの半分は自分の友達も見たとか、昔あそこで誰かが自殺したらしいとか、割と本気で信じている様子で、否定派と肯定派とでちょっとした言い合いになったとき西山が言った。

「俺が確かめて来るよ」

 と。

 夜。当然外は真っ暗。取り壊しが決まっているため電気が点かない旧校舎は言わずもがな。不気味な噂があるだけでも敬遠したいのに、日没後に足を踏み入れるだなんて正気じゃない。

 さすがに大多数は「やめておけ」とまともな意見を言ったが、一部の馬鹿が「いいぞ、それでこそ西山だ、行って来い」と焚き付けてしまった。
 制服に着替えた西山は俺の腕を掴んだ。

「中根くんも一緒に行こう」
「はあぁっ?! 行くわけねえだろ!」

 腕を振り払おうとしたが、「じゃあ、行ってくる」と部員たちに挨拶した西山に難なく引きずり出されてしまった。

「行くならお前一人で行けよ! 俺はやだよ!」
「もしかして怖いの?」

 俺を見下ろしてニヤリと笑う。
 そういえばこいつ、幽霊とかまったく信じてない奴なんだった。

「肝試しとか遊び半分でやんないほうがいいんだって」

 俺はため息をついた。

「旧校舎に行って戻ってくるだけだよ」
「祟られるのはお前一人だけにしろ。俺は入り口まで付いて行くだけだからな」
「デートみたいだね」
「呪い殺されろ!」

 というわけで、俺たちは旧校舎へと向かったのだった。



 旧校舎は木造の二階建てで、数年前まではここが3年棟として使われていたが、老朽化のため取り壊されることとなった。当然施錠されていて入れないのだが、誰かが鍵のかかっていない窓を一つ見つけて、そこから悪い奴らが出入りしているらしかった。

 その窓を探して一つ一つ確かめていたら大きな桜の下の窓がガラリと音を立てて開いた。

「ここだ」

 西山は窓枠に飛び乗って校舎の中に入ってしまった。ずっと締め切っていたせいか、窓から漏れ出てきた空気は外よりひんやりと冷たい気がした。

「じゃあ一階と二階と見てまわるから、中根くんはここで待ってて」
「わかった。気を付けろよ」
「心配してくれてありがとう」
「早く逝け」

 あはは、と朗らかに笑って西山は廊下を進んでいった。すぐに暗闇に飲まれて姿が見えなくなる。聞こえていた足音ももう届かない。
 風が吹いて頭上の木の葉がカサカサと音を立てた。肌寒さに震えが走る。

 数分が経った。西山は戻ってこない。

「西山」

 窓から呼びかけたが返事はない。

「西山っ」

 少し大きな声を出したが応えはない。

「西山!」

 怒鳴ると「どうした?」と少し離れたところから西山の声がした。足音が戻ってきて西山の姿もどんどん近づいてきた。

「どうしたの、中根くん」
「もういいだろ、戻ろうぜ」
「まだ一階を見ただけだよ」
「なにもなかったって言やいいじゃん」
「嘘は駄目だろ」

 すぐ裸になってちんこ出すくせに変に真面目なんだから。

「だったら俺も行く」
「怖いの?」
「寒いんだよ!」

 窓枠に乗りあがって廊下に下りた。風はないのに、やっぱり中のほうが空気が冷たい気がする。
 二階への階段をあがっていたら西山が手を繋いできた。

「なにする」
「寒いんだろ」

 西山の大きな手はカイロのように温かかった。俺たち以外誰もいないし、別にいっか。

 階段の右手に教室、左手にはトイレがあった。トイレだけは絶対入りたくないので外で待つ。西山は平気な顔してトイレに入って行くと、バタンバタンと一個ずつ個室を開けて確かめていた。やっぱり神経が図太いんだと思う。

「なにもない」

 戻ってくるとそう言ってまた俺と手を繋ぐ。暖を取るだけじゃなく、俺は心細さから西山の手を握り返した。

 次は反対側の教室のほうへ向かった。一組から順に扉に手をかけて開くか確かめる。鍵がかかっているので窓ガラスから中を覗く。椅子を乗せた机が教室の後ろで固められている。

 二組も同様。五組まで確認して六組で扉がガラッと開いた。俺と西山は顔を見合わせた。さすがの西山も神妙な面持ちだ。

「入ってみよう」

 教室の中に足を踏み入れる。埃っぽさと黴っぽい臭いがする。長く誰も立ち入っていないとわかる澱んだ空気。

 急に悪寒がして鳥肌が立った。ここは他の場所より一段と空気が冷たい。嫌な予感がしたとき、遠くから耳鳴りがやってきた。その直後、ズシリと肩が重くなった。

 まるで誰かを背負ったみたいに。

 ――ニイサン。

 鼓膜のすぐそばで声がした。背筋が凍る。西山の声ではない。もちろん俺の声でもない。教室の中にいるのは俺たち二人だけ。じゃあ一体誰の声だというんだ。

 全身の毛が逆立ち鳥肌が立った。早くここから出たい。こんな場所一分一秒だって長くいたくない。

 西山の腕を引こうとして愕然とした。体が動かない。首さえ動かせない。まさか金縛りだっていうのか?! 起きて立っているのに?!

