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楽しい入院生活!(1/2)

2015.03.15.Sun.
楽しい合宿!楽しいお泊り!楽しい勉強会!楽しい初カノ!楽しいOB会!楽しいロッカールム!楽しい遊園地!

※未挿入

 両親が毎年恒例の結婚記念旅行に出かけた。その間の食費と雑費として、一万じゃ少ないとごねてなんとか二万をせしめた。

 姉は友達のところに泊まるらしいので、家には俺一人。一人パラダイスを満喫してテレビ見放題、ジュース飲み放題、ゲームし放題。

 二万もあるし初日の夜は同じクラスの友達を誘ってファミレスで食事をし、そのあとカラオケに移って朝まで歌った。

 二日目の午前中、腹痛で目が覚めた。カラオケでも飲み食いしたのでそのせいだろうと考えて、トイレで腹のなかのものを出してまた眠った。

 午後。遅めの昼食のカップラーメンを食べていたらまたお腹が痛くなってきた。腹を抱えてトイレに駆け込む。あらかた出したはずなのにまだ痛みが続く。脂汗が浮かぶ。

 芋虫のようにソファの上で丸まって、悪いものでも食べたのかと食事の内容を反芻して気を紛らわせながら過ごした。
 まだ痛み続けるのでトイレに籠ってみたが、ケツがヒリヒリと痛むだけで何も出ない。痛みだけが居座り続ける。

 夕方になって西山から電話がかかってきた。こんな時に、と無視しようと思ったが、そうすると出るまでしつこいので仕方なく電話に出た。

『いま一人なんだって?』

 昨日遊んだ奴らから聞いたんだろう。面倒臭いやつに知られてしまった。

『遊びに行ってもいい?』
「来るな」
『……なんか具合悪そうな声だけど、どうかした?』
「腹が痛えだけだよ」
『大丈夫? 薬飲んだ?』
「なにも飲みたくねえ」
『やっぱり心配だから行くよ』

 こちらの返事を聞かずに西山は通話を切ってしまった。舌打ちする元気もない。来るなと行ってもどうせ無駄だろうから、先に玄関へ行って鍵を開けておいた。勝手に入れとメールをしてソファに寝転がる。

 なんだか熱っぽい気がする。風邪だろうか。お腹にくる風邪があるらしいし。
 無理矢理眠ろうと目を閉じる。ウトウトしても痛みのせいで目が覚める。そんなことを繰り返していたら、また激しい痛みの波がやってきてトイレに座った。

 いきなり嘔吐した。マーライオンのように口から大量の吐しゃ物が噴き出る。向きをかえる間もなかったので、トイレの床に吐き散らした。

 慌てて便器に顔を近づけ、立て続けに吐いた。ゲロと涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃだ。
 そんなときに西山がやってきた。メールを見たようで「お邪魔します」と言いながら中に入ってくる。

「中根くん?」

とリビングのほうから声がする。俺を探して家を歩き回ったあと、トイレをノックした。

「中根くん、いる?」

 返事をする気力も言葉も見つからず、トイレの扉を撫でた。小さな物音に気付た西山が、「開けるよ?」と扉を開け、なかの惨状に息を飲む音が聞こえた。

「大丈夫?!」

 しゃがみこんで俺の体を支える。

「俺、汚ねえから……」
「なに言ってるんだよ」

 トイレットペーパーをカラカラ巻き取り、俺の顔を拭う。

「動かすよ」

 俺を抱き上げて臭気のこもるトイレから連れ出してくれた。あ、俺、パンツあげてねえ。

 俺を膝に乗せたまま器用に上着を脱いでソファに置くと、その上に俺を寝かせた。その時下げたままのパンツを無造作に引き上げてくれた。

「待ってて」

 リビングを出てどこかへ行き、バケツを持って戻って来る。

「吐きたくなったらここに吐いて」

 とソファの下に置いてまたどこかへ消え、今度はタオルを持って戻って来た。キッチンで濡らしたタオルで俺の顔や首、手を拭く。

「ん……っ」

 西山の手を払いのけてバケツに顔を突っ込む。ゲェゲェ吐いている間、背中をさする西山の大きな手が心強かった。
 またゲロにまみれた俺の顔を拭くと、西山は二階から着替えを持ってきた。床に膝をついて俺の前髪をかきあげる。

「食中毒かな?」
「わかんねえ……風邪かもしれねえし……」
「まだお腹痛い?」
「痛い」

 痛む場所に手を当てる。それを見て西山は顔つきをかえた。

「そこってもしかして盲腸じゃないか?」

 盲腸?!

「いつから痛い?」
「今日の朝……9時くらい」
「もうすぐ10時間だよ。立てる?」
「むり」
「救急車呼ぼう」
「えっ」
「俺が付きそうし、家の人にも連絡するから」

 そう言うと西山は本当に119に電話をかけた。

 救急車を待つ間に、俺の携帯から親に電話をし、またゲロを吐いた俺の始末をしたついでに着替えも手伝ってくれた。

「もう少しだから頑張れ」

 そう言って額に軽いキスをしたあとは、トイレの掃除に向かった。西山の言葉と存在に今日ほど安心したことはない。

※ ※ ※

 西山は今日も見舞いにやってきた。こいつのおかげで痛みから解放されたと言っても過言ではないので無下に来るなとも言えない。

 あのあと救急車が到着し、近所の人がやじ馬で見に来るなかストレッチャーで運ばれて、診察と検査のあと翌朝手術と決まった。

 西山から連絡を受けた俺の親は旅行先からすっ飛んで帰って来た。西山に礼を言って名産品の土産を手渡し、なぜか俺は「ほんとに馬鹿なんだから!」と理不尽な叱られ方をした。

 全身麻酔だったので眠っている間に手術は終わり、ちんこにはカテーテルが挿入されていた。翌日見舞いに来た西山がそれを見てにやにやと笑った。

 入院2日目にカテーテルを抜いてもらった。経験したことのない激痛に耐えた俺の気も知らないで、西山はそれを残念がった。ちんこもげて死ね。

 点滴ばかりでまともに西山の相手をする体力もなかったが、病院食が始まってから徐々に復活して、西山と軽口を叩きあい、一緒に売店へ行けるまでになった。

 つまめるお菓子とお茶を買って病室に戻る。四人部屋でベッドは三つ埋まっている。
 俺は窓側。廊下側のお隣さんはイヤホンをつけてテレビを見ている。廊下側のもう一人は寝ているのかカーテンを引いていて見えない。

 傷口が痛むのでまだ大きな動きはできない。西山の手をかりてベッドにあがった。

 よろけて手をついた拍子に部室の壁をぶち破ったことのある西山が、その有り余るエネルギーで傷つけてしまわないよう注意しながらそっと俺を横たえて布団をかけてくる。
 いつも大雑把な力配分をしている西山には神経を使う作業だったろう。

 ゲロまみれのトイレから俺を救い出したときも、西山は大きな体に似つかわしくない細やかな対応をしてくれた。ソファを汚さないよう自分が着ていた上着を下に敷いたり、バケツを置いたり、顔を抜いてくれたり、トイレ掃除をしてくれたり。

 まず、電話の声だけで具合が悪そうだと気付いてくれた。来るなと言ったのに心配だと駆けつけてくれた。
 俺一人だったら、風邪か食い物にあたっただけだと病院に行こうなんて考えなかっただろう。

 あのまま我慢し続けていたら盲腸が破裂していたかもしれない。盲腸でも死ぬ場合があると聞いたことがある。西山は命の恩人と言うわけだ。 

「西山」
「ん?」

 いつかきちんと言わなきゃと思っていた。でも気恥ずかしくてなかなか言いだせなかった。

「あのさ……、今回は、ほんとに助かった。色々やってくれて……ありがとう……」

 西山がびっくりした顔で俺を見る。あんま見るな。傷痕痛むくらい恥ずかしいんだから。

「あと、ジャケットも弁償するから」
「クリーニングに出したからいいよ」
「他人のゲロがついたのなんか嫌だろ」
「中根くんのだから嫌じゃないよ」
「なんで……平気なんだよ。普通汚れたら嫌だろ」
「愛する人のゲロだったら平気でしょ。むしろやつれて弱ってるレアな中根くんを見られたし、ご褒美って感じだったけど」

 愛する人とかしれっと言うなよ。ていうか人が苦しんでるときになんてこと考えてたんだ。

「ト、トイレも、掃除してくれて……ありがと」
「しおらしい中根くん、かわいい」
「っせえ、タコ」
「中根くんのほうがタコみたいに真っ赤だけど」

 クフッと吹き出して西山が顔を近づけてくる。あ、と思ったけど、よけることが出来なかった。

 カーテンを引いているとは言え、すぐ隣に人がいるのに、ベッドに手をついて体重を乗せてくる西山に合わせて角度を調整していた。



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コメント
冬の間、練習試合できないって知らなかった…!
実は野球そんな興味なくてですね。漫画もずいぶん前にタッチ読んだくらいで練習試合が禁止されてる期間があるなんて考えもしませんでした^^;
3月下旬から解禁されるらしいので、3月下旬に矢神のとこと練習試合したってことにしときますw
ちょっと知識がなさすぎるので野球漫画読もうかな…。

本出してから一ヶ月が経ちました!買って下さった皆さん、ありがとうございます!!嬉しい!嬉しいよ!!
ちょっとでも楽しんでもらえてたらさらに嬉しいです。ちょっと、じゃなくてすごく楽しんでもらえるように精進して頑張ります!

まだたくさん在庫がありますので、引き続きよろしくお願い致します!

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