 足の裏に根が生えたようにびくともしない。呼吸は出来ているのに胸が苦しい。助けて。助けて、西山!

「特にかわったところもないな」

 金縛りにあっていない西山は、あたりを見渡したあと「次行こうか」と俺に向き直った。

 また「ニイサン」と耳の奥で誰かが囁いた。怖い! にいさんって誰だよ!!!!

「中根くん?」

 動かせる目だけで必死に助けを訴えかける。動かずじっと見て来る俺に西山は首を傾げた。

「もしかして俺を怖がらせようとしてる?」

 ちげえよ! 俺の異変に気付け馬鹿!

「それとも……俺を誘ってる?」

 目つきをかえて西山は笑った。こいつぶん殴ってやりてえええぇぇっ!!!

「興奮してるのは俺だけだと思ってたのに」

 俺の顎に手をかけると上を向かせる。さっきまでピクともしなかった体が、西山が軽く力を入れただけですんなり動いた。この調子で他の場所も、と動かそうとしてみたが無駄だった。

 そうこうしている間に、こんな状況にもかかわらず興奮して盛る西山にキスされていた。柔らかく、温かい唇の感触。目に見えない鎖から解き放たれたように体が軽くなった。

「にいさん」

 声は俺の声だった。声は俺の口から出ていた。

「にいさん?」

 西山が怪訝そうに俺を見る。その目を見ていたら胸が締め付けられた。痛くて痛くてたまらなくて涙が溢れて来た。

「大好き」

 そう言って俺は西山に抱き付いていた。

「中根くん?!」
「大好き! 大好き! お願い、僕を強く抱きしめて。めちゃくちゃに抱いて。お願い!」
「どうしちゃったんだよ、中根くん?!」

 ほんとどうしちゃったの俺?! 西山を見てたら胸がズキズキと痛くなって、気が狂いそうなほど愛おしくなって、気が付いたらあんなことを口走っていた。

「僕を忘れた? 僕のこと嫌いになった?」

 西山の首にしがみついたまま、ボロボロ涙を流して叫ぶ。

「ええっ……?!」

 西山もかなり混乱しているようだ。俺も何がなんだかわからない。金縛りが解けたと思ったら、今度は自分が自分じゃないみたいになったのだ。これじゃまるで別人……。

 再び、全身総毛だった。まさか俺、旧校舎の幽霊に憑りつかれたんじゃ?!

「お願い、僕を抱いて、抱いてよ!」

 こんなことを必死に西山に頼むだなんてそうとしか考えられない。つうか、なんてこと言わせてくれてんだよぉぉぉっ!!

「中根くん、まさか薬キメてる?」

 んなわけあるか! しかしそう疑われても仕方ない豹変ぶりだろう。

「そういうプレイ?」
「早くっ……して……!」

 俺じゃない俺に見つめられて、西山はごくりと咽喉を鳴らした。

「中根くんがそんなに欲しがるなんて、初めてだね」

 西山はすっかり勘違いして嬉しそうに笑いやがった。否定したいが俺の体は勝手に動いて西山の口に唇を重ねている。あとで誤解を解くのに骨が折れそうだ……。

 水音を立ててキスしながらお互いの服を脱がせ合う。はだけた俺の胸に西山が吸い付いた。

「あぁ……んっ」

 俺じゃないのに俺の口から甘ったるい声が出た。

 頭の中でずっと「ニイサン、ニイサン」と誰かが呼び続けている。愛しさと、哀しみと、嬉しさと、申し訳なさと……いろんな感情が渦巻いている。

 いまや幽霊と一心同体となった俺は、『彼』が誰かを強く想っていたことに気付く。おそらく相手は男で、「ニイサン」と呼ぶところを見ると年上、もしかすると血の繋がった兄弟だったのかもしれない。

 西山を見ていると胸が締め付けられる。こんなに愛おしい。肌を合わせられることが嬉しくてたまらない。触れられるだけで幸福感に包まれる。俺が西山に抱く形容したがい感情と、霊の想いがリンクしているのかもしれない。



仕方ないミーくん

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コメント
今回の第三者は幽霊ですよ!

そろそろ終わりに向けて帳尻合わせを始めているので、いつかどこかを書き直したりするかもしれないです。
今の所まだないです。
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お返事
なむさん
この距離感でじりじりするのは楽しいです´⌣`ウフフ
はたから見たらもうお前ら両想いだろ!って二人はいいですねぇ。
もうすぐラブラブになる予定なのでお楽しみいただけるといいなぁと思います。その間に一度ちょっと離れますが。ほんとに一瞬です。
近々更新できると思いますのでまたのお越しお待ちしております♪



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